慶應への国語 いつまでも、つながりあえるから・・・・・・ 池永陽 ━国境のハーモニカ━ 完 慶應義塾普通部・慶應義塾湘南藤沢中等部・慶應義塾中等部対策
問 「胸ん中に鬼が住んどった」とは、どういうことですか。
問 「私は殴らなかった」のは、なぜですか?
問 「私」にとって、「スーイン」はどんな少女でしたか。
e:「鬼」・・・ね。「悪魔が棲んでいた」なんて言った異国の犯罪者が・・・
F:そう言えば、いましたね。
e:そう言えば、チャラになると思っているんですかね・・・
F:「鬼」という表現は
e:所謂、”比喩的表現”?
F:ですから、わかりやすく
e:具体的に言い換える必要がある?
F:「博明」は「私」と「スーイン」が仲がいいということに
e:ジェラシー、”嫉妬”?
F:”焼きもち”を焼いていました。
e:それで、二人の仲を引き裂こうと
F:しましたが、その手段として盗みや
e:殺生
F:犬を殺してしまうという罪を
e:犯してしまった・・・
F:そのブレーキの利かなさ
e:”狂気”?
F:「自分でも制御できない暴走ぶり」などと
e:あとになって、”つきもの”が落ちたかのように
F:振り返ると、「鬼が住んどった」としか
e:言いようがない?
F:のでしょうね。
e:つまり、こういうことですか、「スーイン」と「私」が仲良くしていることに
F:嫉妬し
e:米を盗んだり
F:かわいいシロを殺したり
e:でも、二人の仲を引き裂こうと
F:企んだということを
e:「胸ん中に鬼が住んどった」
F:と表現したのでしょうね。
e:「私」が「殴らなかった」のは?
F:理由は2つ考えられます。
e:1つは?
F:「楽になられてたまるか」
e:この気持ち、よく解ります。
F:映画のセリフでも・・・
e:「楽に死なれてたまるか」?
F:もう1つは「罪の意識は博明以上に
e:私の心に重くのしかかっていた」
F:殴って、
e:「はい、終わり」にせず
F:殴っておしまいにせず
e:これからもずっと「博明」に
F:”罪悪感”を覚えさせて
e:生きてもらう?
F:また、一方で、自分には”殴る”資格が
e:ないとも思えた?
F:まとめますと、殴れば「博明」の罪の意識が軽くなるが
e:殴って楽にさせることができないほどの行為をしたので
F:ずっと罪悪感を覚えさせたかった
e:罪悪感に苛まれる状態にして置かないと気がすまない?
F:その一方で、「スーイン」を信じてきれなかった自分には
e:「博明」を責める
F:殴る資格はないとも思えたということでしょう。
e:理由の後半の部分は書けてました?
F:きつかったみたい・・・
e:所謂”二面性”
F:つね日ごろ言っている
e:口酸っぱくね
F:「相手」に対する心情
e:この場合「博明」に対する、ね。
F:と「自分」に対する心情を
e:考えろと・・・「外」と「内」ね。
F:対「相手」と
e:対「自分」
F:これが「記述」で
e:”差”をつけるポイント?解っちゃいるけど書けない
F:解っちゃいないから
e:結局、書けない!?「スーイン」は「私」にとってどんな存在の少女?
F:「私」にとって、「スーイン」は大切で
e: 大好きな
F:”特別な”存在であったことは
e:紛れもない事実
F:好意を寄せている「スーイン」が「犬」を食べたらしい
e:と判った時でさえ
F:「綺麗な顔」と思えたほどです。
e:普通は「醜悪な顔」に
F:映るはずですが・・・
e:”あばたもえくぼ”の心理状態だった?
F:「凛としていた」には「スーイン」の”ぶれなさ”
e:”意志の強靭さ”
F:が表れていますし、「スーインが持っているのがいちばん価値がある」」
e:からは、「スーイン」の”気高さ”
F:”崇高さ”が感じられます
e:そんな「スーイン」でしたが、
F:一方では、日本人の差別に
e:苦悶している様子も窺い知れます・・・ね。
F:民族の違いと
e:困窮
F:貧しさが”差別”意識を生み
e:それでもへこたれない
F:負けない
e:折れない
F:精神の強さ
e:強靭さを持ち合わせている
F:「スーイン」だからこそ
e:「私」は惹かれていった?
F:のかもしれませんね。
e:ところで、どんな存在だった?
F:「スーイン」は日本人の中にいて仲間外れにされる朝鮮人だが
e:そのことに対して挫けることなく
F:強い意志と
e:情熱を持っており
F:自分にとって大好きな
e:”美少女”という存在?
