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2009年4月

expertFORUM 国語専科-5.10-中学受験家庭教師

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国語専科-5・10-中学受験家庭教師


e: 今年もSの『志望校判定』とNの『志望校選定』とバッティングですね。

F:この時期はいろいろな゛形式゛の

e:『テスト』に慣れる?

F:それと、夏休みの゛課題゛を

e:今から?

F:要するに゛弱点゛を洗い出しておくんですね。

e:なるほど、そういう意味でY・N・S。

F:それぞれ、゛特色゛がありますから。

e:偏らないで、満遍なく

F:゛現在゛の自分の実力を知っておいた方がいいということです。

e:夏休み前に!

F:ダブってる場合、どうすればいいかは前に書きました。

e:『過去ログ』を参照して下さい、ということですね。

F:゛5月病゛対策にもなるって訳でしょうね。

e:小学生でも?

F:ですから、SはGWに3日間、゛特訓゛をするんでしょ?

e:そのあたりはよ~く解ってますね。

F:『過去問』をやらせて、気を引き締めるんですね。

e:゛春期講習゛に『過去問』を少しかじって、゛手も足もでない゛状態から

F:GWで多少、解けるようになったという゛実感゛を味わさせるってことですね。

e:先手必勝?!「『過去問』をそんなに早くやらせていいのかしら?」

F:だから、あれだけの゛実績゛がでるんですね。

e:カリキュラムには『過去問』をやるなんて、一言も書いてないでしょ?

F:書く必要がないんです。

e:゛当たり前゛という感覚ですか?

F:『灘』を受けるお子さんは新6になったとたんに

e:『過去問』を解きだす?

F:いや、もっと早いでしょ!

e:5年!?

F:でないと、浜の

e:いわゆる、『灘』の゛シュミレーション゛模試は解けない?

F:『灘』は2日間にわたって入試が行われる訳ですから

e:゛1日目゛の『過去問』くらいは少なくとも

F:10年分くらいは解き終えてるはずですね。少なくとも私は『灘』を受けるお子さんにはそうしてますね。

e:でなきゃ、゛190点台゛はとれないですよね!

F:『灘』の『過去問』で、ですね。1日目の『過去問』は30年分は゛夏休み前゛にはやり終えます。

e:ということは、『開成』の『過去問』+『灘』の『過去問』?

F:1日目のですね。3時間でやったり、週2日やったりしますね。

e:それぞれ2時間ずつですか?時間、余りません?

F:『開成』の『過去問』は最初、そのまま解かせて、今度は゛選択肢゛問題を゛記述゛にして

e:なるほど。

F:それでも、2時間はキツイですね。

e:『記述』ですからね。

F:まだ、スラスラ書けるってわけにはいきませんからね。

e:そんなに感じですか!『灘』を受けないお子さんは?

F:『筑駒』ですね。

e:それも、『選択肢問題』を『記述』に?

F:もちろん!

e:3時間では足りないでしょう?

F:ですから、週2日で。2時間の日と3時間の日が必要ですね。

e:2時間の日は『過去問』をそのまま解かせ、

F:3時間の日は『記述』ですね。まだ、そんなには書けないですから。

e:時間がかかると?ところで、ノートは?

F:いわゆる『カルテノート』ですか?Yの『ノート』を使ってます。

e:あれって、゛本多゛式のノートに似てますよね。

F:ノート自体、大きいですから、上段にも下段にも結構書けるんですね。

e:1年間で何冊使いますか?

F:お子さんによりますけど、3~5冊くらいでしょう。どういう風に使っていくかは前に書きました。

e:また『過去ログ』を!ということですか?

F:そうですね。
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薄井ゆうじ 「青の時間」



ブルー・ペンシル



内容(「BOOK」データベースより)

 生い立ち、年齢、素顔、それらすべてが謎につつまれた世界的マジシャン・ブルー。”呼び屋”の僕は、彼のなかにかつての幼なじみの姿を見た。さらに彼の右腕である人物とも、奇妙な重なりがある。ブルーははたして何者なのか。しかし哀しい真実が明らかになる時、彼は姿を消した。謎の人物をめぐる書き下ろしファンタジー。






 その日をきっかけにして、僕はたびたび水車小屋へ行くようになった。夏はうんざりするほど長かったし、彼との距離をゆっくりせばめるには充分すぎる時間が転がっていた。


 たった一人の観客のために万里夫はいつまでも飽きずに無数の手品を演じた。


 そういうものを見るのは、とても楽しかった。

 「全部、ひとりで考えたんだ」

 「手品師になるのか」

 「わからない。こうしていると気分がいいだけだよ」

 彼は曲芸やアクロバット的なことも熱心に訓練しているようだった。早くサーカスに出てみたい、とも言った。そのことが彼にとって、父や母と一緒に暮らせる唯一の手段なのだと気がついたのは、ずいぶんあとになってからだった。

