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;国語専科-『夏をどう過ごす?』-中学受験家庭教師

<strong>国語専科-『脱皮』-中学受験家庭教師</strong>

メールでの質問-「夏をどう過ごせばよいのでしょうか?」

e:初めて受験される方は悩まれるでしょうね。

F:「夏は『合否』を決する天王山」なんて言われますから。

e:「夏を制する者は」

F:「入試も征する」ですからね。

e:確かに、『合格体験記』を読むと゛夏、がんばったから゛

F:『合判』で合格可能性が低くても

e:「合格できた」なんて書かれてますね。

F:逆に、夏にもっとがんばっておけば...

e:夏は゛基礎固め゛と同時に”苦手克服”

F:゛弱点補強゛。と言っても、これも基礎固めの一つとも考えられます。

e:そして、最大のヤマ場は

F:もちろん、『過去問』の攻略!

e:また最大の難所でもある訳ですね。

F:゛基礎固め゛で

e:あるいは゛弱点補強゛で

F:『過去問』がすんなりと、解けるようになる

e:ていうわけには、直ちにいきません。計算力が備わったからと言って

F:知識力が具備されたからと言って、

e:それらは大事な要件ですけど

F:『過去問』攻略に゛直結゛するとは限りません。

e:計算力といい、知識力といい

F:縁の下の力持ち的な要素ですからね。

e:所詮、゛土台゛の役目にすぎません。

F:それも絶対不可欠のものに違いありませんが

e:それだけでは゛入試゛は突破できません。

F:御三家レベルでは、ですね。

e:そんなことは百も承知でしょうが

F:じゃあ、塾の夏期講習で

e:土台から゛上゛のものをしっかり構築してくれるかという保証は

F:ないのが現状でしょうね。

e:しっかり構築してくれれば

F:全員『合格』でしょう。

e:夏は゛天王山゛ですからね。

F:塾の夏期講習が゛夏を征してくれた゛わけですから。

e:集団授業の宿命は

F:2・6・2の法則があてはまる可能性が高いですね。

e:どんなクラスでも

F:問題は゛6゛の中に入るお子さんにとっては

e:まさに夏=天王山

F:おそらく、6の中の゛2゛

e:が『合格』のパスポートを手に入れるんでしょう。

F:゛脱皮゛は誰の助けも借りずに

e:自分の力で

F:自分の力だけを信じて

e:命懸けで行う行為ですよね。

F:一回り大きくなるための゛試練゛ですね。

e:本来なら、親の手助けも

F:塾や家庭教師の手助けもあてにしないで

e:゛脱皮゛しなければならないんですね。『岳』のように。

F:最後は自分を゛信じて゛やり抜くことが大事でしょう。

e:結果を気にせずに。

椎名誠 「続・岳物語」 麻布中 昭和62年

-夏は少年にとって大きな脱皮の季節なのだろう。ひと

夏を過ぎると、少年はまたひとつ変わっていくのだ。ー

e:ところが、父親は゛鈍感゛なもんだから、

F:゛声変わり゛も気がつかない?

e:普段、接していませんからね。

F:だから、気がつきそうなもんですけど、

e:男はあまり、そういうことに無関心じゃないですか

ね。

F:気にしないんでしょうか?

e:母親に言われてみて、初めて気がつく!

「おれにバリカンでやられるのがいやだっていうわけ

か?」

「別におとうにやられるからいやだというわけではな

く、こうやって、突然おとうのきまぐれで、かってに風

呂場に連れてこられて、それで、好きなように、おとう

の好きなように、どんどん、刈られていく、っていうの

が、ぼくはいやなんだ・・・・・・」

それにしても岳の言っていることはなかなかに説得力が

あった。

e:断髪の場面?理路整然と言ってるところが、゛大人

びてきている゛?

F:断髪ね。岳にとってはそういう感じでしょうか?

e:論理的?理屈っぽいところが

F:大人の証?

e:そういうのを聞くのが大人の父親はイヤなんでしょ

う?

F:゛男の意志゛がでてきて、生意気だと?

e:いつまでも、無邪気であどけなさ

F:子供っぽさを

e:親は求めるんでしょうが

F:いつまでたっても、従順で素直だったら

e:逆に怖い?

F:成長していないんじゃないかと?

e:親としては゛扱いやすいいい子゛かもしれません

が。

F:反抗し過ぎるのも問題でしょうが

e:チェ・ゲバラのように?

F:゛われ、反抗す!

e:ゆえに、われあり゛ですか!

「やっぱりなあ、だんだん反抗的になってきているよ」

「反抗、とかいうのではなくて彼の自立、というような

ものじゃないかしらね。オ

トコの自立期になってきているのよ」

「そうか、自立期か・・・・・・」

e:゛四足歩行゛から゛二足歩行゛になったという感じ

でしょうかね。

F:視界が拡がれば、生存のために

e:お利口(=自立)にならなければ生きていけない?

F:その過程で゛反抗゛は必要不可決かもですね。

反抗ではなくて自立、というふうに理解すると私はすこ

しやわらかい気持ちになった。そうか、そういうことな

のかもしれないな、と私はコーヒーをすっかり飲み干し

てから一人でうなずいた。

頭のことで岳とすこし言い争ってから二週間ほどたった

ころ、また私は岳とぶつかった。

e:「そうか、自立期か」て頷いたんでしょう!

F:まだ、よく解っていない?

e:自立してくると゛自己主張゛も激しくなる?

F:自己主張が自立の芽生えでしょうね。

e:自己主張は本人がもうこれ以上主張できないという

ところまで

F:主張させて、゛ガス抜き゛をさせた方がいいんで

す。

e:しゃべり疲れるまでね。

F:結局、この場面では父親が

e:椎名誠がですね。

F:岳を゛信じなかった゛ところに

e:根本的な口争いの原因があったということでしょ

う。

「かってにおれの部屋の窓をあけるなよ」

「なんだと、生意気なことを言うな。おまえはシンナー

を何に使ったんだ!」

「なんにも使っていないよ。どうして信じないんだ」

「なんにも使ってなくてこんな臭いがするわけがないだ

ろう!」

「どうしてそうやって決めつけるんだ。ぼくは何もしら

ないんだよ。そんなことするわけがないだろう!」

e:父親も自分が子供時代の時に

F:相当、゛悪さ゛をした?

e:だから、わが息子も?

F:その時、父親からなんて言われた?

e:なんて、すっかり忘れているんでしょう。

F:自分を信じない父親に

e:幻滅した記憶とかは必ず、悪ガキとか

F:がき大将だったら

e:あるはずですよね?

F:少しでも、自分の子供の頃のことを思い出していれ

e:゛思い違い゛も

F:゛誤解゛も生じなかったかも、ですね。

e:最後の方で、「思いがけないほどのそれぞれの思い

ちがいがあった」なんて言

ってますが

F:さて、それぞれの゛思いちがい゛とはなんでしょ

う?

e:岳の無言の抗議

F:父親の正当性の主張

e:それぞれ、誤解の解消のため?

F:自分のことばを信じようとしない父親に対し、実力

行使に出て

e:また、父親は本当にシンナーの臭いがしていたこと

を分からせたい

F:岳を疑ったわけではないと

e:今までは父親に素直だった

F:今度は゛自分゛に素直に。自立への旅立ち。

瞬間接着剤がつぶれて中の内容物が釣りの雑誌の上にほ

とんど流れ出ているのが見えた。私はそれを片手で持ち

あげ、岳に見せようとした。しかし岳はもう私の方を見

ようとしなかった。

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駒場東邦中  ターヒューン  『名犬ラッド』

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  ターヒューン 『名犬ラッド』

『名犬ラッド』は、作者であるターヒューンが実際に飼っていた犬の話である。

 レイディが「邸」につれて来られたのは、三年前、ラッドが成犬になったばかりのころだった。
 ラッドの主人の外套のポケットに、丸まって入れられて来たレイディは、おとなになりかけの猫くらいしかない、ふわふわした、やわらかい、うすこがね色の毛のかたまりだった。

 ラッドの主人が、ポケットの底をさぐり、生後一か月の子犬をとり出して、ヴェランダの床においたとき、子犬は、ぐしゃりとつぶれたようにはらばって、ブルブルふるえながらキャンキャンないた。

 ラッドは用心ぶかくヴェランダの上を近づいてゆき、目をシバシバしながら、この巨大な歓迎者を見あげて、雄々しくも挑戦のうなり声を立てようとしているチビ犬のにおいをかいだ。
 そして、はじめて見たこの瞬間から、ラッドは、レイディの保護者になった。

 はじめ、それは、りっぱな人間や純血種の動物がみな同じように持っている。弱い者をまもろうとする、自然の本能だった。けれども、そのぶかっこうな黄色い赤ん坊が、すらりとした優美な一頭のコリーに成長してゆくにつれ、ラッドの親心は、強い賛美の気もちに変わり、ラッドは、レイディの生涯そのどれいとなった。

 問 「ラッドは、レイディの生涯そのどれいとなった」とありますが、具体的にはどういうことですか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

 ところが、レイディはなさけようしゃなく、また、はずかしげもなく、ラッドを気ままにあやつり、炉ばたの一ばんあたたかい場所から追い立てたり、いっしょに食事をする時、ずうずうしく、おまけにすまして、ラッドの口から一ばん上等の骨をひったくり、暑い夏の日、ラッドが湖のふちのすずしい木かげで昼寝をしたくてたまらないような時、むりにおどかして、この威厳のある大きな犬に、芝生をとびまわるめいわくしごくなお相手をさせた。

 レイディの気まぐれや、いじわるや、ときどき破裂させる小さなかんしゃくを、ラッドは、ただおとなしくがまんしたばかりではなく、ありがたく、それをお受けした。ラッドの目には、レイディのすることなすことが、みな完全に見えた。

問 「みな完全に見えた」のはなぜですか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

 しかも、レイディは、さもお恵みでもほどこすように、ラッドに自分をあがめさせたのである。というのは、この犬は、おどろくほど人間に似ているところがあったからだ。百代も代を重ねている純血種の系統から生まれたラッドの方は、人間のように身勝手なところが少なくて、ずっと公平だったが。

 二匹の犬にとって、「邸」のすばらしく、楽しいものだった。つれだって、茂った森の中を歩きまわったり、リスを追いかけたり、ウサギの足あとをつけたりした。リスにくらべれば、ウサギを追いつめることは、やさしかった。そして、そういうごちそうを食べる時になると、大部分をたいらげてしまうのは、いつもレイディだった。

 「邸」には、氷のような冷たい水をたたえた湖があって、七月のあつさと砂ぼこりの中をかけまわったあとで、とびこんで泳いだり、ころげまわったりすることができた。また、家族の居間の暖炉の前には、こたえられないほど気もちのよいじゅうたんがあって、冬の夜、外で風が葉の落ちたこずえを鳴らし、雪がカリカリと窓ガラスをひっかくような時、肩と肩とをくっつけあって寝ることもできた。

 しかし、二匹の犬にとって何にもましてすばらしかったのは、そこにご主人とおくさん---ことに、おくさん---がいることだった。
 だれでも、犬を買う金さえあれば、犬の持ち主にはなることができる。けれども、いくら金をだし、食物を与え、犬をならすことがじょうずでも、犬の同意がなければ、犬の主人にはなれない。犬が、一度、無条件に主人と仰いだ人間は、永久にその犬のあがめる神となるのである。

問 「だれでも、……神となるのである」とありますが、これはどのようなことを言おうとしているのですか。 

e:

F:

e:

F:

e:

F:

問 「ラッド」・「レイディ」はそれぞれどのような性質の犬ですか。

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駒場東邦中  芥川龍之介  『クリスマス』

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芥川龍之介 「クリスマス」

--------------クリスマス

 昨年のクリスマスの午後、堀川保吉は須田町の角から新橋行の乗合自働車に乗った。彼の席だけはあったものの、自働車の中は不相変身動きさえ出来ぬ満員である。のみならず震災後の東京の道路は自働車を躍らすことも一通りではない。保吉はきょうもふだんの通り、ポケットに入れてある本を出した。が、鍛冶町へも来ないうちにとうとう読書だけは断念した。この中でも本を読もうと云うのは奇蹟を行うのと同じことである。奇蹟は彼の職業ではない。美しい円光を頂いた昔の西洋の聖者なるものの、――いや、彼の隣りにいるカトリック教の宣教師は目前に奇蹟を行っている。
 宣教師は何ごとも忘れたように小さい横文字の本を読みつづけている。年はもう五十を越しているのであろう、鉄縁のパンス・ネエをかけた、鶏のように顔の赤い、短い頬鬚のある仏蘭西人である。保吉は横目を使いながら、ちょっとその本を覗きこんだ、Essai sur les ……あとは何だか判然しない。しかし内容はともかくも、紙の黄ばんだ、活字の細かい、とうてい新聞を読むようには読めそうもない代物である。
 保吉はこの宣教師に軽い敵意を感じたまま、ぼんやり空想に耽り出した。――大勢の小天使は宣教師のまわりに読書の平安を護っている。勿論異教徒たる乗客の中には一人も小天使の見えるものはいない。しかし五六人の小天使は鍔の広い帽子の上に、逆立ちをしたり宙返りをしたり、いろいろの曲芸を演じている。と思うと肩の上へ目白押しに並んだ五六人も乗客の顔を見廻しながら、天国の常談を云い合っている。おや、一人の小天使は耳の穴の中から顔を出した。そう云えば鼻柱の上にも一人、得意そうにパンス・ネエに跨っている。……

 自働車の止まったのは大伝馬町である。同時に乗客は三・四人、一度に自働車を降りはじめた。宣教師はいつか本を膝に、きょろきょろ窓の外を眺めている。すると乗客の降り終るが早いか、十一・二の少女が一人、まっ先に自働車へはいって来た。褪紅色の洋服に空色の帽子を阿弥陀にかぶった、妙に生意気らしい少女である。少女は自働車のまん中にある真鍮の柱につかまったまま、両側の席を見まわした。が、生憎どちら側にも空いている席は一つもない。

 「お嬢さん。ここへおかけなさい。」

 宣教師は太い腰を起した。言葉はいかにも手に入った、心もち鼻へかかる日本語である。

 「ありがとう。」

 少女は宣教師と入れ違いに保吉の隣りへ腰をかけた。そのまた「ありがとう」も顔のように小ましゃくれた抑揚に富んでいる。保吉は思わず顔をしかめた。

問 「顔をしかめた」のはなぜですか。

e: 随分、昔に『駒場東邦中』で出たでしょ?
F: 30年以上も前ですね。

e: 沖縄返還の後くらい?

F: 第一次石油危機の後ですかね……

e: 当時、ヴィアトール洛星でも芥川の作品が出てましたね?『煙草と悪魔』?『悪魔と煙草』?

F: 順序からすると『悪魔』が先で『煙草』が後でしょう。ところが、そこは芥川……

e: !?なのか?!なのか

F: 感謝感激なのか?感激感謝なのか?

e: 『煙草と悪魔』は過去ログ参照ですか?

F: 2008年の4月と8月に取り上げています。

由来子供は---殊に少女は二千年前の今月今日、ベツレヘムに生まれた赤児のように清浄無垢のものと信じられている。しかし彼の経験によれば、子供でも悪党でない訣ではない。それをことごとく神聖がるのは世界に遍満したセンティメンタリズムである。

 「お嬢さんはおいくつですか?」

 宣教師は微笑を含んだ眼に少女の顔を覗きこんだ。少女はもう膝の上に毛糸の玉を転がしたなり、さも一かど編めるように二本の編み棒を動かしている。それが眼は油断なしに編み棒の先を追いながら、ほとんど媚を帯びた返事をした。

 「あたし?あたしは来年十二。」

 「きょうはどちらへいらっしゃるのですか?」
 「きょう?きょうはもう家へ帰る所なの。」

 自働車はこう云う問答の間に銀座の通りを走っている。走っていると云うよりは跳ねていると云うのかも知れない。ちょうど昔ガリラヤの湖にあらしを迎えたクリストの船にも伯仲するかと思うくらいである。宣教師は後ろへまわした手に真鍮の柱をつかんだまま、何度も自働車の天井へ背の高い頭をぶつけそうになった。しかし一身の安危などは上帝の意志に任せてあるのか、やはり微笑を浮かべながら、少女との問答をつづけている。

「きょうは何日(なんにち)だか御存知ですか?」

「十二月二十五日でしょう。」

「ええ、十二月二十五日です。十二月二十五日は何の日ですか? お嬢さん、あなたは御存知ですか?」

 保吉はもう一度顔をしかめた。宣教師は巧みにクリスト教の伝道へ移るのに違いない。

問 「顔をしかめた」のはなぜですか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

コオランと共に剣を執ったマホメット教の伝道はまだしも剣を執った所に人間同士の尊敬なり情熱なりを示している。が、クリスト教の伝道は全然相手を尊重しない。あたかも隣りに店を出した洋服屋の存在を教えるように慇懃に神を教えるのである。あるいはそれでも知らぬ顔をすると、今度は外国語の授業料の代りに信仰を売ることを勧めるのである。殊に少年や少女などに画本や玩具を与える傍ら、ひそかに彼等の魂を天国へ誘拐しようとするのは当然犯罪と呼ばれなければならぬ。保吉の隣りにいる少女も、――しかし少女は不相変編みものの手を動かしながら、落ち着き払った返事をした。

「ええ、それは知っているわ。」

「ではきょうは何の日ですか? 御存知ならば云って御覧なさい。」

 少女はやっと宣教師の顔へみずみずしい黒眼勝ちの眼を注いだ。

「きょうはあたしのお誕生日。」

 保吉は思わず少女を見つめた。少女はもう大真面目に編み棒の先へ目をやっていた。しかしその顔はどう云うものか、前に思ったほど生意気ではない。いや、むしろ可愛い中にも智慧の光りの遍照した、幼いマリアにも劣らぬ顔である。保吉はいつか彼自身の微笑しているのを発見した。

問 「保吉はいつか彼自身の微笑しているのを発見した」とありますが、これはどういうことですか。

「きょうはあなたのお誕生日!」

 宣教師は突然笑い出した。この仏蘭西人の笑う様子はちょうど人の好いお伽噺の中の大男か何かの笑うようである。少女は今度はけげんそうに宣教師の顔へ目を挙げた。これは少女ばかりではない。鼻の先にいる保吉を始め、両側の男女の乗客はたいてい宣教師へ目をあつめた。ただ彼等の目にあるものは疑惑でもなければ好奇心でもない。いずれも宣教師の哄笑の意味をはっきり理解した頬笑みである。

「お嬢さん。あなたは好い日にお生まれなさいましたね。きょうはこの上もないお誕生日です。世界中のお祝いするお誕生日です。あなたは今に、――あなたの大人になった時にはですね、あなたはきっと……」

 宣教師は言葉につかえたまま、自働車の中を見廻した。同時に保吉と眼を合わせた。宣教師の眼はパンス・ネエの奥に笑い涙をかがやかせている。保吉はその幸福に満ちた鼠色の眼の中にあらゆるクリスマスの美しさを感じた。

問 「宣教師は言葉につかえたまま、自働車の中を見廻した」とありますが、この時、なぜ「宣教師」は「言葉につかえた」のですか。

問 保吉が宣教師の目の中に「あらゆるクリスマスの美しさを感じた」のはなぜですか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

 少女は――少女もやっと宣教師の笑い出した理由に気のついたのであろう、今は多少拗ねたようにわざと足などをぶらつかせている。

問 少女が「多少拗ねたようにわざと足などをぶらつかせている」とありますが、この時の「少女」の気持ちを答えなさい。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

「あなたはきっと賢い奥さんに――優しいお母さんにおなりなさるでしょう。ではお嬢さん、さようなら。わたしの降りる所へ来ましたから。では――」

問 宣教師はどうして少女にこのようなことを言ったのですか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

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中学受験家庭教師-『学校別特別講座』-国語専科

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学校別特別講座

e: 昨夜、民放で「聖徳小」が特集されてましたよ。

F: 昔、そこに通っていたお子さんを教えました。

e: 開成、筑駒を受かり

F: 筑駒に進学されましたね。

e: 算オリも数オリも入賞したお坊ちゃんでしょ!

F: 無口だったですが…聡明でした。

e: テレビを見てたら、小5のお子さんが『開成』の過去問を解いてましたよ!

F: あそこは”宿直”を出しませんから、自宅では好きなことができるんですね。

e: 机の上には『筑駒』の過去問も!?

F: 塾の先生はそれを見てどう思うんでしょうね?

e: 『灘』を受験するお子さんをもつ親御さんはそれを見たら……

F: ちょっと”遅いんじゃない”なんて!?

e:さて、『学校別特別講座』ですね。

F:YはNHKの『アーカイブ』に出てくるくらいの老舗進学塾ですが、元々、『日曜テスト』がメインだったんですね。

e:「テスト」解説ですね。今じゃ、「塾」展開してますけどね。

F:ですから、「テスト内容」には定評があるんです。

e:そりゃ、そうです!毎週毎週「テスト」用の作問をしている訳ですからね。「テスト」に強くなりますね。

F:Y生も「テスト」に強いですね。

e:いわゆる゛全滅゛が少ないのは頷けますね。

F:作問ウン十年の蓄積は大きいでしょう。『合判予備』にしろ『合判』にしろ、”歴史”がある訳ですね。

e:ナガセもそこに目を付けたって訳ですかね。

F:『過去問データベース』とか、大学入試の「システム」「ノウハウ」を中学受験にシフトしてきましたね。

e:予備校の「講師」もですか?

F:それはないでしょう!

e:トウシンは国語のいい教材がありますよ。確か!

F:よくご存知ですね。

e:昔のあいかたがNの講師をしてて。例の『長文読解~』とかを執筆したみたいですよ。

F:共著でしょ?

e:昔は、何年分かの『合判』の過去問がありましたよね。あれは結構、便利でしたよ。

F:いわゆる『前年度問題集』もですね。

e:今は名前も変わり、『国語』はないんでしょ?

F:著作権の関係で。不便ですね。『国語』は要らないなんて豪語する先生もいるらしい。

e:実際、やらないからですか?

F:多分。『資格審査』なんてのもあったでしょう?

e:5年3学期の初めに、C・B・A会員資格を1回チャラにしたんですよね。

F:今はどこの塾も『組分け』や『入室テスト』でたびたびやりますけど。

e:”昇降”をですね。その度に先生が変わる子もいたりしますね。それでいいんですかね。

F:塾にいた頃は5年から2年間、担当講師は変わらず教えました。

e:2年間、「育て上げた」!

F:「鍛え上げた」といった方が正確でしょうか。

e:゛ペア゛ででしょう?

F:『算+理』を教える先生と『国+社』を教える先生が組んでですね。『算・国』は週2回で『理・社』は週1回でした。

e:「二人」だとうまく調整できますよね。6年になれば、「冠クラス」に移行していったんでしょ。

F:それが今の『特別クラス』ですね。さて、『学校別特別講座』が始まりますね。

e:どうなんでしょ?いわゆる『選抜テスト』なんかがあったりして、入れなかったりとか、よくありますね。

F:2回受験して、落ちて、2学期にようやく『日特』のクラスに入れて、無事開成に受かった教え子がいましたね。

e:かりに、「志望クラス」に入れなかったとしても、立派に受かってますよね。

F:『学校別特別講座』だと言っても、志望する学校の『過去問』ばかりやるとは限りませんからね。

e:というより、前半はほとんどやらないんじゃないですか?つまみ食いはしますけど。結構、関係ない学校もやりますよ。

F:アトランダムにでしょ!

e:我々から見て、どうしてこんな学校をやるの?なんてこともありますね。

F:日常茶飯事とまではいいませんが。

e:「女子校」とかでしょ?男の子も内心嫌々解いてたりして。

F:それなりの゛根拠゛があってやらせているんでしょうけどね。

e:結論として、「特別クラス」で授業を受けたからと言って、その学校に受かる保証はないということですね。

F:毎年、口酸っぱく言ってますが、『学校別特別講座』をわざわざ設置するなら、是非共、”合格率”を公表していただきたいものです。

e:「何人受けて、何人受かり、何人落ちた」かですね。。

F:そして、どこに進学したか。

e:さらに、併願校も。昔、Yのお茶ノ水校なんか、しっかりやってましたけどね……。

F:メディアも『合格力』なんて取り上げてますが。本当の『合格力』とは、つまり、『合格率』じゃないでしょうか?

e:その点、恵比寿の『希』は立派!

F:『塾』としての゛誠意゛を見せてますね。

e:プライド?結果責任をおおやけにしているんです。何故、不合格になったかの「説明責任」もしっかりやっているはずです。

F:「後輩受験生」を持つ親御さんのためにも、ですね。

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中学受験-舟崎克彦 「コジュケイ」『雨の動物園』-家庭教師

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舟崎克彦 「コジュケイ」 『雨の動物園』

 ヒキガエル、コウモリ、モグラやリスに自然の草花。身近な生き物たちと心を交わした、遠い日々の鳥の声、木々のざわめきがきこえてくる。

 「ぼっちゃん、そこの坂道でコジッケが遊んでます。つかまえにいかねか。」

 魚屋のあんちゃんが、ねじりはちまき、いせいのいいべらんめえでとびこんできた。

 昭和二十七年、夏。祖父の家である。そのおなじ年の六月に母親に死なれてから、私は始終この家に遊びにきていた。
 おそらく七歳の子どもには、灯明のゆれる祭壇や線香のたなびく広間のようすなどがなんとなくおそろしく、そしてまたどこからどこまで母のにおいがしみこんだわが家が帰りづらいものに思えたのだろう。

 問 「どこからどこまで母のにおいがしみこんだわが家が帰りづらいものに思えた」のはなぜですか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

 私と「としや」とよんでいたねえやは、くらくただっぴろい台所の上がりがまちにならんで腰をかけ、たぶんチャンバラ映画の話をしていたと思う。そこへいきなり魚屋のあんちゃんである。

 「コジッケって、いったいなんだよう。」

としやがいなかことばまるだしで、たたきの外に立っている若者にききかえした。

 「チェッ、コジッケもしらねえのかよ。

 あんちゃんは舌うちょいをして、

 「ほら、地べたをチョコチョコ歩く、ウズラをでっかくしたみてえな鳥がいっだろう。あれのこった。」

 じっれたそうにいうと、

 「さあ、ぼっちゃん。早く、早く。」

と私のうでをひっぱった。

問 「『さあ、ぼっちゃん。早く、早く。』と私のうでをひっぱった。」とありますが、「あんちゃん」は何のために、「私」をつれていこうとしたのですか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

 「ひなをぞろぞろつれて歩いているんだよう。早くいかねえと逃げっちまうぜ。」

 ひなをつれて……?そのことばをきいて私の心が動いた。母鳥にまつわりつくひなのようすがふと心に浮かんだのである。そしてそれは、かつての私と母親の姿にかさなった。

問 「そのことばをきいて私の心が動いた」のはなぜですか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

 私は土間にころがっているとしやの駒げたをつっかけると、あんちゃんのうしろからうら木戸をかけぬけていった。

 そしてその行く手には真夏の、はだかの陽をあびた坂道が白っぽくかたむいていた。

問 「はだかの陽」とありますが、それは何を意味していますか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

 いきなりのくらがりで、私にはコジッケという鳥がどのあたりにいるかよくわからない。と、あんちゃんは立ちどまって耳うちをした。

 「いいかい。おれはあっちがしらから追いこむから、ぼっちゃんはここにいてはさみ討ちにするんだ。」

 彼があんなに熱心に私をさそったわけがやっとのみこめた。

 そんなわけでもなければ、この人一倍たくましい青年が、私のような子どもの手を必要とするはずがない。

舟崎克彦 「コジュケイ」『雨の動物園』所収。舟崎克彦(フナザキ ヨシヒコ)1945年~。東京生まれ。学習院大学卒業。主な著書に「ぽっぺん先生物語」シリーズ(赤い鳥、路傍の石文学賞受賞)、『月光のコパン』(2007年岩波書店)、絵本作品に『あのこがみえる』(味戸ケイコ絵・ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞受賞)『かぜひきたまご』(杉浦範茂絵・サンケイ児童出版文化賞受賞)また、『雨の動物園』-私の博物誌(岩波少年文庫)で、国際アンデルセン賞優良作品賞、サンケイ児童出版文化賞を受賞している。

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家庭教師-『夏・バージョン・アップ』-中学受験国語専科

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国語専科-『夏・バージョン・アップ』-中学受験

e:秋以降の事を考えると

F:初めて受験される親御さんは秋も

e:今まで通り、

F:順調に行くと考えがちなんですね。

e:ところが、予期せぬ

F:アクシデントが起こることがよくあるんですね。

e:で、予定が大幅に狂っちゃう

F:行事も目白おしで

e:運動会で骨折しちゃったとか

F:手の骨折だと

e:さすが受験生!

F:利き腕の方は反射的にかばっちゃうんですね。

e:゛エライ゛!

F:あと学園祭

e:文化祭ですね。準備なんかで、時間をとられますからね。

F:修学旅行ですか?

e:さすが、食中毒は少ないですがね。

F:そう言えば、昔あったみたいですね。親御さんから聞いた話ですが。

e:伝聞ですね。もしかして、あのG中等部?

F:旅行先の旅館で食中毒!

e:また次年度にそこの旅館に、ということで

F:父兄から反対が。

e:当たり前でしょう!

F:にわかに信じられない話ですがね。

e:超有名旅館で中毒?

F:老舗の料亭でも?

e:食べ残し?その旅館にまた行くことが?

F:とにかく、何が起こるかわからないのが

e:この世の中ですからね。

F:ということで、

e:結論は?

F:夏にできるだけの事をしておいた方が

e:9月以降は余裕を持って、

F:そのためにも、できるだけ゛指導日数゛を増やしてもらいます。

e:秋は゛振替゛がきかなくなってきますからね。

F:例えば、1日授業が休みになっても、

e:じゃ、この日に゛振り替え゛ましょう、とはすんなりいかなくなってくるんで

すね。

F:そういうことです。

e:いまでも、週2の方もいますからね。

F:秋になると、2時間を3時間に、とかはまだいいんですが

e:あとに指導がない場合は、ですね。

F:ところが、今、月曜を教えてて、さらに

e:もう1回となると

F:月曜から金曜まで、めいっぱい入ってると

e:物理的に指導は不可能になります。

F:ということで、゛振り替え゛もまた

e:物理的に不可能。

F:行事もさることながら、夏の疲れで

e:体調不良になって

F:風邪を引いたり

e:それがまた長引いたりすることも!

F:でもって、予定が大幅に狂ってしまい

e:入試まであと何日なんて

F:カレンダーに書いてあり

e:焦ってくるんですね。

F:お子さんよりも

e:親御さんでしょ!

F:予定が消化されていない

e:お子さんは意外とノンビリ?

F:ノンビリ過ぎるのも困りますが。

e:多少、ノンビリの方が

F:『合判』がありますから

e:親御さんはノンビリとはいかない?

F:『結果』が

e:次から次へと

F:『合格可能性』が低いと

e:ますます゛焦る゛?

F:『国語』に関してだけですが、『御三家』・『駒東』・『筑駒』

e:あと『栄光』・『灘』

F:さらに『桐朋』・『学習院』などですね。

e:『合判』の結果はあまり゛関係ない゛と?

F:そうですね。『記述』の学校ですからね。

e:しかし、『算数』に関しては゛焦り゛まくるかな?

F:『過去問』が解けないとですね。娘の時、ありました。

e:また女の子の場合、ある日突然゛女の子゛になったりしますから。

F:教え子で経験があります。娘は5年生の時でしたね。

e:早かったんですね。で、5年生で助かった?

F:そうですね。これは、予期せぬ出来事でした。

e:予期できないでしょう!

F:息子の時は゛猛反抗期゛でした。

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expertFORUM  中学受験家庭教師-『塩狩峠』-国語専科

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三浦綾子 『塩狩峠』

 他人の犠牲になんてなりたかない、誰だってそうさ---そうだろうか、本当に?