鋳物工場に長年働く西原は工場内における不当なタイ人に対する扱いに直面しながら、自分自身の過去の初恋相手への過ちを思い出していくのであった・・・
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ひとりの男として主人公の葛藤はよくわかります。
人種差別を題材としていて題材的にちょっと重めですが『コンビニ・ララバイ』とともに作者の代表作のひとつとして数えられる秀作であると思う。
特に『三たびの海峡』をお気に入りの方なんかにはいいと思う。
感動度では落ちるかもしれないが、現実に起こりえてる話なんで読者においては本作の方が身近に感じる事は間違いなし。
タイ人やフウコ、あるいはスーイン。外人がすべて純粋な人物として描かれているのでやはり日本人に対する警告的な意味合いも多く持ってそうな話ですね。
あと、ひとりの男の再生物語としても読ませてくれます。
男性読者はこちらの視点で読まれることが自然と多いと思われます。
社長からのタイ人に対する不法就労の入管への通報を引き伸ばしつつ自分の過去を顧みて行きます。
家庭内においても、今まで妻や息子になんとなく引け目を感じて生きてきた西原が、自分を取り戻して行きます。
彼がちょっと頼りないところが良いのですよね(笑)
全体を通して、私も主人公と同じように良心と葛藤しながら読み進めれました。
読者は誰もがきっとスーインは幸せに生きていると信じて本を閉じてることでしょう。ーエンピツより引用ー
自分たちの中にある差別意識を見つめることは、少しも恥ずかしいことじゃあない。むしろ、そんなものは無いと強弁する人間の方こそ、私は信じることが出来ない。
このあいだ読んだ西尾幹二『壁の向うの狂気 東ヨーロッパから北朝鮮へ』の中の間奏曲の「いったい日本人は「あなたは韓国人だから罪がある」という理由で韓国人を殺したことがあるでしょうか。」「日本人は「人類に対する罪」を犯したでしょうか。」「ホロコースト(民族絶滅)の罪を犯していない日本人は、被害者に対する「集団の罪」に関わりがないのですから、加害者としての「集団の罪」が問われる理由もないのです。」「日本は韓国とは戦争をいたしておりません。(中略)韓国人は日本人であって、一緒に戦争をしたのですから、韓国人は日本人と一緒に「敗戦国民」なのです。」という文章があった。
多分、西尾にとって、日本人が戦争中に行った朝鮮人の強制連行は、たまたま連れてきた人々が偶然朝鮮人だったので、意図したものではないし、当時、朝鮮は日本だったので民族の差別は無かった、ということらしい。他民族を絶滅させることか罪だけれど、差別し虐げることは、悪いことではないというのだ。西尾は池永のこの本を「何て軟弱な、日本人の誇りを汚すようなものか」といって、叩きつけるのだろう。でも、それが本当に素晴らしいことなのかなあ。むしろ、そういう差別的なことを思わずしてしまい、一生心の傷として生きることは、自虐でもなんでもなくて、本当は素晴らしいことなんじゃあないのかなあ、私は思うんだよね。
私の名前は西原章之、30年前に岐阜から出てきて、以来、藤田鋳工という鋳物工場で働いている。妻の名前は邦子。ゴッホを超えた赤を絵具で再現したい、といって私の前に現れたのが十九年前。今はデザイナー仲間4人と、新宿でグラフィックデザインの仕事をしている。創作から営業、接待もこなし、今では私以上の収入がある。そんな妻が自分を見下しているのでは、と思い始めたのはいつのことだっただろう。息子の直樹は、大学を中退して演劇の道を歩んでいる。
工場の社員は社長の藤田を除けば、事務員の美代子、村山そして私。一年前からタイ人のチャンヤン、ラッチャとポーンも働いている。ただし不法就労。それを良いことに、藤田は給料を半分しか出していないし、今は残りのお金を踏み倒そうと「入管にはまだ連絡していないのか」と、私にタレこみを強制している。それを面と向って断れない私は、月に何回かはチャンヤンたちの木造の4畳半のアパートに差し入れに行く。そこに転がり込んでいたのがフウコ。
京浜東北線沿いの小さな町には似合わないストリート・ミュージシャンをやっていたのが彼女だった。単調で柔らかな旋律が耳に優しく、歌詞のなかの「八月二十二日を私は忘れない」という言葉が、なぜか心を打つ。彼女がつぶやく「北に帰るわ」ということば、それと同じことを30年以上も前に、15歳の朝鮮人の少女スーインが言っていた。
西原が生まれ育ったマンガン鉱山。集落に立つ、朝鮮人母娘が住むアンクルトムの小屋。スーイン母娘がやっってきたのは、西原が中学二年のとき。彼女は中学三年。貧しい人々の中でも特に貧しい彼らに注がれる差別の眼。米の盗難や、消えた犬。食生活の違い、いじめ。彼女と仲の良かった西原。彼女の吹くハーモニカ。故国に彼女が帰るときの自分の行動、後悔、嫌悪。
ほんのちょっとした勇気、一言声をかけるだけである人を幸せに出来たかもしれない、でもその一歩が踏み出せない、そんなことは誰にでもある。それを悔いることは、自虐なんかじゃあない。それを無かったこととして強弁する方が、よほど醜く薄汚れている。そんな人間に、民族の尊厳、いや人間の誇りすら語ることが出来るとは思わない。この本でもっとも美しいのは、スーインとフウコ。それが何故か、はこの本を読めば分かる。残念だけど、差別は今も日本にある。ーネットストア - アンクルトムズ・ケビンの幽霊/池永 陽 - 本ーより引用
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慶應への国語 池永陽 ━国境のハーモニカ━ 7
問 「受け取ってくれれば日本人を憎まなくてすむ」のは、なぜですか。
問 「背中に突き刺さるような声だった」から読み取れる、「スーイン」の「私」に対する思いを答えなさい。
e:「日本人を憎まなくてすむ」のはなぜ?
F:これは少し難しかったみたいです。
e:いろいろ解釈できそう・・・かな?
F:「スーイン」にとって「私」との思い出は
e:どのようなものであったか、をまず考える?
F:日々、辛い事の連続であった
e:そんな日本での暮らしの中で
F:ただ一つの心に残る、
e:楽しい思い出だった?
F:ので、美しい”思い出”のまま
e:終わらせたかった?
F:のではないでしょうか?
e:ところで、どんな解答がありました?
F:例えば、「たとえ国が違っていても、自分の大切なハーモニカを『私』に渡すことで、差別を乗り越えられるから」とか
e:自分たちの”友情”が”人種差別”を克服できる?
F:「受け取ってくれれば」これまで育んできた”友情”
e:というよりも”愛情”かな?
F:”友愛”を壊さないで
e:”絆”を断ち切らないですむ、ということかな?
F:ただ、注意しなければならないのは
e:「スーイン」と「私」の関係が必ずしも”良好”ではない?
F:つまり、仲が”疎遠”になってしまっているということです。
e:仲がよいまま引き裂かれたわけではない?
F:あるいは「自分たち親子にひどい目にあわせた日本人の中で、「私」だけが優しくしてくれたので、受け取ってくれれば日本人に好印象を持つことができるから」
e:それなりに考えてますね・・・「背中に突き刺さるような声」?
