expertFORUM 中学受験家庭教師-『少年のはるかな海』-国語専科
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ヘニング・マンケル「少年のはるかな海」
少年ヨエルは、その日、森へ行って死んでしまおうと思い、家を出た。わざと道をまちがえ、こごえ死のうなどと考えながら歩いていくと、<四つの風の湖>と呼ばれる湖に着いた。そこで、変わり者といわれているシモンに出会い、話をするうち、死んでしまおうと考えていたことがばかばかしく思えてきて、家に帰った。
ヨエルはサムエルの深刻な様子に気がついた。きっと、ばれたんだ。石を投げたことが。学校をさぼったことも。心の準備をしなければ……。
けれども、それはヨエルの思いすごしだった。
「事故がおきたんだ」サムエルは言った。
前にも一度、サムエルの仕事仲間が事故で死んだことがある。あのとき、サムエルは家にこもって、海図をながめてばかりいた。森で再び働き始めるのに、何日もかかった。
問 「あのとき、サムエルは家にこもって、海図をながめてばかりいた」のはなぜですか。
e: ヘニング・マンケル?
F: 北欧のミステリ作家ですね。舞台演出家としても活躍中みたいです。
e: と言っても、この物語はミステリではないですよね…
F: 父サムエルと二人暮らしのヨエルはその父に
e: サラという”女”ができるんでしょう?
F: ヨエルはその女性を気に入らないんです。
e: で、悪さをするんだ!
F: サラの家の窓に石を投げ
e: サラに怪我をさせてしまうんでしょう。
F: 前の真夜中の出来事で、次の日に
e: どういう訳か、父親サムエルはそのサラの家に行こうとヨエルを誘う!
F: ヨエルは”なんで!?”
いま、ヨエルには、長いすにすわったサムエルが小さな子どものように見える。
ぼくがなぐさめることができれば、サムエルはわかってくれるだろう。サムエルと一緒にいなければならないのは、サラではなくて、ぼくなんだと……。
ヨエルは火をおこすと、コーヒーのポットをかけた。
「死んでしまった。」サムエルはつぶやいた。
サムエルはうちのめされている。小さく見えるのはそのせいだ。
「森なんて、もう、どうでもいいじゃないか!」ヨエルは言った。
「考えていたんだ。もし、このおれに何かあったら、おまえはどうなるのかと……」
「サラのところへは行かないよ。ぼくは、シモンのところへ行くんだ。」
サムエルは首をふった。
「それはだめだ。でも、おれだって、いろいろ考えてるんだ……」
「ひっこせばいいじゃないか。迷うことはない。海なら、木もたおれてこないもの。」
お湯がふっとうしはじめた。
「おまえ、コーヒーをのむのか?知らなかった。」
「たまにね。カップに半分だけだけど。」
ヨエルがそう答えると、サムエル不思議そうな目でヨエルを見つめた。いままでに見たことのない人間を見るような目つきだ。
問 「ヨエルがそう答えると、サムエル不思議そうな目でヨエルを見つめた」のはなぜですか。
e: なんという父親!?
F: 「いままでに見たことのない人間を見るような目つきだ」
e: 父親不信に陥りますね…女の方にばかり目が向いていた!?
F: ですから、「森へ行って死んでしまおうと思い、家を出た」
e: そんなことは父親のサムエルは露知らず?
F: 「……サラの部屋に石を投げたやつがいるんだが、まさか、おまえじゃないだろうな?」
e: 「おまえだろう!おまえしかいない」なんて言わないで…
F: 「ちょっときいてみただけだよ」
e: と、また”のうてんき”な事を言っていますね。
F: 「ミラクル」の父親を思い出しません?
e: 奥さんを亡くして、呑んだくれている父親ね…
F: 状況が相当違いますけどね……
e: いずれも、子よりも妻!?ですかね…
F: 男はそうなんですかね……
e: 妻に先立たれると、後を追いますから。
F: 子供がいてもいなくても?
e: ”子煩悩”なんて、いいますが…
F: 「おまえ、コーヒーをのむのか?知らなかった」
e: 子供には無関心だった証拠ですかね……
F: 職業柄?
e: それで女房に逃げられた?
「十一か、もうすぐ十二だな。すっかり、忘れてた……」
ヨエルは話を続けなければと思った。サムエルが悲しみにしずんでいるいまこそ……。
問 「ヨエルは話を続けなければと思った」のはなぜですか。
e: これ、解るかしら?
F: ヨエルの気持ちの読み取り
e: それも、心の奥底のでしょ?
F: 母親は家を出て行った!?
e: 何故か……?
F: 母子家庭と父子家庭
e: 受験生でそういうご家庭は?
F: 絶対的に少ないでしょう!
e: ほとんどの受験生にとっては想像の世界?
F: 物語ではよく出てきます。
e: 最近の傾向?
F: 今も昔も!”複雑さ”は違いますけどね。
「ぼくはサラがきらいだ。どうして、サラと会うの?」
「サラはいい人だ。サラといると、楽しくなる。人生を笑って生きているからな。泣きたいことがたくさんあっても……」
「ぼくたちは笑わないの?」
「ヨエル、比べてばかりいるもんじゃない。おれだって、会いたくなることも……」
サムエルはことばをつまらせた。
「母さんにだね。」
サムエルはうなずいた。サムエルはテーブルよりも小さく見える。
「そうだ。あいつが恋しい。でも、あいつは出ていった。おれはあいつが恋しがったりしたくない。おれのことを恋しいと思ってないやつのことを、恋しいと思いたくないんだ。」
「どうして、そうだとわかるの?」
ヨエルがそうきいたとたん、サムエルのからだがぐんと大きくなった。
問 「サムエルのからだがぐんと大きくなった」とありますが、ヨエルから見たサムエルの印象が、その前と後ではどのように変化していますか。
「少年のはるかな海」ヘニング・マンケル作菱木晃子訳偕成社
Henning Mankell
1948年ストックホルム生まれ、作家・舞台演出家として活躍。
1991年スウェーデン ニルス・ホルゲション賞受賞
1993年ドイツ児童文学賞受賞
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