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慶應への国語  自分のたこだけはどんなことをしても揚がらぬ  井上靖 ━吾が一期一会━ 完  慶應義塾普通部・慶應義塾湘南藤沢中等部・慶應義塾中等部対策

 今日私たちが使っている魔法びんはそんなことでは壊れないかも知れない。しかし私は、幼時にその程度で壊れる魔法びんを使っていたことを、使っていなかったよりよかったと思う。私はその後耳にしたことのない決定的なものを持つ、静かでめったにそれにかわるもののない複雑な破壊音を幼時に経験したのである。

 もう一つ同じような経験をあげるなら、それはたこ揚げである。私たちは幼いころ、正月の前後、毎日のように冬枯れたたんぼでたこを揚げた。私はそのたこ揚げで覚えていることは、自分のたこがどうしても揚がらなかったことである。たこに糸をくれて駆け出すと、たこは空中でくるくると回って、すごたんぼに墜落して、頭の方から霜柱の中に突き刺さってしまう。何回繰り返しても同じことである。

 この事件から受けた幼い私の打撃は、いまそれに表現を与えれば、絶望感というものであろうと思う。さらに文学的表現を与えれば、私が必死になって揚げようとしていたものはたこでなくて、「死」というものであったのである。どんなことをしても揚がらない致命的な欠陥を持つたこを、私は何とかして他の仲間のたこのように、空高く揚げようとしていたのである。

 たこがどうしても揚がらぬことから受けたものは、私が人生で最初に味わった【 1 】思いであり、他のたこは揚がるのに自分のたこだけはどんなことをしても揚がらぬといった【 2 】思いであった。

問 【 1 】・【 2 】にはどのような語が入りますか。

井上靖 ━吾が一期一会━

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