 僕は何度か、妹の奈々も小屋に連れて行って彼の手品を見せた。奈々ははじめのうちは怖がっていたが、しまいには連れて行ってくれとせがむようになった。


 気が遠くなるほど長いはずの夏休みは、あっという間に過ぎ去った。新しい学期がはじまると僕は水車小屋へはほとんど行くことがなくなった。またほかの友達と遊ぶようになって、万里夫からは少しずつ遠ざかって行った。


 「友達なんていらない」と彼は言った。

 「どうして」

 「ミツルは別だ」

 彼はその理由を言わなかった。たぶんカブト虫と何か関係があるのだろうと思ったが、僕はそれ以上、何も訊かなかった。



問 万里夫が「友達なんていらない」と言った理由を答えなさい。



e: これこそ、最後の方まで読まなければ……

F: 冬休みも終わり、三学期が始まった、ある寒い朝

e: 雪原の一本道で「万里夫」と再会する場面が出てきますね。

F: ”別れ”を告げる時に

e: 「いつか、友達なんかいらないって言っただろう」とありますね。

F: また「いつか、返すって言っただろう。」ともね。ここでは関係ありませんが……

e: いつか、また何処で再会する”余韻”を残して……

F: さあ、そのへんは”未知”ですね……

e: とにかく万里夫は「友達なんていらない」っていながら……

F: しっかり「僕」という友達を作ってます。

e: これはどういうことですか?

F: 「手紙が来たんだ」とありますね。

e: 誰かの「手紙」ですか?

F: 両親からでしょう。

「彼は曲芸やアクロバット的なことも熱心に訓練しているようだった。早くサーカスに出てみたい、とも言った。そのことが彼にとって、父や母と一緒に暮らせる唯一の手段なのだと気がついたのは、ずいぶんあとになってからだった」

e: ”転校生活”を余儀なくされている?

F: 親がサーカス団の”巡業”で、地方を転々としているんですね。

e: いわゆる”どさまわり”ですか。

F: 親の都合で学校での生活が振り回されている。

e: いわゆる”転勤族”のお子さんは

F: 多かれ少なかれ、「友達なんかいらない」

e: っていう意識は働くんでしょうね。

F: 友達を作ってもすぐに”転校”ですからね。

e: 作っても意味がないというか、無駄?

F: そうではなくて、「友達なんかいらない」と言った「万里夫」の本心は?

e: 本音を「僕」にだけ告白しているところがありますね。

F: ですけど、「僕」という友達を作った?!



 そうして彼との距離は平行を保ったまま秋が来た。僕は久しぶりに水車小屋を訪れた。彼が、来ないかと誘ったのだった。



問 万里夫が「僕」に「来ないかと誘った」目的は何だと考えられますか。



e: 「万里夫」の目的ね……

F: 「手品じゃなくて、本当にこれを回してみようと思ってるんだ」とあります。

e: 「手品じゃなくて」……ホントに?

F: 「これは手品なんかじゃない」と

e: 語気を強めて言ってますね。

F: 「これは手品なんかじゃない」

e: 「でも僕は、こういうことがしたかったんだ」

F: さらに、「このことを、忘れないでほしい。水車は、こうして回すんだということをね」

e: ”万里夫の辞書に不可能の文字はない”?

F: 不可能と思われたことを可能にするという

e: 早く”一人前”になってサーカスの一員になり

F: 両親とともに暮らしたいという一心で

e: 芸、つまり”マジック”に打ち込んだ結果

F: いろいろな”マジック”が実現できた!

e: 「本当にこれを回してみようと思ってるんだ」と言った万里夫に

F: 「僕」は「どうやって?」と訊いた

e: それに万里夫は「僕に訊くよりも自分で考えたほうがいい」と答えてます。

F: そして、さらに万里夫は

「ずっと考えていたんだ、水車を回す方法を。流れる水を増やそうなんて考えてはいけない。堰き止めるんだ」

 「僕らはまだ、流れていくことしか知らない。そのうち流れを止めることも覚えなければ。そんな気がする」

e: 自立への精神的旅立ちを「僕」に促しているってことですかね……

F: 大人になるための精神的支柱の基礎作りを今から始めろ、っていうことなんでしょうか?

e: とは言っても……「万里夫」と「僕」とでは生活基盤が違い過ぎてますからね。

F: 「万里夫」のほうが、そういった点では

e: 変な言い方かもしれませんが、恵まれていた?

F: 早く”大人”になる条件はそろっていた?

e: ”自立”を促す条件が、ですね。

F: 自分の意思で”大人”になろうとしても

e: ”きっかけ”とか”条件”なければ……

F: ただ「僕」は「万里夫」に出会えたという

e: 幸運なきっかけ

F: ”カブト虫”がとりもつね。

e: ただ、悲しいかな”会うは別れの一里塚”?