 結納のため、札幌に向かった鉄道職員永野信夫の乗った列車は、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れて暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた……。
 明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らを犠牲にして大勢の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、生きることの意味を問う長編小説。新潮文庫の100冊。

 夕食の時になって、雨がぽつぽつ降りだしていたが、七時をすぎたころには、雨に風をまじえていた。

 「おかあさま、ぼくこれから学校に行ってもいい?」

 「まあ、これから学校にどんな用事がありますの」

 菊はおどろいて、信夫をみた。

 「つまらないことなんだけど……。そうだ。行ってもつまらないことだから、やめようかな」

問 「つまらないこと」とありますが、何がつまらないことなんですか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

 「なにかあるのか」

 新聞を見ていた貞行が顔をあげた。

 「高等科の便所に夜になると女の泣き声がするんだって。みんなで今夜集まって、それがおばけかどうかみるんだって」

 「まあ、おばけなんて、この世にいるわけがありませんよ。そんなことで、こんな雨ふりに出かけることはありませんよ。ねえ、あなた」

 菊はおかしそうに笑った。貞行は腕を組んだまま、少しむずかしい顔をしていた。

 問 貞行が「腕を組んだまま、少しむずかしい顔をしていた」のはなぜですか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

 「ええ、ぼく、いかないよ。こんなに雨が降ってきたらだれも集まらないのに決まっているから」

 「そうか。やめるのはいいが、信夫はいったい、みんなとどんな約束をしたんだね」

 「今夜、八時に桜の木の下に集まるって」

 「そう約束したんだね。約束したが、やめるのかね」

 「約束したことはしたけど、行かなくてもいいんです。おばけがいるかどうかなんて、つまらないから」

 こんな雨の中を出ていかねばならないほど、大事なことではないと信夫は考えた。

 「信夫、行っておいで」

 貞行がおだやかにいった。

 「はい。……でも、こんなに雨が降っているんだもの」

 「そうか。雨が降ったら行かなくてもいいという約束だったのか」

 貞行の声がきびしかった。

 「いいえ。雨が降って時はどうするか決めていなかったの」

 信夫はおずおず貞行をみた。

 「約束を破るのは、犬猫に劣るものだよ。犬や猫は約束などしないから、破りようもない。人間よりかしこいようなものだ」

 だけど、たいした約束でもないのに。

 信夫は不満そうに口をとがらせた。

 「信夫。守らなくていい約束なら、はじからしないことだな」

 信夫の心を見通すように貞行はいった。

 「はい」

三浦綾子 『塩狩峠』新潮文庫(シオカリトウゲ)
三浦綾子(ミウラアヤコ)(1922-1999)
旭川生れ。17歳で小学校教員となったが、敗戦後に退職。間もなく肺結核と脊椎カリエスを併発して13年間の闘病生活。病床でキリスト教に目覚め、1952(昭和27)年受洗。1964年、朝日新聞の一千万円懸賞小説に『氷点』が入選、以後、旭川を拠点に作家活動。主な作品に『泥流地帯』『道ありき』『天北原野』『銃口』など。1998(平成10)年、旭川に三浦綾子記念文学館が開館。63刷、250万冊のロングセラー。

 東京生まれの永野信夫は、十歳になるまで祖母のもとで育った。母が「ヤソ」であるために祖母に疎まれ家を出てしまったからだ。祖母の死後に母との生活が始まるが、やはり宗教観の違いに戸惑う。やがて友人吉川の誘いで北海道に渡り鉄道会社に勤めるようになる。明るく振る舞うふじ子や町で出会った伝道師の生き方に魅せられ、キリスト教を受け入れるようになる。 敬虔なキリスト教徒になった永野はふじ子と結婚を約束、結納のために札幌に向かう。事故は結納に向かう列車で起きたと設定、小説は悲しみを募らせる。
 「遺言で長野さんの手紙類はすべて焼き捨てられていたんです。でも長野さんの生き方に思いが深かったんでしょう。悩むことな、とどまることなく、連載を完結しました」と夫の光世は言う。
 著作の多くは口述筆記で仕上げられたが、「塩狩峠」はその最初の一冊であった。
 「塩狩峠は三浦文学の基調をなすものです。愛や犠牲死は三浦さんが訴え続けたテーマでした。それを率直に分かりやすく。だから心を打つんです」(by 三浦綾子記念文学館高野斗志美館長)
 そんな思いが通じて「塩狩峠」は文庫本で63刷、250万冊 のロングセラーを続ける。(by 名作の舞台 鯰のひとりごと)

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国語専科-『カルテノート2』-中学受験家庭教師

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国語専科-『カルテノート2』-中学受験家庭教師

駒東平成1年~10年

1「耕作&権太」

2「門&詩人」

3「小宮正作」

4「篤義」

5「次郎」

6「コジュケイ」

7「ぼく&弟」

8「ティオ」

9「エルビン」

10「マリンバ」

e:平成も半分が終わる頃には夏休みも終わりですかね。

F:早く始めたお子さんは順調にいけば、ですね。

e:毎年、9月までズレ込むケースが多いでしょう。

F:『筑駒』をやったりするお子さんもいますし、

e:゛3日校゛対策も少しはやってた方が気分的に後半が楽でしょうからね。

F:暁星の『国語』は手強いですから。

e:最後の問いなんか、ね。

F:『記述』も結構キツイですよ。

e:6割とるのも大変だとか?

F:あと、『海城』の『社会』の『記述』も、ですね。

e:ある程度、夏休みに対策をしておかないと

F:゛アセリ゛ますよ。

e:なかなか、知識があってもあれだけの字数は書けないでしょう?

F:箇条書きにすれば書けます。それだけの知識は持ち合わせてますよ。

e:その知識をいかに上手くまとめ上げるかですか!?

F:『麻布』の『社会』をやってるお子さんさえも゛テコズリ゛問題もありますね。

e:その点、『武蔵』の『社会』をやってるお子さんは書ける?

F:自由『記述』に慣れてますから、

e:”まとめ”慣れている?

F:そうですね。苦に感じないでしょう。

e:ところが、『開成』や『駒東』の『社会』をやってるお子さんは?

F:大変でしょうね。特に、『開成』は。

e:『社会』で書けなくて落ちた、なんて!

F:゛おさえ゛にはならなくなっちゃいますからね。

e:ラストスパートになって、゛オサエ゛の学校にそんなに時間を費やせませんからね……

F:この夏休みをどう過ごすか

e:毎年、言ってますね。

F:『合否』を左右する゛天王山゛だと。

e:夏に゛何゛をやるか!

F:とにかく、やるべきことがはっきり分かっていれば

e:何も心配はいりませんよね。

F:あとはその『計画』を限りなく100%に

e:達成するように最大限

F:努力することですね。

e:要は『計画』の中身でしょう。

F:第一志望校に『合格』するためには何をすべきか?

e:そして、第二、第三志望校に、ですね。

F:その『計画』が実行できたかどうかで

e:決定的な゛差゛がついちゃう、ってことでしょう。

F:『過去問』を徹底的にやれば

e:”門”が見えてきます!?学校別というか、志望校別対策ですね。

F:塾の講習と”別”メニューで!?

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expertFORUM  中学受験家庭教師-『シックスポケッツ・チルドレン』-国語専科

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中場利一 「シックスポケッツ・チルドレン」

出版社/著者からの内容紹介

今を浮き彫りにする、悪ガキの黄金の日々!70年代、サウス大阪の漁師町で暮らすヤンチ。働かない父と家出を繰り返し母にはさまれ、胸を痛めつつも、ケンカに勝負に恋に友情に忙しい。ディーブで血の通った悪ガキ成長物語が新しい。

 次の日曜日、ヤンチは一人で静子の働く工場へ遊びに行った。

 今日静子のところへ行くことは一夫には内緒だった。

 静子は日曜日でも働いていた。

 一夫に静子のツメの垢でものませてやりたいが、

 「あーほ、そんなもんのんだら、ワシ心臓発作で死んでしまうがな。気持ちだけもろとくわ」
 などと言って改めようとしないだろう。

 「五時に終わるからな、部屋で待っといて」

 「待ってや。いけるんやろ」

 「うん」

 「ふふん、お母んのニオイや」

 ヤンチはじっと待っていた。

 窓の外が暗くなった頃、やっと静子が帰ってきた。

 「おなかすいたやろ、ちょっと待ってや」

 「はいはい、お待たせェ!」

 ヤンチの大好物のオムライスだった。いつもより玉子がぶ厚い。

 「やゃほー、いっただきまーす」

 「ごめんな、スプーンないから箸で食べてや」
 「ううん、そんなんオッケー・モッケーや」

 「あれ?お母んのは?」

 言うと静子は少し笑って首を振った。

 「つくってる最中に、いっぱいつまみ食いしたから」

 うそだというのはわかっていた。静子の腹の虫が鳴いている音が聞こえていた。

 「オマエのためにつくったんやから、全部お食べ」

 オレのためなんや。ヤンチは思った。オッケーだ。それならモッケーもしなくては。

問 「オレのためなんや。ヤンチは思った。オッケーだ。それならモッケーもしなくては」とありますが、これはどういうことですか。

 「あー、ハラおっきー!」

 フウッとヤンチは後ろに手をつき、身体をのけぞらせた。もう食べれないと半分を残した。
 「もうアカンわ、悪いけどお母ん、のこり食べて」

 ヤンチは言うと、静子は頭の三角巾をはずし、下を向いて目をふいた。そしてヤンチを強く抱きしめた。

問 「静子は頭の三角巾をはずし、下を向いて目をふいた。そしてヤンチを強く抱きしめた」とありますが、この時の「静子」の気持ちを答えなさい。

e: さっきの問いじゃないですが

F: イケモトくんの”親の身勝手”?

e: ヤンチの母親静子も同じでしょ!

F: 一夫の態度に頭にきて家を出て

e: ヤンチに寂しい思いをさせていますね。

F: にもかかわらず、ヤンチは母親静子を思いやり

e: 腹がまだ一杯になってないのがのに

F: オムライスを静子のために残します。

e: この子の思いを感じない親は

F: 親として失格?

e: そのヤンチの思いやりに感激して涙を流すくらいなら

F: さっさと家に戻れ、ですか!?

e: だいの大人が子供に思いやられてどうする!?さあ、静子の気持ちをどう書きますか?

F: ヤンチのどんな態度に何を感じたかをしっかり書けばよいでしょう。

 「痛いよ、痛いてお母ん……痛いて」

 なんだかヤンチまで涙が出てきそうになったが必死で我慢した。男の子だから泣かない。泣いてしまうと家に帰れなくなってしまうような気がした。

問 「なんだかヤンチまで涙が出てきそうになったが必死で我慢した」のはなぜですか。

e: 「下を向いて目をふいた」静子を見て

F: そして、静子に強く抱きしめられました。

e: 母親静子の母性愛を全身で感じ

F: ヤンチの気持ちは揺らぎます。

e: 「男の子だから泣かない」のはなぜ?

F: 「泣いてしまうと家に帰れなくなってしまうような気がした」のはなぜ?

e: 思い切って母親静子と一緒に暮らすか?

F: それとも、また元通り父親一夫と一緒に暮らしていくか?

問 「泣いてしまうと家に帰れなくなってしまうような気がした」のはなぜですか。

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中場利一 「シックスポケッツ・チルドレン」

 ヒビ割れて粉がふき出た黒板に、「将来の夢」という字が白墨できれいに書かれていた。「もうみんなも五年生ですから、何になりたいかは考えているでしょ。今日は夢について語り合いましょう」

 マキ先生が書く漢字はいつも「ハネ」の部分がしっかりとハネていた。今日も将来の将の字が大げさなぐらいにハネている。それに字も美しい。

 「こんなきれいな字ィを書く奴に限って、ぶっさくやねん。女は字ィが汚いほどベッピンが多いもんや」

 五年になって初めてもらった通知表の字を見た時、ヤンチの父である山内一夫はそう言った。山内だからヤンチ。父も息子も町内では同じニックネームで呼ばれていた。

 (ほら、やっぱり。な!)

 家庭訪問にあらわれたマキ先生の顔を指さし、父ヤンチである一夫が笑った。

内容(「BOOK」データベースより)

大阪に万博がやってきた1970年。舞台は漁師町。主人公は、小学五年生のわんぱく少年。一人っ子のヤンチくん。お父んは働きもせずフラフラするばかり、お母んは家出を繰り返す。『岸和田少年愚連隊』小学生篇かと思いきや、これが全く違うのです。好き放題に生きる強烈な大人たちの狭間で、ヤンチは、転校生のヨコワケや仲間たちと、とっびきりの毎日を過ごします。そして、なんと健気に、まっとうに成長していくではありませんか。懐かしいあの頃が、確かに<今>の親と子に、あなたに、『岸和田少年愚連隊』の著者が贈る、長編悪ガキ讃歌。

【これまでのあらすじ】

 会社の上司と問題を起こし、会社に行かなくなってしまった父親の一夫に対して、腹を立てた母親の静子が、息子のヤンチを残して、家を飛び出してしまいました。現在、静子は、工場の寮に住みながら働いていて、家に帰っていません。

 (今日こそ、家の電気がついてますように)

 静子が、一夫でもいい、どちらかが待っててくれる、灯りのついた家をいつも願って歩いた。しかし、願いは叶わず、真っ暗な家の窓を見て肩を落とすのが常だ。

 今日もそう思って歩いていた。近道は使わずに遠回りをしてみた。

問 「近道は使わずに遠回りをしてみた」のはなぜですか。

e: 中場利一の「シックスポケッツ・チルドレン」?

F: 中場利一と言えば、もちろん「岸和田少年愚連隊」でしょうか?

e: シリーズ化しててファンも多い?

F: 文字を入力してて、懐かしい”言い回し”

e: 子供時代に使ってた?

F: 大阪と神戸とは多少違いますが…

e: 関西弁では共通してますよね。

F: 神戸弁はもともと漁師ことば。須磨、舞子、垂水、明石…

e: ”なんどいや”?『源氏物語』?

F: 多少、”ガラ”が悪い?

e: ”河内弁”といい勝負?

F: 入力するとき、なかなか”シンドイ”!

e: 今は”吉本”がパフォーマンス的に使ってるみたい?

F: 若い人たちは標準語に近い話し方をしてると聞きますね。

e: 関西弁も”絶滅危惧方言”!?

F: おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に住んでいませんから

e: 方言も伝承していかない?

F: 地方の”東京化”なんてよく聞きますが…

e: ”らしさ”がなくなりつつある?

F: ある知人が「京都も標準語を使ってた!?」なんて、嘆いていました。

e: ビルが建ち並び

F: そびえ立ちでしょう?

e: 遠景に寺社が、なんて

F: 望むべくもない……借景も!?

e: さて、「遠回り」をしたのはなぜ?

F: 遠回りを「した」ではなく

e: 遠回りを「してみた」の「みた」がヒント?

F: この「みた」は”試しに…する”

e: 直前の2行から

F: 「今日こそ、電気がついていますように」

e: 「静子が、一夫でもいい」から家に居て欲しいと願ってはみても

F: いつも裏切られていますね。

e: 「灯りのついた家」を望んでいるのに…

F: しかし、”もしかしたら…”

e: なんて、一縷の望みは捨て切れない!

F: その気持ちは痛いほどわかりますね…

e: 「遠回り」をするということは?

F: 今日もいつもと同じだろうと半分あきらめながらも

e: 遅く帰れば”もしかしたら”どちらかがいるかもしれないという気持ちを捨て切れないでいるんですね…

F: ヤンチがどのようなことを願いながら「遠回りをしてみた」のかを想像して書けばいいでしょう。

e: その時の「ヤンチ」のずばりの気持ちは?

 「よっしゃわかった!そないしょうや!」

 「別れるていうこと?離婚やね!」

 「そうや!子供のためや!」

 「そやね!そのほうがあの子ら幸せになるわ」
 オレンジ色の灯りの中で怒鳴り合っていらっしゃい。二階の窓に、せわしなく動き回るイケモトくんらしき影がうつっていた。

 (なにが子供のためやねん。オッケーだけやんけ)

 表札の下のチャイムを押してやった。ピンポンピンポンピンポン。ヤンチはピンポンダッシュで走って逃げた。争う声は止まったけど、またすぐに再開するだろう。

問 「表札の下のチャイムを押してやった」とありますが、なぜヤンチはこのようなことをしたのですか。

e: 「(なにが子供のためやねん。オッケーだけやんけ)」なんて思ってますね。

F: 「オッケーだけやんけ」の

e: 「オッケー」って?

F: 「ごめんな、スプーンないから箸で食べてや」と静子に言われ

e: それに対し、ヤンチは「ううん、オッケー・モッケーや」

F: 「オマエのためにつくったんやから、全部お食べ」と静子は言ったことに

e: 「オレのためなんや。ヤンチは思った。オッケーだ。それならモッケーもしなくては。」

F: さらに「ワシ、ワシ、ワシばっかりやんか。この子のためやのォて、あんたはいつも自分自身やん」と言った一夫に

e: ヤンチは「お父んはオッケー・モッケーのオッケーだけやねん。モッケーがないねん」

F: ということから「オッケー」とは?

e: ”自己中”!?

F: ”天動説”!?

e: で、それに対してどう感じたか?

F: 「チャイムを押してやった」がその結果の行動です。

e: 押して「やった」!?

中場利一 「シックスポケッツ・チルドレン」集英社2007年刊
中場利一(なかば りいち、1959年-)は、日本の作家。大阪府岸和田市出身。高校中退後にヒモ生活をおくっていたが「本の雑誌」の読者投稿欄への投稿がきっかけで、1994年、自伝的小説「岸和田少年愚連隊」でデビュー。

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国語専科ー『過去問』の相乗効果-中学受験家庭教師

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 夏は中学入試の『合否』を決する゛天王山゛-夏を制するものは入試を征するといわゆる所以です。

 夏といえば、言わずと知れた弱点補強の徹底に尽きます。大手塾の大きな模試もあり、自分の弱点は分かってきているはずです。勇気を持ってそれにチャレンジするかどうかで、『合否』が決まるといっても過言ではないでしょう。

 しかし、自ら進んでそれを実行することはなかなか至難です。また、多人数のクラス授業では意識して臨まない限り、それほど効果は期待できないでしょう。

 夏こそ、まさしく、プロチューターの出番です。マン・ツー・マンですから、その効果のほどは絶大です。これは過去の実績が物語っています。

 苦手な単元を徹底してやる。これが『合格』への近道だと断言できます。そこに、苦手を得手にしてしまう゛ミラクルチューター゛の存在が不可欠です。

 志望校『合格』のカギ、それは、徹底した弱点補強です。

 そして、キーワードは゛苦手を得手に゛!そして、この夏、ライバルを一気に抜き、差をつけましょう。ー『チャレンジ算数』1997年7月号より

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F:『過去問』をやって『合判予備』の「国語」もそこそこ点をとれる?

e:親御さんは゛不思議゛がられるんでしょう。

F:『記述』の勉強ばかりしててどうして?

e:ああいう゛形式゛の問題ができるようになるのか、ということですか?

F:そうですね。穴埋め、書き抜き、選択肢などの問題ができるようになるんです。一方で、『合判予備』の『過去問』を何本もやってもとれないお子さんがいるんですね。

e:違いはなんですか?『算数』では考えられないですけどね。

F:『計算力』のないお子さんは『合判予備』もダメだし、当然複雑な『過去問』の計算もできないでしょう?

e:最近、どういうわけか『計算力』

F:『計算力』ですね。゛~式゛とか、やってた方が有利なんですか?

e:さあ、どうしよう。もちろん、夏休みまではバッチリ『計算』の訓練はやりますが。

F:昔、塾で『算数』の授業を見学させてもらったことがあるんですよ。

e:どのクラスの、ですか。

F:『開成クラス』ですね。

e:で、感想は?

F:まあ、とにかく『計算』が早いのには驚きでした。

e:○△×△○=?とか△○÷○△=?なんか一瞬のうちに答をだすでしょ!

F:別に不思議でもなんでもないんですか?

e:ないですね。過去に何回も何回も同じ計算はしてますから。

F:なるほど。計算しなくても数値は覚えてるんですね。

e:『開成』レベルを受けるお子さんはそりゃ恐ろしいくらい゛計算゛はしてますよ。

F:゛計算゛に始まって゛計算゛で終わる感じですね。インド式って誤解されてますよね。

e:゛スピード゛を競う?こうすれば、゛簡単゛に答がでることからですかね?

F:ということは結局、゛スピード゛重視?ということになっちゃうでしょ?

e:゛いろんな゛解き方がありますよ、ってことなんですね。本当は。

F:こんな解き方もあるんです、ということでしょ?

e:子供の頃から゛いろんな゛解き方があることを教えることによって

F:世界には゛いろんな゛(考えを持っ)人たちがいる、ことを『算数』を通して

e:それとなく、教えているんですかね。

F:『国語』とか『社会』をもリンクさせてる?

e:『価値観』の゛多様性゛を、ですかね。

F:゛境界゛を作ってないんでしょうね。

e:日本は価値観の゛液状化゛現象が起こっている感じがしますけどね。

F:ある意味で境がなくなってますが。『計算』=『知識』のような気がするんですね。

e:また独断と偏見ですか?『計算』=『パス』?『知識』=『パス』?

F:悪い言い方をすれば゛知識バカ゛

e:゛計算バカ゛?どうなんですか?

F:インドは゛知識゛を゛知恵゛に変える゛過程゛を重視してるように思えるんですね。

e:いろんなな゛過程゛を基本にしてるってことでしょうか?

F:結局、゛いろんな゛考え方ができる人間を育て上げる

e:そうすることによって゛いろんな゛考え方をする人間を゛受容゛できるようになる?

F:ということでしょうね。

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expertFORUM  中学受験家庭教師-『シックスポケッツ・チルドレン』-国語専科

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中場利一 「シックスポケッツ・チルドレン」

出版社/著者からの内容紹介
今を浮き彫りにする、悪ガキの黄金の日々!70年代、サウス大阪の漁師町で暮らすヤンチ。働かない父と家出を繰り返す母にはさまれ、胸を痛めつつも、ケンカに勝負に恋に友情に忙しい。ディーブで血の通った悪ガキ成長物語が新しい。

 数日後、静子に謝るため頭を丸めた一夫は、ヤンチとともに静子の勤める工場の寮に出かけました。しかし、酒を呑んで酔っていた一夫は、寮の敷地内で暴れはじめてしまいました。

 「お父ん!帰ろ。もう帰ろ」

 「うるさい!オマエのためにやってんじゃない」

 「アホか!だいたい分かってんねん」

 ヤンチは走った。一夫より先に寮へと走り、静子に知らせようとした。あんな状態の一夫とは話にならない。しかし静子は毅然としていた。ヤンチを部屋の中に入れると、中からカギをしめた。

 ---ドンドンドン!!ドンドンドン!!

 「ワシが悪かった。ちゅーてんね!頭まで剃って謝ってんね!開けんかコラアー!!」

 ドンドンドンドス!一夫が何を怒鳴ろうが、何をしようが、静子は黙ったままだ。

 またドンドンドンと一夫は戸を蹴った。

 「ワシ、ワシ、ワシばっかりやんか。この子のためやのォて、あんたはいつも自分自身やん」
 やっと言葉を発した静子は、一夫の痛いところをグサリと突いた。

問 「一夫の痛いところをグサリと突いた」とありますが、「一夫の痛いところ」とはどのようなところですか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

 「お父んはオッケー・モッケーのオッケーだけやねん。モッケーがないねん」

 「……なんやそれ……」

 よいしょ。一夫が起きる音がした。そしてしばらくは静まり返っていた。十分ほどしてから静子はそっと戸を開けた。一夫の姿はどこにもなく、その夜一夫はまた家にも帰って来なかった。

 「そやからな、来月からイケモトくん、ツジモトくんに名字が変わるんやて。たいして変わりばえせんけどな……内緒やで」

 教室中に漏れているカズミの内緒話を聞きつつ、ヤンチは複雑だった。オレも名字が変わるのか?今回の静子の家出は新記録の長さだ。ひょっとしたらひょっとするぞ。

問 「ヤンチは複雑だった」のはなぜですか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

 (今度、お母んに聞いてみちゃろ)

 思っていたら、その日の夕方、静子と会った。

 「どや?ちゃんとごはん食べてるか」

 静子はヤンチを抱きしめ、持ち上げた。体重で栄養失調かどうかを判定しているらしい。

 「なあ、お母ん」

 「なんや」

 「オレ、いつか名字変わるんか」

 言ったら静子は黙り込んだ。

問 「静子は黙り込んだ」とありますが、この時の「静子」の気持ちを答えなさい。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

 悪いことを言ったなと思ったヤンチは「ごめん!」と謝った。

 「謝るんはお母んのほうや……そんなこと心配させたんやな……お母んはアホやな」

 静子はヤンチの頭を何度も撫でた。

 ---ウォッホン!

 その時、家の中から一夫の咳払いが聞こえた。静子は大慌てでヤンチにこづかいを渡すと、
 「お母ちゃんと会うたのん、お父さんには内緒やで」

 と、電柱の陰に身をかくし、手でヤンチに(帰れ)と合図した。

 「なんで?ええやん別に、言うても」

 ヤンチが言うと、静子はしばらく考え、そやなと言って笑った。また一夫の咳払いがした。

問 「静子はしばらく考え、そやなと言って笑った」ことから、静子についてどのようなことがわかりますか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

 ヤンチは静子に手を振って家の中に入り、一夫に静子のことを言った。

 「……フン!あほか」

 一夫は悪態をつきながらもうれしそうだった。急に機嫌もよくなり、またオムライスをつくり始めてしまった。ヤンチが家の中から外を見ると、もう静子の姿はなかった。

問 「一夫は悪態をつきながらもうれしそうだった」とありますが、この時の「一夫」の気持ちを答えなさい。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

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<P> expertFORUM  中学受験家庭教師-『シックスポケッツ・チルドレン』-国語専科</P>
<P> </P>
<P>中場利一 「シックスポケッツ・チルドレン」</P>
<P> </P>
<P> ヒビ割れて粉がふき出た黒板に、「将来の夢」という字が白墨できれいに書かれていた。「もうみんなも五年生ですから、何になりたいかは考えているでしょ。今日は夢について語り合いましょう」 マキ先生が書く漢字はいつも「ハネ」の部分がしっかりとハネていた。今日も将来の将の字が大げさなぐらいにハネている。それに字も美しい。 「こんなきれいな字ィを書く奴に限って、ぶっさくやねん。女は字ィが汚いほどベッピンが多いもんや」 五年になって初めてもらった通知表の字を見た時、ヤンチの父である山内一夫はそう言った。山内だからヤンチ。父も息子も町内では同じニックネームで呼ばれていた。 (ほら、やっぱり。な!) 家庭訪問にあらわれたマキ先生の顔を指さし、父ヤンチである一夫が笑った。</P>
<P> </P>
<P>【これまでのあらすじ】</P>
<P> 会社の上司と問題を起こし、会社に行かなくなってしまった父親の一夫に対して、腹を立てた母親の静子が、息子のヤンチを残して、家を飛び出してしまいました。現在、静子は、工場の寮に住みながら働いていて、家に帰っていません。</P>
<P> </P>
<P> (今日こそ、家の電気がついてますように)</P>
<P> 静子が、一夫でもいい、どちらかが待っててくれる、灯りのついた家をいつも願って歩いた。しかし、願いは叶わず、真っ暗な家の窓を見て肩を落とすのが常だ。</P>
<P> 今日もそう思って歩いていた。近道は使わずに遠回りをしてみた。</P>
<P> </P>
<P>問 「近道は使わずに遠回りをしてみた」のはなぜですか。</P>
<P> </P>
<P>e:</P>
<P>F:</P>
<P>e:</P>
<P>F:</P>
<P>e:</P>
<P>F:</P>
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<P> 「よっしゃわかった!そないしょうや!」</P>
<P> 「別れるていうこと?離婚やね!」</P>
<P> 「そうや!子供のためや!」</P>
<P> 「そやね!そのほうがあの子ら幸せになるわ」</P>
<P> (なにが子供のためやねん。オッケーだけやんけ)</P>
<P> 表札の下のチャイムを押してやった。ピンポンピンポンピンポン。ヤンチはピンポンダッシュで走って逃げた。争う声は止まったけど、またすぐに再開するだろう。</P>
<P> </P>
<P>問 「表札の下のチャイムを押してやった」とありますが、なぜヤンチはこのようなことをしたのですか。</P>
<P> </P>
<P>e:</P>
<P>F:</P>
<P>e:</P>
<P>F:</P>
<P>e:</P>
<P>F:</P>
<P> </P>
<P> 次の日曜日、ヤンチは一人で静子の働く工場へ遊びに行った。</P>
<P> 今日静子のところへ行くことは一夫には内緒だった。</P>
<P> 静子は日曜日でも働いていた。</P>
<P> 一夫に静子のツメの垢でものませてやりたいが、</P>
<P> 「あーほ、そんなもんのんだら、ワシ心臓発作で死んでしまうがな。気持ちだけもろとくわ」 などと言って改めようとしないだろう。</P>
<P> 「五時に終わるからな、部屋で待っといて」</P>
<P> 「待ってや。いけるんやろ」</P>
<P> 「うん」</P>
<P> 「ふふん、お母んのニオイや」</P>
<P> ヤンチはじっと待っていた。</P>
<P> </P>
<P> 窓の外が暗くなった頃、やっと静子が帰ってきた。</P>
<P> 「おなかすいたやろ、ちょっと待ってや」</P>
<P> 「はいはい、お待たせェ!」</P>
<P> ヤンチの大好物のオムライスだった。いつもより玉子がぶ厚い。</P>
<P> 「やゃほー、いっただきまーす」</P>
<P> 「ごめんな、スプーンないから箸で食べてや」 「ううん、そんなんオッケー・モッケーや」</P>
<P> 「あれ?お母んのは?」</P>
<P> 言うと静子は少し笑って首を振った。</P>
<P> 「つくってる最中に、いっぱいつまみ食いしたから」</P>
<P> うそだというのはわかっていた。静子の腹の虫が鳴いている音が聞こえていた。</P>
<P> 「オマエのためにつくったんやから、全部お食べ」</P>
<P> オレのためなんや。ヤンチは思った。オッケーだ。それならモッケーもしなくては。</P>
<P> </P>
<P>問 「オレのためなんや。ヤンチは思った。オッケーだ。それならモッケーもしなくては」とありますが、これはどういうことですか。</P>
<P> 「あー、ハラおっきー!」</P>
<P> フウッとヤンチは後ろに手をつき、身体をのけぞらせた。もう食べれないと半分を残した。 「もうアカンわ、悪いけどお母ん、のこり食べて」</P>
<P> ヤンチは言うと、静子は頭の三角巾をはずし、下を向いて目をふいた。そしてヤンチを強く抱きしめた。</P>
<P> </P>
<P>問 「静子は頭の三角巾をはずし、下を向いて目をふいた。そしてヤンチを強く抱きしめた」とありますが、この時の「静子」の気持ちを答えなさい。</P>
<P> </P>
<P>e:</P>
<P>F:</P>
<P>e:</P>
<P>F:</P>
<P>e:</P>
<P>F:</P>
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<P> 「痛いよ、痛いてお母ん……痛いて」</P>
<P> なんだかヤンチまで涙が出てきそうになったが必死で我慢した。男の子だから泣かない。泣いてしまうと家に帰れなくなってしまうような気がした。</P>
<P> </P>
<P>問 「なんだかヤンチまで涙が出てきそうになったが必死で我慢した」のはなぜですか。</P>
<P> </P>
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<P>問 「泣いてしまうと家に帰れなくなってしまうような気がした」のはなぜですか。</P>
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<P>中場利一 「シックスポケッツ・チルドレン」集英社2007年刊中場利一(なかば りいち、1959年-)は、日本の作家。大阪府岸和田市出身。高校中退後にヒモ生活をおくっていたが「本の雑誌」の読者投稿欄への投稿がきっかけで、1994年、自伝的小説「岸和田少年愚連隊」でデビュー。</P>

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<strong>国語専科-『過去問』の相乗効果-中学受験家庭教師</strong>

F:『過去問』をやって『合判予備』の「国語」もそこそこ点をとれる?

e:親御さんは゛不思議゛がられるんでしょう。

F:『記述』の勉強ばかりしててどうして?

e:ああいう゛形式゛の問題ができるようになるのか、ということですか?

F:そうですね。穴埋め、書き抜き、選択肢などの問題ができるようになるんです。一方で、『合判予備』の『過去問』を何本もやってもとれないお子さんがいるんですね。

e:違いはなんですか?『算数』では考えられないですけどね。

F:『計算力』のないお子さんは『合判予備』もダメだし、当然複雑な『過去問』の計算もできないでしょう?

e:最近、どういうわけか『計算力』

F:『計算力』ですね。゛~式゛とか、やってた方が有利なんですか?

e:さあ、どうしよう。もちろん、夏休みまではバッチリ『計算』の訓練はやりますが。

F:昔、塾で『算数』の授業を見学させてもらったことがあるんですよ。

e:どのクラスの、ですか。

F:『開成クラス』ですね。

e:で、感想は?

F:まあ、とにかく『計算』が早いのには驚きでした。

e:○△×△○=?とか△○÷○△=?なんか一瞬のうちに答をだすでしょ!

F:別に不思議でもなんでもないんですか?

e:ないですね。過去に何回も何回も同じ計算はしてますから。

F:なるほど。計算しなくても数値は覚えてるんですね。

e:『開成』レベルを受けるお子さんはそりゃ恐ろしいくらい゛計算゛はしてますよ。

F:゛計算゛に始まって゛計算゛で終わる感じですね。インド式って誤解されてますよね。

e:゛スピード゛を競う?こうすれば、゛簡単゛に答がでることからですかね?

F:ということは結局、゛スピード゛重視?ということになっちゃうでしょ?

e:゛いろんな゛解き方がありますよ、ってことなんですね。本当は。

F:こんな解き方もあるんです、ということでしょ?

e:子供の頃から゛いろんな゛解き方があることを教えることによって

F:世界には゛いろんな゛(考えを持っ)人たちがいる、ことを『算数』を通して

e:それとなく、教えているんですかね。

F:『国語』とか『社会』をもリンクさせてる?

e:『価値観』の゛多様性゛を、ですかね。

F:゛境界゛を作ってないんでしょうね。

e:日本は価値観の゛液状化゛現象が起こっている感じがしますけどね。

F:ある意味で境がなくなってますが。『計算』=『知識』のような気がするんですね。

e:また独断と偏見ですか?『計算』=『パス』?『知識』=『パス』?