F:後の「悲しげな音」とか
e:「沈んだ旋律」とか
F:がヒントになるんじゃないでしょうか・・・
e:「ハーモニカ」を受け取ってくれなかった
F:「私」ですが・・・いつかきっと自分のことを
e:理解してくれる日が必ず来るであろう
F:と、「スーイン」は思い
e:二人の思い出の「ハーモニカ」を受け取ってほしい
F:いつか自分を受け入れてほしいと
e:痛切に願っている
F:のです。「哀願」と表現してもいい”叫び”
e:「哀訴」と呼んでもいい”叫び”?
F:同情を求めて嘆き訴えるような”叫び”でしょうね。
e:これも、少々難問だったかな?
F:”やや難”
e:好意を持ち
F:信頼もしていた「私」が
e:犬を食べたという告白以来
F:自分を避けるようになり
e:心のつながりがなくなったまま
F:離れ離れになることが
e:辛く、悲しくてならず
F:いつかは自分を受け入れてほしいという
e:”切実な思い”ということかな?こういう問いは考えて
F:”よ~く”考えて
e:書かせて。間違えば・・・
F:ヒントを与え
e:また、”よ~く”考えさせて
F:また、書かせる
e:この連続?
F:嫌になるほど
e:嫌になっちゃ困るけど・・・
F:考えさせ・・・
e:嫌になるほど
F:書かせる
e:確か、keimeishaという塾がそんな授業してたね・・・
F:Itochanの授業?
スーインたちが山を下りて三ヵ月ほどあと、梅雨のさなかに西鉱はマンガン鉱山の歴史を閉じた。
マンガンを含む鉱石の純度がその年になって極端に落ちこみ十パーセントを割ってしまったのだ。坑夫たちは純度の高い鉱脈を必死になって探したがそれも徒労に終わり、六月の初めに坑道の支柱として残してあった竜頭に発破をかけ、この中に含まれる最後のマンガンを運び出して西鉱は閉鎖された。
結局それから半月ほどの間に坑夫たちは山を下り、私と母も就職をしている兄を頼って岐阜市に出ることにしたが、鉱山を出る日、博明が何かいいたげなそぶりでわざわざバスに乗って郡上八幡の駅までくっついてきた。
「何かいいたいことでもあるんか博明」
と駅舎の裏に呼んで訊いてみると最初はしぶっていたが、
「飯場小屋から米とったのは俺や。シロを連れ出したんも俺や。スーインとお前を困らせてやりたかった。あのころはなんやわからんけど毎日鬼のような気持ちで暮らしてたんや。胸ん中に鬼が住んどったんや・・・・・・シロは、崖の上から谷の底に投げこんでしまった」
博明は声をあげて泣き出した。
「俺を殴ってくれ」 と何度も叫んだが、私は無言で博明の言葉を聞き、無言で博明の前から離れて駅舎に戻った。
殴れば多少なりとも博明の心は楽になり救われたはずなのに私は殴らなかった。楽になられてたまるか。そんな気持ちが胸の底にあったかもしれない。スーインに対するやるせなさ、罪の意識は博明以上に私の心に重くのしかかっていた。
問 「胸ん中に鬼が住んどった」とは、どういうことですか。
問 「私は殴らなかった」のは、なぜですか?
問 「私」にとって、「スーイン」はどんな少女でしたか。
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慶應への国語 池永陽 ━国境のハーモニカ━ 6
問 「私がスーインの母親の声を聞いたのはこのときが初めてだった」から、「スンドク」について、どのようなことがわかりますか。
e:「スンドク」について、どのようなことが・・・?これ、わかるかな?
F:「スンドク」が喋ったことがないのは?
e:日本人に対して、口を閉ざしたまま・・・
F:心を開くことがなかった・・・
e:それは”差別”や”偏見”のため?
F:それに対する”怒り”や”憎しみ”
e:”憎悪”を感じているが故の・・・
F:また、喋る相手がいなかった・・・から?
e:チョウセンジンであるが故?
F:小屋でスーインが話したことや
e:この場面での「スンドク」の叫び声
F:をヒントに考えますと
e:日本での暮らしは差別されるだけの辛い日々の連続であり
F:日本人に対して怒りと憎しみを感じて
e:誰に対しても心を閉ざして
F:生きてきたということが
e:それとなく理解できる?
「明日」
とスーインはいった。
「明日、ここを出て新潟に向かうわ。北朝鮮に帰る船は新潟港からしか出とらんから・・・・・・そやからこっちにおられるのはもう今日だけなんや」
スーインはそういってから上衣のポケットに手をつっこんで細長い箱を取り出した。ハーモニカだ。スーインのハーモニカ。
「これ、受け取って」
初めて私の顔を見た。すぐに私は視線を下に落とした。
「お願いやから受け取って。受け取ってくれれば日本人を憎まなくてすむ」
首を振っていた。もらうわけにはいかなかった。たとえもらったとしても、私はスーインのハーモニカを二度と吹くことはないような気がした。スーインの大切な宝物だった。スーインが持っているのがいちばん価値があるように感じられた。
「もらえんのや」
と私は叫んでゆっくりとスーインに背中を向けた。歩き出した。スーインが叫んだ。
「置いてく。置いてくから。私の家の机の中にいれてくから。取りに来て。一年あとでも二年あとでも・・・・・・」
背中に突き刺さるような声だった。こんな声を初めて聞いた。私は黙って歩いた。足の下で枯葉が悲しげな音を立てて壊れた。それはスーインがいつも吹いていた、ブルースの沈んだ旋律にとてもよく似た音だった。
問 「受け取ってくれれば日本人を憎まなくてすむ」のは、なぜですか。
問 「背中に突き刺さるような声だった」から読み取れる、「スーイン」の「私」に対する思いを答えなさい。
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慶應への国語 池永陽 ━国境のハーモニカ━ 5 慶應義塾普通部・慶應義塾湘南藤沢中等部・慶應義塾中等部対策
問 「いきなりスーインの目の前に手を差し出し」「返す」と言ったのはなぜですか。
e:「私」はなぜ「返す」と言った?
F:いろいろな解答がありました。
e:例えば?