F: 縁があって、出会い

e: 無二の親友になっても

F: いつかは別れなければならない……

e: 「万里夫」の「僕」に対するメッセージに

F: その”含み”も……水の流れを増やそうとしてはだめ

e: まず、流れを堰き止め

F: 満杯になったところで

e: 一気に放水して

F: 水車を回す

e: ここに込められた「万里夫」のメッセージは?

F: 言いたいことは何でしょう?

e: またこんなことも言ってましたね。

F: 「僕らはまだ、流れていくことしか知らない」

e: 「そのうち流れを止めることも覚えなければ」と。「流れを止めて」……

F: 「彼は僕に、水車の回るのを見せるためだけにここへ呼んだのではないだろう。もっと別のことが言いたかったにちがいない」

e: さらに、そのあとに「僕は目の前の光景を見ながら、彼が考えていることの何分の一も理解できない自分に腹を立てていた」

F: この文章を読んでいるお子さん?

e: 「きっと彼は僕に何かを伝えたいのだ」

F:その「何か」がこのメッセージの中にあるんでしょうね……。「このことを忘れないでほしい。水車はこうして回すんだということをね」



 大きな水車はひからびたまま、ちろちろと流れる小川の水を恨めしそうに見下ろしている。
 彼はその土手にすわって、流れを見つめていた。

 「回そうかと思うんだ」

 「手品じゃなくて、本当にこれを回してみようと思ってるんだ」

 「どうやって」

 「カブト虫の掴みかたと同じだ。僕に訊くよりも自分で考えたほうがいい」

 手で回す。それがいちばん手っ取り早いだろう。だが彼は、違う、と言った。


 こうするんだ、手伝え、と彼は言って立ち上がった?どこかから太い棒を二本持ってくると小川の上流の川幅いっぱいに立てた。その支柱を支えにして板を何枚か組み合わせると、大きな壁ができた。川の水はそれに堰き止められて、少しずつ貯まっていく。彼が何を考えているのか、ようやくわかってきた。

 「ずっと考えていたんだ、水車を回す方法を。流れる水を増やそうなんて考えてはいけない。堰き止めるんだ」

 「僕らはまだ、流れていくことしか知らない。そのうち流れを止めることも覚えなければ。そんな気がする」

 彼はそう言って、あとは黙ってしまった。


 「もういいんじゃないかな」

 「まだだ」と彼は言った。

 「できるだけ多く貯めるんだ。そうすれば水車はもっと早く回る」

 彼は僕に、水車の回るのを見せるためだけにここへ呼んだのではないだろう。もっと別のことが言いたかったにちがいない。


 「もういいかな」

彼はゆっくりと立ち上がった。





『青の時間』2007年1月16日

 三十二歳になった僕はフリーの「呼び屋」をやっていて、今抱えている仕事は、ブルーという世界的なマジシャンを日本に招聘してテレビCMに起用することだった。半年間接近を試みてあきらめかけていた頃、話を聞くというメールが届いた。妹に途中シカゴに寄るように言われ空港で待っていると、妹の代わりに三島沙菜江という女性が迎えに来た。その女性がブルーのエイジェンシーの担当者で、なぜか妹もその事務所で働いていた。暗い部屋で会ったブルーは、水車小屋や冬のカブト虫の話を始めた。彼は青木万里夫なのだろうか。仕事のすべてを任せている小倉貴史に相談するように言われ、会ってみると小倉はブルーとは対照的に色黒で快活な男だったが、サングラスをかけるとなぜかブルーに似ていた。日本に帰った僕は、ブルーのマジックのプロジェクトの中で働きはじめる。奈奈は小倉に、沙菜江はブルーに恋していた。そして、脳外科医鴻池によって明らかにされるブルーの悲劇。



薄井ゆうじの森》

 青く見える物体は、青以外のすべての色を吸収するという。だが青い光線だけは吸収できないために、青を反射させ、透過させ、その物体を青く見せるーー。この事実を何かの本で読んだとき僕はとても驚いた。これは青色に限らずほかの色についてもすべて同じで、物体は、その色だけを吸収することができないために青く、あるいは赤く見えるのだという。
 つまり青い海は、青色の光線だけを取りこむことができないーー。何か悲しい事実を知らされたような気がして僕は少年の日、その科学雑誌のページを開いたまま、しばし茫然としてしまったことを覚えている。
 二年ほど前に僕は耳を患って、ある特定の周波数の音が聞こえなくなってしまった。いまはそれを補聴器で補っているので日常的に支障はないが、聞こえない周波数はどんな補聴器で補っても聞こえない。ぽっかりと穴の開いたように、僕からその音が失われている。
 かつては聞こえていたはずの音たちがどんなふうであったのか、その記憶をいま、ゆっくりと失いつつある。失われていくものの輪郭は、驚くほどくっきりとしている。もしかしたらその聞こえない部分こそが、「僕の音」なのではないだろうか。