F:悪い言い方をすれば゛知識バカ゛

e:゛計算バカ゛?どうなんですか?

F:インドは゛知識゛を゛知恵゛に変える゛過程゛を重視してるように思えるんですね。

e:いろんなな゛過程゛を基本にしてるってことでしょうか?

F:結局、゛いろんな゛考え方ができる人間を育て上げる

e:そうすることによって゛いろんな゛考え方をする人間を゛受容゛できるようになる?

F:ということでしょうね。

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ヘニング・マンケル「少年のはるかな海」

 「出ていってから、何の連絡もない。手紙ひとつよこさない。だから、あいつが生きているのか、何をしているのか、おれは知らない……」

 母さんのことを話したい。サラのことも話したい。でも、同時には無理だ。

 とつぜん、サムエルは立ち上がった。

 「サラのところへは行かないで。」ヨエルはすがるように言った。

 「おれは生きたいところへ行く。」サムエルはまゆ毛をつりあげて、ヨエルを見た。いっしゅん、目の中にキケンは光が見えた。

 「……サラの部屋に石を投げたやつがいるんだが、まさか、おまえじゃないだろうな?」

 そのとおりさ、ヨエルは思った。ぼくさ、石を投げたのは。投げた石がサラの頭にあたり、大きなこぶができて、赤いぼうしをかぶれなくなればいいと思ったのは……。

 けれども、口に出しては言わなかった。

 「ぼくが石を投げたって?」

 ヨエルはサムエルをまっすぐに見つめ、何か他のことを考えようとした。……犬。星に向かって走っていた犬。

 「ついてこい」サムエルはいきなり言った。
 「サラのところへいっしょに行こう。サラがおまえに何か食べるものを作ってくれるだろう。」

 サラのところへついてこいだって?ヨエルはサムエルを見つめかえした。本気で言っているんだろうか。

 「来いよ。いっしょに行こう。」サムエルはもう一度言った。

 ヨエルの胸に、なぜかうれしさがこみあげてきた。自分でもよくわかない。いまいちばん会いたくないサラのところへ行くことが、なぜこんなにうれしいんだろう。

問 「ヨエルの胸に、なぜかうれしさがこみあげてきた」とありますが、この時の「ヨエル」の気持ちを答えなさい。

 とにかく、サムエルが「いっしょに行こう」と言ったとたん、サムエルはまた父さんになった。

問 「サムエルが「いっしょに行こう」と言ったとたん、サムエルはまた父さんになった」とありますが、これはどういうことですか。

 寒くてふるえているときに、足をお湯にひたしたときたらときみたいに、からだ全体にあたたかさが伝わってくる。

 「来るのか、来ないのか?」父さんがきいた。
 ヨエルはうなずいた。もちろん、行くにきまっている。

 暗い雪道を歩きながら、ヨエルはとても不思議な気がしていた。

 きょう、森で死んだ人がいる。ぼくが森に行き、死んでしまおうと思っていた同じ日に……。

 ヨエルは父さんにぴったりよりそった。こうして歩くのは、とても久しぶりだ。

 「悲しい?」

 ヨエルがきくと、父さんは「ああ。」と答えた。

 「死ぬときって、どうなるの?」

 「さあ、おれにはわからん。」

 ヨエルは父さんと歩きながらも、自分の気持ちをつかみきれずにいた。いま、自分はサラの家に向かっている。どうして、それがうれしいんだろう。

問 「自分の気持ちをつかみきれずにいた」とありますが、どのようなことを「つかみきれずにいた」のですか。

 きのうの夜は、うろたえながらやみの中を走っていき、サラの窓に石を投げつけた。いまは、父さんといっしょにその家を訪ねていく。

 ヨエルはまだサラがきらいだった。バーで働く赤いぼうしの女が、ゆくえ不明の母親のかわりになることはない。それでも、ヨエルはサラの家にへ行く。

問 「それでも、ヨエルはサラの家にへ行く」のはなぜですか。

 子どもはおとなとはちがう。おとなには、したくないことでもやってのけられる子どもの気持ちがわからない。

 中庭に入る門をくぐったとき、ヨエルは再び不安にかられた。父さんに、「石を投げたのはおまえだろう!」と首をおさえこまれるのではないだろうか。父さんはサラの前で真実をあばくために、ぼくを連れてきたのかもしれない。
 「どうした?気がかわったか?」

 ヨエルはその真意をさぐろうとした。父さんはどこまで知っているんだろうか。

 「ヨエル、行こう。こんなところで立っていてもしょうがない。」

 ヨエルは不安な気持ちを抱いたまま、あとに続いた。

問 「不安な気持ち」とありますが、それはどのような気持ちですか。

e: 少し前に「中庭に入る門をくぐったとき、ヨエルは再び不安にかられた」とありますね。

F: 「父さんに、『石を投げたのはおまえだろう!』と首をおさえこまれるのではないだろうか」と心配してます。

e: 「父さんはサラの前で真実をあばくために、ぼくを連れてきたのかもしれない」ともありますね。

F: 「まさか、おまえじゃないだろうな?」

e: と軽く言われ、「そのとおりさ」

F: 「ぼくさ。石を投げたのは」とはずいぶん違いますけどね…

問 この「不安な気持ち」のほかに、心の奥にずっと抱いているもう一つの「不安な気持ち」は何ですか。

ミステリで知られる作者のヘニング・マンケル作「少年のはるかな海」。これは、1990年作の児童文学。スウェーデンの北部の小さな街。少年ヨエルは、森で木を伐る仕事をしている父親サムエルと、二人だけで暮らしています。
学校の帰りに買い物をしてジャガイモをふかして、父の帰りを待つ生活。
かつて船乗りだった父が元に戻ればいいと思いつつ、一人で想像を巡らす孤独がちで多感な少年でした。
夜中に走っている犬を見かけたことから、一人で家を抜け出すようになり、トラックで走る変わり者のシモンや、鼻のかけたイェルトルドなどと知り合いになります。
新任の判事の息子トゥーレと出会い、秘密クラブの活動と称して、夜中に冒険を始めるのです。出て行った母を思い、父が酒場に勤めるサラと付き合いだしたことに悩みますが、しだいに…?
不満や寂しさも抱えている男の子の、初めて経験することが、いきいきとした手触りで描かれています。
甘くはないけれど不思議な味わいの、なかなか素敵な作品でした。(by 「スローな読書ライフ sanaの見たもの読んだもの」より)

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expert FORUM 国語専科-『人びとの忘れもの』-中学受験家庭教師

国語専科-『人びとの忘れもの』-中学受験家庭教師

感受性豊かな少女とおばあさんの心の交流。大切な約束を果たさなかった少女の後悔の念を描いている。

《あらすじ》

「小さい手袋」という作品は、父親である語り手が、娘の小3のころの思い出をふりかえるという形になっている。娘は雑木林のそばで「宮下さん」という老女に知り合い親しくなるが、祖父が脳卒中で亡くなったことから、同じ病気を持つ「宮下さん」に会いに行くのをやめてしまう。2年半後、その老女の入院していた病院に行った父娘は、「宮下さん」のことを尋ね、「宮下さん」が娘に会いたがっていたこと、クリスマスプレゼントに手作りの小さな手袋を用意していたことを知る。「宮下さん」がまだ入院していることを知った娘は会いたがるが、もう痴呆が始まっていて、会っても分からないだろうと修道女に止められる。小さな手袋を握りしめた娘は、父とともにそっと雑木林の入り口へと向かう。

 東北から帰ってきてから、シホはまるでおばあさんのことを忘れたように雑木林から遠のいた。

 それがきわめて[自然]だったので、私も妻も顔を見合わせただけで一言も触れなかった。おばあさんがシホを心待ちしているだろうことは察せられた。

 しかし、私たちにはそのときの娘の心に立ち入ることはどうしてもできなかった。もしかしたら、シホはおばあさんのことを本当に忘れてしまったのかもしれない。そのような[自然さ]だった。

e:三年生、つまり九歳でおばあさんと出会い

F:そして、シホの記憶から忘れ去られた時点で

e:おばあさんとの゛別れ゛になってしまったんですね。

F:シホが十一歳、つまり六年生になって、おばあさんのことを思い出した時には

e:おばあさんの記憶からシホは消え去っていた。ところで、声教には「同じ時期におばあさんと同じ病気で祖父が亡くなり、そのつらさから会いに行かなくなってしまったシホを待って、手袋を編むおばあさん。」とありますが、

F:また、でましたね。

e:「そのつらさから会いに行かなくなってしまったシホ」の”そのつらさから”ですか?

F:”つらさ”じゃなく、

e:{自然}じゃないかと?なんと言っても9歳ですからね。

F:”感受性”の強いお嬢さんだとどうでしょうか?

 およそ二年半後の春六年生になったばかりのシホが雑木林のおばあさんのことを思い出したのは、ほんのちょっとしたきっかけからだった。

 その日は祝祭日だった。ところが、せっかくのお休みなのに、シホは前夜から風邪で発熱していた?行きつけの病院もお休みである。

 そこで、私はシホを自転車の荷台に乗せてカペナウム病院へ行くことにした。

 薬の出るのを待っていると、シホが、そうだ、といった。

 「やっぱり聞いてみようっと」

 「いまは、そのような方はいませんねえ。いつごろ入院していらしたんですか」

 「二年半ぐらい前ですけど……」

 「それじゃあ、わたしがここに来る前ですね。ちょっと待ってください」

 「あなたがシホちゃんなのね。やっぱりいたのね。ほんとだったのね」

 修道女は、低い声で、興奮をおさえるようにして、いった。

 「探したのよ。宮下さんに頼まれてねえ」

 修道女の話によると、シホが会いに来なくなってから一ヶ月ほど、おばあさんは毎日のように雑木林に行って待っていたのだそうだ。

 クリスマスの近づいたある日、おばあさんは修道女に泣いて頼んだそうだ。シホちゃんに渡したいものがあるから、どうしても探してほしい。これを渡すだけでいいのだから。見つけて連れてきてください。

 しばらくしてから、彼女は茶色の袋を持って現れた。

 「これ、シホちゃんへのクリスマスプレゼントなのよ。あのあと、わたしが預かっていました」

 二年以上も、つぶやきながら、シホは袋を開けてみた。手袋だった。赤と緑の毛糸で編んだミトンの可愛い手袋だった。

 「それはね、宮下さんがシホちゃんに内緒で、毎晩少しずつ編んだものなのよ。あの不自由な手で、一ヶ月半もかかって……」

 手袋は、それほど長い日数をかけたにしては、あまりに小さかった。常人の五倍も時間がかかるという苦しい思いをして、ようやく編みあげた手袋だった。

 シホは、小さな手袋を両掌に包み、顔を強く押しつけた。かすかな鳴咽がもれ出た。

問 「シホは、小さな手袋を両掌に包み、顔を強く押しつけた」とありますが、この時の「シホ」の気持ちを答えなさい。

e: ここで記述の”差”がでますか?

F: ご参考までに

e: また、K社の『解説』ですか?

F: 簡単ですよ!「会いに行かなかったことの後悔、おばあさんがどれだけシホを思っていたかを知ったときの申しわけなさなどをまとめよう」

e: で、『解答』は?

F: 「おばあさんと同じ病気で死んだ祖父のことを思い出すのがつらいばかりに、おばあさんの気持ちも考えず会いに行かなくなってしまった間、おばあさんは不自由な手で自分のために手袋を編んでくれていたことを知り、雑木林に行かなかったことを後悔している。」

e: ところで、『麻布』の設問はどうなっています?

F: 「この時のシホの気持ちを百二十字以内で説明しなさい。」の

e: ただ、”後悔”とか”申しわけない”という気持ちだけですかね……

 「それで」

 「はい、お元気ですよ。まだ、この病院に入院していらっしゃいます」

 シホは顔を上げた。涙で濡れた眼が輝いた。
 「会いたい。会ってもいいですか」

 シホはすぐさま走りだそうという気配を見せた。それを修道女が静かに押しとどめた。

 「会っても仕方ありません。もうシホちゃんが誰なのか、分からないんですよ。この一年ほどで、急にボケが激しくなりましてね。……しきりに大連のことばかり話しています。まわりの人を、みんな大連に住んでいたときの近所の人だと思いこんでね。ご本人は大連にいるんだって思っているんでしょうね」

 「大連に……」

 「そう。宮下さんは、もう大連へ帰ってしまったんですよ。むかしの大連にね」

 カナペウム病院を辞去したあと、自転車の荷台からシホが、雑木林へ寄って行きたい、といった。熱のあるのが心配だったが、私はうなずいて、自転車を雑木林の入口の方へ向けた。

問 「雑木林へ寄って行きたい」とありますが、この時の「シホ」の気持ちを答えなさい。

e: なぜ、シホはおばあちゃんに会わなかったのかしら?

F:最後に、言い忘れました。シホはおばあさんに会いに行きませんでしたね。

e:あれほど、会いたがっていたのに。

F:父親の態度は表面化されてませんね。

e:会わせようとはしなかった?シホの意思を尊重したかな?大人の目線から?

F:シホの思い、気持ちかな?子供の目線から?シホはもう6年生です。

e: 去年もこの物語を取り上げましたね。

F: その時にメールがきたんです。

e: そうそう。Sのマンスリーで出たんでしょう!

F: その時に、反響があって、

e: 一体、誰が書いた作品なのか問い合わせが殺到?麻布の過去問でしょ?

F: 平成4年の問題です。

e: 1992年ですか?で、Sはいつ?

F: 2003年の5年のマンスリーですね。

e: 『解答』に出典は明記してなかった?

F: 最近は明記していますけど……

e: 麻布は出典は明記してなかったんだ!?

F: K社の解答・解説にも出典は明記されていなかった!

e: K社やSに出典を知っている人はいなかったのですかね……

F: で、去年、このブログを見て初めて出典を知った!?というメールが。

e: 俄かに信じられない話ですな……

F: どうしてもわかない作品もありますけど。

e: 全く無名で、という?地方の新聞にとか?

F: 全く知られていない同人誌に発表されたものなんかもそうでしょ?

e: ネットで検索しても見つからないってこともあります?

F: あると思いますよ。

e: 出典の不明な作品を出題するっていうのは…

F: 今は出典は明記しなければダメでしょう。

e: その点、YやNはしっかり明記してますね。

F: 大昔からね。

e: 本屋さんに行って、すぐ買えますね。

F: 入試問題には必ず出典を明記してもらいたいものですね。

「小さな手袋」 内海隆一郎:中学校国語教科書平成18年度版『現代の国語』2年三省堂

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国語専科-『人びとの忘れもの』-中学受験家庭教師

 十一月中旬、妻の父が二度目の脳卒中の発作を起こした。

 その間、シホはえんりょがちに雑木林へ出かけた。そして、短い時間で帰ってきた。おばあさんも「おだいじに」という伝言をもらってきた。

 やがて、私たちが列車に乗らなければならない日がやってきた。

 シホにとっては、初めて体験する身内の不幸であった。幼いときから親しんだ祖父との別れは、小さな胸にも深い傷を刻んだようだ。

問 「小さな胸にも深い傷を刻んだようだ」とありますが、具体的にはどういうことですか。

 いつもは活発な笑い声を立てている子が、大人のような暗い顔をしてしるのは痛々しかった。

 娘の中で、なにかが変化したのを、私は目撃したように思った。実は[祖父の死]というものが、これほどの衝撃を九歳の子供に与えるとは、私は予想もしなかったのである。

 シホの変化は、そのまま雑木林のおばあさんとの交際にもつながった。東北から帰ってきてから、シホはまるでおばあさんのことを忘れたように雑木林から遠のいた。

 それがきわめて[自然]だったので、私も妻も顔を見合わせただけで一言も触れなかった。おばあさんがシホを心待ちしているだろうことは察せられた。

 しかし、私たちにはそのときの娘の心に立ち入ることはどうしてもできなかった。もしかしたら、シホはおばあさんのことを本当に忘れてしまったのかもしれない。そのような[自然さ]だった。

問 「私たちにはそのときの娘の心に立ち入ることはどうしてもできなかった」のはなぜですか。

e:若干十歳前後の子どもが

F:この場合、゛少女゛ですが。

e:実際、教え子でいましたね。今では珍しい
F:同居してたんですね。

e:それも六年の十二月だったですからね。

F:お嬢さんでしたから

e:気強かったでしたね。難局を切り抜けて

F:見事、『御三家』に受かりましたね。

e:そういえば、大昔、塾で教えていた

F:これまた、お嬢さんでしたね。葬儀に出ましたよ。

e:マスコミ関係者がすごかった!

F:最近、お坊ちゃんでありました。

e:男の子はキツイですね。

F:ペットが亡くなったということだけで

e:ショックでなかなか立直れない?!

F:本質的に゛優しい゛んですよ。

e:同居・別居は関係ないのかしら?

F:関係の゛密度゛でしょう。

e:遠くにいても、近くの存在と感じるか

F:逆のケースもありですね。

e:最近、この方が多いかも?

F:近くにいても゛遠く゛に感じちゃう?

e:寂しい

F:悲しい関係になってきたのかしらね?

e:おばあちゃん

F:おじいちゃんは

e:゛遠くに在りて゛

F:゛想うもの゛でしょうか?

e:「武蔵野の面影を残した雑木林」

F:おばあさんの゛面影゛も、でしょう!

e:季節は゛秋゛

F:物悲しい゛響き゛ですね。

e:秋から冬へ

F:老いから死へ

e:万物が向かう゛季節゛でしょうかね。

F:今はもう秋

e:だれもいない海。ちょっと、解く時期が早い?

F:なんて、言ってられない!

e:でしょうね。゛秋゛は

F:切ない季節に違いありません。

e:それを感じとるには

F:シホはちょうどいい年齢だった?

e:゛老いと死゛に真正面から向き合うには

F:男の子はちょっとキツイかな?

e:最近は一概にそうは言えなくなってきてるんじゃないかな?

F:『夏の庭』

e:対照的な場面設定

F:ある側面では、ですね。

e:ある意味で゛心情的゛にリンクする。

F:「老いと死」の受け止めかたには

e:そんなに男女差がなくなってきてる、のかしら?

F:これは我々が勝手に

e:憶測してるにすぎないかも、です。

F:昔は認知症が非日常だったのが

e:゛恍惚の人゛?!今では日常の風景になりつつある?

F:別居が原因?

e:とは限らない?

F:久しぶりに会った祖父母が顔も

e:名前も覚えてくれてない!

F:我々の世代の祖父母には考えられなかった?!

e:「髪は真っ白、小さな顔も真っ白」

F:そして、頭の中まで゛真っ白゛になっていく

e:゛老い゛ていく中に昔はそれがなかったでしたよね。

F:゛わがまま゛になり

e:゛子供っぽく゛はなっていきましたが

F:゛子供に還る゛といいますからね。

e:今は゛赤ちゃんに還る状態にでしょう。

F:もうすぐで゛ひとごと゛じゅない?

e:ドキッ!

F:今の子供たちはどう感じるんでしょうね。

e:K社には「~、雑木林の中のメルヘンのような設定が、物語全体を清々しい印象に仕上げている」とありますね。

F:「清々しい印象」ですか!?

e:゛切ない゛余韻が残りますが、素人っぽいですか?

F:シホに゛不幸゛が立て続けに起こったわけでしょう?

e:シホは一時的におばあさんのことは忘れたけど

F:おばあさんは永久にシホのことを忘れててしまったんですね。

e:もしかしたら、自分が原因で?

F:それはシホには゛酷゛というものでしょう。”やる瀬ない想い”があとを引きます。

e:シホと

F:おばあさんの心の

e:琴線に触れ、胸に迫ってくるものがありますね。

F:心情を思いやると、胸が締めつけられそうです。

e: 基本は”シホ”の視点が中心ですか?

F: 父親である「私」を中心に語られています。
e: そう言えば、今、気が付きましたが、”おばあさん”の直接の声や生身の姿が一度も語られていませんね…

F: ”宮下さん”のセリフはないです。それを指摘したお子さんがいました!

e: もともと”おばあさん”の影は薄い?作者の意図でしょうか?

F: 前面には出てきませんね…

e: ”背景”になってしまって……

F: さっきのお子さんは「”おばあさん”の視点で読んでみたら、ちょっと感想が違ってくるんじゃない」なんて言ってましたよ!?

e: ”走れメロス”も然別?善人が悪人に?

F: で、そのお子さんは「おばあさんがどういう状態であれ、シホはおばあさんに会いに行かなきゃ」とも言ってました。

e: 奇跡が起こり、一瞬でも。おばあちゃんは正気に戻ったかも…ですね。

F: まさしく”おばあさん”の立場で考えているんですね。

e: 「おばあさん」を中心とする物語とみた訳ですか?

F: さらに、「おばあさんはシホに出会えたことをどう思っているのだろうという”語り”もあったほうがいいなあ」なんてちょこっともらしてましたね。

e: いずれにせよ、”清々しい”という感想はどう考えても出てこないんじゃないですか!?
F: 自分の”読み”を振り返ることも常に必要でしょう。

e: ”絵画”と共通しますか?

F: アングルのビーナス?

e: ピカソのグランドオダリスク?

F: 読者の「読み」が変化して行く過程

e: イーザーの「空所」「空白」「否定」という概念?

F: &「語りの構造」を利用して分析は

e: 可能?

問 この父親は今なんで、6年前のこのことを思い出しているのですか。

問 この父親と娘の関係は今どうなっていると君は思いますか。

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expertFORUM  中学受験家庭教師-『空を飛んだオッチ』-国語専科

「空を飛んだオッチ」 海老沢泰久

 「人は理解できないものは受け入れられない生き物だ」という

 そういうある日です、オッチは真理子の家に招待された。

 「あなたがオッチね」

 「真理ちゃんに泳ぎを教えてくれたんだって?」

 「あまり危ないことは教えないでね。真理ちゃんは普通の子供とちがうんだから」

 オッチは困って真理子のほうを見た。真理子は口をとがらせて怒っていた。

問 「オッチは困って真理子のほうを見た」とありますが、この時の「オッチ」の気持ちを答えなさい。

 ハンバーグなんかあまり食べたことがなかったので、とてもうれしかった。オッチはいい気持ちになり、ピョコタンといった。

 「ピョコタンはどんなふうに標本しているのか見てみたいな」

 「すごいな、ピョコタン」

 とオッチはいった。

 「こんな標本箱はだれも持っていないよ、ピョコタン」

 「ピョコタンというのはどういうことなの!」

 オッチはぜんぜんわけが分からなかった。しかし真理子をピョコタンと呼んだことがおかあさんをおこらせたらしいことは分かった。どうしてなのだろうと考えていると、真理子がかわりに答えた。

問 「オッチはぜんぜんわけが分からなかった」のはなぜですか。

 「わたしがぴょこたんぴょこたんと体をゆすって歩くからよ、おかあさん。それがどうかしたの?」

 「どうかしたのって、真理ちゃんはそんなこといわれて平気なの?」

 「平気よ」

 「びっこといわれてからかわれるのと同じことなのよ。それがどうして平気なの?」

 真理子のおかあさんは、興奮して、こんどは真理子からオッチのほうに顔を向けた。

 「おばさんはね、あんたが真理ちゃんにやさしくしてくれているときいたから、ごはんを食べさせてあげたり、ジュースをあげたりしたのよ。でも本当はからかっていたのね。そうなんでしょう。おばさん、かんべんしないからね」

 オッチは思わぬなりゆきに身がすくみ、声も出なかった。すると真理子のおかあさんはますます興奮してオッチを非難した。

問 「思わぬなりゆき」とは、どういうことですか。

e: 「なりゆき」の意味は分かりますよね?

F: 「なりゆきにまかせる」なんていいますからね…

e: 簡単に言えば、”雲行きが変わってきた”

F: 「思わぬ」がそうですね。

e: 思ってもみない方向に…

F: 真理子のお母さんの”雲行き”が

e: ”怪しく”?なってきたということでしょう。

F: 今まで”晴れていた”のに”曇ってきた”

e: ”低気圧”の到来?

F: ”友好的関係”から

e: ”敵対的関係”に?

F: ”平和的なムード”から

e: 「ピョコタン」で一変して

F: ”険悪なムード”に……

e: 「あなたがオッチね」

F: 「真理子のおかあさんがニコニコしながらいった」から

e: ところが、「あまり危ないことは教えないでね」とチクリ!

F: 「ハンバーグなんかあまり食べたことがなかったので、とてもうれしかった」

e: で、思わず「オッチはいい気持ちになり、ピョコタンといった」!

F: 不用意に…

e: それも、何度も言ってますからね……

F: 「ピョコタンというのはどういうことなの!」

e: 「?」じゃなく、「!」ですから!

F: 「おばあさん、かんべんしないからね」

e: 「オッチは思わぬなりゆきに身がすくみ、声も出なかった」

 「なぜ答えないの!強情な子ね」

 「やめて、おかあさん」

 真理子がいった。

 「真理ちゃんはだまってなさい。この子にだまされているんだから」

 「オッチは真理子をだましてなんかいないわよ」

 真理子はおかあさんに抗議して泣きだした。

 「からかってもいないわ。オッチは真理子のことが好きなんだから」

 「じゃあ、どうしてピョコタンなんていうの?」

 「真理子がぴょこたんぴょこたんと歩くからよ。いいじゃない。真理子はぜんぜんはずかしくないわ。それにオッチがいうんだったら、真理子は何ていわれたって平気なのよ」

 「どうして?」

 真理子は体をふるわせて抗議した。

 「足がわるいのは真理子よ。おかあさんじゃないわ!」

 「おかあさんだって真理ちゃんと同じ気持ちなのよ。おかあさんが真理ちゃんの足のことをぜんぜん気にしてないとでも思ってるの?」

問 「おかあさんだって真理ちゃんと同じ気持ちなのよ」とありますが、「おかあさん」と「真理子」の、それぞれの気持ちの違いを答えなさい。

e: 親の気持ちは子は解らない!

F: 同じく、子の気持ちは親は知らない!

e: 「足がわるいのは真理子よ。おかあさんじゃないわ!」

F: 「おかあさんが真理ちゃんの足のことをぜんぜん気にしてないとでも思ってるの?」

e: 「ちがうわよ。もう足のことはほっといてといってるのよ」

F: 「真理子は足はわるいけど、普通の人とどこもかわっていないんだから」

e: 真理子のおかあさんは”バリアフリー”的発想?

F: 真理子は”ノーマライゼーション”的考え?

e: そこまでは解りました。さて、どう書けばいいかですね。

 「ちがうわよ。もう足のことはほっといてといってるのよ。真理子は足はわるいけど、普通の人とどこもかわっていないんだから」

 「真理ちゃんはまだ子どもだから分からないの」

問 「真理ちゃんはまだ子どもだから分からないの」とありますが、これはどういうことですか。

 オッチは二人のいい合いをきくのも、真理子が泣くのを見るのも、真理子のおかあさんにしかられるのも、みんないやだった。オッチが帰るよというと、真理子は泣いたままでごめんなさいごめんなさいといったが、おかあさんは二度とこないでといった。

 オッチは走って真理子の家を出た。そしてそのまま自分の家まで走りつづけた。走っているうちに、なぜかなみだが出てきて止まらなくなった。

問 「走っているうちに、なぜかなみだが出てきて止まらなくなった」とありますが、この時の「オッチ」の気持ちを答えなさい。

 口惜し涙ばかりではなかった。

 真理子がおかあさんといい合いをしているときに<オッチは真理子のことが好きなんだから>といった言葉を思い出したのだ。
 オッチはあまくせつない気持ちになり、そのためのなみだも流したのだった。

問 「走っているうちに、なぜかなみだが出てきて止まらなくなった」の「なみだ」、「口惜し涙」の「涙」、「オッチはあまくせつない気持ちになり、そのためのなみだも流したのだった」の「なみだ」のそれぞれの違いを答えなさい。

e: 二つの「なみだ」はひらがなですね。

F: もう一つの「涙」は漢字で書かれています。

e: ”違い”はあるんですか…

F: 前に、「オッチはあわてて真理子のそばへ行き、手をにぎってやった」の「にぎって」はひらがなですね。

e: ところが、「まもなく真理子は、オッチが手を握っていてやれば、バタ足で前に進むことができるようになった。」の「握って」は漢字ですね。またどうして?作家の”気まぐれ”?

F: じゃないでしょう!もちろん、それぞれ理由があって

e: ”使い分け”ている!?

F: 「ひらがな」だったのがカタカナになったり、とか…「設問」になったりもします。

e: 「なぜカタカナになったのですか」とか?

F: 「なぜカタカナなのですか」とか?

 しかし真理子とはもう学校がはじまるまで会えないだろうなと思った。夏休みはまだ二週間も残っていた。

問 「夏休みはまだ二週間も残っていた」とありますが、この時の「オッチ」の気持ちを答えなさい。

e: プロレタリア無産階級とブルジョア有産階級?

F: 「おばさんはね、あんたが真理ちゃんにやさしくしてくれているときいたから、ごはんを食べさせてあげたり、ジュースをあげたりしたのよ」

e: こんなこと言われたオッチは傷つきますよね。

F: 「この子にだまされているんだから」ともいってます。

e: オッチの心は”踏んだり蹴ったり”され無惨な形に歪んでしまったでしょうね…心中を察します。男として……

F: 庶民と資産家の

e: 意識のズレ?

F: 感覚のギャップ?

e: オッチと真理子の間ではまだ感じないが…

F: ところが、真理子の母親が

e: ”介入”してきたことがちょっとした”きっかけ”になることがあるんですね…

F: ”格差”の芽生えでしょうか?

e: ”較差”から始まって?

F: 身分差が意識化に!

e: 子供心に!誰かが言ってましたね。そう言えば。

F: ”差別”の……

e: これも”区別”からまことしやかに始まって…

F: 深層から表面下に…”羨望””いじめ”

e: 無意識から意識下に?”嫉妬””いじめ”

F: 空を飛べるオッチと足の不自由な真理子

e: 庶民と金持ち

F: この二人を登場させることで

e: 海老沢泰久は何を訴えたかった?

F: この物語の主題は何か?

e: テーマですね…『窓際のトットちゃん』

F: また出ました!?

e: やっぱりキーワードは”なみだ”ですか?

F: こっちの”涙”ではなく……?

 ことを理解できなかったオッチ。

原作とはちょっと内容は異なるがそれも愛嬌かな。画一的で事なかれ主義的な学校、価値観を押し付ける大人達が上手く描かれていて小学生の子を持つ親として「ある!ある!」と共感したりわが身を反省したり。(by きょんきょんぶ-)

集合的無意識は閉鎖された環境でこそ、より人を傷つけてゆく。

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「空を飛んだオッチ」 海老沢泰久

 ランニングシャツで学校に通う元気な小学生オッチ
 涼しげなワンピースに麦わら帽子に三つ編みの足の悪い女の子マリッペ

 差別と心の交流を正面から深く描く感動作

 「もし目の前に、本当に空を飛べる子が現れたらあなたはどうしますか?

 オッチは真理子とともだちになってから、とても不思議なことに気づいた。どういうわけか毎日がすごく楽しく、その一日が終わると、こんどは翌日になるのが待ち遠しくなるのだった。そんな気持ちになったのははじめてだった。

問 「どういうわけか毎日がすごく楽しく」とありますが、「真理子」のほうはどう感じていますか。

e: 真理子は奇跡的に泳げるようになりました!

F: 真理子は恩人のオッチのそばにやって来ました!

e: そして、オッチの手をぎゅっとにぎりました。これは”感謝”のしるしですか?

F: 目をうるませて、ね。これは”感激”

e: ”感謝””感激”それとも”感激””感謝”?

F: その真理子の思いに応える形でオッチもぎゅっとにぎった!

e: ”合格発表”の風景とダブります。

F: 真理子の喜びは、また

e: オッチの喜びでもある訳ですね。

F: 喜びを”共有”した瞬間でしょう!

e: オッチの気持ちは分かりました。

F: では、真理子はどう思っていたでしょうか?

e: それが問いですね。

F: 初めはどう思ってました?

e: 「真理子、足がわるいから泳ぎなんかできっこないとずっと思っていた」

F: と言うと、オッチが

e: 「できるさ」

F: 「やろうと思えば何だってできるんだよ」と答えています。

e: 力強い”お言葉”でした。

F: おもいっきってやれば”できた”

e: 怖れずにやってみたら、ですね。

F: それはうれしいでしょ!

e: そして適切なアドレスをしてくれたオッチに

F: 感謝。そこでオッチに対して真理子に芽生えたものは?

e: ”萌”ですか?それはオッチに芽生えたものと異質のもの?

F: オッチに対し、”何”を感じたか、ですね。

 オッチは自分のその不思議な経験について、何度も真理子に話してきかせようとした。真理子がどう感じるか知りたかったからである。しかしいざとなると話しだせなかった。それも不思議だった。感じていることを口に出すだけのことなのに、それができないのだ。オッチはわけが分からずに、自分の気持ちを持てあました。

問 「感じていることを口に出すだけのことなのに、それができない」のはなぜですか。また、「オッチはわけが分からずに、自分の気持ちを持てあました」とは、どういうことですか。

e: これが書けるようになれば…麻布は受かる?

F: 手をにぎると言えば…

e: 今江祥智の『ぼんぼん』でっしゃろ?