F:「スーインは犬を食べる国の人であることがわかったので、友達ではいられないと思ったから」
e:え?本文に「人間は何かを食べんと生きてゆけん。何であろうと何かを食べんと生きてゆけんのや」
F:このように、自分が犬を食べる理由を述べています。
e:つまり、「スーイン」は必要があって犬の肉を食べている?
F:次に、「スーインが北朝鮮に帰るといううわさを耳にしたので、これを機会に別れようと決心したから」
e:なんか、書きそうな答えですね。
F:問題外の解答ですが・・・
e:論外?これまた、前後をしっかり読んでいない・・・?
「犬を食べたんか」
「食べたわ」
「なんでや」
「それにしたって」
といってから、私はスーインのハーモニカを握りしめていることに気がついた。スーインのハーモニカ。スーインの唇。スーインのにおいが染みこんだハーモニカ・・・・・・。
「ごめん」
と呟き、自分の手がまだハーモニカをしっかり握っているのを驚いた気持ちで見た。
「返す」
「なんで・・・・・・」
何もいわなかった。いえなかった。
F:これら、一連の言動から
e:犬を食べたという「スーイン」の話を聞いて
F:「スーイン」が口にした「ハーモニカ」
e:を自分が持つことに一種の”嫌悪感”?
F:”不快感”を抱いたということでしょうね。
スーインたちが北朝鮮に帰るらしいという噂が流れたのは三月になってからのことだ。私の心は複雑だった。暗くよどんでいた。心の整理も頭の整理もつかなかった。
なぜ自分はあのとき吐いてしまったのか。スーインが朝鮮人だからでは絶対にないはずだ。朝鮮人だろうと日本人だろうと・・・・・・犬だ。犬を食べた唇。だがはたして本当にそうなのか。ひょっとしたら犬を食べたということと朝鮮人であるということの相乗効果。私はやはり無意識のうちに、スーインを朝鮮人として特別な目で見ていたのか・・・・・・いくら考えてもわからなかった。
三月の終わり、春休みに入る直前だった。中学から帰る途中、スーインから声をかけられた。私の帰るのをずっと待っていたらしい。
スーインはこのころ、すでに学校へ通うのをやめていた。
「章之、ほんの少しだけ話がある」
とスーインはいった。
軽くうなずいて、スーインのあとについて山道をそれ、雑木林の中に入った。枯葉が堆くつもっていた。
「北に帰るわ」
ぽつりとスーインはいった。
「オモニがどうしても帰りたいいうから。本当のこといえば私は日本のほうがいいんやけど・・・・・・でもオモニがどうしても帰りたいいうから」
スーインたちが北朝鮮に帰るらしいという噂が流れて数日あと、偶然飯場小屋でスーインの母親のスンドクの叫び声を聞いた。
「・・・・・・トコ行こが、トコ住もが、こんな国よりズットまし。帰ればタレも私たちバカにしない。日本人は鬼。チョウセンジン、いじめて、いじめて、いじめつくして。切ない切ない、アイゴー、アイゴー」
このあと朝鮮語の言葉がつづいたがもちろん私にわかるはずがない。あのときスーインの母親は確かに泣いていた。子供が泣きながら喋っているような声だった。私がスーインの母親の声を聞いたのはこのときが初めてだった。
問 「私がスーインの母親の声を聞いたのはこのときが初めてだった」から、「スンドク」について、どういうことがわかりますか。
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慶應への国語 池永陽 ━国境のハーモニカ━ 4
問 「うつむいたままスーインは無言だった」について
Ⅰ なぜですか。
Ⅱ そんなスーインを見て、「私」はどう感じました。。
e:Ⅰの「無言」の理由は?
F:大好きな「私」は
e:シロを食べたとは信じないと
F:言ってくれているが
e:犬を食べたことは
F:事実だし
e:それを悪いことだとも
F:思っていないので
e:そう言えば「私」に
F:自分の気持ちが伝わるか
e:悩んでいたから?Ⅱ そんなスーインを見て、「私」はどう感じたか?
F:自分の問いかけに対して
e:スーインがすぐ、違うと
F:否定してくれることを期待した
e:が、無言のままだった
F:ので、シロを食べたのは
e:もしかして本当だったのか
F:と、不安になるとともに
e:激しいショックを受けている
F:ということでしょうね。
ふいに咽の奥からつきあげてくるものがあった。酸っぱかった。吐き気だ。思った瞬間、肩を震わせて胃のなかのものを床の上に吐いた。飛沫がスーインのスカートにかかったが、スーインはよけようともしなかった。
私の顔は真っ青だった。スーインの顔からも血の気がひいていた。学生服の袖口で口をぬぐい低い声で、
「ごめん」
と呟き、自分の手がまだハーモニカをしっかり握っているのを驚いた気持ちで見た。いきなりスーインの目の前に手を差し出した。
「返す」
言葉が飛び出した。
「なんで・・・・・・」
首を何度もスーインは左右に振った。
何もいわなかった。いえなかった。スーインの膝の前にハーモニカを置いた。そのままあとを見ずに走ってアンクルトムの小屋を飛び出した。
スーインとは逢わなくなった。スーインからも何もいってこなかった。私がアンクルトムの小屋に行くことは二度となかった。
問 「いきなりスーインの目の前に手を差し出し」「返す」と言ったのはなぜですか。
池永陽という作家が気になっているところへ、今年上半期評判がよかった作品と聞き、手に取って読み始めた次第である。だから、中身がどんな話なのか、な~んも知らずに読み始めた。こういうときって、一応題名から、少しは中身を予想する。アンクルトムってあのアンクルトム?って思いながらも、横文字が入って、幽霊という単語が入っている本書の題名『アンクルトムズ・ケビンの幽霊』から、どこかファンタジーな要素を予想して読み始めた評者である。まったく違った。
主人公は45歳の男性。鋳物工場の職人。妻はアート広告関係の仕事に勤しみ、年収は主人公より多い美人で賢い奥様である。息子は、せっかく入った大学を早々に中退して、演劇に没頭。鋳物工場のほうは、いまや斜陽産業。タイ人の男3人も働いているが、社長は主人公に、入管にたれこんで、その3人を辞めさせろという。不法滞在の3人でも、貴重な働き手。その3人を辞めさせようとする社長の真意は。
飲み屋の女将、ストリートミュージシャンの女性、北に還ったスーインの思い出。そういった諸々の登場人物たちで、作者が描きたかったのは、普通の小説?社会派小説?