 青の時間をテーマに作品をつくりつづけているベルギー出身の美術家であり演出家でもあるヤン・ファーブル
 アンリ・ファーブルが、そしてヤン・ファーブルがモチーフにしている昆虫たちが眠る青い時間ーー、それをこの物語の題名にした。青。それをより積極的なものに固定するために、TIME BLUE を『青の時間』と訳した。
 ブルー・ペンシル。やはり青は、静かでエキサイティングな色なのかもしれない。(by十九九五年十月 東京青山の『BLUE』にて 薄井ゆうじ)

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薄井ゆうじ 「青の時間」



《出版社/著者からの内容紹介》

世界中に名前をとどろかせている、マジシャン・ブルー。その正体は謎につつまれていて、素顔をさえ見たものはない。ブルーを日本に招聘するという、およそ不可能と思われる仕事を引き受けた僕が手を尽くし果て、途方に暮れていた時、なぜか、彼の方から会いたいというエアメールが届く。ブルーとはいったい何者なのか?少年時代の記憶が鮮やかに浮かび上がる。珠玉の青春ファンタジー。(解説・佐藤亜紀)


 地球上のあらゆる生命が眠ってしまう時間、だが、内部では細胞単位で生き生きと活動をつづけている時間ーー
タイム・ブルー。
『ファーブル昆虫記』 



『青の時間』2007年1月16日

 十八年前、青木万里夫という色白の少年が中学校に転校してきた。夏休み、妹の奈奈と森へカブト虫を捕りに行き、僕はそこで万里夫と遭遇する。その日から僕は万里夫が一人住んでいる水車小屋へ行くようになり、いろいろなマジックを見せられた。冬休みが終わると、万里夫はあげたカブト虫を返して、サーカス団員の両親を追って転校していった。それっきり僕の水車は止まっていた。


《あらすじ》

 ある日、「僕」のクラスに、青木万里夫という、風変わりな名前の少年が転校してきた。万里夫はクラスメイトになじめず孤立したまま、そのうちに学校は夏休みを迎えてしまう。「僕」は八月のある朝早く、カブト虫を捕まえるために、妹の奈奈と一緒に近くの森へ出かける。そして、その森の中で「僕ら」は偶然、一人で手品の練習をする万里夫と出会った。森の中で出会った万里夫は学校での様子とは違い、「僕ら」と積極的に会話をするのだったが、その中で話題になったカブト虫に、万里夫はなぜか非常に強い興味を示した。そして、「僕ら」にカブト虫を捕まえたらゆずってくれるように頼んで、その場を足早に立ち去ってしまう。


 夜が明けて、陽が高くなった。

 小屋の近くまで来てみたが、水車は回っていなかった。これが壊れたのは僕が幼稚園のころだろうか。あれからもう、ずいぶん経つ。いや、水車は壊れたのではなく、巨大な水車を回すのに充分な水量が小川から失われて久しいのだった。

 僕は水車小屋に前に立って、しばらく迷っていた。



問 「僕は水車小屋に前に立って、しばらく迷っていた」とありますが、「僕」が迷っている内容について答えなさい。



e: 薄井ゆうじと言えば、

F: 「飼育する少年」(『十四歳漂流』所収)開成で平成14年に出ましたね。

e: 例のキリンを飼う話?

F: キリン=少年の分身であると同時に憧憬の存在

e: 二律背反する点が超現実的シュール?

F: 当時、ずいぶん話題になりましたよ。

e: もう7年も前の話ですか!

F: 受験した教え子は大学生です!

e: 「TIME BLUE」 どこかの高校入試で出たとか?

F: 昔の話ですね。1995年12月15日刊行ですから。

e: 臭覚が失われ

F: 今では耳も患ってて

e: 益々、感性が研ぎ澄まされる?

F: 今後、どういう作品を書くか、楽しみですよ。

e: 地球上のあらゆる生命が眠ってしまう時間

F: が、内部では細胞単位で生き生きと活動をつづけている時間

e: タイム・ブルー

F: 『ファーブル昆虫記』を書いたアンリ・ファーブルのことば。

e: 『ファーブル昆虫記』も開成で出ました?

F: 大昔ですね。

e: 青の時間をテーマに作品をつくりつづけているベルギー出身の美術家であり演出家がいましたね。

F: ヤン・ファーブルでしょ。

e: アンリ・ファーブルが、そしてヤン・ファーブルがモチーフにしている昆虫たちが眠る青い時間。

F: それをこの物語の題名にした。青。それをより積極的なものに固定するために

e: TIME BLUE を『青の時間』と訳した?