F: 麻布の昭和61年の問題。

e: 少女の方からにぎった!?

F: 「少女のほうからさっさと洋の手を握った」
e: 帽子のお礼に、ね。

F: 「目をうるませてオッチの手をぎゅっとにぎった」

e: 「目をうるませて」ね…男の子、いや男はこういうのには”弱い”ですね。

F: 何か”勘違い”?をしてしまう?

e: ”恋愛は美しい誤解”?今風に言うと”恋愛はギャップ”!

F: ”恋愛は誤解から始まり、誤解で終わる”?

e: オッチはこの時、”気持ち”が空を飛んでます。

F: 浮遊感、浮揚感?

e: 「何だかとてもおかしな気分で、胸のあたりに熱いものがこみ上げてきた」

F: 「おかしな気分」「熱いもの」

e: 「オッチはわけが分からずに、自分の気持ちを持てあました」

F: 「感じていることを口に出すだけのことなのに、それができないのだ」

e: 「感じていること」はさて”何”?

<青春で最も大切なのは友情と恋愛である-亀井勝一郎-愛の無常について>

<相愛とは片思いにまきこまれることである-同-恋愛論>

<恋愛は美しい誤解である-同-愛の思索>

<愛は知である-同-青春の思索>

直木賞作家、海老沢泰久の同名小説を映画化。空を飛ぶ力を持った少年が、その能力の特殊さゆえに思わぬ騒動に巻き込まれていく。約20年前の原作になるが、いじめの根本を見据えた物語は、むしろ現在の方が痛烈に胸に迫りくる。大人にも子供にも大切なメッセージを届けるファンタジーだ。空を飛べるようになった小学生のオッチは、祖母の忠告でその能力を隠し続ける。ところが同級生にバレ、学校や村の大問題になり……。

 ・オッチの祖母:「ほかの人には言っちゃいけないよ」

 ・オッチの担任里子先生:「あなたはいったいなにものなの」

 ・校長先生:「あってはならないことは…あってはならないのです」

 ・まりっぺの母:「ひとりの子供のためにみんなが迷惑をしてもいいんですか」

オッチは小学5年生で祖母と二人暮らし。ある日、メジロ捕りに行くとオッチはうっかり、大きな木から落ちるのだが、不思議なことにかすり傷ひとつ負わなかった。地面にぶつかる直前で、なぜか体がふわりと浮いたのだ。オッチは大喜びで祖母にそのことを話すと「人には決してそんなこと言ってはいけない。人前で飛んでもいけないよ。約束」といわれてしまい、しょげるが、内心は飛びたくてしようがないオッチは体育の授業でちょっとその力を試してみた。すると、先生もみんなも驚き、バスケの選手にも選ばれてしまった。町の対校試合でも大活躍した。オッチはすっかり英雄になってしまった。
そんなある日、空を飛んでいるところを同級生のキヨシに目撃されてしまった。キヨシはいんちきだって騒ぎ立てた。初めは信じなかったみんなも、本当だとわかるとオッチのことを気味悪いとか宇宙人とか言い始めた。ところが、クラスでただ一人だけオッチのことをうらやましいと言ってくれたのがまりっぺだった。彼女は足が不自由で思うようには歩けない。体育の授業も初めから見学に回された。
夏休みになると、オッチとまりっぺは一緒に昆虫採集をしたり川で泳いだりした。こんなに楽しい夏休みは初体験だった。そんな幸せなひとときもあっと言う間に過ぎててゆき、まりっぺのお母さんもオッチのことを警戒して、娘に近づかないでほしいと言ってきた。やり切れない哀しみの奈落に突き落とされたオッチ。
そして、夏休みが終わって間もなく、事件は起きたのである……。

思春期を迎えるこども達の自己の能力に対する疑問や戸惑い、或いは人に対する羨望・嫉妬という複雑な人間の感情を、主人公オッチが空を飛ぶというファンタジーの世界を借りて描いた作品です。
現代を生きるこども達へのメッセージ。

だんだん早まる思春期の中、子どもたちが生きていく上で必ずぶつかる戸惑いや言葉にならない心の痛みなどを人形劇でとても大切に表現できたらと願っています。
(by 「新しい子どもと生きる」脚色/東口次登より)

子供たちがほんらい持っている無限のの可能性と、それを閉じ込めてしまいかねない大人たちをチクリと風刺した。

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「空を飛んだオッチ」 海老沢泰久

【BOOKデータベースより】

オッチは小学校5年生のごく普通の男の子だった。メジロ捕りに山々へ登ったある日、その彼に信じられないことが起きた。細い枝から足を踏みはずした瞬間、体が宙に浮いたのだ。自分が空を飛べることを発見し、オッチは歓喜するが、そのことを知ったおばあさんに、人前で絶対に飛んではいけないと、厳しく言いつけられた。しかし、その約束を守ることはできなかった。そしていろいろな事件が起きるのだった-。傑作長編小説、待望の文庫化。

 オッチ(ひろし):父はいない。母は都会へ働きに、祖母と茅葺き屋根のの下、二人で暮らす。小柄で、愛嬌のある顔付き。まりっぺを川で泳ぎを教える時の表情はとてもハッピー。

 まりっぺ:体育の時間、いつもみんなから離れて見学している女の子。三つ編みの先には白いリボン。涼しげなワンピース、ほっそりして色白。お家は医者で、オッチが訪ねた時、ショートケーキにジュースが出てくるという、紛れも無いお嬢様。

【これまでのあらすじ】

 オッチは空を飛べる。夏休みのある日、同じクラスの、足が悪い真理子に、オッチが飛んでいるところを見られてしまった。しかし、ほかの子どもとちがい、真理子はオッチと自然に接するので、二人は仲良くなった。

 二人はそれぞれの家に帰るために立ち上がった。真理子が歩きだすと、足を引きずって歩くために体がぴょこたんぴょこたんと揺れた。オッチは真理子の前にまわり、その格好を真似て歩いた。真理子が笑いだした。オッチは真理子のほうを振り向いていった。

 「これからは真理子って呼ばないよ」

 「何て呼ぶの?」

 「ピョコタンって呼ぶのさ」

 真理子はまた笑いだした。

問 「真理子はまた笑いだした」のはなぜですか。

e: 「空を飛んだオッチ」 ですか!?

F: 海老沢泰久です。

e: 前回同様、映画の方が有名に?

F: 倍賞千恵子が出演していました。

e: 「空を飛んでなぜ悪い!?」

F: 「ほんとうはみんな空を飛びたいんだ」

e: 飛騨の山々を背景に空を飛ぶ力を持った少年の喜びと哀しみを描いたんですね。

F: ノンフィクション作家として知られてます。

e: 初っ端から難しいですね……

F: 真理子は足がわるいです。

e: そんな真理子に対してどんな風に接していますかね、オッチは?

F: ヒントは<これまでのあらすじ>に書かれてますよ。

e: <これまでのあらすじ>は意外と重要だという話は前回しました?

F: 最後の問いだったです。

e: そこに書かれている言葉を使えばいいんでしょう?

F: 後半の場面で、おかあさんと真理子は口論しています。

e: その内容から解りますね。

F: 「ピョコタンというのはどういうことなの!」とおかあさんは怒っています。

e: オッチはぜんぜんわけが分からなかった!
F: それ対し、真理子は「わたしがぴょこたんぴょこたんと体をゆすって歩くからよ、おかあさん。それがどうかしたの?」

e: 全く動じない!

F: 「どうかしたのって、真理ちゃんはそんなこといわれて平気なの?」

e: この母娘の”やり取り”はよく解りますね。

F: 真理子は”ピョコタン”とオッチに呼ばれても

e: 意に介しない?

F: オッチが自分の歩き方を見て付けたあだ名を真理子は何とも思っていないことが理解できます。

e: これは、相当、後まで読まないと解りませんね。”パス”問題ですか?

F: すぐに思い付きや

e: 思い込みで書かない!

F: 前にも言いましたが、初めの問いは

e: ”曲者”!?さあ、どう書きますか?

 二人はそれから毎日、学校のプラタナスの木のところで会い、あちこちへチョウをつかまえに出かけた。

 ちょうどその日もチョウをつかまえることができなかった。オッチはイライラしたので、シャツと半ズボンを岸にぬいで大川に飛びこんだ。

 「ピョコタンもこいよ。すごくいい気持ちだぞ」

 真理子は岸の上で首をふった。

 「泳げないもん」

 「教えてやるよ」

 「無理よ」

 「だいじょうぶさ。ほら、こんなに浅いんだから」

 「こいよ、ピョコタン」

 「いやよ。こわいもん」

 「ちゃんと手をにぎっててやるからこわくないよ。はずかしいのか?」

 「はずかしくなんかないわ」

 真理子は口をとがらせて抗議した。

 「もう一度向こう岸まで泳いでみせてよ」

オッチはよしきたといって、向こう岸に向かって泳ぎだした。」

 やがてオッチはもとの岸に泳ぎつき、真理子の賞賛の目を求めて顔を上げた。

 「どうすればいいの?」

 「まず水に慣れることがたいせつなんだ」

 とそこでオッチはいった。そして、そのためには、水の中に頭まですっぽりつかることを何度もくり返すのが一番いいことを説明した。

 「やれるか?」

 真理子はオッチの目を見つめてコックリとうなずいた。

 「よし、じゃあはじめよう。おれもピョコタンの手をにぎって一緒にもぐるから心配ないよ」

 「いまピョコタンは、ここからそこまで一人で泳いだんだよ」

 「ほんとう?」

 真理子は水の中でジャンプした。

 「ほんとうに一人で泳いだの?」

 「ほんとうだよ」

 とオッチはいった。

 「もうこれからは、いくらだって一人で泳げるよ」

 真理子はオッチのそばにやってくると、目をうるませてオッチの手をぎゅっとにぎった。
オッチもぎゅっとにぎった。何だかとてもおかしな気分で、胸のあたりに熱いものがこみ上げてきた。

問 「目をうるませてオッチの手をぎゅっとにぎった」時の「真理子」の気持ちを答えなさい。

e: 「目をうるませて」ね……

F: 「手をぎゅっとにぎった」のはなぜ?

e: 「真理子、足がわるいから泳ぎなんかできっこないとずっと思っていたの」と直後に言ってます。

F: それなのに、”泳げた!?”

e: 正に真理子にとって奇跡!『窓際のトットちゃん』を思い出しました。

F: 泰明くんを木に登らせた場面でしょう。

e: ”トットちゃん”も”オッチ”も

F: ”飛んでる”!?

問 「何だかとてもおかしな気分で、胸のあたりに熱いものがこみ上げてきた」から「オッチ」の「真理子」に対する気持ちを答えなさい。

e: 問いは繋がってきますね。

F: 奇跡的に泳ぎができるようになった真理子は

e: 目をうるませてオッチの手をにぎりました。

F: そして、直後に「真理子、足がわるいから泳ぎなんかできっこないとずっと思っていたの」と

e: 真理子が”ふるえる声”で言った。

F: それに答えて、オッチは「できるさ」

e: 「やろうと思えば何だってできるんだよ」と言いましたね。

 「真理子、足がわるいから泳ぎなんかできっこないとずっと思っていたの」

 真理子がふるえる声でいった。

 「できるさ」

 とオッチはいった。

 「やろうと思えば何だってできるんだよ」

「空を飛んだオッチ」海老沢泰久角川文庫

海老沢泰久(えびさわやすひさ、1950,1,22-)茨城県出身の小説家、ノンフィクション作家。
國學院大学文学部卒。國學院大学折口博士記念古代研究所勤務のかたわら、1974年に『乱』で小説新潮新人賞を受賞してデビュー。
79年、ヤクルトの監督として優勝を成し遂げた広岡達朗をモデルにした『監督』を初の著書として上梓、話題を呼んだ。
1988年にホンダF1(第1期~第2期前半)を取り上げたノンフィクション『F1地上の夢』で新田次郎文学賞を受賞。
1994年には『帰郷』で第111回直木賞を受賞した。

「空を飛んだオッチ」海老沢泰久

表「空を飛んでなぜ悪い!?」

裏「ほんとうはみんな空を飛びたいんだ」

飛騨の山々を背景に空を飛ぶ力を持った少年の喜びと哀しみを描いた。

監督 澤村正喜 出演 倍賞千恵子

直木賞作家、海老沢泰久の原作を映画化した、ファンタジックな人間ドラマ。

ある日、空を飛べるようになった少年が、周囲の差別や偏見の目と戦いながら、足の不自由な少女との交流を通して成長していく姿をハートウォーミングに描き出す。

 オッチが空を飛ぶことが知れ渡った後の体育の授業での出来事。
里子先生が、あなたは飛べるんだからやっても仕方ないでしょう。あっちいって休んでらっしゃい、みたいなことを言う。オッチ離れしぶしぶみんなと離れて日陰へと移動する。
 ショックを受けたのは、オッチが飛んでしまったことで、普通の行動も許されなくなり、さらにオッチは反発することもなく受け入れwてしまうこと。オッチがみんなと離れていくにしたがい、だんだんとオッチに感情移入してしまう。
みんなとは離れたところにに、前から居たのがまりっぺ。それまでは、体育の授業で、時々そういう子がいるな、絵に描いたような薄幸の美少女だ、みたいな感じで見ていたが、オッチがまりっぺのところに行って初めて、まりっぺの気持ちを考え出すきっかけになる。
ところがよくしたもので、オッチとまりっぺはお互いの疎外感や哀しみを理解していき、それに合わせてるかのように二人のことが少しずつ解るようになってきた。

小学5年生のオッチはある日、自分には空を飛ぶ力があることに気が付いた。そのことを祖母に打ち明けるが、他人に打ち明けることを禁じられてしまう…。(by チラシコレクションより)

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国語専科-『人びとの忘れもの』-中学受験家庭教師

 私の家から歩いて十五分のところに、武蔵野の面影を残した雑木林がある。六年前の秋、その雑木林で、私の次女が年老いた[妖精]に出会った。そのとき、シホは小学三年生だった。
「ほんとよ。ぜったい、いたんだからあ」

 十月半ばの午後、近所の友だちが飼犬の運動に行くのに付き合って、シホは林に行ったのだそうだ。

 すると、いきなりシホの眼前に、その[妖精]が現れたのだそうだ。

 一本の木が地面の上から曲がって、地をはうように伸びている---その幹に、小柄なおばあさんが、ちょこんと腰かけていた。こげ茶色の大きなショールに包まれて、膝の上には太い編み棒と毛糸の入った手提げ籠があった。

 髪は真っ白、小さな顔も真っ白で、子供のようなくりくりした黒い瞳がじっと娘をみつめていた。そのからだがあまり小さいので、長めのスカートからのぞいている黒靴の爪先が地面から高く離れていたそうだ。

 シホは立ちすくんだ。意外なところにおばあさんがいたのだから、それだけでも驚くのは当たり前である。ところが、おばあさんのようすを観察しているうちに、シホは震え上がってしまった。

 ---いけない。このおばあさん、きっと[妖精]だわ。目を見合わせていると、魔法をかけられちゃう。

 とっさに、シホは伏目になり、足もとだけを見るようにして、そろそろと後ずさった。

 「それは、よかった。実に適切な判断だった。非常に沈着な行動だったぞ」と、私は娘にいった。

 小学三年生の娘は、父親のまじめな反応に大いに満足したようだった。そばにいた妻は、笑いを含んだ目つきで、娘と私を見比べていた。

問 「そばにいた妻は、笑いを含んだ目つきで、娘と私を見比べていた」とありますが、この時の「妻」の気持ちを答えなさい。

e: 「3者」の気持ちの読み取り?

F: 直接には「妻」の気持ちですが…「娘」や「私」の気持ちの読み取りも当然、必要になってきますね。

e: 「娘と私を見比べて」とありますからね…

F: 「娘」と「私」の説明をしっかりして

e: そんな「娘」と「私」を見比べている時の「妻」の気持ちを推測する?

F: 「笑いを含んだ目つき」ですからね。

《解答例》妖精に出会ったと信じて興奮しながら話す娘と、娘の気持ちを思いやって、傷つけないように話を合わせている「私」をほほえましく見守っている。

 数日後、シホは[妖精]のおばあさんから毛糸で作った親指大の人形をもらってきた。

 「いやだあ、妖精なんかじゃなかったよ。カペナウム病院にいるおばあちゃんだった。どうもおかしいと思ったんだ、あたし」

 小学生の幼い頭でも、童話に出てくる[妖精]が近所の雑木林にいるわけはない、と気づいたわけだ。シホは、[真偽]を確かめに一人で林に出かけたのである。

 [妖精]のおばあさんは、いつかと同じ木の幹に腰かけて、たくさんの小さな毛糸人形をこしらえていたそうである。

 「その人形は、あの林に入りこんだ子供たちかもしれないぞ。魔法で毛糸人形にされたんだぞきっと。油断するな」

問 「その人形は…油断するな」とありますが、この時の「私」の気持ちを答えなさい。

 私がいうと、娘は、けらけらと笑った。彼女の頭からは、すでに意地悪な[妖精]のイメージは消えていたようである。

問 「娘は、けらけらと笑った」とありますが、この時、「娘」が「けらけらと笑った」理由を答えなさい。

e: シホは、[真偽]を確かめに一人で林に出かけたんですね。

F: ”一人”で!?

e: なかなか勇気がありますね…「目を見合わせると、魔法にかけられちゃう」なんて心中思ってますからね…

F: 「父親のまじめな反応」?も手伝って…

e: で、結局「いやだあ、妖精なんかじゃなかったよ。カペナウム病院にいるおばあちゃんだった」と判明したんだ!

F: シホはおばあさんの”正体を”

e: バッチリ掴んでいるからこそ

F: 真相を確かめていますから”心のゆとり”ができ

e: 気持ちに”余裕”ができた?

F: 父親のユーモアが理解できたというわけですね。

e: 父親が冗談で自分をからかっているんだあ、と。

F: そのあたりをうまくまとめればいいでしょう。

 脳卒中のため手足が不自由になっているという。いつも編んでいる毛糸人形は、リハビリテーションの一種なのだろうか。とにかく、一個完成するまでには、正常な人の五倍も時間がかかるのだそうだ。

 シホはおばあさんに会いに、雑木林に日参するようになっていたのである。帰宅したシホの髪の毛から、雑木林の枯葉の甘いにおいがただよっていた。

問 「帰宅したシホの髪の毛から、雑木林の枯葉の甘いにおいがただよっていた」とありますが、この時、「私」はどんなことを感じていましたか。

e: なかなかいい表現ですね。

F: 「髪の毛から、雑木林の枯葉の甘いにおいが」

e: 「甘いにおい」ね……

F: 「『甘いにおい』という表現に気をつけて、説明しなさい。」というのが『麻布』の設問です。

e: 「甘いにおい」って一体”何”ですか?

F: ご参考にK社の『解説』を!

 「シホが妖精とまちがえたおばあさんとの出会いをおさえる。つまり、シホが遊びに行く雑木林は、妖精の住むメルヘンの世界を思わせる場所なのである。現実の世界に住んでいる『私』にとってその場所は『甘いにおい』のする別世界である。」

e: で、『解答』は?

F: 「妖精とかんちがいしたおばあさんに会いに、雑木林に行く娘の行動を、物語の世界のようにほほえましく感じている。」

e: そうかな?”シホ”と”おばあさん”の関係じゃないかな……

F: 主人公シホと状況との関係?

 十一月に入って、空気が冷たくなっても、シホは雑木林へ行くのをやめなかった。学校から帰るとすぐに自転車を駆って出かけた。

問 「十一月に入って、空気が冷たくなっても、シホは雑木林へ行くのをやめなかった」のはなぜですか。

 「だってえ、あたしが行かないと、おばあちゃんは泣きたくなるんだそうだもん。いつも、明日も来てね、ってゲンマンするんだよ」

問 「だってえ、あたしが行かないと……明日も来てね、ってゲンマンするんだよ」とありますが、「おばあさん」がそれほどシホを心待ちにするのはなぜですか。

 「どんなお話をするんだい」

 「そうねえ。あたしが学校で習ったこと。……それから毎日大連っていう遠い町のこと。ずうっとまえ、おばあちゃんは、そこに住んでいたんだって。……それからねえ、二人でおやつを食べるの」

 実は、その頃、妻の父も脳卒中で倒れていたのである。

 「おばあちゃんがねえ、こんなにおいしいお菓子を作ってくれるお母さんに、ぜひお会いしたいねえって。足が治ったら、きっとお礼にうかがいますって……」

 「そうねえ。そのうちお母さんがごあいさつに行かなくちゃね。シホちゃんがとてもかわいがっていただいてるんだしねえ」と妻は遠くを見る目をしていった。

問 「『そうねえ。そのうちお母さんがごあいさつに行かなくちゃね。シホちゃんがとてもかわいがっていただいてるんだしねえ』と妻は遠くを見る目をしていった」のはなぜですか。

e: 「遠くを見る目」ね。よく出る設問でしょう!?

F: ところが、意外とできは良くないんですね……

e: ”遠くを見る”っていうのは大人の感覚ですかね。

F: お子さんが”遠くを見る目”をしたら……

e: 最近、おませなお坊ちゃんが多いですからね……

F: 「漫画」の影響ですかね……

e: 実体験ではなく

F: ”ヴァーチャル体験?”

e: 病父を心配する気持ちと

F: おばあさんを気遣う気持ちが

e: ”想いを馳せる”なんて感覚は……

「小さな手袋」

作者:内海隆一郎 

1937(昭和12)年愛知県生まれ。小説家。3歳から20歳まで岩手県一関市で過ごす。立教大学卒業。
1964(昭和39)年婦人雑誌出版社の編集者となり昭和40年代の初めから小説の執筆を試みる。
1968年暮れに書き上げた処女作「雪洞にて」が第28回文学界新人賞を受賞する。
受賞後第一作の「蟹の町」が第63回(昭和44年下期)の芥川賞候補作となったが落選し、その後およそ15年間にわたって作品を公にすることなく過ごした。
1982年春、日本ダイナースクラブ発行の会員誌への連載を皮切りとして、再び作品を発表しはじめる。
市井の人々に寄せた温かい視線で、読む者の心を揺さぶる「ハートウオーミング」な作品を書き続けている。
主な著書に「人びとの岸辺」「家族の肖像」「みんなの木かげ」などがある。
日本文藝家協会・日本ペンクラブ会員。
埼玉県新座市在住。

出典:『人びとの忘れもの』(ちくま文庫1990年)
この作品集は21編のいずれも人びとの忘れものにまつわる物語を描いている。そこでは、単なる「もの」だけなく、人びとの間にかつては通い合っていた「こころ」も忘れものの一つとして描かれている。

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e:『開成』受験のお子さんはどんな感じですか?

F:2つのパターンに分かれますね。

e:『開成』の『過去問』オンリーのタイプと

F:『開成』+『筑駒』の『過去問』あるいは+『麻布』の『過去問』ですね。e:あと『灘』の『過去問』でしょ。

F:『開成』オンリーのお子さんは宿題に『過去問』

e:実物大のものをそのままね。

F:解説後は『記述』に改題したものを、その場で解かせます。

e:主に『選択肢』問題でしょ?

F:ずっと前に、そうしている理由を書きました。

e:『選択肢』問題も解けるようになり

F:また、『記述』問題も書けるようになるということですね。

e:゛相乗効果゛を狙ってるわけですか?

F:でなければ゛効率゛が悪いでしょう?

e:時間との闘いですからね。

F:週にせいぜい1~2回しか教えないわけですからね。

e:最大限の効率性を追求するんですね。

F:『開成』+『麻布』のパターンは前にも書きました。

e:ところが、「そんなことはとてもじゃないですが、できません」なんて、メールがきましたね。

F:10年間の『過去問』は手に入りますから。

e:夏休みあたりに少し手掛ければいいんじゃないですかね。

F:『開成』は'01に『記述』になりました。

e:『記述』は8年分になりますか?

F:まあ、8年分やれば十分だと思うか

e:まだ足りないと思うかの違いでしょうね。

F:『開成』は’何’がでるか解らないですから

e:不気味ですよね。

F:その’何’が

e:くせ者?ってわけでしょう!

F:’万全’をきす意味で

e:これで十分、というわけにはいかない学校なんですね。『算数』もしかりですね。

F:『過去問』を30年分やっても心配だなんて

e:実際、受験したら

F:そんなにやらなくても

e:’受かった’なんてね。

F:そんな感じをするんでしょうね。

e:実際にそれだけやってるから、

F:そう言えるんですよ。

e:まあ、落ちれば「もっとやっておけばよかった」

F:この゛違い゛は大きいと思いますね。

e:『合格』と『不合格』の゛差゛は

F:天と地の゛差゛くらいに大きいでしょう!

e:結局、゛量゛もさることながら

F:『御三家』レベルになるとプラスαの部分が大きくものをいうわけなんですね。

e:゛量゛はみんな同じくらいやるわけですけど

F:どうして、受かる人数より

e:落ちる人数の方が倍以上に多いか、ということですね。

F:『合格体験記』の中には

e:その゛アルファ部分゛は書かれてませんからね。

F:゛微妙゛に書きませんから。

e:「一応、やりました」

F:「みんなと同じように」

e:先輩の゛体験記゛をマネて?

F:『感想文』でもインターネットで

e:悪いことばでいえば゛パク゛れる時代ですからね。

F:教えてもらった先生の名前だけ変えて。

e:苦労して゛受かって゛、

F:その゛秘密゛をあかす

e:お子さんはそうはいませんね。

F:お子さんというより

e:親御さんですかね。

F:そのあたりの゛心理゛は前に書きました。

e:゛心の広い゛お子さんや親御さんは昔はおりましたけど

F:今は、そういうことは書かなくても

e:゛ノウハウ゛(?)本はいっぱい出てますしね。

F:゛ブログ゛もありますから。

e:゛本音゛で語ってるものもあるみたいですが。

F:どこまで゛本音゛か

e:疑わしいのも結構多い?

F:話は戻って

e:『開成』の『過去問』と

F:『麻布』の『過去問』の併用してるお子さんの例ですか。

e:まさか、『麻布』の『過去問』を端から端までやってるわけはないでしょう?

F:まず、時間がないですね。

e:で、どうやって?

F:その年度の゛最後の問い゛だけやってます。

e:いわゆる『合否』問題ですか?『開成』の『過去問』をそのままやって、『記述』に『改題』したものを次にやって、さらに『麻布』?

F:じゃないですよ!

e:えっ!

F:『麻布』の『過去問』をやるお子さんは

e:解りました。『開成』の古い『過去問』は『記述』じゃないから

F:それをやらないで

e:『麻布』の古い『過去問』をその代わりにやってるんですね。

F:ですから、二つに分かれると

e:なるほどね。

F:大昔は『麻布』の『過去問』全部を解いた教え子もいましたよ。

e:今は昔の話ですか?

F:そこまでやらなくても受かるようになったんですね。

e:そこまでやるのは『灘』を受けるお子さんくらいですかね。

F:『灘』+『開成』+『筑駒』

e:+『麻布』?

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河瀬直美 「萌の朱雀」



【MARCデータベースより】

恋しい人を想いながら、悲しみを抱えながら、幾千年も前の人たちも、あの山を見つめていたのだろうか。奈良の山村に暮らす家族。その静謐な日常をとおして、少女は受け継がれていく生の意味を知り始める。映画作品の小説化。




 父を失ってしまった後の私たちの中で、よく考えてみれば一番冷静なばあちゃんが、実は一番深い悲しみを抱えているのではないか……。
 私たちは全員、父の死によって必然的に自分を見つめなおすことを余儀なくされた。
 それまで思いつめることもなくやりすごしていた自分のある部分を、今つきつめて考えなければ存在さえ危ういことに身をもって気づかされた。
 確かでない自分には、何に対しても、何もできないことがわかりはじめた。そして自分が誰かや何かを大切にできないことを棚に上げて、確かに救ってもらいたい気持ちでいっぱいになる弱さも知った。
 だからこそばあちゃんのいつもと変わりない態度の奥には、自らに対する厳しい強さと、私たちに対する深い愛があるのだ。

 私はそんなばあちゃんに対して、返事をすることさえもできなかった自分を後悔した。



問 「返事をすることさえもできなかった自分を後悔した」とありますが、「私」が後悔するようになったのはなぜですか。



e: これは「父を失ってしまった後の私たちの中で」から

F: 「私たちに対する深い愛があるのだ」まで

e: ばあちゃんの気持ちについて

F: 「私」がどのように考えているのかが書かれてます。

e: 自殺した「私」の父はばあちゃんにとっては最愛の息子でしょう?

F: その息子を失ったわけですから……

e: ”悲しみのどん底”に今いること

F: 「私」は少しは気づいたのでしょうか?

e: 顔や態度に出さない分、どれだけ深い悲しみを味わうているか…

F: 「ばあちゃんのいつもと変わりない態度の奥には」

e: 「自らに対する厳しい強さと、私たちに対する深い愛があるのだ」ということに気づいた?

F: 「一番深い悲しみを抱えている」にもかかわらず

e: 「自らに対する厳しい強さ」と「深い愛」があることを知った。

F: ”家族愛”を強く感じたことで

e: 「何もなかったかのようにごく普通に」

F: 「どうしていつも何に対しても冷静で落ち着いていられるのだろう」

e: で、苛立ちさえ覚えていますね。

F: そういったばあちゃんにとった自分の態度を後悔したということですね。

e: 要するに、ばあちゃんを”誤解”してたんでしょ!しかし、十八歳の女性でばあちゃんの気持ち、解りませんかね……

F: 意外と”身内”の気持ちは理解できないんでしょうか?

e: ”灯台もと暗し”?

F: 気持ちの”読み取り”はやはり難しい?

e: 今は同居してないケースが多いですから

F: ますます読み取れない?

e: 生きてきた時代も違いますし

F: 当然、価値観も違ったりしますからね…

e: ところが、入試では”祖父母”が絡んできますからね…

F: ”祖父母”は物語の”主題”にも

e: ”影響大”!?

F: のこともあります。

e: しかし、この物語のように同居が

F: 必ず有利とは言えません。

e: ”灯台下元暗し”!?

F: ”もともと”ね……



 ばあちゃんと栄ちゃんは縁側で静かに月を見上げていた。

 「泰代ちゃんを実家に帰したろぅ思うんやけどぇ……」

 ばあちゃんはたんたんと話していた。

 栄ちゃんは幼き日に、自分の父や母とは別れて暮らしてきた。


 「どう思うで?」

 「うん」


 静かな月夜に、私の心の声は大きく、かかえきれないほどに多かった。



問 「私の心の声は大きく、かかえきれないほどに多かった」とはどういうことですか。



e: これ、書けますか……?

F: どうでしょうか?

e: どういう場面ですか?

F: 「泰代ちゃんを実家に帰したろぅ思うんやけどぇ……」とありますね。

e: ばあちゃんが言っていますから

F: 「泰代ちゃん」は「私」の母です。

e: そこまでは解ります。

F: 「私」の母を実家に帰そうか、という話を「栄ちゃん」としています。

e: で、「どう思うで?」とまたばあちゃんはたずねてます。

F: 栄ちゃんは一言「うん」と帰しただけですね。

e: 「心の声」とは?

F: 大きく、かかえきれないほどに多かったとは?

e: ”ヒント”はあるんですか?

F: この後に、「自分は父の代わりを務めて皆を守る者になるのでなく、自分なりの自分しかできないやり方で、皆と共に生きてゆくのだということが、わかり始めていたのだった」とあります。

e: 「ばあちゃん」、「私」、そして「栄ちゃん」

F: 「私」たち家族は?

e: それぞれの……

F: 心の持ち様は?有り様は?




「映画、それは人生に似ている」河瀬直美

「映画を作るって本当に大変なこと。それは人生に似ています」
「私たちの人生にはたくさんの困難がある。お金とか服とか車とか、形あるものに心のよりどころを求めようとするが、そういうものが満たしてくれるのは、ほんの一部。目に見えないもの---誰かの思いとか、光とか風とか、亡くなった人の面影とか---私たちはそういうものに心の支えを見つけたときに、たった一人でも立っていられる、そんな生き物なのだと思います」(パレ・ド・フェスティバルでのスピーチより)


エラソー二の河瀬直美評

カンヌ国際映画祭で最優秀新人監督賞を獲得した作品を、監督自らが小説化したものである。失礼な言い方かもしれないが、映画のストーリー本として読んでしまうには、あまりにもったいない、いい小説である。過疎地を舞台に、一家族の愛と悲劇を静かに、静かに紡ぎだしている。こんなに静かなのになぜ深い感動が得られるのか、不思議でしょうがない。わらべ唄のようにしみる逸品。(by文弱ダダ・エラソーニの部屋より)






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河瀬直美 「萌の朱雀」



【BOOKデータベースより】

恋しい人を想いながら、悲しみを抱えながら、幾千年も前の人たちも、あの山を見つめていたのだろうか。奈良の山村に暮らす家族。その静謐な日常をとおして、少女は受け継がれていく生の意味を知り始める。
世界が絶賛した第50回カンヌ映画祭カメラドール受賞作。



【これまでのあらすじ】

 父と母(泰代)・祖母に深く愛されて育った「私」は十八歳になっていた。事情があって、いとこの栄ちゃんも家族同様にいっしょに暮らしていたが、突然「私」の父が自殺し、家族は深い悲しみに包まれる。


 父のいない空間は、私たち家族にとってだけ特別だった。



問 「父のいない空間は、私たち家族にとってだけ特別だった」とは、どういうことですか。



e: 今回は河瀬直美ですか!?