アジアの一国としての日本の今を取り入れた本書は、良質な小説であろう。扱っている題材や風景で、個人の好みは分かれるのかもしれない。しかしながら、今、隣人が必ずしも日本国籍とは限らない可能性が増した日本における、ひとつの小説のあり方かもしれない。小説と文芸の垣根をなくしてしまえば、こういう遠藤周作的作品は、今後の日本にとって必要不可欠な作品群を形成していくのであろう。(20031130)
※自分で、書評を書いていながら、何書いているのか、わからんごとなってしまった。でも、ネット書評にはこういうタイプが多いので、まあいいか。 ー「本のことども」by聖月ーより引用
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慶應への国語 池永陽 ━国境のハーモニカ━ 3
問 「いつもなら二人一緒にいれば寒さなど感じないはずのアンクルトムの小屋が凍てていた」とは、どういうことですか
e:「二人一緒にいれば寒さなど感じない」のはなぜ?
F:スーインの住む家は?
e:「アンクルトムの小屋」と謂われる
F:あばら屋
e:掘っ立て小屋?
F:です。冬の風がもろに吹き込む家でした。
e:それでも・・・仲の良い二人が過ごすと
F:そんな寒さも感じないのですね。
e:だからこそ・・・
F:二人の心に”わだかまり”ができ
e:二人の心に隙間風が吹くと
F:凍てついた小屋に戻ってしまうのです。
e:つまり、スーインたちが犬を食べたという噂を信じたくないが
F:げんに「シロ」がいなのは事実
e:だし・・・かといって確かめるのも
F:怖いと「私」は思い
e:スーインもそんな「私」の気配を感じて
F:お互いにぎこちなくなっているということですね。
e:二人の間に”気まずい”雰囲気が漂っている、って感じ?
F:を「凍てていた」と。
e:「スーインは無言」な訳は?
F:うつむいているのは
e:否定しない?
F:という意味であり
e:同時に、何と言えば「私」が
F:理解を示しているくれるのか
e:言うべき言葉に悩んでいる
F:と言えるでしょう。
e:また、それに対して「私」は
F:”ショック”を受けているのです。
e:因みに、”犬”や
F:”猿”を食べる国
e:サルの脳みそを食う?
F:もあります。
e:「アフリカを食べる」では
F:「牛の生き血」を・・・
e:しかし、それは食文化の違いで
F:それを食べない国の人間が
e:一概に非難できるものではない?
F:但し、少年の頃の潔癖な
e:「私」には到底出来なかった
F:のでしょうね。
文化の違いや考え方の違いが差別に結びつくということは、それがいいか悪いかは別問題としても、なかなかなくなったりはしないんだろうなと思います。
でもそういうなかで相手を思いやったりすることは出来るはずです。
その結果、相手を好きになるってことは素晴らしいことなのかもしれません。
章之が中学生のときスーインを好きになって、それでも相手がタイ人だということで苦しんだことが、今の職場で外国人の労働者たちをかばったりすることに結びついたのかもしれません。
職場の外国人労働者たちのこと、自分の妻のこと、息子のこと。いろいろあってうまくいかなくて、それでもなんとか折り合いをつけていこうともがく姿は読んでいてつらかったです。
表立った差別だけが問題じゃないくて、日本人同士でも、家族でも友人でも、大なり小なりの差別というものはあると思います。ただこの作品の主人公、章之はその根っこの部分にスーインがいたっていうだけです。
読んでていろいろ考えることはあります。でも登場人物たちはそれぞれの結論を苦しみながらも出していく。そういうのを読んでて私はラスト近辺で泣かされました。
差別的なものをテーマにもってきてるので、誰にでもお勧めできる作品とは言いません。ですがこのテーマであのラストまでうまくもっていった池永さんの手腕は評価できます。まあ私が泣かされたということもあっての、この評価なんですけどね。ー読書中毒ーより引用
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慶應への国語 池永陽 ━国境のハーモニカ━ 2
問 「眉間にシワをよせ」た時の、「母親」の気持ちを答えなさい。
問 「口から泡を飛ばすように博明」がいった時、「私」は「博明」がどのような気持ちだったと思いましたか。
e:「眉間にシワをよせ」?
F:るのは”不快感”を表す
e:行動
F:表情ですね。
e:スーインが”犬を食べている”
F:という”噂”
e:を不快に思っている?
F:つまり、スーインたちが犬を食べている
e:という噂を聞いて
F:”嫌悪感”を覚えているということですね。
e:「口から泡を飛ばすように博明はいった」
F:この時、「博明」はどのような気持ちだったと
e:「私」は思ったか?
F:ここでの「博明」の発言は後のほうで
e:嘘だったということが
F:判ります。
e:「博明」にすれば、スーインたちを口汚く
F:罵ることで「私」にも彼女のことを
e:嫌いになってもらおうと
F:したのでしょうが、現時点では
e:「私」は知らない?
F:むしろ、「博明」がシロをかわいがっていたことを
e:知っている
F:また、「博明」が泣きそうな顔をしていたことから
e:激しく怒っている?