F: と、薄井ゆうじは語っています。

e: 

F:

e:

F:



 妹は先に帰らせた。


 水車小屋と家への分岐点まで戻ってきたとき、僕は籠のなかから雄雌一匹ずつのカブト虫を取り出して、来るか?と妹に言った。意味がわかったのだろう。僕が持っている二匹を残念そうに睨みつけると、妹は首を横に振った。家のそばまで妹を送って水車小屋の前に引き返して来たころには、もうすっかり夜が明けていた。そして僕は、迷っているのだ。



問 「妹」はなぜ「首を横に振った」のですか。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 ーー彼はいったい、何者なのだろう。

 それがわからなかった。


 わかったいるのは彼の名前と、友達をつくりたがらないということ、そして水車小屋に住んでいるらしいということだけだ。

 だがもうひとつ、僕にはわかっていることがあった。彼はカブト虫を欲しがっている。そして僕はいま手のなかに二匹のカブト虫を持っている。そのことだけが頼りだった。勇気を奮い起こして深く息を吸いこむと僕は小屋のドアにノックした。


 薄くひらいた戸の隙間から、色白の肌と細い目が覗いた。その視線が僕をとらえると戸は大きくひらいて、そこに万里夫が立っていた。






薄井ゆうじ 「青の時間」
謎のつつまれた世界的マジシャン
彼は一体誰なのか
長編ファンタジー
1995年12月15日刊行
素顔に隠されたマジシャン”ブルー”。
僕は彼のなかに幼なじみの姿を見た。
が、彼の幹部スタッフのなかにも、なぜか”ブルー”の影がちらつく。
そして悲しい真実が明らかになるとき、彼は姿を消した。
”ブルー”はいったい誰なのか、そしてどこへ行ったのか。

プロフィール
筆名:薄井ゆうじ
本名:薄井雄二(ネット名:くじら鳥)
生年月日:昭和24年(1949年)1月1日
出身地:茨城県(県立土浦第一高等学校卒)
高校卒業後、日雇い生活。
その後、イラストレーター「たの・かえる」として週刊プレーボーイに五年、夕刊フジ紙に十六年間イラストを掲載。イラストルポやグラフ誌写真取材等を手掛け、広告及び編集プロダクション「株式会社イーハトーブ」を経営。現在は専業作家として文芸各誌に小説を多数連載。

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e:『麻布文化祭』中はSはGS特訓で古~い『過去問』をやりますね。

F:声教の10年分はみんな持ってますからね

e:3日間だけですから、やる量も限られるんじゃないですか。

F:春に少しかじってますから『過去問』に抵抗はないでしょう。

e:せいぜい、平成元年~10年までの『過去問』の中からピックアップになると思いますよ。

F:『算数』は10年前から、゛出尽くしてる゛なんて、よく聞きますか。

e:20年前からだと思いますがね。

F:もう゛新しい゛問題は作れない?『チャレ算』なんか

e:今は『中算』。

F:昔、『チャレ算』の時代に最初の目次ページに広告を出したんですね。

e:゛右側゛の?また、無謀にも!『国語』のCMでしょ!

F:10年くらい前ですね。

e:反響ありました?

F:関西からの゛問い合わせ゛が多かったですよ。

e:大教大附属とか?懸賞の応募も関西方面から結構ありますからね。で、さすがに新幹線で、っていうわけにはね。

F:新幹線の゛回数券゛で、という方がいましたよ。

e:地元にいっぱいいるでしょう!

F:なんか、東京から引越して来て、

e:「やはり東京の先生がいい」と?結局どうしました?

F:夏休みに゛特訓゛しましたよ。『過去問』10年分。

e:『灘』の?朝から晩まで1日がかりでしょう!

F:ラストスパートの3か月を都内のホテルを転々と廻って教えたお子さんもいましたね。

e:学校もよく休みを認めましたね。で、゛懲りた゛?

F:「東京出版」は近くでしたから試しに出してみようと。一回だけ出したきりですよ。ところで、『算数オリンピック』も受けますね。

e:いわゆる『算オリ』ね。そのためだけの家庭教師もやりましたね。

F:『問題集』で?K舎の先生が作問してるって?

e:T大の院生じゃないですか?

F:教え子で過去、ジュニアと本大会さらに広中杯で6人入賞してますね。2位と3位になった子が3人いました。

e:去年からまた学校名が載るようになりました。

F:名前が載るということは名誉あることです。『算数オリンピック』の話題は次回にしましょう。

e:『GW』ですか。

F:もう一度、夏休みまでの゛計画゛をしっかり立てることですね。

e:3か月ありますね。

F:『100日計画』ですね。

e:『100日計画』の゛その二゛ですね。

F:『100日計画』のその一は2月・3月・4月です。

e:過去3か月の見直しをしつつ

F:プランドゥーチェック

e:の゛チェック゛ですね。

F:で、また゛プランドゥー゛の実行です。

e:さあ、夏休みまでの゛プラン゛は?

F:一応、YやSの『模試』の結果がでてますから。

e:一応ね。それは二の次ということですか?

F:『過去問』は少なくとも10年以上は解き終えてますから

e:゛弱点゛は見えてきてますか?

F:そうですね。そのあたりの゛確認゛と゛補強゛ですね。

e:で、そのあとは?

F:気分転換に他校の『過去問』とかをやります。

e:例えば、関西方面の学校とか?