F: 映画作家として一躍有名に……

e: 映画監督!そちらの方ばかりに注目されますね……小説もなかなかすてたものじゃない?

F: 「萌の朱雀」は幻冬舎文庫で出ています。

e: 映像では語らず、文章で語る?ちょっと読むと、随筆と思っちゃいますね。

F: ”大人の日記”風?

e: 子供には難しい文章表現の箇所も多々あるんじゃないですか?

F: 「麻布」「駒東」レベル以上では読みこなせるでしょう!?

e: この時期では”半分”くらい読めればいい?

F: 三分のニは読めてほしいですね。

e: できれば……この題名の意図は?

F: ”萌”は芽生えるという意味でしょう。

e: ”萌し”と書いては”きざし”と読みますね。

F: ”朱雀”は南を表す幻獣で夏・正午を意味することもあるみたいですね。

e: 物語は夏から秋ですか?

F: ”萌の朱雀”は”芽生えの夏”

e: ”芽生え”=少女?

F: ”少女の夏”

e: それじゃ”題名”にはならない!?

F: さて、「特別だった」とは?

e: これは簡単でしょう!後を読んでいくだけでかたはつきますね。

F: 後はどう表現するかだけです。

e: 「朝陽はいつもと同じ場所に差し込み」

F: 「何ひとつ変わってなかった」

e: 「新聞を読む父がいない、ということだけをのぞいて」はね。

F: 「同じ時間」「同じ口調」「変わりはない」

e: 「同じ痛み」

F: 繰り返されことばと一回しか出てこないことばがポイントです。



 朝陽はいつもと同じ場所に差し込み、山水は絶え間なく流れ落ちてくる。新聞を読む父がいない、ということだけをのぞいて、まるいちゃぶ台を囲んで私たちが朝食をとっている居間は、本当に何ひとつ変わってなかった。ただ以前よりも、家族の間の会話は少なくなっていた。

 毎朝、同じ時間に同じ口調で繰り返されるテレビの天気予報や、風が吹くと高い音色を響かせる風鈴や、なびく庭の木の葉や、お茶碗の柄も箸の形も、座り込む畳の感触さえも、変わりはない。

 だけど、心の部分にポッカリ開いてしまった穴に対処できず、来たこともない場所にいて、その上行き場もなく、さまよい続ける孤独感を私たちはそれぞれ感じていた。

 近くに、すぐ隣に同じ痛みを持つ者がいるというのに、ものすごく孤独で行き場がない。言葉で語り合ったところでそのような気持ちを確認しあうだけで、何も始まりはしない。むしろ言葉にした分だけ虚しさは一人の夜などにもっと深いものになってかえってくる。


 幼き頃、よく登っていたカミナリの木に腰かけてぼんやりする「私」を、栄ちゃんがむかえにきた。そこで、「私」と栄ちゃんは、いっしょに家に帰ることにした。

 途中、アーチの小道を通りすぎた頃、ふと見上げると見慣れた自分たちの家が闇の中にうっすらと浮かんでいた。私はぼんやりそれを見上げながら、幼き日々を想い返していた。


 すべてが断片でありながらも私の心に確かな絆ようにつながって立ち現れてきた。

 「ちっちゃい時な、この坂よう登られへんくて、栄ちゃん早く帰ってお茶飲みたいから、だっこして登ってくれてたんやんな」

 私は自分自身に語りかけるようになつかしみながら話していた。


 幼き頃と同じように一歩一歩登る栄ちゃんのリズムを体が覚えていたからだろうか?私はさっきよりも鮮明に、幼き頃の記憶を想い起こしていた。そうすると落ち着いていた心が、また一層高ぶって、後から後から涙が込み上げてきた。



問 「後から後から涙が込み上げてきた」とありますが、この時の「私」の気持ちを答えなさい。


e: ”解答要素”は二つですか?

F: 「私はさっきよりも鮮明に、幼き頃の記憶を想い起こしていた」が一つ。

e: もう一つは?

F: 「もういくらもがいても、ありはしないものへの決別の想いからくる涙だったのかもしれない」

e: 要するに、直前、直後を読めば書ける?

F: ”わかりやすく”書くことが大切ですね。

e: さあ、どう書きましょう?

F: 腕の見せどころ?

e: このあたりで”表現力”に差が出る?

F: ”随筆文的”物語文の記述のコツでしょうか?

e: 《解答例》を言ってしまえば……

F: 「な~んだ、そう書けばいいだけなの?」なんてね…



 もういくらもがいても、ありはしないものへの決別の想いからくる涙だったのかもしれない。


 その日は満月にほど近い明るい月の夜だった。母の高熱もおさまっていたのだろう、ばあちゃんは縁側で静かに月を眺めていた。


 「風呂……入りよ」

 と私たちに気付いたばあちゃんは何もなかったかのようにごく普通に言った。私はばあちゃんのそのごく普通の態度に微かな苛立ちを抱いて、返事もせず黙ったまま風呂場へ向かった。ばあちゃんはどうしていつも何に対しても冷静で落ち着いていられるのだろう。私の抱いた苛立ちは、自分にはできないことを、いとも簡単にやってしまえるばあちゃんに対しての嫉妬からくるものだった。ばあちゃんが沸かしてくれたのだろう湯につかって考えをめぐらせていると、結局は自分の情けないやるせなさに立ち返り消えてなくなってしまいたくなる。




「萌の朱雀」

奈良県西吉野村。林業低迷で過疎化が進むこの村で田村孝三一家も代々林業で生計を立てていた。そこに、鉄道を通すためのトンネル工事計画が持ち上がる。鉄道に対する人々の想いは切実で、孝三自身も自らの夢をかけてトンネル開通作業に携わる。
孝三の母幸子、妻の休む、姉の残していった子供・栄介、そして愛娘みちるに囲まれた、つつまやかながら幸せな生活は静かに過ぎていった。しかし、工事は中断され、トンネルは無惨な姿で取り残される。
15年後、孝三は働く気力を失い、一家の生計は、栄介の収入に頼らざるを得ない。みちるは”えいちゃん”と兄のように慕ってきた栄介にほのかな恋心を抱き、栄介は泰代に”母”を重ねて想いをよせる。ある日、孝三は愛用の8ミリカメラを持って出かけたまま帰らぬ人となった。そして一家はそれぞれの哀しみと想いを秘めたままこの地を離れ、それぞれの”生”に向き合いはじめる…。


河瀬直美 「萌の朱雀」幻冬舎
河瀬直美オフィシャルホームページ
1969年奈良市生まれ。映画作家中学時代からバスケットボールに夢中になり、高校在学中はキャプテンを務め、国体出場経験もある体育会系少女だった。1989年大阪写真専門学校(現ビジュアルアーツ専門学校)映画科卒業。自主映画「につつまれて」(1992)「かたつむり」(1994)が、1995年山形国際ドキュメンタリー映画祭はじめ国内外で注目を集める。劇場映画デビュー作「萌の朱雀」(1996)で、1997年カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を史上最年少受賞。「杣人物語(そまうどものがたり)」(1997)で、1999年ニオン国際映画祭特別賞受賞。2000年「火垂(ほたる)」は、スイスのロカルノ国際映画祭コンペティション部門にてワールドプレミアされ、国際批評家連盟賞、ヨーロッパ国際芸術映画連盟賞のダブル受賞、2001年ブエノスアイレス国際映画祭でも最優秀撮影監督賞、主演女優賞(中村優子)を受賞。家族、生と死をテーマに作品をつくり続ける映画作家。




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サリー・ワーナー 「永遠の友だち」



全米で子供たちの共感を呼んだ、ふたりの少女の絆の物語。



命が消えても、永遠の友だちになるために…。


 ケイディはこわばった筋肉をほぐそうとした。まるで、インフルエンザにでもかかったときのようにあちこちが痛む。変なの、とケイディは思った---病気なのはわたしじゃないのに。
 病気なのは、ナナのほう。

 そう、ナナなのだ。

 病気!どうしてこの言葉は、何かが壊れる音のように、あるいは扉に鍵をかける音のように響くのだろう。でも、おぞましい言葉ではあるけれど、病気のせいでわたしとナナの関係はこれっぽっちも変わったりしない。少なくとも、わたしたちは現実的な話もちゃんとできるは---それが、どんなに厳しい現実であっても---いつだって、何があろうと。



問 「病気!どうしてこの言葉は、何かが壊れる音のように、あるいは扉に鍵をかける音のように響くのだろう」とありますが、これはどういうことですか。


 そう確信しながらも、その願いがかなうよう、ケイディは背中の後ろでそっと指を交差させるおまじないをした。


問 「ケイディは背中の後ろでそっと指を交差させるおまじないをした」とありますが、この時の「ケイディ」の気持ちを答えなさい。



e: 母親はナナの病気に真正面から向き合っていますかね……

F: 「病気なのは、ナナのほう」「そう、ナナなのだ」

e: シック!

F: 「病気!」

e: 「病気のせいでわたしとナナの関係はこれっぽっちも変わったりしない」

F: 「少なくとも、わたしたちは現実的な話もちゃんとできる」

e: ケイディの方はナナの”病気”に向き合おうとしていますね。

F: 「それが、どんなに厳しい現実であっても」

e: 現実に迫りつつある”死”という

F: ”死”に直面せざるを得ない現実に

e: 「いつだって、何があろうと」

F: 関係も変わらないし、現実的な話もちゃんとできると確信しています。

e: 「その願いがかなうよう」おまじないをしたんですね。

F: ナナの母親はナナが死に直面していることについて

e: ”対話”を拒んでいますね。

F: この親の気持ち、わからないではないですが……

e: 腫れ物に触るような……

F: できれば、そういう厳しい現実には触れたくない

e: 避けて通りたい?所謂、”現実逃避”ってやつですか?

F: ”逃亡”(?)したいのは

e: ナナ自身であったりケイディであったり……

F: 結局、母親はそういう態度ですから

e: ナナが抱えている”死”に対する悩みを話すことができずにいますね。

F: 一方、ケイディの方は、ナナの”死”に対する思いを素直に受け入れることができています。

e: これができるのは今まで培った友情?

F: ”絆”を感じ取ったんでしょう。

e: ナナとケイディが女の子同士であるにも拘わらず?

F: 深い”友情”で結ばれていると

e: 実感!?”友情”を再認識し再確認した?

F: このままずっと”友情”が続くことを願っています。

e: この当たりがクライマックス?

F: この物語の”テーマ”?



 三週間後、ナナの病状はさらに悪化したけれど、奇妙なことに、ケイディのほうはいままでにないほど活力にあふれていた。

 「どうしてかはわからないんだ」

 「吸血鬼か何かになっちゃったみたいで、なんだか気がとがめるんだけれど。だってね、この家に来るでしょ、じゃじゃじゃ-ん、帰るときにはものすごく元気になってるんだもの!」

 「どうして?」ナナが尋ねた。


 「でも、さっきのはどういう意味なの?うちを出るときには元気いっぱい、って話。ガンなのは自分じゃない、って思うと嬉しくなるから?」

 ケイディは片足のつま先を伸ばし、日焼け具合を確かめた。ナナのほうがもっと日に焼けている。最近ではよく、樹木の生い茂る切り立った斜面をみはらす、細長い木のデッキに芝生用の寝椅子を置き、そこに寝てすごすことが多いからだ。


 「ううん」ケイディはゆっくり口を開いた。

 「ちょっとちがうんだ。自分がああじゃないとかこうじゃないとか、そんなふうに思ってるわけじゃないの。前よりも、いろんなことのありがたみがわかってきたっていうのかな---たとえば、わたしの脚とか」



問 「いろんなことのありがたみ」とは、どのようなことですか。



問 ナナとの触れ合いによって、ケイディはどのよう生き方をするようになると君は思いますか。



e: ナナの容体が悪化しているのにも拘わらず

F: ケイディのほうは元気になっていく?

e: 反比例!?これってどういうこと?

F: 「う-ん、脚そのものじゃないんだけどね。脚のおかげでできること、のほうかな。歩いたりとか、ね」とありますね。

e: これって、”一心同体”っていう?ひとごととは感じられない……

F: 親友のケイディもまるで”自分のこと”のように

e: 自分が病気なかかっているかの如く…

F: 結局、そういったことを経験することによって、ケイディは

e: 物事をどういうふうに考えるようになったか?

F: ”生き方”かな?

e: ”ありがたみ”(有り難み)

F: ”生きる”ことの意味?



 「なるほどね、あんたの脚か」それですべての説明がついたかのように、ナナがくりかえした。

 ケイディは笑った。

 「う-ん、脚そのものじゃないんだけどね。脚のおかげでできること、のほうかな。歩いたりとか、ね」

 ものごとはどうしてこう不公平なのか、本当はそう言いたいのだという思いが。ふいにケイディの心を揺さぶった。わたしがようやく歩きはじめたころ、ナナはもう走っていた---そしてスケートもし、踊り、自転車にまで乗っていたのに。かつてのナナは、たっぷりふたりぶんの元気にあふれていた。そう、いつだってそんなふうだったのだ。ナナが先に立ち、ケイディがそれに続く---まるで、磁石に引きつけられているかのように。

 「ほんと、たしかに歩けるっていいことだよね」ナナはうなずいた。あくびをすると、細い足をソファの花柄クッションの下に突っこむ。
 「ねえ、何週間か前に散歩に行ったの憶えてる?」その口調は、まるではるか昔のディズニーランド行きを思い出しているように聞こえた。

 ケイディは緑の目を細くして、ウェーバー家のイマの窓を見やった。ハチドリのための給水器が、日差しを受けてきらきらと光っている。
 「あのころはよかったよね、そう思わない?」
 ナナがからかうように、ケイディの膝をつついた。

 「ふたりで散歩なんか行けたころはさ。古きよき日々ってやつ。あのときは、ふたりともそのありがたみがわかってなかったけど」




カリフォルニアの美しい町に住むケイディとナナ。幸せ真っ盛りのはずなのに、ナナがガンに侵されて、別れなくてはならない。ケイディは、明るく、何事もなかったかのように毎日をナナと過ごし、そして、ナナは衰弱していく。
全米でベストセラーになったという、永遠の友だちの物語。


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国語専科ー『ブログメッセージ』-中学受験家庭教師


e:゛ブログメッセージ゛とは?

F:進度に多少の差はありますが、

e:まだ解いてないお子さんは軽い゛予習゛という意味あいですか?

F:それはないでしょう。

e:親御さんは?

F:親御さんの予習はあると思いますが。

e:それはいいんですか?

F:゛復習゛のために、このブログを活用していただくというのがメインになります。

e:そういう感じでブログは進めているんですね。

F:頭の中をおおまかに整理していただくという

e:゛授業゛を受けていれば

F:゛なるほど゛と頷けるような内容を心掛けているつもりです。

e:ブログを開設するまではもっぱらメールで?

F:そうですね。

e:メールだと大変でしょ?

F:FAXの時はもっと

e:大変だった?

F:で、やめました。

e:メールも?

F:そうですね。

e:個別対応は一見いいようですけど

F:公平を保つのが難しいんですね。

e:そうでしょう!

F:とにかく、授業後に話をするんですが

e:と言っとも、次がある時は

F:話ができずに

e:すぐ失礼しますから

F:『カルテノート』に書き忘れたものとか

e:時間的にこと細かく書く時間もないでしょう?

F:『記述』の場合は゛書く゛のに、時間は余計にかかりますね。

e:お子さんもいっぱい書きますからね。

F:゛ポイント゛を書いたり゛別解゛を書いたりで

e:いつも、手が動いてる状態?

F:しかし、文句の一言も言わないで、黙々と

e:ひたすら、書き続けるわけですね。

F:夏休みが終わる頃には

e:手が勝手に動く感じですか?

F:゛自然゛と動いていくみたいです。

e:『開成』クラスなんか、計算が速かったですよ!

F:いっせいに鉛筆を走らせる音が教室中に響きわたるって感じでしょうね。

e:中には゛計算゛しないで、一瞬に答をだすお子さんもいましたね。

F:そろばんの達人?

e:じゃなかったですよ。何回も何回も同じ計算を今までやってきたんでしょう。

F:気持ちを表すことばなんかも

e:次から次へと出てきちゃうんでしょ!

F:それも、よく知ってるな、そんなことばを。

e:声教に出てくるような

F:゛大人の言葉゛

e:と言っても、みんながみんな、ってわけにはいかないでしょう!

F:家庭の言語環境によりますね。

e:ふだんからの゛会話゛が影響するでしょうね。

F:特にお母様との対話の中で゛語彙力゛は養われますね。

e:『算数』の授業の中では対話は望むべくもないです。

F:『理科』だと、あるでしょ!

e:『社会』なんて、ほとんど対話でしょう!

F:『国語』の説明文なんか、リンクする内容も多々ありますよ。

e:環境問題は『理科』と『社会』とがダブリますね。

F:話は無限に広がっていきます。

e:『理科』や

F:『社会』で

e:使われてる゛用語゛なんか

F:『国語』の゛記述゛になにげなく、使用すると

e:内容に゛面白味゛も加わるでしょう。

F:゛深み゛もですね。表現の゛意外性゛は

e:プラスポイントでしょうね。


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サリー・ワーナー 「永遠の友だち」



【日販MARCより】

ケイディの親友ナナは、不治の病におかされている。大切な人を失う日は、もうすぐそこに…。初めて死と向かい合った二人の少女が、最期の夏にする小さな冒険。全米で多くの共感と涙を呼んだ、優しさと絆の物語。



辛さを乗り越えた末に得られる、とてもたいせつなもの。




 あの空き地を見てからというもの、ナナは壮大な計画をずっと心に抱いているのだ。いつの日かあの土地を買い、ずっと空き地のまま、自然のままにしておきたいという計画を。


 「あの植物。花が咲いているのが見える?あの花、開いてから色が変わるんだって。昨日と今日と明日で色がちがうってわけ。最初は紫で、次に薄紫になって、明日は白。母さんが教えてくれたんだ---うちの変わる、花に詳しいから。それでも、あたしはうまくいくかどうか自信ないんだけど」

 「えっ?」ケイディは何のことかわからなかった。

 「何がうまくいくって?」

 「放射線治療。あたし、やっぱりこのまま死ぬのかもしれないってこと」

 死ぬ!ケイディの胸の奥で、心臓がぴくりと跳ねたような気がした。



 問 「死ぬ!ケイディの胸の奥で、心臓がぴくりと跳ねたような気がした」時の「ケイディ」の気持ちを答えなさい。



 「まあね、結局は誰だって死んじゃうんだから」


 「それに、誰が先に死ぬかなんてわかんないよ。わたしのほうが先に、よくみんなの言っているバスにひかれて死んじゃうかもしれないんだし」


 「でも、まずそんなことは起きないよ」ナナの口調には抑揚がなく、その口もとにも笑いの影はなかった。



問 「ナナの口調には抑揚がなく、その口もとにも笑いの影はなかった」とありますが、この時の「ナナ」の気持ちを答えなさい。



e: これも、この後を読んでいけば解りますね。

F: ナナの両親がナナに対してどのように態度を取っているかの記述があります。

e: ナナの容体についてはナナの両親もよく理解しているにもかかわらず

F: ナナに治る見込みがあたかもあるかのように振る舞っています。

e: ナナのことを思っての”親心”がかえって

F: 逆に、ナナ自身がつらい思いをしていることを

e: ナナはケイディに告白していますね。

F: ナナはなんと親友のケイディにも

e: 同じ振る舞いをされたと感じたのですか?

F: ケイディも結局、親と変わらないんじゃないか、と……

e: しかし、これをどう書くか……

F: ナナは親友ケイディに対し、正直、どう感じたたかを、まずしっかり書くのが先決ですね。

e: ”ズバリ”の気持ちですか?



 「あんただって、それはわかってるくせに」

ふたりは、ようやく空き地にたどりつこうとしていた。

 「そうかもね」ケイディは認めた。

こんなことを考えるのも変な話だけれど、なんだか……こんな話をするのは気まずい。

ケイディには、気まずく思った自分がさらに気まずく感じられた。

 ナナは下唇を噛んだ。

 「でも、納得なんてできない!」ケイディは、怒りが胸の奥から湧きあがってくるのをおぼえた。

 「ガンになったって、完全に治っちゃう人だっているのに。あんたがそうなったっていいじゃないか」

 「まあね、治る人の中にあたしは入ってなかった、それだけのことよ。それに、死ぬ子どもだっているのは、ケイディ、あんただって知ってるじゃない」

 「そりゃ、知ってるけど。でも、それは---」

 「あんたも、うちの父さんや母さんと同じなんだ」その言葉をさえぎるように、ケイディをにらみつける。

「みんないい気分にさせとくために、あたしは何もかもうまくいっているふりをしなくちゃなんないってわけ。みんな、本当はよ-くわかっているくせに---」

 「だって、みんな希望を持っていたいもの」ケイディは口をはさんだ。

 ナナはどうしてもこんな話を続けたいのだろうか?


 ケイディは深く息を吸いこみ、もう一度くりかえしてみた。「たぶん、あんたの母さんは希望を持っていたくて---」



問 「ケイディは深く息を吸いこみ、もう一度くりかえしてみた」とありますが、この時の「ケイディ」の気持ちを答えなさい。



e: 直後の「たぶん、あんたの母さんは希望を持っていたくて---」がポイントでしょう!

F: 「だって、みんな希望を持っていたいもの」

e: 「---」の内容を答えればいいですか?

F: ナナは母親のことばを素直に受け取ってはいません。

e: 母親の”励まし”の言葉ですね。

F: それどころか、

e: ”怒り心頭”!?

F: そこで、ケイディはナナに望みを捨てないでがんばってほしいという

e: ここでは母親の”思い”を解ってほしくて……

F: ほんとうの気持ちをなんとか理解して、って感じでしょうか。

e: ”親の心、子知らず”!?でしょうか?

F: これは世界共通?

e: 実際に”親”になってみなければ解らない?

F: ところが、親になると、今度は”子”の気持ちがわからなくなっちゃう?

e: 自分が子供時代の頃を思い出せばいいんじゃないのかな?

F: 悲しいかな、すっかり忘却の彼方に……



 「そりゃ、希望は持っていたいでしょうよ。でも、だからってあんな態度とられちゃ、あたしは何も母さんと話せやしない。ほら、いわゆる現実的な話はね。あたしがおびえてる未来についてとか。現実になっちゃうかもしれない未来についてとか」


 「ああ、着いた。やったね!」ナナが声をあげる。ふたりはぐるりと周囲を見まわした。

 丘陵に咲いていた野性の春の花はほとんどみな、熱波の最初の一撃にしおれ、枯れてしまったようだ。

 とはいえ、《売り地》の立て札はまだそのまま残っていた。


 ケイディとナナは道路に背を向け、枯れた草の向こうを見やった。






ケイディの幼い頃からの親友ナナはガンに侵されていた。確実に迫ってくる死を見つめながら、2人は共に過ごす。家で療養中のナナを残して1人中等部に進み、新しい友人ができたケネディは、罪悪感を抱く。2人はぶつかり合いと和解の後、ハロウィンの日のささやかな、そして最後の冒険をする。思春期の少女の気持ちや友情・人間関係を描いた作品。同様に友人の死を扱いつつも少年達を中心に描いた『僕らの事情』と読み比べても興味深い。【中学生から】(殿岡)



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サリー・ワーナー 「永遠の友だち」



作品紹介【BOOKデータベースより】

カリフォルニアの景色美しい街に住むケイディとナナは親友同士。
もうすぐ中等部へ進む夏、本当ならとびきり美しいはずなのに、二人にとっては辛く哀しい-ナナが不治の病に冒されているからだ。ケイディは毎日ナナのそばで過ごす。何も変わらないかのように、精一杯、明るく振る舞う。大切な人を失う日はもうすぐそこ。だけど決して口には出さない。大好きな丘に登り、秘密の景色を楽しんで、この美しい場所が変わらなければ二人もきっと大丈夫!と信じる。けれどナナの衰弱は進み、二人の関係に、そして秘密の丘に、悲劇が訪れて…。
全米で子供たちの共感を呼んだ、二人の少女の絆の物語。



 ケイディとナナは幼なじみの親友です。ナナは不治の病で治療を受けていますが、徐々に衰弱が進んでいきます。

 ある日、ケイディとナナは、思い出の空き地を訪ねます。

 ケイディは幼い頃から、何事にも恐れる様子を見せないナナを見ながら、ナナの後を追いかけるにして過ごしてきました。

 ところが、そんなナナが不治の病におかされてしまったために、衰弱が進み、気持ちにもゆとりがなくなっていきます。



 「あたし、きょうは調子がいいの、ほんと」翌朝、ナナ・ウェーバーは母親にうけあった。

 「ゆっくり行きますから、ウェーバーのおばさん」ケイディは約束した。

 「ナナのことはわたしが気をつけますから、心配しないで」

 いつだって、よく気がつくのはケイディのほうで---それひきかえ、親友のナナはこれまでずっと怖いもの知らずで鳴らしてきた。


 「わたしたち、無理せずゆっくり行きますから」ケイディはうけあった。


 「はりきりすぎちゃだめよ」後ろから、ウェーバー夫人が声をかけた。「向こうに無事に着いても、帰りもここまで歩いてこなきゃならないんですからね」

 「それくらいのことも、あたしにはわからないと思ってるんだ、母さんは」ナナの機嫌は、まちがいなく悪化の一途をたどっていた。

 「あんまり暑くならないうちに出なくっちゃ」喧嘩が始まる前になんとかふたりを引き離そうと、ケイディは急かした。

 ナナと母親の親子喧嘩は、すでにこの界隈では有名になりつつあるのだから。


 ウェーバー家をさっさと後にして、ケイディとナナはパイン・クレスト通りを上りはじめた。けれど、上り坂がきつすぎて、ふたりの足どりはすぐにゆっくりになった---あまりゆっくりで、正直なところ、ケイディはひそかにショックを受けたほどだ。ナナの身体はもう、本当にここまで衰えてしまったのだろうか?こんな坂、これまでのあたしたちにとっては何でもなかったのに!

 「遅くてごめん」まるでケイディの心を読んだかのように、ナナが口を開いた。


 「でも、まだ脚が痛むんじゃないの?」ケイディは尋ねた。ナナはこれまで、ケイディにさえも、ほとんど愚痴をこぼしたことはなかった。

 ナナはいつだってこんなふうだった、とケイディはふりかえった。



問 「ナナはいつだってこんなふうだった」とありますが、「ナナ」はいつもどんなふうだったのですか。



e: サリー・ワーナー

F: デイヴィッド・ヒル

e: 「永遠の友だち」は女の子同士

F: 「僕らの事情」は男の子同士

e: & バーバラ・パークの「いつもそばにいるから」は祖父と孫?

F: 傍線部の前後からわかりますね。

e: 「こんなふう」の内容を答えればいいだけでしょ?

F: 具体的に

e: 幼稚園のころのこととか

F: 年かさの乱暴な子供たちとのいざこざとか

e: あと、滑り台のこととか?

F: 滑り台と言えば……

e: ブランディ?

F: 開成が記述になった年の出題でしたね。

e: 2001年でしょ?

《ジェイムズ・ヘリオット作/大熊 栄訳『ドクター・ヘリオットの犬物語』》

F: もうそろそろ開成も記述なんて言ってたら……21世紀になるわけですからね。

e: ”ズバリ”当たりましたね。

F: 周りでは記述にはならないなんて言ってましたけどね……

e: ”ゼッタイ”にならないなんて断言してた連中も多かった!?

F: 次の年にはまた元に戻る!?という人もね……



 幼稚園ころでさえ、ナナは観覧車に大声をあげて喜んだし、年かさの乱暴な子供たちを怖れる様子もなく、たとえぶちのめされてれも何もなかったかのように平然としていたものだ。

 それにひきかえ、ケイディはすべり台さえも怖くて下りられない子どもだった。


 「うん、ちょっと痛いかもね」ナナは認めた。 「でも、そんなにひどいわけじゃないし、前よりずっといいよ」言葉を切り、つけくわえる。

 「だから、やっぱり放射線もやってよかったんだと思う」

 「放射線って痛くないの---その、脚にかけるときに?」ケイディはさらに突っこんだ。この治療法は、どうにも想像がつかないのだ。

 「放射線なんて、写真撮られているのと同じ、全然痛くないんだから」ナナは続けた。

 「ただ、後からちょっと気分悪くなるけど。ちょうどいまみたいにね」

 いかにも何気ないそぶりで足を止め、呼吸を整えようとする。

 ナナは景色を眺めるふりをしていたけれど、ここからはほとんど何も見えない---まだまだ、坂の途中だから。目的地までには、まだかなり上らなくてはならない。

 「もう帰りたいんじゃない?」ケイディは尋ねた。



問 「『もう帰りたいんじゃない?』ケイディは尋ねた」とありますが、この時の「ケイディ」の気持ちを答えなさい。



e: この時の「ケイディ」のズバリの気持ち、わかります?

F: 本文の前半の場面をしっかり押さえておけばわかるでしょう。

e: 「ナナ」が衰弱していることに、「ケイディ」はショックを受けている場面がありますね。

F: 「あまりゆっくりで、正直なところ、ケイディはひそかにショックを受けたほどだ」とありますね。

e: 「ナナの身体はもう、本当にここまで衰えてしまったのだろうか?」

F: ここでも「ナナ」は坂を上りながら「いかにも何気ないそぶりで足を止め、呼吸を整えようとする」が

e: ケイディはそのことに気づいていますね。

F: ケイディは苦しんでいる親友の姿を見て何を感じたのでしょうか?



 「あの空き地へは、また別の日に行ったっていいんだもの」丘の上の、あの空き地のことを思う。パイン・クレスト通りを上りきったところにある、このあたりで唯一まだ家の建っていない空き地は、ふたりのお気に入りの場所のひとつだったけれど、ナナの誕生日以来、まだ一度も行ってみたことはない。

 「ううん、あたしは行きたい」ナナは頑固に言い張った。

 「まだ買い手がついてないかどうか見たいんだもの」





サリー・ワーナー 「永遠の友だち」(Sort of Forever)2006/8角川書店

ワーナー、サリー(Warner,Sally)NY生まれ。LAのオーティス大学でファインアートを学んだ後、パサデナ市立大学で芸術科の教師になる。約十年間の教師生活を経て、作家に。おもに子供向け、ティーン向けに次々と本を発表し、せつない女の子の気持ちを描いた作品で、ティーンたちの心をつかんでいる。同じく作家である夫と共に南カリフォルニア在住。『わたしが私になる方法』

山田蘭(ヤマダ ラン)翻訳家




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サリー・ワーナー 「永遠の友だち」



【日販MARCより】

ケイディの親友ナナは、不治の病におかされている。大切な人を失う日は、もうすぐそこに…。初めて死と向かい合った二人の少女が、最期の夏にする小さな冒険。全米で多くの共感と涙を呼んだ、優しさと絆の物語。



辛さを乗り越えた末に得られる、とてもたいせつなもの。




 あの空き地を見てからというもの、ナナは壮大な計画をずっと心に抱いているのだ。いつの日かあの土地を買い、ずっと空き地のまま、自然のままにしておきたいという計画を。


 「あの植物。花が咲いているのが見える?あの花、開いてから色が変わるんだって。昨日と今日と明日で色がちがうってわけ。最初は紫で、次に薄紫になって、明日は白。母さんが教えてくれたんだ---うちの変わる、花に詳しいから。それでも、あたしはうまくいくかどうか自信ないんだけど」

 「えっ?」ケイディは何のことかわからなかった。
 「何がうまくいくって?」

 「放射線治療。あたし、やっぱりこのまま死ぬのかもしれないってこと」

 死ぬ!ケイディの胸の奥で、心臓がぴくりと跳ねたような気がした。



 問 「死ぬ!ケイディの胸の奥で、心臓がぴくりと跳ねたような気がした」時の「ケイディ」の気持ちを答えなさい。



 「まあね、結局は誰だって死んじゃうんだから」


 「それに、誰が先に死ぬかなんてわかんないよ。わたしのほうが先に、よくみんなの言っているバスにひかれて死んじゃうかもしれないんだし」


 「でも、まずそんなことは起きないよ」ナナの口調には抑揚がなく、その口もとにも笑いの影はなかった。



問 「ナナの口調には抑揚がなく、その口もとにも笑いの影はなかった」とありますが、この時の「ナナ」の気持ちを答えなさい。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 「あんただって、それはわかってるくせに」
ふたりは、ようやく空き地にたどりつこうとしていた。

 「そうかもね」ケイディは認めた。
こんなことを考えるのも変な話だけれど、なんだか……こんな話をするのは気まずい。ケイディには、気まずく思った自分がさらに気まずく感じられた。

 ナナは下唇を噛んだ。

 「でも、納得なんてできない!」ケイディは、怒りが胸の奥から湧きあがってくるのをおぼえた。

 「ガンになったって、完全に治っちゃう人だっているのに。あんたがそうなったっていいじゃないか」

 「まあね、治る人の中にあたしは入ってなかった、それだけのことよ。それに、死ぬ子どもだっているのは、ケイディ、あんただって知ってるじゃない」

 「そりゃ、知ってるけど。でも、それは---」


 ナナはどうしてもこんな話を続けたいのだろうか?