F:と思えたのです。
e:かわいがっていたシロを
F:スーインとその母親のスンドクが殺したと
e:決め付け
F:激しい怒りを感じていたということです。
スーインの吹くブルースが心になじまず、まわりをぐるぐるから回りしている。いつもなら二人一緒にいれば寒さなど感じないはずのアンクルトムの小屋が凍てていた。
スーインからハーモニカを受け取り、おざなりに一曲吹いてから思いきって口に出してみた。
「シロ、おらんようになったな」
「そうやね」
といってからスーインはうつむいていた。
「・・・・・・みんなはスーインたちがシロを殺して食ったといっている、もちろん俺はそんなこと信じとらんけど」
うつむいたままスーインは無言だった。いきなり胸のさわぎは音をたてた。不安感が一気に体中を襲った。まさか。
「食べたんか」
喉の奥からしぼり出した。
「・・・・・・シロは違うわ。そんなことはしとらん」
シロは違うとスーインはいった。シロは違う・・・・・・他の犬ならということなのか。
「犬を食べたんか」
声が震えた。うつむいていたスーインが真っ直ぐに私の顔を見た。目に力があった。凛としていた。綺麗な顔だった。
「食べたわ」
とスーインははっきりいった。私の目から視線を外さず、真っ直ぐ見つめて。先にうつむいたのは私のほうだ。
「なんでや」
掠れた声を出した。
「人間は何かを食べんと生きてゆけん。何であろうと何かを食べんと生きてゆけんのや」
叫ぶようにいった。
「米の件があったから鉱山の人は極端に私たちに冷とうなった。オモニはもう日本人に頼りたくないといった。日本人に頼っても結局は冷とうあしらわれるだけやって。日本に来てからずっとそうやったって・・・・・・そやから。けど米はとっとらん。人のものを黙ってとるようなまねは絶対にしとらん。それは本当や」
一気に喋った。スーインがこんなことをいうのは初めてだ。日本人に頼っても結局は冷たくあしらわれるだけ・・・・・・気持ちは痛いほどわかった。昼飯どきになると校庭の隅で座っていたスーインの姿が浮かんだ。
「それにしたって」
といってから、私はスーインのハーモニカを握りしめていることに気がついた。スーインのハーモニカ。スーインの唇。スーインのにおいが染みこんだハーモニカ・・・・・・。
※ アンクルトムの小屋・・・・・・スーインの家
※ オモニ・・・・・・朝鮮語で、母親という意味。
問 「いつもなら二人一緒にいれば寒さなど感じないはずのアンクルトムの小屋が凍てていた」とは、どういうことですか
問 「うつむいたままスーインは無言だった」について
Ⅰ なぜですか。
Ⅱ そんなスーインを見て、「私」はどう感じました。。
西原が勤める鋳物工場に働くタイ人達は、不当な給料未払いを受け貧困な生活を送りながらも肩を寄せ合って生きている。彼らのアパートに差し入れをして見守っているが、実は西原が中学生だった頃、生れ育ったマンガン鉱山に引っ越してきた朝鮮人の母子を重ね合わせていた。
初恋の相手スーインが、同じく貧困や差別を受けながらも、強く輝いている様子は少年の心を奪うものだった。ただ、純真な為にすべての事が衝撃的に映ってしまう。最後会った時の心残りを30年以上たった今も心にとどめたままだった。。
彼らの淋しさを語り始めたらキリがないが、苦労・苦難のなか必死に生きている、という方を強く書いているところが、暗くさせず本筋から話が逸れなくて良かった。
スーインが、思い出のハーモニカで演奏するシーンは印象的。
シンプル(余分な文章が無い)なので、読みやすく話に入りやすかった。また現実の問題として悩む主人公に、おでん屋の女将や路上で出会ったフウコが、掛ける言葉が良い。
またイイな~と思える本に出会ったかな?ーみかんのReading ーより引用
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慶應への国語 もう抱えこまないで 池永陽 ━国境のハーモニカ━ 1 慶應義塾普通部・慶應義塾湘南藤沢中等部・慶應義塾中等部対策
「北に帰るわ」そう言い残して、日本を去っていったスーイン。想いを寄せあいつつも、ついに成就することのなかった初恋の記憶。萎縮した日々を送る鋳物職人章之は、粉塵にまみれた世界で精一杯生きようとするタイからの出嫁ぎ青年や在日三世の少女たちとの心の交流を通じて、冷え冷えとした日常にあたたかな血が通いだすのを感じ始めている。彼らに促されるように、少年時代に封印した過去の罪をたどる決意を固める章之―。時間のなかでも決して風化することのないピュアな気持ちを蘇らせ、新しい家族再生の可能性をさぐる、感動長編。
「本当やろか。朝鮮の人が犬を食べるいうんは」
日頃はスーインたちを好意的に見ていた母親までが眉間にシワをよせてこういった。
そんな噂はまったく気にせず、私はそれからも何度となくスーインとアンクルトムの小屋でハーモニカを吹いて話をした。すでに二月になっていた。来月になればスーインは鉱山を出て一宮市に行ってしまうのだ。背中を後ろから叩かれるような気持ちで何度もスーインに逢った。
鉱山で飼っていた雑種犬の白が消えたのはちょうどそんなころだ。シロは愛想のいい犬で、声をかければシッポを風車のようにぶんぶん振り回して誰のところにもすぐとんでくる。エサは坑夫の残す残飯だが私も何度かエサをたったことがある。嬉しさを全身に表しながらアルマイトの鍋の中に鼻をつっこんで食べる様子は、見ていても心の和むものがあった。
そのシロが消えた。一週間が過ぎてもシロは姿を現さなかった。スウドクが連れていったと公然と口にする坑夫が多くなった。噂が噂でなくなり、スンドクの日頃の愛想のなさがよけいにその話に拍車をかけた。
「スーインの母親や、スンドクがシロを殺したんや。二人してシロを殺したんや」
口から泡を飛ばすように博明はいった。博明もシロをかわいがっていて、よく一緒に遊んでいた。泣きそうな顔をしていた。
私の心はかなり動揺していた。スーインたちが犬を食うはずがないと思っても、現にシロが姿を消したのも事実だった。どう考えたらいいのか。頭が混乱した。心が重くよどんでいたがそう考えてもスーインたちがシロを・・・・・・。
問 「眉間にシワをよせ」た時の、「母親」の気持ちを答えなさい。
問 「口から泡を飛ばすように博明」がいった時、「私」は「博明」がどのような気持ちだったと思いましたか。
e:「池永陽」?
F:1950年愛知県豊橋市生まれ
e:またもや”団塊の世代”の最後の方?