F:余裕があればですけど

e:まだ余裕はないですかね。

F:゛具体的゛に何をすべきか

e:第一志望校合格のために

F:抽象的なアドバイスをしても

e:実効性はない?

F:ということですね。

e:ここで゛個別゛の実績がものをいう

F:ケースバイケースの

e:過去の『カルテ』?!

F:と今の個人別『カルテ』ですね。

e:で、緻密な対応ができるという訳ですか。

F:その通りです。『過去問カルテ』が

e:すべてといっても過言ではないでしょう!

F:もっと『過去問』をしっかり解いておけば良かったと、落ちて初めて気が付くお子さんと親御さんは必ずいますからね。

e:それじゃ後の祭り。

F:『過去問』の重要性をもっと認知すべきでしょう。

e:『過去問』”なんて”秋からやればいい

F:”平気”で言いますからね。

e:学校に対して”敬意”を表してないということでしょうね。





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国語専科-『小さな手袋』-中学受験家庭教師



『麻布』平成4年(1992年)


 私の家から歩いて十五分のところに、武蔵野の面影を残した雑木林がある。六年

前の秋、その雑木林で、私の次女が年老いた[妖精]に出会った。そのとき、シホ

は小学三年生だった。「ほんとよ。ぜったい、いたんだからあ」

 十月半ばの午後、近所の友だちが飼犬の運動に行くのに付き合って、シホは林に

行ったのだそうだ。


 髪は真っ白、小さな顔も真っ白で、子供のようなくりくりした黒い瞳がじっと娘

をみつめていた。


 ---いけない。このおばあさん、きっと[妖精]だわ。目を見合わせている

と、魔法をかけられちゃう。


 十一月中旬、妻の父が二度目の脳卒中の発作を起こした。


 シホにとっては、初めて体験する身内の不幸であった。幼いときから親しんだ祖

父との別れは、小さな胸にも深い傷を刻んだようだ。

 東北から帰ってきてから、シホはまるでおばあさんのことを忘れたように雑木林

から遠のいた。


e:若干十歳前後の子どもが

F:この場合、゛少女゛ですが。

e:実際、教え子でいましたね。今では珍しい

F:同居してたんですね。

e:それも六年の十二月だったですからね。

F:お嬢さんでしたから

e:気強かったでしたね。

F:見事、『御三家』に受かりました。

e:そういえば、大昔、塾で教えていた

F:これまた、お嬢さんでしたね。葬儀に出ましたよ。

e:マスコミ関係者がすごかった!

F:最近、お坊ちゃんでありました。

e:男の子はキツイですね。

F:ペットが亡くなったということだけで

e:ショックでなかなか立直れない?!

F:本質的に゛優しい゛んですよ。

e:同居・別居は関係ないのかしら?

F:関係の゛密度゛でしょう。

e:遠くにいても、近くの存在と感じるか

F:逆のケースもありですね。

e:最近、この方が多いかも?

F:近くにいても゛遠く゛に感じちゃう?

e:寂しい

F:悲しい関係になってきたのかしらね?

e:おばあちゃん

F:おじいちゃんは

e:゛遠くに在りて゛

F:゛想うもの゛でしょうか?

e:「武蔵野の面影を残した雑木林」

F:おばあさんの゛面影゛も、でしょう!

e:季節は゛秋゛

F:物悲しい゛響き゛ですね。

e:秋から冬へ

F:老いから死へ

e:万物が向かう゛季節゛でしょうかね。

F:今はもう秋

e:だれもいない海。ちょっと、解く時期が早い?

F:なんて、言ってられない!

e:でしょうね。゛秋゛は

F:切ない季節に違いありません。

e:それを感じとるには

F:シホはちょうどいい年齢だった?

e:゛老いと死゛に真正面から向き合うには

F:男の子はちょっとキツイかな?

e:最近は一概にそうは言えなくなってきてるんじゃないかな?

F:『夏の庭』

e:対照的な場面設定

F:ある側面では、ですね。

e:ある意味で゛心情的゛にリンクする。

F:「老いと死」の受け止めかたには

e:そんなに男女差がなくなってきてる、のかしら?

F:これは我々が勝手に

e:憶測してるにすぎないかも、です。

F:昔は認知症が非日常だったのが

e:゛恍惚の人゛?!今では日常の風景になりつつある?

F:別居が原因?

e:とは限らない?

F:久しぶりに会った祖父母が顔も

e:名前も覚えてくれてない!

F:我々の世代の祖父母には考えられなかった?!

e:「髪は真っ白、小さな顔も真っ白」

F:そして、頭の中まで゛真っ白゛になっていく

e:゛老い゛ていく中に昔はそれがなかったでしたよね。

F:゛わがまま゛になり

e:゛子供っぽく゛はなっていきましたが

F:゛子供に還る゛といいますからね。

e:今は゛赤ちゃんに還る状態にでしょう。

F:もうすぐで゛ひとごと゛じゅない?

e:ドキッ!