 ケイディは深く息を吸いこみ、もう一度くりかえしてみた。「たぶん、あんたの母さんは希望を持っていたくて---」



問 「ケイディは深く息を吸いこみ、もう一度くりかえしてみた」とありますが、この時の「ケイディ」の気持ちを答えなさい。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 「そりゃ、希望は持っていたいでしょうよ。でも、だからってあんな態度とられちゃ、あたしは何も母さんと話せやしない。ほら、いわゆる現実的な話はね。あたしがおびえてる未来についてとか。現実になっちゃうかもしれない未来についてとか」


 「ああ、着いた。やったね!」ナナが声をあげる。ふたりはぐるりと周囲を見まわした。

 丘陵に咲いていた野性の春の花はほとんどみな、熱波の最初の一撃にしおれ、枯れてしまったようだ。

 とはいえ、《売り地》の立て札はまだそのまま残っていた。


 ケイディとナナは道路に背を向け、枯れた草の向こうを見やった。







ケイディの幼い頃からの親友ナナはガンに侵されていた。確実に迫ってくる死を見つめながら、2人は共に過ごす。家で療養中のナナを残して1人中等部に進み、新しい友人ができたケイディは、罪悪感を抱く。2人はぶつかり合いと和解の後、ハロウィンの日のささやかな、そして最後の冒険をする。思春期の少女の気持ちや友情・人間関係を描いた作品。同様に友人の死を扱いつつも少年達を中心に描いた『僕らの事情』と読み比べても興味深い。【中学生から】(殿岡)

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作品紹介【BOOKデータベースより】

カリフォルニアの景色美しい街に住むケイディとナナは親友同士。もうすぐ中等部へ進む夏、本当ならとびきり美しいはずなのに、二人にとっては辛く哀しい-ナナが不治の病に冒されているからだ。ケイディは毎日ナナのそばで過ごす。何も変わらないかのように、精一杯、明るく振る舞う。大切な人を失う日はもうすぐそこ。だけど決して口には出さない。大好きな丘に登り、秘密の景色を楽しんで、この美しい場所が変わらなければ二人もきっと大丈夫!と信じる。けれどナナの衰弱は進み、二人の関係に、そして秘密の丘に、悲劇が訪れて…。全米で子供たちの共感を呼んだ、二人の少女の絆の物語。



 ケイディとナナは幼なじみの親友です。ナナは不治の病で治療を受けていますが、徐々に衰弱が進んでいきます。ある日、ケイディとナナは、思い出の空き地を訪ねます。ケイディは幼い頃から、何事にも恐れる様子を見せないナナを見ながら、ナナの後を追いかけるにして過ごしてきました。ところが、そんなナナが不治の病におかされてしまったために、衰弱が進み、気持ちにもゆとりがなくなっていきます。



 「あたし、きょうは調子がいいの、ほんと」翌朝、ナナ・ウェーバーは母親にうけあった。

 「ゆっくり行きますから、ウェーバーのおばさん」ケイディは約束した。
 「ナナのことはわたしが気をつけますから、心配しないで」

 いつだって、よく気がつくのはケイディのほうで---それひきかえ、親友のナナはこれまでずっと怖いもの知らずで鳴らしてきた。


 「わたしたち、無理せずゆっくり行きますから」ケネディはうけあった。


 「はりきりすぎちゃだめよ」後ろから、ウェーバー夫人が声をかけた。「向こうに無事に着いても、帰りもここまで歩いてこなきゃならないんですからね」

 「それくらいのことも、あたしにはわからないと思ってるんだ、母さんは」ナナの機嫌は、まちがいなく悪化の一途をたどっていた。

 「あんまり暑くならないうちに出なくっちゃ」喧嘩が始まる前になんとかふたりを引き離そうと、ケネディは急かした。

 ナナと母親の親子喧嘩は、すでにこの界隈では有名になりつつあるのだから。


 ウェーバー家をさっさと後にして、ケイディとナナはパイン・クレスト通りを上りはじめた。けれど、上り坂がきつすぎて、ふたりの足どりはすぐにゆっくりになった---あまりゆっくりで、正直なところ、ケイディはひそかにショックを受けたほどだ。ナナの身体はもう、本当にここまで衰えてしまったのだろうか?こんな坂、これまでのあたしたちにとっては何でもなかったのに!

 「遅くてごめん」まるでケイディの心を読んだかのように、ナナが口を開いた。


 「でも、まだ脚が痛むんじゃないの?」ケイディは尋ねた。ナナはこれまで、ケイディにさえも、ほとんど愚痴をこぼしたことはなかった。
 ナナはいつだってこんなふうだった、とケイディはふりかえった。



問 「ナナはいつだってこんなふうだった」とありますが、「ナナ」はいつもどんなふうだったのですか。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 幼稚園ころでさえ、ナナは観覧車に大声をあげて喜んだし、年かさの乱暴な子供たちを怖れる様子もなく、たとえぶちのめされてれも何もなかったかのように平然としていたものだ。

 それにひきかえ、ケイディはすべり台さえも怖くて下りられない子どもだった。


 「うん、ちょっと痛いかもね」ナナは認めた。 「でも、そんなにひどいわけじゃないし、前よりずっといいよ」言葉を切り、つけくわえる。

 「だから、やっぱり放射線もやってよかったんだと思う」

 「放射線って痛くないの---その、脚にかけるときに?」ケイディはさらに突っこんだ。この治療法は、どうにも想像がつかないのだ。

 「放射線なんて、写真撮られているのと同じ、全然痛くないんだから」ナナは続けた。
 「ただ、後からちょっと気分悪くなるけど。ちょうどいまみたいにね」
 いかにも何気ないそぶりで足を止め、呼吸を整えようとする。
 ナナは景色を眺めるふりをしていたけれど、ここからはほとんど何も見えない---まだまだ、坂の途中だから。目的地までには、まだかなり上らなくてはならない。

 「もう帰りたいんじゃない?」ケイディは尋ねた。



問 「『もう帰りたいんじゃない?』ケイディは尋ねた」とありますが、この時の「ケイディ」の気持ちを答えなさい。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 「あの空き地へは、また別の日に行ったっていいんだもの」丘の上の、あの空き地のことを思う。パイン・クレスト通りを上りきったところにある、このあたりで唯一まだ家の建っていない空き地は、ふたりのお気に入りの場所のひとつだったけれど、ナナの誕生日以来、まだ一度も行ってみたことはない。

 「ううん、あたしは行きたい」ナナは頑固に言い張った。
 「まだ買い手がついてないかどうか見たいんだもの」





サリー・ワーナー 「永遠の友だち」(Sort of Forever)2006/8角川書店ワーナー、サリー(Warner,Sally)NY生まれ。LAのオーティス大学でファインアートを学んだ後、パサデナ市立大学で芸術科の教師になる。約十年間の教師生活を経て、作家に。おもに子供向け、ティーン向けに次々と本を発表し、せつない女の子の気持ちを描いた作品で、ティーンたちの心をつかんでいる。同じく作家である夫と共に南カリフォルニア在住。『わたしが私になる方法』

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伊集院静「どんまい」



 「ドンマイ、ジュンヤ」




 「何で、ありがとうなんだ?」

 「女の私と、一生懸命にキャッチボールをしてくれて」

 「何を言ってんだ。じゃ、またな」

 純也は走り出して、急に立ち止まり、カオルを振りむいた。

 「もしかまわなかったら、あの日被っていた帽子を少しでいいから貸してくれないか」

 「帽子?あっ、あれはだめだ。亡くなったパパが買ってくれたものだから。他の帽子ならいい。でも帽子なんかどうするんだ?」

 純也は淑子が、カオルの帽子の絵を描いている話をした。カオルは険しい表情をして純也の話を聞いていたが、きっぱりと言った。



問 「カオルは険しい表情をして純也の話を聞いていたが、きっぱりと言った」とありますが、この時の「カオル」の気持ちを答えなさい。



e: カオルは何とか純也の力になってあげたいと悩んでいますね。

F: 前にも書いたように、カオルは純也に感謝の気持ちを持っています。

e: それに淑子の病状があまりかんばしくないことも知ってます。

F: ですから「険しい表情をして純也の話を聞いていた」のですね。

e: けれども、淑子の憧れている帽子

F: 亡くなったパパが買ってくれた

e: カオルにとってとても大切なもの

F: 亡き父の”形見”みたいなものですからね。

e: カオルはどうしても淑子に貸すことができない。

F: 貸すことをためらってます。

e: そりゃ、そんなに親しくはないですから躊躇いますよね。普通は。



 「でも、あの帽子は絶対にだめだ」

 「そうか、大切なものだものな。じゃあな」

 純也は言って、家にむかって走り出した。



 家に帰ると、玄関の鍵がかかったままだった。母が仕事先から戻ってないのだ、と思った。

 「純ちゃん、病院からさっき電話があってヨッちゃんの容体が急に悪くなったから、すぐ病院に来てくれって」


 「俺、すぐに病院に行く。おばさん、母ちゃんが帰ってきたら淑子のこと伝えて」


 淑子は集中治療室に入っていた。

 純也は廊下の椅子に座って、母が来るのを待った。そうして淑子を助けて欲しい、と祈った。

 ---母ちゃんはどこへ行ってしまったんだろう。

 母のことを考えると、純也は不安になった。もしかして、母は淑子と純也を見捨てて、どこかへ行ってしまったのではないか、思った。

 ---いや違う。母ちゃんはそんなことはしない。今日に限って遠出の仕事か何かあって、今頃、ここにむかってるはずだ。

 純也は胸に湧き起こる不安を懸命に打ち消した。

 廊下の壁の時計はすでに夜中の二時を回っていた。


 純也が目を覚ますと、母の手が肩を抱いていた。

 「母ちゃん、淑子は?」

 純也が訊くと、母は笑みを浮かべて、

 「大丈夫だったわ。昨晩はごめんね」

 と言って肩を叩いた。純也は首を横に振り、ガラス越しに集中治療室のベッドに寝ている淑子を見た。



問 「純也は首を横に振」った時の、母に対する「純也」の気持ちを答えなさい。



e: 「もしかして、母は淑子と純也を見捨てて、どこかへ行ってしまったのではないか」と母に対して疑念を持っていますね。

F: 母はどこに行ってしまったかわからい状況ですから、そう思うのはもっともなことでしょう。

e: ところが、純也の心配をよそに

F: 深夜になってようやく病院に戻ってはきますが……

e: 深夜に男と一緒!?

F: しかも、なにか争っているようすです。

e: 尋常ではないと子供心にも直感しますよねぇ。

F: 何か自分の知らない事情があるのでは、と。

e: 不安な気持ちは払拭できないでいますね。
F: といっても、母は自分たちを見捨てないで、とにかく戻っては来てくれたのだから……

e: 母を責められない、という気持ちですか?
F: 「大丈夫だったわ。昨晩はごめんね」という母のことばを受け入れたわけですね。

e: 母の謝罪を認めたというかたちですか?

F:



 純也は洗面所に行き、顔を洗った。

 廊下に出ると、昨夜の看護婦が、紙袋を手にやってきた。

 「佐伯君、これを淑子ちゃんの渡して下さいって預かったわ」

 渡された紙袋を覗くと、中に帽子が入っていた。

 ---カオルだ。


 純也は廊下を走った。


 オーイ、オーイ、カオル、と純也は叫びながら走った。スピードを上げたタクシーが遠ざかっていく。


 大通りへ出る信号でタクシーは停車していた。純也はあらん限りの声で、カオルの名前を呼んだ。信号が青にかわり、車は動き出した。するとタクシーは側道に寄った。ドアが開いて、ワンピース姿のカオルが出てきた。

 「カオル、カオル、ありがとう」

 純也が大声で言うと、カオルは手を振ってから両手を口に当て、

 「ドンマイ、ジュンヤ」

 と叫んだ。



問 「ドンマイ、ジュンヤ」と叫んでいますが、カオルはジュンヤに何を伝えたかったのですか?



 純也は首まで湯につかって目を閉じていた。

 「トクジイ、俺、カーブが投げられるようになったぞ」

 「そうか。カーブをな……」

 「トクジイ、”どんまい”って何のことじゃ」
 「ドント、マインド。気にしなさんなってことじゃ」

 「たったそれだけのことなのか?」

 「それだけのことじゃ」

 「ふぅ-ん……そうか。トクジイ、女児の手というのは温かいの。女児もええもんじゃの」
 「女は厄介じゃ」

 元湯の湯煙が二人をつつんでいた。



問 「トクジイ、女児の手というのは温かいの。女児もええもんじゃの」とありますが、この時の「純也」の気持ちを答えなさい。


問 「女は厄介じゃ」と言った時の徳造爺さんの気持ちを答えなさい。




【目次】

ぼくのボールが君に届けば
えくぼ
どんまい
風鈴
やわらかなボール
雨が好き
ミ・ソ・ラ
キャッチボールをしようか
麦を噛む

ドストエフスキーの「貧しき人々」の主人公が彼女の馬車を追う場面に匹敵する。

伊集院さんがこよなく愛する野球をテーマに描いた短編集です。母を亡くした少年が、野球に打ち込む中で父の再婚相手に心を開いていく姿を描いた表題作「ぼくのボールが君に届けば」、病弱な双子の妹を持つ少年と野球の得意な左利きの少女との出会いを描いた「どんまい」など、野球をめぐる切なく、そして心あたたまる物語9編。人を愛すること。支え合うこと。希望を持つこと。野球を通して、大切にしたい想いが鮮やかに描き出されます。

「青空にボールが舞い上がった時、皆がひとつのものを見上げてるってことが俺は好きなんだ」秋田、長岡、大阪、神戸、松山、天草…、野球というゲームにこめられた思いを、やわらかなボールで相手の胸元に届けるように丁寧に描き、出逢いと別れ、生と死の在りようを見つめ直した新境地とも言うべき作品集合。

なんとも情報の少ない小説で、だからこそ読み手の想像力が膨らみます。そして、えっ?これで終わらすの?と思うほど思い切り結末を告げずに終わるんです。それがまたいいんですよ。あの子はきっと無事だろうと自分でハッピーエンドにしたりしてね。

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伊集院静 「どんまい」



出版社/著者からの【内容紹介】

少年は青空に抱いてほしかった。彼女はその人を見つめて生きてきた。大切な人に届けたい9つの短編。
あの時、どうしてあんなにときめいたのだろう。見上げたボールの先は、どうして青空だったのだろう。いとしい人とひとつのものを見つめた、あの思いがよみがえる、9つの物語。




 胸元へ すっと投げた







 「綺麗な帽子……」

 淑子は声を上げた。

 「えっ、何を言うたんじゃ」

 「あの帽子、綺麗……」

 淑子が指さした池のむこう側に、車椅子に乗った白髪の老人と並んで、少女と母親らしき女性が歩いていた。その少女が白いワンピースと同色の帽子を被っていた。秋の日ざしに帽子の白とピンク色のリボンがかがやいていた。淑子は少女の帽子を綺麗と呟いていた。

 ---なんや金持ちの家の子やな……。

 淑子は少女をじっと見つめていた。



問 「淑子は少女をじっと見つめていた」とありますが、この時の「淑子」の気持ちを答えなさい。



 「淑子、そろそろ戻ろうか」

 純也が言うと、淑子が純也の肩に手をかけて、少しこのままにして欲しい、という仕草をした。

 ---淑子も女の子やから、ああいう恰好がしたいのじゃろうか……。

 純也が胸の中で、そう思いながら、近寄ってくる少女を見た。

 「あ、あいつじゃ」

 純也は思わず声を上げた。

 少女も純也の顔を見て、一瞬、顔色を変えた。

 スカートを穿いたまましゃがみ込んだ少女とは、まるで別人のように映った。少女は老人と母親が話をはじめた時、純也にむかってウインクした。そうして純也の隣にいる淑子をちらりと見て、老人の方に笑いかけた。

 ---どうなっとるんじゃ……。

 純也が呆気にとられていると、

 「淑子もあんな帽子を被ってみたい」

 淑子がぽつりと言った。

 その日の午後から、淑子は帽子を被って丘の上に立っている自分の姿を絵に描きはじめた。


問 「淑子は帽子を被って丘の上に立っている自分の姿を絵に描きはじめた」とありますが、絵には淑子のどのような願いがあらわれていますか。



e: 淑子の絵には自分の姿が描かれていますね。

F: それも「丘の上に立っている」自分の姿です。

e: 「帽子を被って」いる!?

F: 入院生活でなかなか自由に外にも行けない

e: 不自由な生活を強いられています。

F: 帽子なんかも被りたくても被れない……

e: 退院できれば、好きな恰好をして

F: 好きな場所に行ってみたいという

e: 願望がキャンバスに描かれた絵に込められているんでしょうね…

F: 「良くなるかな……」ということばから

e: いつ病気が治って退院できるのかわからないような状況ですからね…

F: せめて”絵の中”くらいは……

e: ”元気”になった自分の姿を描きたい…

F: それも”女の子”らしい恰好で。



 翌夕、純也が廃工場の壁にむかってボールを投げていると、おしい、と声がして草叢のむこうから、人影が手を振って近づいてきた。

 見ると、あの少女だった。スカートではなくスラックスを穿いていた。手にはグローブを持っていた。

 「これならいいだろう。さあ、キャッチボールをしようぜ」

 純也は黙ってうなずき、ボールを投げた。

 「おっ、曲がるようになったじゃないか」

 少女は嬉しそうに言った。


 二人は日が沈むまでキャッチボールを続けた。

 「俺はもう家に戻んなきゃいけない。病院に行くんだ」

 「……そうか。あの子はジュンヤの妹なのか?」

 純也が一瞬、顔を曇らせると、

 「あそこはいい病院だから大丈夫だ。私のお祖父ちゃんも退院できるかもしれないと言っていた」



問 「少女」はなぜ「あそこはいい病院だから大丈夫だ」と言ったのですか。



e: なんか、この女の子の言葉使いは例の

F: ”少女剣士”高岡を思い出しますか?

e: 男の子顔負けのせりふを吐いていましたからね…

F: ここだけの場面を読んでいたら

e: 正しく”男の子”!?

F: ”カオル”ですから

e: ”男女兼用”の名前?そう言えば、伊集院静という名前も

F: 女の子みたいで嫌だなんて!?

e: おまけに、その名前だとあわれな晩年を迎えると

F: 占いで言われ、開き直って……

e: 純也は顔を曇らせます。

F: 淑子の病状を訊かれた時ですね。

e: 「淑子の病気が良くなっているかどうかはわからない」現状ですから当然でしょ。

F: そんな純也を見て、カオルは淑子の容体があまりかんばしくないと察し

e: 純也を励まそうと淑子が入院している病院を

F: 「いい病院」だと言っているのですね。

e: 要するに「大丈夫だ」は

F: あの病院で治療を受けていれば

e: いつかは淑子の病気は治るという意味で言っている?



 「あの人はカオルの祖父ちゃんなのか」

 「そうだ。ママのお父さんだ。東京からママと二人で見舞いにきたんだ」

 クスッ、と純也が笑うと、カオルが純也を見返して、何が可笑しいんだ、訊いた。

 「ママって言ったのがだ」

 「可笑しいか」

 「おまえが、いやカオルが言うと可笑しい。それにこの間の病院での恰好も可笑しかった」

 「しょうがないじゃないか。ああしないとお祖父ちゃんは喜ばない」

 カオルが頬をふくらませて言った。

 「……そうか、悪かった」

 純也が謝ると、カオルが右手を差し出した。純也も手を差し出し、握手した。カオルの手は温かかった。カオルが言った。

 「ありがとう」



問 「ありがとう」とありますが、この時の「カオル」の気持ちを答えなさい。



e: これは「女であるにもかかわらず、マジにキャッチボールをしてくれて」

F: ”ありがとう”ということでしょう。

e: まあ、普通なら女の子相手に野球はやってくれませんよね…

F: 「年長者たちは少女に手玉に取られたのが口惜しかったのか、三回を終えると、今日はやめた、と言い出して、グラウンドを引き揚げていった」とありますから

e: いくら野球ができても”女”とはしたくないというのが本音かな?

F: で、相手をしてくれたジュンヤに感謝の一言が”ありがとう”ですね。

e: 純也がカオルが”ママ”と言ったのを聞いてクスッと笑ったり

F: 病院での恰好も可笑しかったと言ったりしたことに対して

e: 「……そうか、悪かった」と謝ってますね。

F: 女の子らしい恰好をしたのはお祖父ちゃんを喜ばすためだったですから。

e: カオルは右手を差し出し、ジュンヤに握手を求めますね。これって、どういうことですか?

F: それはきっちり書かなくては。ここがポイントでしょう。







ベストセラー「受け月」から12年。著者の原点ともいえる「野球小説」。心とはもしかしたら、ボールのようなかたちをしているのかもしれない。キャッチボールのように、心と心が通いあう瞬間、人はいままでのわだかまりを捨て、心の底から笑うことができる。
最悪の息子を自らの過失で失った男。不倫の恋に苦悩する女。ずっと昔の恋の思い出を胸に秘めたまま、その存在を見守り続ける老女。友情のために、兄姉のために格闘しながら成長していく少年や少女はさまざまな登場人物の心のふるさとを「野球」というスポーツを背景に描く、9つの物語。いとおしさの、勇気、忘れていた思い。読む人の心に「生きる勇気」をあたえる希望の短編集です。

「青空にボールが舞い上がった時、皆がひとつのものを見上げてるってことが俺は好きなんだ」秋田、長岡、大阪、神戸、松山、天草…、野球というゲームにこめられた思いを、やわらかなボールで相手の胸元に届けるように丁寧に描き、出逢いと別れ、生と死の在りようを見つめ直した新境地とも言うべき作品集合。


「野球を愛する男」を愛する貴女に。

収録されている短編すべてが野球と死をモチーフとした作品。著者の野球を愛する気持ちが伝わってきます。今まで野球について何の思いもなかったのですが、なんとなく「野球を愛する人」のことを理解できたような気になりました。「青空にボールが舞い上がった時、皆がひとつのものを見上げてるってことが俺は好きなんだ」純粋に野球を愛する心が伝わってきます。また角田光代さんのあとがきも秀逸。キャッチボールでいうところの「ボールを投げられた側」を描き、そのボールを自分で取りにいく=その凛とした生き方、解説している。これでまた全ての短編が再び心の中で輝いた。

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伊集院静 『ぼくのボールが君に届けば』



内容(「BOOK」データベースより)

あの時、どうしてあんなにときめいたのだろう。見上げたボールの先は、どうして青空だったのだろう。いとしい人とひとつのものを見つめた、あの思いがよみがえる、9つの物語。



「どんまい」



《あらすじ》

 野球が好きな小学二年生の佐伯純也は、母と入院中の双子の妹の淑子の三人で暮らしています。ある日、純也が年長組の野球の練習を見に行くと、三日前に廃工場跡の草叢で出逢った少女が、「一回打たせてよ」と交渉していました。皆、少女を馬鹿にしていますが、予想に反し、年長組は少女に手玉に取られてしまいます。純也は妹の淑子の見舞いに行くと、女の子らしい恰好をした少女に出逢います。その時、少女が被っていた帽子に淑子は憧れます。カオルと名乗る少女にキャッチボールをした後、「帽子を少しでいいから貸してくれないか」と頼みますが、「亡くなったパパが買ってくれたものだから」だめだと断られてしまいます。淑子の容体が悪くなり、純也は母と連絡を取ろうとしますが、母はどこに行ったのかわからず、自分は母に見捨てられたのではないかという不安に襲われます。結局、深夜になってようやく母は病院にやってきました。翌朝、カオルが大切にしている帽子を淑子に置いていってくれたことがわかります。お礼を言うために追いかけてきた純也に、カオルは一言「ド
ンマイ、ジュンヤ」と叫んだだけでした。



 小学二年の佐伯純也は、母と双子の妹の淑子の三人で暮らしている。淑子は難しい病気にかかり、半年前から入院している。ある日、純也が廃工場跡の草叢でボールを投げていると、見知らぬ少女に声をかけられ、カーブの投げ方を教えてもらった。


 週末の午後、純也は附属小学校のグラウンドにグローブを持って年長組の練習を見にいった。

 土曜日は年長組がふた手に分かれて試合をする。人数が揃っていないと純也は試合に入れて貰えることがある。

 母に言われて、徳造爺さんが帰ってきているかを見てきたので、いつもより時間が遅くなった。

 正門の脇を走り抜け、グラウンドに入ると、マウンドの所に皆が集まっていた。


 「変な女児が入ってきて、野球をやらせろと言うとる。上級生がだめじゃ言うても、やらせろ言うてきかん。馬鹿じゃなかろうかの」

 ユキオが首をすくめて言った。


 三日間に廃工場跡の草叢で逢った少女が年長組の中で、腰に手を当てて大声で何かを言っている。

 打てんせんて、やめとけ、だから打たせてみろ。ボールが当たって泣いてもしらんぞ。なくもんか、そのかわり打ったら仲間にいれろよ。生意気な口をきく女児じゃのう……。

 年長者たちは少女に根負けしたのか、投手の一人がマウンドに残り、少女がバットを手にしてバッターボックスに入った。皆ニヤニヤと笑って少女を見た。



 問 「皆ニヤニヤと笑って少女を見た」時の「皆」の気持ちを答えなさい。



e: 伊集院静といえば

F: ”夏目雅子”ですか!?

e: 本文でも出てきますね。

F: ?

e: 白いワンピースの少女!?

F: 夏目雅子といえば、白い帽子と白いワンピース姿が目に焼き付いていますね。確かに!

e: 鎌倉に白い帽子と白いワンピースは似合うんじゃないですか……

F: 伊集院静、いろいろエピソードがありますが……

e: それはまたの機会に、ということで。

F: ただひとつだけ

e: こよなく”野球”を愛した男であるということでしょ!

F: 「野球小説」は彼の原点でしょうね。

e: さて、カオルが野球の仲間に「野球をさせろ」と強引に

F: 「やらせろ言うてきかん」

e: 「馬鹿じゃなかろうかの」

F: で、年長組は「打てんせんて、やめとけ」

e: 「ボールが当たって泣いてもしらんぞ」

F: とカオルを馬鹿にしてます。

e: ところが……

F: バッターボックスに立ったカオルに打たれたピッチャーは

e: 「女児だから手加減をした」なんて言い訳をして、いいわけない!

F: 女の子だからまともに野球なんかできるわけはないと

e: 年長組がカオルを馬鹿にしているんでしょ!

F: ソフトの上野のボールはプロの野球選手だってなかなか打てないんじゃないですか?

e: ”男尊女卑”!?

F: まあ”偏見”でしょうね。

e: ”女の子”に男が投げるボールなんか打てるわけない!?

F: 小学校の高学年ですと、女の子の方が腕力があったりして……

e: 「十歳!本当かよ?」



 尻にぶつけてやれ、誰かが大声で言って、皆が笑い出した。


 カーン、と乾いた音がして、少女が打った打球がセンターの後方にむかって上昇した。打たれた投手も、見物していた年長者たちも、純也も、ユキオも、その打球を口を開けたまま見上げていた。

 「あれ、まあ……」

 隣でユキオが素頓狂な声を上げた。



問 「ユキオが素頓狂な声を上げた」とありますが、この時の「ユキオ」の気持ちを答えなさい。

 年長者たちは少女に手玉に取られたのが口惜しかったのか、三回を終えると、今日はやめた、と言い出して、グラウンドを引き揚げていった。

 グラウンドには少女と純也の二人だけが残った。

 「君、この間のカーブを練習していた子だろう」

 「おまえ歳はいくつなんだ?」

 「女の子に歳を聞くもんじゃない。十歳だよ」
 「十歳!本当かよ?」

 純也はびっくりして、少女を足元から頭の先まで見直した。自分とひとつしか違わない。


 「平気だ。私が受けるからカーブの練習をしてみろよ」

 そう言って少女はスカートを内股に入れて、その場にしゃがみ込んだ。こんな恰好を平気でする少女は見たことがなかった。

 「よし、投げろよ」

 少女がグローブを叩いた。純也はボールを持ったまま立っていた。



問 「純也」はなぜ「ボールを持ったまま立っていた」のですか。


 「どうした?早く投げろ」

 「……おまえやっぱりおかしいよ。女児なんじゃから……」

 純也が言うと、少女は急に怒ったように頬をふくらませ、純也にグローブを投げ返しグラウンドを去っていった。


 翌日、母が一日仕事があるので、純也は淑子の病院へ行った。

 淑子は熱が下がって、ベッドに座って絵を描いていた。


 純也は車椅子を押して、中庭の池のほとりに淑子を連れていった。淑子は空を見上げている。純也も空を見上げ、今頃、グラウンドで皆が野球をしているのだろう、と思った。



問 「淑子は空を見上げている」とありますが、この時の「淑子」の気持ちを答えなさい。


 「淑子も早う良くなって、また相子が浜へ海水浴に行こうな」

 「良くなるかな……」

 淑子が弱々しい声で言った。

 「良くなるに決まっとる。今日くらい元気なのが続いたら、すぐに退院できるって」

 そうは言ったものの純也にも淑子の病気が良くなっているのかどうかわからなかった。

 母に具合を訊いても、この頃は、ちゃんと答えてくれなかった。





伊集院静「どんまい」(『ぼくのボールが君に届けば』所収)講談社

【目次】

「ぼくのボールが君に届けば」
「えくぼ」
「どんまい」
「風鈴」
「やわらかなボール」
「雨が好き」
「ミ・ソ・ラ」
「キャッチボールをしようか」
「麦を噛む」

ベストセラー「受け月」から12年。著者の原点ともいえる「野球小説」。心とはもしかしたら、ボールのようなかたちをしているのかもしれない。キャッチボールのように、心と心が通いあう瞬間、人はいままでのわだかまりを捨て、心の底から笑うことができる。最悪の息子を自らの過失で失った男。不倫の恋に苦悩する女。ずっと昔の恋の思い出を胸に秘めたまま、その存在を見守り続ける老女。友情のために、兄姉のために格闘しながら成長していく少年や少女はさまざまな登場人物の心のふるさとを「野球」というスポーツを背景に描く、9つの物語。いとおしさの、勇気、忘れていた思い。読む人の心に「生きる勇気」をあたえる希望の短編集です。

伊集院静(イジュウイン・シズカ)

1950年(昭和25)山口県防府市生まれ。立教大学文学部卒。1981年小説「皐月」でデビュー。1991(平成3)年に「乳房」で吉川英治文学新人賞受賞。1992年に「受け月」で直木賞受賞。1994年に「機関車先生」で柴田練三郎賞を受賞。2002年「ごろごろ」で吉川英治文学賞受賞「少年譜」「ぼくのボールが君に届けば」など著書多数。
小説やエッセイで幅広い読者の支持を受けている現代文学の旗手

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中学入試の合否を決する”決め手”は第1志望校攻略のための1年間のプログラム作成にあると考えて、その年間のプログラムを「3の段階」に分けて作るとよいでしょう。

       第1段階は『夏期講習』が始まるまで

       第2段階は『夏期講習』が終わるまで

       第3段階は『冬期講習』が終わるまで

しかし、この作業を初めて中学受験を体験されるご父兄には重荷になるでしょう。だからといって塾に相談をもちかけても適切なアドバイスをしてくれるとは限りませんね。

そこで、中学受験を知り尽くしたプロチュータ。その効果のほどは絶大。何故なら、マン・ツー・マンによる個人対応で3段階のプログラム作成は勿論のこと、年間を通してのメンタルなサポートやフォローもしっかりやってくれます。

座右の師=プロチューター20%の合格率を80%にしてしまうミラクルチュータを持つーこれが合格への最短距離だと断言できるでしょう。

志望校合格のカギ、それは徹底した年間プログラム作成とメンタルサポートとフォローができるプロチュータの存在です。

そして、この1年間で、ライバルに決定的な差をつけ、『合格』の2文字を勝ち取りましょう。



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 すべては『三教科合格』のためにー過去問国語『満点』を目指す!!