F:今回の「国境のハーモニカ」は
e:もともと「アンクルトムズ・ケビンの幽霊」
F:を改題したものです。
e:前の題名の方が”インパクト”有り?
F:この話の評価は分かれますね。
e:”差別”をテーマにしたものは仕方ない?
F:少し前に取り上げました
e:伊集院静 ━━仔犬のお礼━━?
F:にも犬が出てきます。
e:同じく”異国の話”?
F:犬を食べる話ではないですが・・・
松本仁一 「アフリカを食べる/アフリカで寝る」 麻布中学 2000年
e:「牛の生き血を満たしたコップが目の前にさしだされたとき~」
F:20世紀最後の出題が
e:これでしたからね・・・今回のストーリーは?
鋳物職人・章之は、中学生の頃、韓国の少女・スーインへの恋心を打ちのめして余りある人種差別の現実を乗り越えられず、罪の意識が心に巣食っていた。老境に差し掛かった章之は、青年時代の心の傷をたどることを決意する。【「TRC MARC」の商品解説】より
F:”罪の意識”とか
e:”罪悪感”とか、が”テーマ”?
池永 陽(いけなが よう、1950年6月29日 - )は、日本の小説家。
愛知県豊橋市生まれ。本名・池田誠。岐阜県立岐南工業高等学校卒業。グラフィックデザイナー、コピーライターなどを経て、1998年「走るジイサン」で小説すばる新人賞受賞。2006年『雲を斬る』で中山義秀文学賞を受賞ー池永陽 - Wikipediaーより引用
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慶應への国語 ホルスト・ブルガー ━父への四つの質問━ 3 慶應義塾普通部・慶應義塾湘南藤沢中等部・慶應義塾中等部対策
中学受験・家庭教師 SAPIX・希学園・浜学園対応 開成・麻布・駒東・慶應・武蔵・筑駒・聖光・灘中学 国語記述対策 Welcome to expert FORUMにほんブログ村
ふたりの警官は、こまごまと尋問した。なかでも、いちばん年かさだというので、ギュンターがひどくやられた。だが、犬にだきついてなきじゃっくている、ちびのカールアウグストさえ、手かげんしてもらえなかった。
ワルターは、ナイフでつかれたような思いで、尋問をうけた。
「どこに立っていたんだ。その場所を正確にしめしてごらん。あの子は、どれほど前にかがんでいたのか。どうして、つかまえてやらなかったのか。おまえが、あの子をけっとばしたんだろう。そうじゃないのか。むろん、水に落とそうとは思わなかったんだろうが。ところが、思いがけず、こんなことになってしまった。そういうことだったんだろう。さあ、どうなんだ」
ワルターは、歯をかたくくいしばって、頭を横にふりつづけた。ブライトナーさんは、かんたんな質問のあと、わきへしりぞけられていた。ワルターは、なんどもそちらのほうへ目をむけたが、たすけにはならなかった。警官のひとりがギュンターに、いっしょに交番まできてもらおう、調書をとるんでね、といっているのが、ぼんやりと聞こえた。
問 「歯をかたくくいしばって」とありますが、このときワルターが歯をかたくくいしばったのは、なぜですか。
ワルターは心配で、もうなみだをおさえていることができなかった。どうか牢屋にいれないで、二度としませんから、どうか家に帰して、と警官たちになくつこうとさえしかけた。いつもいわれているからって、どうしていまさら「男らしくする」必要があろう。なきべそをかいているのを、見られてしまったのだもの。いまさらふりをしたって、なんになる。
そのとき、ちょっとおかしなことがもちあがった。長いこと、ワルターには、それがなんだったのかわからなかったし、わかろうともしなかった。
F:゛関連性゛でしょ!
e:゛関連性゛ね。
F:『開成』の『過去問』
e:『記述』以前のね。
F:『麻布』の『過去問』
e:を゛相互゛にやっていれば
F:自ずと解ると思いますよ!
e:二つの学校の『過去問』をやる意味は?
F:あるかないかは親御さんの判断でしょう!
e:最終的には!
F:ただ『記述』以前の『過去問』に関してですよ。
e:そりゃそうですよね。
F:『筑駒』を第一志望のお子さんは『記述』以前の『開成』の『過去問』は必須でしょう!
e:『開成』を受ける、受けないは関係なしに?