F:今の子供たちはどう感じるんでしょうね。

e:声教には「~、雑木林の中のメルヘンのような設定が、物語全体を清々しい印

  象に仕上げている」とありますね。

F:「清々しい印象」ですか。

e:゛切ない゛余韻が残りますが、素人っぽいですか?

F:シホに゛不幸゛が立て続けに起こったわけでしょう?

e:シホは一時的におばあさんのことは忘れたけど

F:おばあさんは永久にシホのことを忘れててしまったんですね。

e:もしかしたら、自分が原因で?

F:それはシホには゛酷゛というものでしょう。やる瀬ない想いがあとを引きま

  す。

e:シホと

F:おばあさんの心の

e:琴線に触れ、胸に迫ってくるものがありますね。

F:心情を思いやると、胸が締めつけられそうです。


 東北から帰ってきてから、シホはまるでおばあさんのことを忘れたように雑木林

から遠のいた。

 それがきわめて[自然]だったので、私も妻も顔を見合わせただけで一言も触れ

なかった。おばあさんがシホを心待ちしているだろうことは察せられた。

 しかし、私たちにはそのときの娘の心に立ち入ることはどうしてもできなかっ

た。もしかしたら、シホはおばあさんのことを本当に忘れてしまったのかもしれな

い。そのような[自然さ]だった。


e:三年生、つまり九歳でおばあさんと出会い

F:そして、シホの記憶から忘れ去られた時点で

e:おばあさんとの゛別れ゛になってしまったんですね。

F:シホが十一歳、つまり六年生になって、おばあさんのことを思い出した時には

e:おばあさんの記憶からシホは消え去っていた。ところで、声教には「同じ時期

  におばあさんと同じ病気で祖父が亡くなり、そのつらさから会いに行かなくな

  ってしまったシホを待って、手袋を編むおばあさん。」とありますが、

F:また、でましたね。

e:「そのつらさから会いに行かなくなってしまったシホ」の”そのつらさから”

  ですか?

F:”つらさ”じゃなく、

e:{自然}じゃないかと?なんと言っても9歳ですからね。

F:”感受性”の強いお嬢さんだとどうでしょうか?


 およそ二年半後の春---六年生になったばかりのシホが雑木林のおばあさんの

ことを思い出したのは、ほんのちょっとしたきっかけからだった。


 クリスマスの近づいたある日、おばあさんは修道女に泣いて頼んだそうだ。--

-シホちゃんに渡したいものがあるから、どうしても探してほしい。これを渡すだ

けでいいのだから。見つけて連れてきてください。


 二年以上も、つぶやきながら、シホは袋を開けてみた。


 手袋は、それほど長い日数をかけたにしては、あまりに小さかった。


 シホは、小さな手袋を両掌に包み、顔を強く押しつけた。かすかな鳴咽がもれ出

た。


 「会いたい。会ってもいいですか」


 「会っても仕方ありません。もうシホちゃんが誰なのか、分からないんです

よ。」


 カナペウム病院を辞去したあと、自転車の荷台からシホが、雑木林へ寄って行き

たい、といった。

 内海隆一郎 『小さな手袋』より

e: なぜ、シホはおばあちゃんに会わなかったのかしら?







麻布中の『記述問題』の傾向と対策

『記述問題』の設問内容(平成5年~)

1 気持ちをとらえる(心情把握)

 ・気持ちの内容(を)説明(する)
  ・ある気持ちの理由(を問う)説明
  ・気持ちの変化(をまとめる)説明

2 やや客観的な内容をとらえる(内容把握)

  ・場面や状況(を)の説明(する)
・理由(を問う)説明

3 全文の内容をふまえて100字以内で「考え」をまとめる(平成6年)
4 本文内容をふまえて「想像」したことを書く(平成7年)
5 やや主観を交えて述べる問題や、60字以内で主題をまとめる(平成8年)
6 全文を通じて読み取れる「象徴的な意味」をまとめる(平成9年)
7 場面や状況について100字でまとめる(平成7年)、100~120字でまとめる(平成5年)
8 気持ちの変化を100字でまとめる(2題:平成10年)

 文章を「場面・状況」と関連づけて「登場人物」の「気持ち」を分析する読解力を要求している。常日頃、このような視点で読む訓練を重ねてほしい。

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加賀乙彦 「永遠の都 夏の海辺」




 三田にある外科病院と、娘夫婦たちが住む西大久保を中心に、戦前から戦後への波乱の時期を越えて行く家族たちを描く大作。東京と言う場所だけでなく、昭和と言う時代を読み取ることが出来る。