ー過去問データベースー算数・国語・理科・社会

開成中学昭和49年~平成21年
麻布中学昭和49年~平成21年
武蔵中学昭和49年~平成21年
駒東中学昭和51年~平成21年
筑駒中学昭和51年~平成21年
灘中学昭和51年~平成21年
ラ・サール中学昭和51年~昭和63年
慶應普通部昭和51年~平成21年
慶應中等部昭和51年~平成21年
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高楼方子 『記憶の小瓶』



 黒いつまみをぐるんと倒してかける仕組みのその鍵は、固くて渋くて、一度閉めたが最後、子どもの手で縦に戻すことは、とうてい無理な代物なのだった。それを承知で試みては手を痛くした。あの痛みさえ思い出すのだけれど、黒い鍵を思い描けば、それが、姉によって魔法のように開けられた、ある晩のことにつながっていく。

 あれは、寝間着に着替えている途中で、何かひどい悪さをして姉を泣かせた私が、烈火のごとく怒った母によって外に放り出され、鍵をガチャリとかけられた時のことだ。靴下どめが膝のあたりまでずり落ちたような恰好のまま地面に起き上がり、半狂乱になりながら、「ごめんなさい、ごめんなさい!入れて入れて!」と泣き叫んで玄関に取りすがると、戸の向こうでは、同じくらいに半狂乱になって、「許してあげて許してあげて!」と泣き叫ぶ声と、母と姉が鍵のつまみをめぐってもみ合う気配がし、そのとたん、玄関の戸がガラリッと開けられ、現れた姉と向き合ったのだった。私たちは、一瞬泣きやんで、ぽかんと顔を見合わせた。二人の驚きの大きさは、同じだったと思う。


 あるいはまた、緑のペンキがはげ落ちた、たてつけの悪い外扉のある土間---。

 薄緑色の木のドアを、ギイバタンギイバタン開け閉てしては、出たり入ったりして遊んだ光景に目をこらすと、土間に穴を掘って宝を埋めたことを思い出す。宝を埋める、というのが流行った頃、私たち姉妹は、サッちゃんの姉妹と組み、まず初めにサッちゃんの家のそばに共同の穴を掘って埋めた。

 ところが、ほどなくして、その穴が荒らされたのだった。

 「きっとモトコちゃんだ。あの時、こっちを見てたもの」


 ぜったい安全な場所を求めて、今度はうちの土間にせっせとシャベルを突き立てたのだった。

 もっとも、何日もそこに落ち着いてはいなかった。あまりの安泰さに退屈し、私たち四人は再び暗く狭い土間にこもると、またまたシャベルを突き立てずにいられなかったのだ。



問 「あまりの安泰さ」という表現から読み取れる「私たち」の気持ちを答えなさい。



e: これは「土間」に「宝物」を埋めた思い出ですね。

F: 初めに埋めた「宝物」が何者かに荒らされるという「大(?)事件」が起こります。

e: 目撃されたというだけで疑いをかけられた

F: 「モトコちゃん」の宝を

e: 今度は仕返しに掘り返したあと

F: 「ぜったい安全な場所を求めて」

e: 「うちの土間にせっせとシャベルを突き立てた」

F: 私たち四人でしたが……

e: 「あまりの安泰さに退屈し」てしまいますね。

F: 万全の態勢でモトコちゃんの”反撃”を待っていたのに

e: ナンにも起きないので拍子抜けしてしまったという訳ですね。

F: そのときの気持ちが

e: 「あまりの安泰さ」という風に表現された?

F: 「安泰」がなによりのはずなのに

e: スリムを求める気持ちは”平穏無事”ではどうにも我慢できない?

F: 何かが起こるのを期待しているにもかかわらず

e: 何も起こらないことを何か物足りなく感じる気持ちですか?

F: 心の奥底で何か”問題”が起こることをひそかに待ち望んでいるんですが……



 なんとまあ、いろんなことがあったろう、たっぷりと充分に。

 それなのに私は、「おばあちゃんの家」に引っ越すと同時に、子ども時代が中途で断ち切られたように思わずにはいられないのだ。不本意に捨てられた教科書のように。赤いコートをじっとにらんで、乗りこえたつもりになっていた失われたものへの思いは、心の底で、ずっとくすぶっていたのだ。



問 「赤いコートをじっとにらんで、乗りこえたつもりになっていた失われたものへの思いは、心の底で、ずっとくすぶっていたのだ」という表現から、どのようなことわかりますか。



e: これはちょっと手強いですな。

F: 「私」の子ども時代の思い出といえば…

e: 「玄関、廊下、茶の間、四畳半、台所、お風呂、トイレ……」

F: といった「子ども時代の風景から、または手触りから」甦みがえってきます。

e: 同じように、教科書を捨てられてしまった「私」の

F: 「子ども時代が中途で断ち切られたよう」な”悲しみ”は

e: その時、目に映っていた「コート」の赤い色と共に

F: 深く「私」の心に刻み込まれています。

e: 「コート」の赤い色が強烈に鮮明だったんでしょうね。

F: あるいは、そういう忘れられない”苦い”思い出だったからこそ”赤”はよりいっそう印象づけられたのかもしれませんね。

e: 「私」にとって”赤”は”おどおど”しい色、って感じかな?

F: ”グミの実は赤い”



 むろん、もっと不本意に、もっと決定的に、もっと苛酷に、子ども時代に訣別させられた人々のことを思えば、こんなのが寝言であることは、いうまでもないのだが。



問 「もっと不本意に、もっと決定的に、もっと苛酷に、子ども時代に訣別させられた人々のことを思えば」とありますが、たとえば君はどんな人々を思い起こしますか。


 ---そして、そんな寝言を言うような人間だからこそ、さらに、こんな寝言まで言うのだ。すなわち中途で断ち切られたという思いが、子ども時代をきっぱり「過去」にするのを阻み続けるものだから、私は、ずるずると子ども時代に関わり続けることを選んでしまったのかもしれない、子どもの本を通して、などと---。


問 「子ども時代に関わり続けることを選んでしまった」のはなぜですか。



e: 直前に「子ども時代をきっぱり「過去」にするのを阻み続ける」とありますね。

F: つまり「子ども時代をきっぱり『過去』にする」ことがどうしてもできないんですね。

e: なぜなら、「子ども時代が中途で断ち切られたように思わずにいられな」かった「私」ですから。

F: ”本意”の上での別れではなく

e: ”不本意”に「訣別させられた」という

F: 承知の上と言いますか

e: 納得の上

F: ではないですからね。

e: そういう思いが「子ども時代に関わり続けることを選」ばせたと…

F: 楽しかったはずの「子ども時代」が自分の意志とは

e: 関係のないところで不意に断絶させられてしまったという思いが

F: 「私」が「子ども時代」に訣別することを拒んでいるのですね。

e: 無理矢理の”訣別”が

F: 「子ども時代」は”過去”のものだと

e: ”割り切る”ことができないということでしょ!

F: ”おとな”になっても……

e: 「赤いコート」と言い「黒い鍵」といい

F: あとは「土間の穴」ですか?

e: 言い方は悪いですが、”グロテスク”な思い出になっちゃったということですかね……

F: 「グロテスクへの招待」?

e: 手塚治虫

F: 思い出は赤いランドセルとともに……

e: ”忌まわしい”記憶は思い出とは呼ばない!?

F: ”記憶”と「思い出」とは違う?

e: 記憶も浄化されれば思い出になるでしょうが。

F: 忌まわしい記憶は浄化されることがないでしょうから

e: 「思い出」になることはない?

F: 「思い出の小瓶」ではなく

e: 「記憶の小瓶」なんですね。


 記憶はマゾヒストである。あなたを辛い目に合わせるのが得意である。
 (クロード・オリヴェンシュタイン)






栴檀は双葉よりかぐわし

 児童文学界きってのストーリーテラー高楼方子のルーツが察せられる面白いエッセイ集だ。
 かつて講演の中で聞いた子ども時代の話。

 中学生だった高楼さんは「飛ぶ教室」を読んでいて、その面白さにはまった。そして、この面白いお話はケストナーというおばさんがいなければ、この世に存在しなかった世界なんだ!という事実が閃光のように自分に衝撃を与えた。そう語られた。その時にも、なるほど。物語というものの魔力を知っている方だからこその作品群だよな、と、高楼さんの世界のルーツに繋がる糸を掴んだ気がしたものだ。
 でも、この数々の幼児期の瞬間を切り取った記憶を知ると、さらに根元的なところまで糸が繋がってくる。
 無論、ひとつ一つのエピソードは普通に読んでも趣のある楽しい話だ。そしてそれ以上に「物語に傾倒しなければならなかった彼女」の繊細にして冷徹な大人達への目にも気付くことになる。(by おっか3より)

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家庭教師-『過去問との闘い』-中学受験国語専科

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家庭教師-『過去問』と闘う-中学受験国語専科


e:゛われ闘う。故に、われあり゛

F:闘う=解くに置き換えればいいですね。

e:『過去問』を解くということは

F:問題と゛格闘゛しているということですね。

e:これはお子さんだけでなく

F:゛われわれ゛もです!

e:またお子さんも『過去問』を通して

F:゛われわれ゛と戦っているんですね。

e:゛闘う゛と゛戦う゛とは違うんですか?

F:対『過去問』

e:対゛家庭教師゛

F:レベルが高いから

e:゛壮絶な゛

F:゛闘い゛&゛戦い゛になります。

e:まさに真剣勝負?

F:お互い゛死力を尽くして゛

e:それこそ、『過去問』と゛お互い゛の

F:礼儀でしょう。

e:2~3時間が終わったあとは

F:もう゛へとへと゛状態ですね。

e:もうお互い、口もききたくないという感じでしょう。

F:で、親御さんとの話になっちゃうんです。

e:お子さんは゛大人の話゛をよく聞いてますよ。

F:うかつなことは言えないてすよね。

e:つねにお子さんを゛意識゛して話さなければならないでしょう。

F:゛われわれ゛と゛親御さん゛の意見は

e:始めは食い違っていてもいいんです。

F:しかし、議論をして最終的に一致する必要があります。

e:お子さんにとって、議論の過程を聴かせることが重要なんですね。

F:まさしく゛授業゛を見せている感じなんですよ。

e:意見が一致することよりもですか?

F:゛一致する゛ことの方が、もちろん、大事ですね。

e:じゃあ、国会は参考にはならない?!

F:゛一致しない゛ですからね。

e:゛一致しない゛と゛不毛゛の議論になってしまう?

F:受験の世界では゛一致゛させるべきでしょう。

e:でないと、お子さんは゛迷走゛しますか?

F:゛統一性゛至上主義でいくべきでしょう。

e:われわれと親御さんの考えは統一され

F:合格するまで゛ブレ゛ないことですね。

e:゛船頭多くして船山登る゛って感じでしょうか?

F:お子さんにとって、゛だれ゛に聞いても同じ答がかえってくることが

e:安心につながる

F:少なくとも、こと、受験に関しては、ですね。

e:われわれも親御さんも同じ方向に向いていなければなりません。

F:『開成』と『筑駒』のボートレースがありました。

e:0.05秒の争いですね。

F:息が合わなければ勝てません!


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高楼方子 『記憶の小瓶』



内容(「MARC」データベースより)

幼少期の思い出は、みな幸福な記憶として輝くのだろうか?幼いこころのまっすぐさが、ときにおかしくもあり、せつなくも。繊細で鋭く、まっとうで滑稽な、幼い日々を綴ったエッセイ。



「この極私的な回顧話に意味があるとすれば、その一点につきるでしょう。」



 あの時私が着ていたのは、光沢のある赤のスプリングコートだった。あの瞬間のあの場の光景は、コートの赤と重なって見える。どう答えてよいかわからず、じっと伏せていた目に、その色だけが焼きついていたのかもしれない。

 あの日を境に、官舎は遠のいた。

 官舎から見る「おばあちゃんの家」は、すぐそこにある暮らしの一部だった。だからこそ、引っ越したからといって、何の違いもありはしないと思っていたのだ。けれど、基本の足場がどこにあるか、意外にもそんなことが、行動と心持ちを左右する力を有していたのだ。



問 「おばあちゃんの家」とありますが、「私」にとってそれまで「おばあちゃんの家」とはどのような存在でしたか。



問 「何の違いもありはしないと思っていた」とありますが、実際は「私」の予想に反してどのような変化がありましたか。



e: 「おじいちゃん」とか「おばあちゃん」は陰に陽に”影響力”は大ですな!?

F: そういう物語は今も昔もよく出題されます。

e: 身近な存在ではなくなってきましたからね。

F: 高度経済成長後に顕著になってきましたでしょ!

e: 東京オリンピック以後?

F: 大阪万博以後?

e: マックが銀座に上陸してから?

F: 断絶の世代の始まりですね。

e: ”積木の部屋”?

F: だんだん疎遠になってきた祖父母

e: 祖父母の死も身近じゃなくなってきた?

F: 想像の世界の人たちになってきましたね。
e: バーチャルな存在に、ねぇ……

F: 日本昔話で知る

e: ということで現実の世界では”祖父母”の影響力は皆無!?

F: 将来、”祖父母”にからんだ児童文学を書く作家は出てこなくなるんじゃないかと…

e: ほとんど”おかん”か”おとん”がからんだ物語ばかりですか!?

F: 動物の世界じゃ、”祖父母”が周りにいるなんて、そんなにないでしょう?

e: 人間も”動物”に回帰?

F: さて、「おばあちゃんの家」はどのような存在だったんでしょう?

e: 「おばあちゃんの家」は「すぐそこにある暮らしの一部」だったとありますね。

F: 普段あって当たり前

e: 取り立てて意識する存在のものではなかったのですね。

F: ですから、「引っ越したからといって、何の違いもありはしない」

e: 何か衝撃的な出来事が起こり

F: 「おばあちゃんの家」がある日、突然変貌してしまう

e: なんてことは想像もできなかった?

F: しかし、実際は「基本の足場」が

e: 「官舎」から「おばあちゃんの家」に変わってしまったことで

F: 意外にも「行動と心持ちを左右」されてしまいましたね。

e: 具体的にどう変わっていったかは、この後に書かれてますね。

F: 昨日まで住んでいた「『うち』(官舎)のそばを、同じ調子で駆け回ることはできなかった」

e: 慣れない「おばあちゃんの家」に「『遊ぼう』と呼びにくる友だちの声は、おどおど響き、前のように弾むことはなかった」

F: 「私はまもなく官舎の方へは行かなくなり、向こうからは、一番よく遊んだサッちゃんが、ごくまれに、ぽつりと訪ねてくるだけになった」

e: そういう予期せぬ”変化”が起こり

F: そんなに遠くない距離の”引っ越し”が

e: 「わたし」の生活に劇的な変化をもたらしたという訳ですね。



 前と同じつもりで官舎の友だちを訪ね、鬼ごっこ始めても、すでに別の人の家になってしまった「うち」のそばを、同じ調子で駆け回ることはできなかった。そして、「おばあちゃんの家」の---もう私の家に違いなかったのだけれど---暗く陰った玄関のドアをギイッと軋ませて、「遊ぼう」と呼びにくる友だちの声は、おどおどと響き、前のように弾むことはなかった。私はまもなく官舎の方へは行かなくなり、向こうからは、一番よく遊んだサッちゃんが、ごくまれに、ぽつりと訪ねてくるだけになった。

 三歳から八歳まで丸六年過ごしたあの官舎を、子ども時代の風景から、または手触りから、切り離すことはできない。

 玄関、廊下、茶の間、四畳半、台所、お風呂、トイレ……。官舎の細部に目を凝らせば、それを伝って記憶は際限なしに甦る。

 そう、玄関の鍵一つだって---。



問 「玄関の鍵一つ」はどのような気持ちを「私」に思い出させるものなのですか?



e: 「官舎」での楽しかった毎日の思い出は

F: 「子ども時代の風景から、または手触りから、切り離すことはできない」

e: 「玄関、廊下、茶の間、四畳半、台所、お風呂、トイレ」を伝って

F: 「記憶は際限なしに甦」ってくると「私」は語っています。

e: 「玄関の鍵」をめぐる記憶がその一つなんですね。

F: 「黒い鍵を思い描けば、それが、姉によって魔法のように開けられた、ある晩のことにつながっていく」とあります。

e: ひどい悪さをして姉を泣かせた「私」は

F: 烈火のごとく怒った母によって外に放り出され、

e: 「鍵」をガチャリとかけられてしまいますね。

F: 半狂乱になって泣き叫ぶ「私」でしたが…

e: なんと!意地悪された姉が

F: いじわるされ、「私」に泣かされたはずの

e: 同じ位、半狂乱になって

F: 「許してあげて!」と泣き叫びですからね……

e: ”姉妹愛”に戸惑う母親かな?

F: そして、母親ともみ合ったあげくに

e: 子どもの力ではとうてい開くはずがない

F: 「鍵」を開けてしまった!?

e: ”火事の馬鹿力”なんて言いますからね…
F: 一瞬泣きやんで、ぽかんと顔を見合わせた
e: あら、開いちゃった!?って感じですか?
F: その後、また「私」は泣き始めたという。

e: なぜまた泣き始めたんでしょうね……

F: 「私が悪さをしたというのに」

e: 結局、”二つ”の感情が交差したということなんでしょうか?





 子どもの頃ぐっとこらえた涙があふれそうになった。
 自分はまだ小さくて「大人」というものが絶対だった頃、何故あの時大人にあんなことを言われたのか、今でもわからないことがたくさんある。その大人とは家族であったり、先生であったり、友達のお母さんだった。自分が大人になった今では「親といえども、先生といえども、みんな人間」と割り切るようにはなったが、こうやって思い出すことがある以上、やはり子どもの頃の繊細な心に何かしらの衝撃を受けてしまったのだと思う。この本を読んで、その頃ぐっとこらえた涙があふれてしまいそうになった。時には苦い記憶としてよみがえるけれども、私にはこの記憶とあの頃の感情を忘れないでいようと思う。(by tsuyukusaより)

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高楼方子 『記憶の小瓶』



内容(「BOOK」データベースより)

幼少期の思い出は、みな幸福な記憶として輝くのだろうか?繊細で鋭く、まっとうで滑稽。いまピカイチの児童文学作家・高楼方子さんの幼い日々。



「人の幼少期の話は、自分の幼少期の記憶を呼び覚まします。」



 曾祖父母と祖父母のいる家で、父母と私たち姉妹の四人家族が暮らすのは、なにかと不自由だったために、二歳半の時に近くの官舎に移り住んだ。けれど、一年生の冬に曾祖母が亡くなってしまうと、「おばあちゃんの家」の住人は祖父と祖母だけになってしまった。私たち家族は、再び、「おばあちゃんの家」、つまり私の生家に戻った。三年生になってまもなくのことだ。
 「いい?間違わないでね、今日は学校からまっすぐ、おばあちゃんの家に帰るんだよ」

 そう言われた日、間違わずに「おばあちゃんの家」に帰ると、官舎のおばさんたちが、引っ越しの手伝いに来ていた。「おばあちゃんの家」にそのおばさんたちがいる、という光景は奇妙に映った。



問 「『おばあちゃんの家』に帰ると、官舎のおばさんたちが、引っ越しの手伝いに来ていた」とありますが、この様子を見た「私」はどのような感じを抱きましたか。



e: 高楼方子ですか!?

F: 今回は”随筆”ですね。

e: エッセイもたまには良いでしょう。

F: 向田邦子、幸田文もいいでしょうが……

e: ”栴檀は双葉よりかぐわし”!?

F: 『十一月の扉』『時計坂の家』

e: 過去にいろんな学校で出てましたね。

F: さて、直後に「『おばあちゃんの家』にそのおばさんたちがいる、という光景は奇妙に映った」とあります。

e: 子どもでなくても”奇妙”に思うでしょう?

F: その日は、間違えないようにわざわざ

e: 「官舎」ではなく「おばあちゃんの家」に帰ったはずなのに……

F: そこにいたのは「官舎」のおばさんたちですからね。

e: ”奇妙”に思うのは当たり前でしょ。

F: ”奇妙”な感じがしたのはそれだけじゃないでしょう。

e: 「私」は「官舎」に住んでいた。

F: 「官舎」のおばさんたちとは顔見知りだった。

e: 今まで何度も顔を合わせていたでしょうね。

F: それは「官舎」という狭い場所の範囲内のことですね。

e: 「おばちゃんの家」と”おばさんたち”

F: どちらもよく知ってはいますが

e: 「おばあちゃんの家にいる官舎のおばさんたち」というコラボ?

F: 初めての光景?

e: その光景が「奇妙」に映って

F: 何か”変”じゃないという気持ち

e: 一言でいえば?

F: 何でしょうね……



 「まあちゃん、ごめん、もういらないと思って、一年と二年の教科書、おばさん捨てちゃった」


 足が止まり、同時にどっと、なんともいいがたい悲しみがこみあげてきた。



問 「なんともいいがたい悲しみ」とありますが、なぜ「私」は「悲しみ」を抱いたのですか。



e: 当時の「わたし」は小学生何年生?

F: 三年生ですからね…

e: 「なんともいいがたい悲しみがこみあげてきたんでしょう」!?

F: 「どう答えてよいかわからず」

e: 突然訪れた訳のわからない”悲しみ”にただ茫然自失状態?

F: まだ子どもですから、おとなのように

e: 漠然とした”悲しみ”に浸ることはできないでしょう。

F: しかし、この”悲しみ”は「じっと伏せていた目」に映っていた

e: 「赤いスプリングコート」とともに

F: 「わたし」の心の奥深く刻み込まれていたのです。

e: 「わたし」は後でこの時の”悲しみ”を振り返っていますね。「不本意に捨てられた教科書のように」

F: 「赤いコートをじっとにらんで、乗りこえたつもりになっていた失われたものへの思いは、心の底で、ずっとくすぶっていたのだ」

e: 正しく、「不本意に捨てられた教科書のように」

F: 「子ども時代を中途で断ち切られたように思わずにはいられない」

e: 教科書が”不本意”に捨てられたことは

F: 「子ども時代を中途で断ち切られた」という感情につながっているんでしょうね。

e: 思い出が一瞬のうちに捨てられたという感覚ですかね。

F: 幼い頃からのいっぱい詰まった思い出が

e: 一気になくなってしまったような……

F: 赤い「その色だけが焼きついていた」……

e: 「あの瞬間のあの場の光景は、コートの赤と重なって見える」

F: 「どう答えてよいかわからず」

e: 「じっと伏せていた目に」







高楼方子エッセイ『記憶の小瓶』2004年(クレヨンハウス)

高楼方子(たかどのほうこ)1955年函館市生まれ。東京女子大学文理学部日本文学卒業。児童文学作家。『十一月の扉』(1999年リブリオ出版、産経児童出版文化賞フジテレビ賞受賞)

 香しい小瓶

 プロローグとして小さな字で「人の幼少期の話は、自分の幼少期の記憶を呼び覚まします。」という一文があります。そして謙虚に「この極私的な回顧話に意味があるとすれば、その一点につきるでしょう。」と次の文が続くのです。  子供の頃の思い出は、楽しかったことも覚えているにはいるけれど、どちらかかといえば怖かったこと、心配や不安、居心地の悪かったことなどの方が、鮮明な気がします。
 定かでない記憶であっても、自分の中に定着したその場面には、なじみ深いものがあると思うのです。
 高楼さんは、このエッセイでそれをとても丁寧に文字に写し得ています。
 本当であろうが事実と異なっていようが、ここではもうそれは問題ではないのです。こんなふうだった?……ということでも、高楼さんのフィルターを通して、高楼さんの中に在り続けた”光景”を見るのが楽しいのです。
 プロローグの暗示にかかったわけでもないでしょうに、しばしば私は私の中の、似たような記憶と対面することになりました。
 天井の木目の中にいる変なもの、納屋の隅の暗がり、吠える犬のいる家の前を通る時の緊張感、祖父母の家の匂い……。さまざまなものを思い出し、自分の中に仕舞われていたそれらに驚きました。自分が確かに子供時代を生きていたということが、今にしてわかります。
 高楼さんの各章に描かれた幼い姿に思いを馳せ、子供の、蕾のような言葉の発露を楽しく、ある意味では切なく感じながら読みました。
 普段は意識に立ちのぼってこないこどもであるけれど、なんと香しい小瓶であることよ……と、ひとり悦に入って楽しんだ作品でした。(byシンプルカンパニーより)

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井上ひさし 「春休み」



むずかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをゆかいに
ゆかいなことをまじめに
       書くこと

      井上ひさし



 自分にも家出の経験があったこと思い出したのだ。やはり春休みだった。弟としめしあわせて収容されていた擁護施設を脱け出し、工事中の市営住宅に泊まったことがある。近くに住んでいた人が勘づいて交番に連絡し、それで養護施設に連れ戻されてしまった。何が原因だったのか。いじめっ子に毎晩のように呼び出されて殴られるのがいやになったのか、家が恋しくなったのか、あるいはほかの理由だったのか、もう三十何年も前のことですっかり忘れてしまった。ただ、なにか訴えたいことがあったのはたしかだ。これだけは言っておきたい。だがそれを言葉で言い表したのでは弱すぎる。実際に動いてみせて、その意味を大人に汲み取ってもらいたい。そんなつもりがあって脱走を企てたような気がする。だからひと晩で連れ戻されたときは口惜しかった。いまから考えると、表現がまだ完結しないうちに連れ戻されたから、あんなに口惜しかったのではないか。表現が完結すれば、それで気がすむのだ。諦めがつくのだ。
 「じつは書きものの参考にしようと思っただけです。ありがとう」

 「ほんとうにそれだけですか」

 刑事がなかなか電話を切ろうとしないので、こっちのほうから送受器を置いた。



問 「『ほんとうにそれだけですか』……送受器を置いた」とありますが、「刑事」は「わたし」のどのことばを気にしていたのですか。また、そのことはどの表現から判断できますか。



e: 具体的に”刑事”に質問をしていますね。
F: 「わたし」が「兄弟で家出したという届けは出ていませんか」というところですね。

e: それを気にして

F: 「わたし」は何か知っていると思ったんでしょう。

e: それで、なかなか電話を切らなかった?

F: このときの気になることばを受けて

e: 「あなたの気になさっていた兄弟が…」

F: という”刑事”のことばがあるのです。



《第三場面》(転)

 「猫殺しの男」の登場で、意外な展開になる場面



 あの兄弟は今夜も目の前の建売住宅へやってくるだろうか。それはわからないが、八時すぎに仕事部屋の灯りを消した。その方が入りやすいだろう。たいくつしのぎに低く音楽をかけ、机の上に敷いた座布団にあぐらをかいた。もちろん窓は半分ばかり開けてある。


 台所から洩れた灯りが並んでおしっこをする二人をぼんやりと浮かびあがらせている。どこかで甘ったるい鳴き声がした。

 「このへん猫が多いなあ」

 「死んだ猫も多いよ。今朝だって三匹もいたもの」


 兄は身体をゆすってから雨戸に寄った。弟もひとゆすりしてその後に従った。うまく雨戸が開いた。ガラス戸も開いた。だが、そのとき、だれかが庭に回ってきた。

 男は庭にしゃがむと、ビニールからなにか掴み出し、そのへんにひとつひとつ丁寧に置いてまわっている。

 とっさにこの男が猫殺しだとぴんときた。

 おまけにうちの飼い猫のケンもこの男のまいた毒団子で殺されている。だから「あんたはどこのだれだ」と怒鳴ってやってもよかったのだが、それはできなかった。 



問 「『あんたはどこのだれだ』と怒鳴ってやってもよかったのだが、それはできなかった」のはなぜですか。



e: 「わたし」はなんとかして「少年たち」の家出までした思いを遂げさせたい、と。

F: 「少年たち」に危険がおよばないように見守りつつ、ですね…

e: それで、目の前の「建売住宅」に二人の宿を
F: 確保させてやりたかったのです。

e: 「少年たち」が「男」をやりすごすことを望んだという訳ですね…



《第四場面》(結)

 結局「少年たち」は「母親」のもとに戻るという場面



 こっちが黙っていれば、あの兄弟は男をやりすごすだけでいい。それだけで今夜の宿が確保できるだろう。

 ところが声をあげたのは兄弟のほうだった。


問 「ところが声をあげたのは兄弟のほうだった」とありますが、この時の「わたし」の気持ちを答えなさい。



e: 「わたし」の思いとは裏腹に

F: 「少年たち」は自分たちの「宿」を心配するよりも

e: 「男」の”不正”を暴く?

F: 「男」の悪事に敢然と立ち向かうことを選択したのですね。

e: ここには「わたし」の”意外な”気持ちと

F: ”驚き”がありますね。



 「今朝もずいぶん猫が死んでたけど、おじさんが下手人だったんだね」

 「そんなことしちゃいけないんだぞ。学校の先生も言ってたもの。みなさん、どんなにうるさいと思っても毒団子で野良猫を退治しようとしてはなりませんて」

 「なんだ、おまえたちは」

 「なんでそんなところにいるんだ。おまえたちがこの建売りを買ったのか。そんなことはできないよな。となるとおまえたちは住居侵入罪をおかしていることになるな。交番に行こうか」

 「いやだよ」

 二人は左右に分かれて縁側から飛び出し、門の方へ走り去った。わたしは男に声をかけた。
 「団子を拾って消えてくれ。さもなきゃわたしが交番にお供するが……」

 わたしの声がとげとげしていたとすれば、それは男のせいで兄弟がまた宿さがしをしなければならなくなったじゃないかと腹を立てていたからだろう。もっとも、あくる日、男に感謝しなければならないことが起きた。警察の保安課に電話すると、例の刑事がこう言ったのである。

 「あんたの気になさっていた兄弟が昨夜遅く家へ戻りましたよ。今朝、母親と三人で挨拶にきました」

 「それで、母親の再婚について二人はなにか言ってましたか」

 「べつになにも。家出して胸の中がすっきりしたんじゃないんですか」

 「すると、つまり……わけだ」



問 「……」の部分にはいることばを答えなさい。



e: 「兄弟」が自分の家に”自首”?

F: 自らの意志で自分の家に戻ったので

e: ”刑事”のせりふにありますね。

F: 「家出して胸の中がすっきりしたんじゃないか」ということばから察しがつきますよね。

e: 「家出」してまで親に訴えたかった気持ちに
F: ”整理”がついたということでしょう。



 「はあ……?」

 「いや、いまのはこっちのひとつごとです。ありがとう」

 ひょんとするとあの毒団子の男は、二人の兄弟のために、あるきっかけをつくってやったことになるのかもしれない。今度、団子を置きにあらわれたら二人にかわってお礼のひとつも言わなければならないと思っているのだが、男の姿はあれっきり見えないようである。



問 「今度、団子を置きにあらわれたら二人にかわってお礼のひとつも言わなければならないと思っている」とありますが、この時の「わたし」の気持ちを答えなさい。









《作者紹介》

井上ひさし(いのうえひさし)1934年~。山形県生まれ。小説家・劇作家。主な作品小説『青葉繁れる』『吉里吉里人』『四千万歩の男』戯曲『道元の冒険』『頭痛肩凝り樋口一葉』など。
井上ひさし「春休み」(『ナイン』所収)講談社文庫。ジュニア文学館。大都会のさまざまな風情を背景に、そこに暮らす人々の人間模様を綴った短編集代表作「ナイン」をはじめ「握手」など16編。

 市川市国分町三丁目に転居したのは昭和四十二年(1969年)十月。市郊外の下総国分寺そばに建ち並ぶ建売住宅の一つで、ひさしが三十二歳。「ひょっこりひょうたん島」。

 ひさしが家族と住んだ市川市北国分一丁目三の二十番地の建売住宅は小塚山公園にほど近い。ひさしが江戸川べりの高台と書いているとおり、以前は川を見下ろすことができたそうだ。現在では北総開発鉄道が開通し、矢切駅が歩七、八分のところに出来ている。JR市川駅から市川松戸線を通るバスに乗って、バス停留所名・栗山坂下で降り、上り坂を上がり、化学療法研究所や式場病院の北側を通った。バス停から15分くらいにはかかる。栗山坂下は現在、矢切駅。付近に水上勉が住んでいたこともある。式場病院は散策したり娘と遊んだ所。また、永井荷風も同病院を訪れている。


《読解のポイント》

 問題を解くに当たって必要とされることは、登場人物の背景と、登場人物どうしの関係を整理し、場面ごとに登場人物の心情を読み取ることです。全体を通じて物語の内容が整理できているかどうかが問われる問題が最後の方の設問に出てくる。本文全体から必要な要素をまとめることが求められる。

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井上ひさし 「春休み」



《第一場面》(起)


 「わたし」が「家出少年たち」の存在を知る場面


 明け方、窓が白くなった。壁に当たった朝の陽光が仕事部屋の窓に照り返しているのである。これも畠が住宅になって生じた変化のひとつだろう。煙草の煙を追い出そうと思って窓を開けた。深呼吸をふたつかみっつしてから床につこうと窓近くへ身体を寄せたとき、建売住宅の縁側の雨戸が内側から静かに開いた。


 小学の高学年ぐらいの、西武ライオンズの野球帽をあみだにかぶった男の子が、読売ジャイアンツの野球帽をかぶった小さな子の手を引いて庭におりた。ジャイアンツは小学の低学年といったところである。ライオンズはガラス戸と雨戸とを丁寧に閉めた。二人とも背中に小さく細く縛りあげた布製の塊を背負っている。どうやら寝袋らしい。肩から斜めにさげているのは水筒だ。

 「今日は登校日か」



問 「今日は登校日か」ということばに込められた気持ちを答えなさい。



e: 誰の言葉ですか?

F: これは「兄」のことばでしょう。

e: この後を読んでいくと、「弟」の方は登校するつもりなんですかね…

F: 「学校は行かなければならないところ」と思ってます。

e: 「学校へ行く」ことを考えてますよね。

F: ところが、一方、「兄」の方はどちらかといえば、同級生に見つからずにどうやって過ごすかを考えています。

e: 「登校日」は同級生に見つかりやすいですからね。

F: と言っても、「兄」も学校へ行かないことに

e: 少しは気がひけるところはあるでしょう……

F: 学校の近くにはいたくない、離れたい

e: で、「筑波博へでも行くか」



 「どうするの」

 「学校へ行くの」

 「行ったらばれるぞ」


 「お金はまだあるよね」

 「三万ちょっと」

 「ぼくも二千円もってる」

 二人は身体をゆすってから門のある方へ歩いて行った。門は建物の向こう側にあって、わたしの立っているところからは見えない。深呼吸するのも忘れて、わたしはしばらくのあいだぼんやりと見おろしていた。



問 「深呼吸するのも……庭を見おろしていた」とありますが、この時の「わたし」の気持ちを答えなさい。



e: これは簡単ですね。

F: 目の前の「建売住宅」に「家出少年」を見つけたときの気持ちです。

e: 要は、二つの気持ちを書けばいいんでしょう。

F: 「思いがけないことに出くわせたときの気持ち」と

e: あと一つは?