F:塾の゛学校別゛でも
e:その考えでやってますよね。
戦争中父はヒトラーユーゲントにいた。なぜ、そうなったのか、戦後生まれの息子に問われた時、苦悩しながらもきちんと向き合って答える父。過去の自分が誤っていたと認めるのはつらいことだが、それがないと何度も同じ過ちを繰り返すことになる
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慶應への国語 ホルスト・ブルガー ━父への四つの質問━ 2 慶應義塾普通部・慶應義塾湘南藤沢中等部・慶應義塾中等部対策
中学受験・家庭教師 SAPIX・希学園・浜学園対応 開成・麻布・駒東・慶應・武蔵・筑駒・聖光・灘中学 国語記述対策 Welcome to expert FORUMにほんブログ村
ワルターはこわごわ、ギュンターの表情をうかがった。とほうにくれ、恐怖に青ざめた顔は、おおくをものがたってはいたが、予期した非難の色は見られなかった。「なんてことをしたんだ」といわれるのを、おそれていたのだが、それどころか、ギュンターは、こんなことを、口の中で、もごもごつぶやいていた。
「いっちゃった。前にのりだしすぎたんだ。とうさんをよんでくる。こんどは、おれたち、ただじゃすまないぞ」
兵器庫の裏の庭へ、彼は走っていった。
カールアウグストは、グレートデーン〔犬の一種〕の首輪にしがみついて、なきそうな声をだした。
「帰りたいよ。かあちゃんのとこへいきたい」
だが、そのときには、もう人があつまってきて、彼をなだめにかかっていた。大声で話しかける声。どうしたのかととたずねる声。だが、ワルターにかまうものはいなかった。ひとりきりで立ちつくす彼は、自分がなんだか、イエスにうらぎったユダ〔イエス・キリストの弟子〕のように思えてきた。おばあさんが、なんどもしてくれた話だった。
ギュンターの父親、ハンス・ブライトナーが、広場を横ぎって、大またでやってきた。ちらとワルターのほうを見たが、すぐにひらりと鉄さくをこえ、すこし流れにそってあるいた。むろん彼にもなにひとつ見つかりはしなかった。ふたりの警官が、オートバイで事故現場にのりつけるより早く、彼は少年たちのもとへもどってきた。
そのときワルターは、なにかにつきうごかされたように、小走りにギュンターの父親に近よった。
「ぼくが、ゲルハルトをおしたんです」
と、あえぎあえぎことばをはきだすと、これでもうなにもかもいってしまうのがうれしかった。どう処罰されてもかまわない。なにひとつ予想だにしていない両親のことが、ふと頭をかすめた。
それからワルターは、むずかしい顔つきでさぐるように自分を見おろすブライトナーさんを、じっと見つめた。説きふせるように、というより、ほとんど命令するように、彼はいった。
「ゲルハルトは自分で水に落ちたんだ。おしたものなんかいやしない。いいかい。あの子が不注意だったんだ。あんまり前にのりだしすぎたんだんだな。それだけだ」
まるで呪文をかけようとするかのように、彼は、ワルターに、じっと目をそそいだ。
「おまわりさんにたずねられても、ぼうやが、あの子をおしたなんていうんじゃないぞ。だいたい、そんなことはうそっぱちだ。いつもほんとうのことをいわなくてはいけないんだよ、わかったね」
問 「いつもほんとうのことをいわなくてはいけないんだよ」とありますが、ブライトナーさんは、このときどのような考えで、ワルターにこういったのでしょうか。
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慶應への国語 どんとついたら、どうなるかな…… ホルスト・ブルガー ━父への四つの質問━ 1 慶應義塾普通部・慶應義塾湘南藤沢中等部・慶應義塾中等部対策
中学受験・家庭教師 SAPIX・希学園・浜学園対応 開成・麻布・駒東・慶應・武蔵・筑駒・聖光・灘中学 国語記述対策 Welcome to expert FORUMにほんブログ村
かつて父がまきこまれていった戦争について、同じ年頃になった息子が問いかける。心を開きあう親子を描いた作品
全国学校図書館協議会・基本図書
一九三○年代半ばのドイツでは、ヒトラーに率いられたナチス党(ナチ)によって、ユダヤ人が不当な迫害をうけていた。次にあげた文章は、その時代を背景に、ドイツ人の少年、ワルターに起こった出来事をえがいた小説の一部です。読んで、後の問に答えなさい。
どんとついたら、どうなるかな……ふと、そう思いはじめると、もうすっかり、この考えのとりこになってしまった。心臓が、のどもとまでせりあがってきたかのようにどきどきするのが、ワルターにはわかった。不安も、「いけない」という声も、その結果どうなるか考える力も、しだいに弱まっていった。やってみたい、という衝動だけが、ぐんぐんふくれあがってきた。目をとじ、深く息をすいこんだ。
問 「『いけない』という声」とありますが、ワルターの心の中で「いけない」という声をあげているものは、何でしょうか。
水音ひとつ聞かなかったのに、目をひらくと、ゲルハルトは、きえさっていた。ギュンターのおさえたようなさけびと、水面に目をすえたまま、さくからとびおりたようすで、ようやく、ワルターにも、なにがおこったのかわかった。のどをしめつけるようなおどろきが、彼をとらえ、声をうばってしまった。手足がしびれたようで、身動きひとつできなかった。
問 「のどをしめつけるようなおどろき」とありますが、それはどのようなおどろきでしょうか。
「落とした、落とした」
カールアウグストの声が、まるで遠くのほうから聞こえてくるようだった。目をまんまるにして、犬のうしろに立っていた。
「どうして、あがってこないの」
とりかえしのつかないことがおこったのだということが、カールアウグストには、まだ、のみこめなかったのだ。
ゲルハルトのからだは、どこにも見あたらなかった。兵器庫の裏で川がまがっているが、そこをこえて流されてしまったのだ。たすけをもとめる声さえ聞こえなかった。水面からつきだしている石に、頭をうちつけたにちがいない。
ワルターは、雷にでもうたれたかのように、あいかわらず、じっと立ちつくしていた。空想にすぎなかったものが、おそるべき現実となってしまったのだ。うたがいもなく、彼がゲルハルトを、水につき落としたのだ。それとも?かすかな希望のひらめきが、光をはなちはじめた。なにもかも、想像してみただけじゃなかったのだろうか。おとしたと思っただけなのでは、ちょうどそのとき、ゲルハルトはバランスをうしなって、すべり落ちたのだ━━うっかりして。
問 「かすかな希望のひらめき」とありますが、それはどのようなことでしょうか。
e:ブルーノ・ワルター?
F:それは指揮者の名前でしょ!
e:ワルターって子供はドイツ人でしたっけ?
F:友達のゲルハルトを川につき落としてしまうんですね。
e:時代背景は?
F:1930年代半ばでしょうか?
e:ナチがユダヤ人を不当に迫害してた頃ですね。
F:そのことは説明されてますよ。
e:世界史はまだですからね。
F:『社会』ではそのあたりのことは゛同時代史゛風に教えますから
e:『開成』受験生なら説明不要ですか?!
F:3C対策に関連して3B政策の話は
e:すり込み済?
F:第一次世界大戦から、ですね。
e:『アンネの日記』からも?
F:それはどうかな?
e:読んでない?
F:それより゛アパルトヘイト゛でしょう。
e:「どんとついたら、どうなるかな・・・」この衝動って?
F:なんなんでしょう?
上智大学ドイツ文学科卒業。1974年から1985年までミュンヘンの国際児童図書館日本部門勤務。ミュンヘン大学で民俗学・中世ドイツ文学を専攻。1989年、ドイツの児童文学作家ミヒャエル・エンデと結婚している。ー佐藤真理子 (翻訳家) - Wikipediaより引用
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