F: 「この少年たちへのおとなとしての気がかりな気持ち」ですね。



《第二場面》(承)


 「知り合いの刑事」に電話しながら、結局「家出少年たち」のことを言わなかった場面



 「お嬢さんがまた家出ですか」

 わたしが名乗ると、刑事はやれやれといった調子で言った。女優の卵の次女が去年の夏二度つづけて家出をしたことがあって、刑事とはそのとき知り合った。



問 「『お嬢さんがまた……といった調子で言った」とありますが、「刑事」が「やれやれといった調子」だったのはどうしてですか。



e: これは難しいでしょう?

F: おとなの気持ちの読み取り

e: それも”刑事”の?!

F: ポイントは”刑事”と「わたし」の関係ですね。

e: ”関係”

F: 親密の度合いですね…

e: ”刑事”と「わたし」がどれだけくらい親密かということですか?

F: 全く見知らぬ間柄じゃないですね。

e: 「娘の家出事件」を通じて

F: ”刑事”と「わたし」は親密になっていることがわかります。

e: 身近に感じている、って訳ですね…

F: そんな「わたし」にこの”刑事”は何を感じているかを読み取るということです。

e: さて、子供たちは読み取れますか……?「わたし」の立場で考えるのが基本でしょ!

F: もちろん!”父親”としての、ですね。



 「そうではないんですが、家出人についてすこしうかがいたいことがあって……。春休みは家出人が多いんですか」

 「子どもの家出がふえますな」

 「兄弟で家出したという届けは出ていませんか」

 「出ています。駅前の美容院の女主人が三日前の晩に署へかけこんできましたよ。彼女は未亡人です。ところが通いの、若い男の助手が夜になっても帰らなくなった……」

 「つまり特別の間柄になった?」

 「そう。結婚することになった。それが二人にとってはおもしろくなかったらしい」

 「なるほど」

 「じつは……」

 と言いかけてそっと声をのんだ。



問 「『じつは……』と言いかけてそっと声をのんだ」とありますが、「じつは……」と言いかけて言わなかったのは、どんなことですか。また、「わたし」が「そっと声をのんだ」のはなぜですか。



e: まず、どんなこと?

F: ”刑事”に電話していることからわかるのは?

e: 「家出した少年たち」のことを伝えようとしたことでしょ。

F: 家の前の「建売住宅」に

e: 未入居の、ね。

F: そんな場所に家出をしたらしい「兄弟」がいること

e: 通報しようとしている?

F: どのように”報せ”ようとしているのか、

e: その内容を答えればいいんですか?

F: 次に、なぜ「わたしはが「そっと声をのんだ」のでしょうか?

e: ポイントは「わたし」の過去の”家出の経験”ですね…

F: そのとき、何を感じたか?

e: 自分もかつて家出したことがあり

F: そのとき、すぐに連れ戻されて

e: ”悔しい”思いをしてますよね。

F: 口惜しい思いをしたことがあり、「少年たち」には…

e: 遂げさせたい?

F: さて”何”を?




 小説「ナイン」の舞台は80年代に設定。そこからさらに20年前のことを振り返る物語。20年前の野球少年たちも、いまでは大人になり、それぞれの職業、それぞれの生活の場へと「ばらばらになって」散っていきました。少年たちが住んでいた商店街の風景も、その後の20年で大きく変わっていく。その時間の経過とともに何が失われたか、20年前の少年たちは何を持っていたのかていねいに読み取る。(NHK高校講座現代文「小説を読む」より)

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井上ひさし 「春休み」



内容(「BOOK」データベースより)

東京の下町、浅草橋、門前仲町、小岩…。都心の四ツ谷、赤坂、新宿など、大都会のさまざまな風情を背景に、そこに暮らす人びとの人間模様を綴った短編集。新道少年野球団の選手のその後の消息を描いた表題作「ナイン」をはじめ、「太郎と花子」「傷」「記念写真」「会話」「握手」など、佳編16話収録。



【内容紹介】

懐かしい町の匂いを求めて、私はときどき駅に降りてみる。四谷しんみち通り、20年前の野球少年たちはどうしているだろう。ぷ-んと木の香をさせていた職人のおじさんは元気にしているだろうか。バスの窓から見る風景も、雑踏の中で垣間見るドラマも、東京の町はすべて通りすがりの私の胸に熱く迫ってくる。



《導入部》

 「わたし」を取り巻く状況の説明

 「わたし」の家の前に「建売住宅」ができたことによる変化



 建売住宅の工事が八棟とも全部終わったという報せがあったので、しばらくぶりで東京の東の郊外にある自分の家へ戻ってきた。仕事部屋は二階の西の隅にある。窓も西に向かって開いていて、その窓の机にしがみついて文章を紡ぎ出すのがわたしの生業である。


 留守中に変事がおこっていた。ケンという名の雄の飼い猫がカニの肉に毒を混ぜてこねた団子を喰って死んだのだ。そして当然のことだけど仕事部屋の窓からの眺めも変わった。畠のさらに向こうが市所有の自然公園で、いつも春休みの頃には来たの芽が一斉に芽を吹いてぼうっと樺色に煙って見えたものだが、その、心がうきうきする景色は建売住宅の白壁にぴしゃりととさえぎられてしまった。


 夕闇に溶けて消えていく白壁を眺めながらそんなことを考えていると、壁の上部に穿たれた座布団ほどの大きさの屋根裏の高窓にちらと灯影が動いた。室内に職人が残っていて最後の仕上げに精を出しているのだろうか。とはいえ灯影の動いたのがほんの一瞬というのはおかしい。だれかが居残って仕事をしているのなら、高窓にずっと灯がうつっていてもよさそうなものだ。責任者かなんかが見回りにきたのだろうか。小さな疑問を抱いたまま窓を閉めて机に向かった。



問 「小さな疑問を抱いたまま窓を閉めて机に向かった」とありますが、この時の「わたし」の「疑問」を、心の変化にしたがって答えなさい。



e: 井上ひさしと言えば『11匹のねこ』

F: 『あくる朝の蝉』

e: 1973年9月「別冊文藝春秋」

F: 「汽車を降りたのはふたりだけだった」で始まります。

e: 「それからぼくらはエゾ蝉の鳴き声にせきたてられるようにして通用門の方へ歩いて行った。」で終わりますね。

F: 思いやりにあふれた兄弟の

e: 特に兄のですね……

F: 短編作品集『四十一番の少年』(文春文庫)日本ペンクラブ:『電子文藝館』

e: 井上ひさしの作品と言えば、こればっかり選ばれる?

F: いろんな学校で出題されてますからね……
e: 中高の教科書にも、でしょ?!

F: この「春休み」といい

e: 「握手」もいいでしょ?

F: 読解の中心は

e: 「家出少年」を見守る「わたし」の心情ですか?

F: 「わたし」は最後まで、少年たちに直接働きかけることはしません。

e: 仕事場の窓からじっと見守り、聞き耳を立てているだけですね。

F: 少年たちが”家出”をしていることに気づいた時

e: 警察に問い合わせては居ますが

F: 結局、少年たちのことを通報せずに終わっています。

e: この時の「わたし」の心情如何?

F: 少年たちの”家出”が終わった時の「わたし」の気持ちの把握が

e: ”メインデッシュ”になるわけですね。

F: 「夕闇に溶けて消えていく……責任者かなんかが見回りにきたのだろうか」

e: この場面での「わたし」の心の揺れを捉える
F: ”心”のゆれと言いますか、微妙な”動き”を読み取るということですね。

e: 建売住宅の窓に灯影が見える

F: この後の物語の展開を”暗示”しています。

e: まだ人が入っていないのに気になる

F: 思い直して

e: 職人が仕上げに来たのだろう

F: それにしては時間が短い。

e: 責任者の見回りだろうか、でも変だ

F: 最後の小さな”疑問”が残ったまま

e: 窓を閉めた……

F: 当時は……


 市川市国分町三丁目に転居したのは昭和四十二年(1969年)十月。市郊外の下総国分寺そばに建ち並ぶ建売住宅の一つ。(「房総の作家」より)

e: で、ひさしが三十二歳ですか?

F: 「ひょっこりひょうたん島」が

e: 貝塚遺跡でもある「小塚山公園」を愛してたひさし

F: 本文のはじめのほうで自宅から眺めて木々の芽吹く季節の美しさが描かれています。

e: バブルの高騰期に邸宅を購入?市川は懐かしいでしょう?

F: 東京に出て来た当時、曽谷に住んでいました。

e: 国分は隣でしょう?

F: 駅は本八幡でしたが、市川駅から国分経由で歩いて帰ったこともありました。

e: 隣と言っても北国分はどちらかと言えば、松戸に近いでしょ?

F: ”矢切の渡し”が近いですからね…

e: 柴又とか…野菊の墓文学碑

F: 今は北総開発鉄道が開通し「矢切」という駅ができ便利になったみたいです。





井上ひさし Profile.
作家・劇作家
市川市文化振興財団理事長
こまつ座代表
1934年11月16日、山形県東置賜郡河西町(旧小松町)に生まれる。上智大学外国語学部フランス科卒業。在学中から、浅草のストリップ劇場フランス座の文芸部兼進行係となり、台本も書きはじめる。戯曲「うかうか三十、ちょろちょろ四十」が芸術祭脚本奨励賞を受賞。放送作家としてスタートする。64年には、その後5年間におよぶNHKの連続人形劇「ひょっこりひょうたん島」(共作)の台本を執筆。現代的センスによる笑いと風刺で多くの人々に愛された。69年には、劇団テアトルエコーに書き下ろした「日本人のへそ」で演劇界にデビュー。72年には、江戸戯作者群像を軽妙なタッチで描いた「手鎖心中」で直木賞を受賞。同年、「道元の冒険」で岸田戯曲賞と芸術選奨新人賞も受賞。以降、戯曲、小説、エッセイなど多彩な活動を続けて、戯曲「しみじみ日本・乃木大将」「小林一茶」で紀伊國屋演劇賞と読売文学賞(戯曲部門)、小説「吉里吉里人」で日本SF大賞、読売文学賞(小説部門)、また「私家日本語文法」「自家製文章読本」「井上ひさしの子どもにつたえる日本国憲法」などもベストセラーになっている。

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国語専科-5・10-中学受験家庭教師


e: 今年もSの『志望校判定』とNの『志望校選定』とバッティングですね。

F:この時期はいろいろな゛形式゛の

e:『テスト』に慣れる?

F:それと、夏休みの゛課題゛を

e:今から?

F:要するに゛弱点゛を洗い出しておくんですね。

e:なるほど、そういう意味でY・N・S。

F:それぞれ、゛特色゛がありますから。

e:偏らないで、満遍なく

F:゛現在゛の自分の実力を知っておいた方がいいということです。

e:夏休み前に!

F:ダブってる場合、どうすればいいかは前に書きました。

e:『過去ログ』を参照して下さい、ということですね。

F:゛5月病゛対策にもなるって訳でしょうね。

e:小学生でも?

F:ですから、SはGWに3日間、゛特訓゛をするんでしょ?

e:そのあたりはよ~く解ってますね。

F:『過去問』をやらせて、気を引き締めるんですね。

e:゛春期講習゛に『過去問』を少しかじって、゛手も足もでない゛状態から

F:GWで多少、解けるようになったという゛実感゛を味わさせるってことですね。

e:先手必勝?!「『過去問』をそんなに早くやらせていいのかしら?」

F:だから、あれだけの゛実績゛がでるんですね。

e:カリキュラムには『過去問』をやるなんて、一言も書いてないでしょ?

F:書く必要がないんです。

e:゛当たり前゛という感覚ですか?

F:『灘』を受けるお子さんは新6になったとたんに

e:『過去問』を解きだす?

F:いや、もっと早いでしょ!

e:5年!?

F:でないと、浜の

e:いわゆる、『灘』の゛シュミレーション゛模試は解けない?

F:『灘』は2日間にわたって入試が行われる訳ですから

e:゛1日目゛の『過去問』くらいは少なくとも

F:10年分くらいは解き終えてるはずですね。少なくとも私は『灘』を受けるお子さんにはそうしてますね。

e:でなきゃ、゛190点台゛はとれないですよね!

F:『灘』の『過去問』で、ですね。1日目の『過去問』は30年分は゛夏休み前゛にはやり終えます。

e:ということは、『開成』の『過去問』+『灘』の『過去問』?

F:1日目のですね。3時間でやったり、週2日やったりしますね。

e:それぞれ2時間ずつですか?時間、余りません?

F:『開成』の『過去問』は最初、そのまま解かせて、今度は゛選択肢゛問題を゛記述゛にして

e:なるほど。

F:それでも、2時間はキツイですね。

e:『記述』ですからね。

F:まだ、スラスラ書けるってわけにはいきませんからね。

e:そんなに感じですか!『灘』を受けないお子さんは?

F:『筑駒』ですね。

e:それも、『選択肢問題』を『記述』に?

F:もちろん!

e:3時間では足りないでしょう?

F:ですから、週2日で。2時間の日と3時間の日が必要ですね。

e:2時間の日は『過去問』をそのまま解かせ、

F:3時間の日は『記述』ですね。まだ、そんなには書けないですから。

e:時間がかかると?ところで、ノートは?

F:いわゆる『カルテノート』ですか?Yの『ノート』を使ってます。

e:あれって、゛本多゛式のノートに似てますよね。

F:ノート自体、大きいですから、上段にも下段にも結構書けるんですね。

e:1年間で何冊使いますか?

F:お子さんによりますけど、3~5冊くらいでしょう。どういう風に使っていくかは前に書きました。

e:また『過去ログ』を!ということですか?

F:そうですね。
感性の知性化を追求する創造的言語グループ
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薄井ゆうじ 「青の時間」



ブルー・ペンシル



内容(「BOOK」データベースより)

 生い立ち、年齢、素顔、それらすべてが謎につつまれた世界的マジシャン・ブルー。”呼び屋”の僕は、彼のなかにかつての幼なじみの姿を見た。さらに彼の右腕である人物とも、奇妙な重なりがある。ブルーははたして何者なのか。しかし哀しい真実が明らかになる時、彼は姿を消した。謎の人物をめぐる書き下ろしファンタジー。






 その日をきっかけにして、僕はたびたび水車小屋へ行くようになった。夏はうんざりするほど長かったし、彼との距離をゆっくりせばめるには充分すぎる時間が転がっていた。


 たった一人の観客のために万里夫はいつまでも飽きずに無数の手品を演じた。


 そういうものを見るのは、とても楽しかった。

 「全部、ひとりで考えたんだ」

 「手品師になるのか」

 「わからない。こうしていると気分がいいだけだよ」

 彼は曲芸やアクロバット的なことも熱心に訓練しているようだった。早くサーカスに出てみたい、とも言った。そのことが彼にとって、父や母と一緒に暮らせる唯一の手段なのだと気がついたのは、ずいぶんあとになってからだった。

 僕は何度か、妹の奈々も小屋に連れて行って彼の手品を見せた。奈々ははじめのうちは怖がっていたが、しまいには連れて行ってくれとせがむようになった。


 気が遠くなるほど長いはずの夏休みは、あっという間に過ぎ去った。新しい学期がはじまると僕は水車小屋へはほとんど行くことがなくなった。またほかの友達と遊ぶようになって、万里夫からは少しずつ遠ざかって行った。


 「友達なんていらない」と彼は言った。

 「どうして」

 「ミツルは別だ」

 彼はその理由を言わなかった。たぶんカブト虫と何か関係があるのだろうと思ったが、僕はそれ以上、何も訊かなかった。



問 万里夫が「友達なんていらない」と言った理由を答えなさい。



e: これこそ、最後の方まで読まなければ……

F: 冬休みも終わり、三学期が始まった、ある寒い朝

e: 雪原の一本道で「万里夫」と再会する場面が出てきますね。

F: ”別れ”を告げる時に

e: 「いつか、友達なんかいらないって言っただろう」とありますね。

F: また「いつか、返すって言っただろう。」ともね。ここでは関係ありませんが……

e: いつか、また何処で再会する”余韻”を残して……

F: さあ、そのへんは”未知”ですね……

e: とにかく万里夫は「友達なんていらない」っていながら……

F: しっかり「僕」という友達を作ってます。

e: これはどういうことですか?

F: 「手紙が来たんだ」とありますね。

e: 誰かの「手紙」ですか?

F: 両親からでしょう。

「彼は曲芸やアクロバット的なことも熱心に訓練しているようだった。早くサーカスに出てみたい、とも言った。そのことが彼にとって、父や母と一緒に暮らせる唯一の手段なのだと気がついたのは、ずいぶんあとになってからだった」

e: ”転校生活”を余儀なくされている?

F: 親がサーカス団の”巡業”で、地方を転々としているんですね。

e: いわゆる”どさまわり”ですか。

F: 親の都合で学校での生活が振り回されている。

e: いわゆる”転勤族”のお子さんは

F: 多かれ少なかれ、「友達なんかいらない」

e: っていう意識は働くんでしょうね。

F: 友達を作ってもすぐに”転校”ですからね。

e: 作っても意味がないというか、無駄?

F: そうではなくて、「友達なんかいらない」と言った「万里夫」の本心は?

e: 本音を「僕」にだけ告白しているところがありますね。

F: ですけど、「僕」という友達を作った?!



 そうして彼との距離は平行を保ったまま秋が来た。僕は久しぶりに水車小屋を訪れた。彼が、来ないかと誘ったのだった。



問 万里夫が「僕」に「来ないかと誘った」目的は何だと考えられますか。



e: 「万里夫」の目的ね……

F: 「手品じゃなくて、本当にこれを回してみようと思ってるんだ」とあります。

e: 「手品じゃなくて」……ホントに?

F: 「これは手品なんかじゃない」と

e: 語気を強めて言ってますね。

F: 「これは手品なんかじゃない」

e: 「でも僕は、こういうことがしたかったんだ」

F: さらに、「このことを、忘れないでほしい。水車は、こうして回すんだということをね」

e: ”万里夫の辞書に不可能の文字はない”?

F: 不可能と思われたことを可能にするという

e: 早く”一人前”になってサーカスの一員になり

F: 両親とともに暮らしたいという一心で

e: 芸、つまり”マジック”に打ち込んだ結果

F: いろいろな”マジック”が実現できた!

e: 「本当にこれを回してみようと思ってるんだ」と言った万里夫に

F: 「僕」は「どうやって?」と訊いた

e: それに万里夫は「僕に訊くよりも自分で考えたほうがいい」と答えてます。

F: そして、さらに万里夫は

「ずっと考えていたんだ、水車を回す方法を。流れる水を増やそうなんて考えてはいけない。堰き止めるんだ」

 「僕らはまだ、流れていくことしか知らない。そのうち流れを止めることも覚えなければ。そんな気がする」

e: 自立への精神的旅立ちを「僕」に促しているってことですかね……

F: 大人になるための精神的支柱の基礎作りを今から始めろ、っていうことなんでしょうか?

e: とは言っても……「万里夫」と「僕」とでは生活基盤が違い過ぎてますからね。

F: 「万里夫」のほうが、そういった点では

e: 変な言い方かもしれませんが、恵まれていた?

F: 早く”大人”になる条件はそろっていた?

e: ”自立”を促す条件が、ですね。

F: 自分の意思で”大人”になろうとしても

e: ”きっかけ”とか”条件”なければ……

F: ただ「僕」は「万里夫」に出会えたという

e: 幸運なきっかけ

F: ”カブト虫”がとりもつね。

e: ただ、悲しいかな”会うは別れの一里塚”?

F: 縁があって、出会い

e: 無二の親友になっても

F: いつかは別れなければならない……

e: 「万里夫」の「僕」に対するメッセージに

F: その”含み”も……水の流れを増やそうとしてはだめ

e: まず、流れを堰き止め

F: 満杯になったところで

e: 一気に放水して

F: 水車を回す

e: ここに込められた「万里夫」のメッセージは?

F: 言いたいことは何でしょう?

e: またこんなことも言ってましたね。

F: 「僕らはまだ、流れていくことしか知らない」

e: 「そのうち流れを止めることも覚えなければ」と。「流れを止めて」……

F: 「彼は僕に、水車の回るのを見せるためだけにここへ呼んだのではないだろう。もっと別のことが言いたかったにちがいない」

e: さらに、そのあとに「僕は目の前の光景を見ながら、彼が考えていることの何分の一も理解できない自分に腹を立てていた」

F: この文章を読んでいるお子さん?

e: 「きっと彼は僕に何かを伝えたいのだ」

F:その「何か」がこのメッセージの中にあるんでしょうね……。「このことを忘れないでほしい。水車はこうして回すんだということをね」



 大きな水車はひからびたまま、ちろちろと流れる小川の水を恨めしそうに見下ろしている。
 彼はその土手にすわって、流れを見つめていた。

 「回そうかと思うんだ」

 「手品じゃなくて、本当にこれを回してみようと思ってるんだ」

 「どうやって」

 「カブト虫の掴みかたと同じだ。僕に訊くよりも自分で考えたほうがいい」

 手で回す。それがいちばん手っ取り早いだろう。だが彼は、違う、と言った。


 こうするんだ、手伝え、と彼は言って立ち上がった?どこかから太い棒を二本持ってくると小川の上流の川幅いっぱいに立てた。その支柱を支えにして板を何枚か組み合わせると、大きな壁ができた。川の水はそれに堰き止められて、少しずつ貯まっていく。彼が何を考えているのか、ようやくわかってきた。

 「ずっと考えていたんだ、水車を回す方法を。流れる水を増やそうなんて考えてはいけない。堰き止めるんだ」

 「僕らはまだ、流れていくことしか知らない。そのうち流れを止めることも覚えなければ。そんな気がする」

 彼はそう言って、あとは黙ってしまった。


 「もういいんじゃないかな」

 「まだだ」と彼は言った。

 「できるだけ多く貯めるんだ。そうすれば水車はもっと早く回る」

 彼は僕に、水車の回るのを見せるためだけにここへ呼んだのではないだろう。もっと別のことが言いたかったにちがいない。


 「もういいかな」

彼はゆっくりと立ち上がった。





『青の時間』2007年1月16日

 三十二歳になった僕はフリーの「呼び屋」をやっていて、今抱えている仕事は、ブルーという世界的なマジシャンを日本に招聘してテレビCMに起用することだった。半年間接近を試みてあきらめかけていた頃、話を聞くというメールが届いた。妹に途中シカゴに寄るように言われ空港で待っていると、妹の代わりに三島沙菜江という女性が迎えに来た。その女性がブルーのエイジェンシーの担当者で、なぜか妹もその事務所で働いていた。暗い部屋で会ったブルーは、水車小屋や冬のカブト虫の話を始めた。彼は青木万里夫なのだろうか。仕事のすべてを任せている小倉貴史に相談するように言われ、会ってみると小倉はブルーとは対照的に色黒で快活な男だったが、サングラスをかけるとなぜかブルーに似ていた。日本に帰った僕は、ブルーのマジックのプロジェクトの中で働きはじめる。奈奈は小倉に、沙菜江はブルーに恋していた。そして、脳外科医鴻池によって明らかにされるブルーの悲劇。



薄井ゆうじの森》

 青く見える物体は、青以外のすべての色を吸収するという。だが青い光線だけは吸収できないために、青を反射させ、透過させ、その物体を青く見せるーー。この事実を何かの本で読んだとき僕はとても驚いた。これは青色に限らずほかの色についてもすべて同じで、物体は、その色だけを吸収することができないために青く、あるいは赤く見えるのだという。
 つまり青い海は、青色の光線だけを取りこむことができないーー。何か悲しい事実を知らされたような気がして僕は少年の日、その科学雑誌のページを開いたまま、しばし茫然としてしまったことを覚えている。
 二年ほど前に僕は耳を患って、ある特定の周波数の音が聞こえなくなってしまった。いまはそれを補聴器で補っているので日常的に支障はないが、聞こえない周波数はどんな補聴器で補っても聞こえない。ぽっかりと穴の開いたように、僕からその音が失われている。
 かつては聞こえていたはずの音たちがどんなふうであったのか、その記憶をいま、ゆっくりと失いつつある。失われていくものの輪郭は、驚くほどくっきりとしている。もしかしたらその聞こえない部分こそが、「僕の音」なのではないだろうか。

 青の時間をテーマに作品をつくりつづけているベルギー出身の美術家であり演出家でもあるヤン・ファーブル
 アンリ・ファーブルが、そしてヤン・ファーブルがモチーフにしている昆虫たちが眠る青い時間ーー、それをこの物語の題名にした。青。それをより積極的なものに固定するために、TIME BLUE を『青の時間』と訳した。
 ブルー・ペンシル。やはり青は、静かでエキサイティングな色なのかもしれない。(by十九九五年十月 東京青山の『BLUE』にて 薄井ゆうじ)

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薄井ゆうじ 「青の時間」



《出版社/著者からの内容紹介》

世界中に名前をとどろかせている、マジシャン・ブルー。その正体は謎につつまれていて、素顔をさえ見たものはない。ブルーを日本に招聘するという、およそ不可能と思われる仕事を引き受けた僕が手を尽くし果て、途方に暮れていた時、なぜか、彼の方から会いたいというエアメールが届く。ブルーとはいったい何者なのか?少年時代の記憶が鮮やかに浮かび上がる。珠玉の青春ファンタジー。(解説・佐藤亜紀)


 地球上のあらゆる生命が眠ってしまう時間、だが、内部では細胞単位で生き生きと活動をつづけている時間ーー
タイム・ブルー。
『ファーブル昆虫記』 



『青の時間』2007年1月16日

 十八年前、青木万里夫という色白の少年が中学校に転校してきた。夏休み、妹の奈奈と森へカブト虫を捕りに行き、僕はそこで万里夫と遭遇する。その日から僕は万里夫が一人住んでいる水車小屋へ行くようになり、いろいろなマジックを見せられた。冬休みが終わると、万里夫はあげたカブト虫を返して、サーカス団員の両親を追って転校していった。それっきり僕の水車は止まっていた。


《あらすじ》

 ある日、「僕」のクラスに、青木万里夫という、風変わりな名前の少年が転校してきた。万里夫はクラスメイトになじめず孤立したまま、そのうちに学校は夏休みを迎えてしまう。「僕」は八月のある朝早く、カブト虫を捕まえるために、妹の奈奈と一緒に近くの森へ出かける。そして、その森の中で「僕ら」は偶然、一人で手品の練習をする万里夫と出会った。森の中で出会った万里夫は学校での様子とは違い、「僕ら」と積極的に会話をするのだったが、その中で話題になったカブト虫に、万里夫はなぜか非常に強い興味を示した。そして、「僕ら」にカブト虫を捕まえたらゆずってくれるように頼んで、その場を足早に立ち去ってしまう。


 夜が明けて、陽が高くなった。

 小屋の近くまで来てみたが、水車は回っていなかった。これが壊れたのは僕が幼稚園のころだろうか。あれからもう、ずいぶん経つ。いや、水車は壊れたのではなく、巨大な水車を回すのに充分な水量が小川から失われて久しいのだった。

 僕は水車小屋に前に立って、しばらく迷っていた。



問 「僕は水車小屋に前に立って、しばらく迷っていた」とありますが、「僕」が迷っている内容について答えなさい。



e: 薄井ゆうじと言えば、

F: 「飼育する少年」(『十四歳漂流』所収)開成で平成14年に出ましたね。

e: 例のキリンを飼う話?

F: キリン=少年の分身であると同時に憧憬の存在

e: 二律背反する点が超現実的シュール?

F: 当時、ずいぶん話題になりましたよ。

e: もう7年も前の話ですか!

F: 受験した教え子は大学生です!

e: 「TIME BLUE」 どこかの高校入試で出たとか?

F: 昔の話ですね。1995年12月15日刊行ですから。

e: 臭覚が失われ

F: 今では耳も患ってて

e: 益々、感性が研ぎ澄まされる?

F: 今後、どういう作品を書くか、楽しみですよ。

e: 地球上のあらゆる生命が眠ってしまう時間

F: が、内部では細胞単位で生き生きと活動をつづけている時間

e: タイム・ブルー

F: 『ファーブル昆虫記』を書いたアンリ・ファーブルのことば。

e: 『ファーブル昆虫記』も開成で出ました?

F: 大昔ですね。

e: 青の時間をテーマに作品をつくりつづけているベルギー出身の美術家であり演出家がいましたね。

F: ヤン・ファーブルでしょ。

e: アンリ・ファーブルが、そしてヤン・ファーブルがモチーフにしている昆虫たちが眠る青い時間。

F: それをこの物語の題名にした。青。それをより積極的なものに固定するために

e: TIME BLUE を『青の時間』と訳した?

F: と、薄井ゆうじは語っています。

e: 

F:

e:

F:



 妹は先に帰らせた。


 水車小屋と家への分岐点まで戻ってきたとき、僕は籠のなかから雄雌一匹ずつのカブト虫を取り出して、来るか?と妹に言った。意味がわかったのだろう。僕が持っている二匹を残念そうに睨みつけると、妹は首を横に振った。家のそばまで妹を送って水車小屋の前に引き返して来たころには、もうすっかり夜が明けていた。そして僕は、迷っているのだ。



問 「妹」はなぜ「首を横に振った」のですか。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 ーー彼はいったい、何者なのだろう。

 それがわからなかった。


 わかったいるのは彼の名前と、友達をつくりたがらないということ、そして水車小屋に住んでいるらしいということだけだ。

 だがもうひとつ、僕にはわかっていることがあった。彼はカブト虫を欲しがっている。そして僕はいま手のなかに二匹のカブト虫を持っている。そのことだけが頼りだった。勇気を奮い起こして深く息を吸いこむと僕は小屋のドアにノックした。


 薄くひらいた戸の隙間から、色白の肌と細い目が覗いた。その視線が僕をとらえると戸は大きくひらいて、そこに万里夫が立っていた。






薄井ゆうじ 「青の時間」
謎のつつまれた世界的マジシャン
彼は一体誰なのか
長編ファンタジー
1995年12月15日刊行
素顔に隠されたマジシャン”ブルー”。
僕は彼のなかに幼なじみの姿を見た。
が、彼の幹部スタッフのなかにも、なぜか”ブルー”の影がちらつく。
そして悲しい真実が明らかになるとき、彼は姿を消した。
”ブルー”はいったい誰なのか、そしてどこへ行ったのか。

プロフィール
筆名:薄井ゆうじ
本名:薄井雄二(ネット名:くじら鳥)
生年月日:昭和24年(1949年)1月1日
出身地:茨城県(県立土浦第一高等学校卒)
高校卒業後、日雇い生活。
その後、イラストレーター「たの・かえる」として週刊プレーボーイに五年、夕刊フジ紙に十六年間イラストを掲載。イラストルポやグラフ誌写真取材等を手掛け、広告及び編集プロダクション「株式会社イーハトーブ」を経営。現在は専業作家として文芸各誌に小説を多数連載。

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e:『麻布文化祭』中はSはGS特訓で古~い『過去問』をやりますね。

F:声教の10年分はみんな持ってますからね

e:3日間だけですから、やる量も限られるんじゃないですか。

F:春に少しかじってますから『過去問』に抵抗はないでしょう。

e:せいぜい、平成元年~10年までの『過去問』の中からピックアップになると思いますよ。

F:『算数』は10年前から、゛出尽くしてる゛なんて、よく聞きますか。

e:20年前からだと思いますがね。

F:もう゛新しい゛問題は作れない?『チャレ算』なんか

e:今は『中算』。

F:昔、『チャレ算』の時代に最初の目次ページに広告を出したんですね。

e:゛右側゛の?また、無謀にも!『国語』のCMでしょ!

F:10年くらい前ですね。

e:反響ありました?

F:関西からの゛問い合わせ゛が多かったですよ。

e:大教大附属とか?懸賞の応募も関西方面から結構ありますからね。で、さすがに新幹線で、っていうわけにはね。

F:新幹線の゛回数券゛で、という方がいましたよ。

e:地元にいっぱいいるでしょう!

F:なんか、東京から引越して来て、

e:「やはり東京の先生がいい」と?結局どうしました?

F:夏休みに゛特訓゛しましたよ。『過去問』10年分。

e:『灘』の?朝から晩まで1日がかりでしょう!

F:ラストスパートの3か月を都内のホテルを転々と廻って教えたお子さんもいましたね。

e:学校もよく休みを認めましたね。で、゛懲りた゛?

F:「東京出版」は近くでしたから試しに出してみようと。一回だけ出したきりですよ。ところで、『算数オリンピック』も受けますね。

e:いわゆる『算オリ』ね。そのためだけの家庭教師もやりましたね。

F:『問題集』で?K舎の先生が作問してるって?

e:T大の院生じゃないですか?

F:教え子で過去、ジュニアと本大会さらに広中杯で6人入賞してますね。2位と3位になった子が3人いました。

e:去年からまた学校名が載るようになりました。

F:名前が載るということは名誉あること