 <第3場面> 息子「悠太」に、子ども時代の自分の面影を見る「初江」

 いよいよ感情が激し「癇癪」を起こす「初江」にいくら泣いても許してはもらえないと悟った悠太は、泣くのをやめ、母親を睨み反し、もう何も答えないという意思表示をし、今度は母親と、真正面から対決する様子を見せる。初江は、そこに、あくまで何かを隠し立てしようとする強い意志を感じ、したたかに叱り付けるが及ばなかった。ついに白状させることができなかった。一方、初江はその悠太の様子に、自分の子供時代の同級の女の子の家に遊びに寄り、つい遊びほうけて、帰宅が遅くなった時の遊びに行った先の女の子を必死でかばって名前を明かさなかった場面を思い出し、つくづく悠太は自分に似ていると思う。悠太も一緒に遊んだ友達をかばって強情を張っているのだと思うと、怒りもおさまり、優しい気持ちになって、親子のつながりの濃さを感じながら、家路をたどっていく。




 「泣くんじゃない。ちゃんと答えなさい」

 悠太は泣きやめ、こんどはしっかり立って、母親を睨み返した。初江はわが子に逆襲された思いで、子供の真一文字に結んだ口、もう何も答えないという意思表示に目をしばたたいた。


問 「悠太は泣きやめ、こんどはしっかり立って、母親を睨み返した」とありますが、この時の「悠太」の気持ちを答えなさい。



e: もうこなったら”徹底抗戦”?!

F: お互い、その覚悟をしたんでしょう。

e: 「泣くんじゃない。ちゃんと答えなさい」

F: 男の子のくせに、ですか?

e: この当時は男の子は女々しく泣くな、って感じでしょうね。

F: と、あくまで問いつめる「初江」の様子に

e: 「悠太」は泣き続けても許してくれないことを悟った?

F: 今度は覚悟を決めて母親と対決

e: ”泣き”では落とせないと分かり、開き直ったというわけですか?

F: 自分が言ってはならないと心に決めたことを

e: 「初江」の子供時代の場合、行ってはいけない”女の子”の家に行ったことでしょう。

F: 「髪で吊りさげられたが、初江は頑張って、ついに女の子の家に行ったことを告白しなかった。」

e: 「女の子のために黙っていた」

F: 「悠太」もあくまで言うまいという

e: ”対決姿勢”をくずさないぞぉ、って態度ですかね。



 母親に隠れて何かをするのは、素直な子供のすることではないと、したたかに叱りつけたがが及ばなかった。それは最近になって始まった強情な表情で、母親に何か隠し立てをして、それを押し通そうとするときにするのだった。ついふた月ほど前にも、買ってやった覚えのないビー玉を玩具箱に見つけたので追及したが、誰にもらったのかついに言わなかった。母親に隠れて何かをするのは、素直な子のすることではないと、したたかに叱りつけたが及ばなかった。ところで初江は悠太のこういうところが幼い時の自分にそっくりだと思う。



問 「母親に隠れて何かをするのは、素直な子供のすることではないと、したたかに叱りつけたがが及ばなかった」とありますが、この時の「初江」の気持ちを答えなさい。



e: 「したたかに叱りつけたがが及ばなかった」?!残念無念というところですか?

F: 「母親」としての「初江」の

e: 「どうしてでも言わさずにはおかない」という

F: 子供に対する「意地」を感じます。

e: 「焦り」もあるでしょう?また、母親としての”立場”もなくなる?

F: 夫でありまた父親である「悠次」の手前、

e: 本当の事を聞き出さないと自分の”面子”が立たないという

F: 「母親」としての”面子”をかけた行動なのですね。



 小学校に入ったばかりの頃、いつも真っすぐに帰るように言われていたのに、同級の女の子の家に遊びに寄り、つい遊びほうけて、帰宅が遅くなったことがあった。


 もう夕方で、大急ぎで帰ったところ、びしょ濡れの姿を見て、父がひどく怒り、どこで何をしたか詰問された。髪で吊りさげられたが、初江は頑張って、ついに女の子の家に行ったことを告白しなかった。

 女の子のために黙っていた。

 そう、今の悠太はあのときのわたしに、そっくりだった。

 「悠太」と初江は優しく言った。

 「わかったね、幼稚園からは真っすぐに帰るのよ」



問 「『悠太』と初江は優しく言った」とありますが、この時の「初江」の気持ちを答えなさい。


e: 結局、母親は折れた?

F: 自分の”過去”のこともあります。

e: それに、”大人”ですしね……

F: 何か隠そうと必死にがんばっているわが子「悠太」の様子を目の当たりにして

e: 「初江」は小学校に入ったばかりの頃

F: 同級の女の子の家に寄って

e: 遊びほうけて、帰宅が遅くなった時

F: どんなに叱られても、どこで何をしていたかを決して言わずに

e: 女の子をかばった時の事を思い出し

F: その時、わが子「悠太」はつくづく自分と似ていると思い

e: もしかして「悠太」も誰かをかばっているのではないかと…

F: そういう風に考えてくるにおよんで

e: 今まで抱いていた”怒り”が溶解してきた?

F: ”怒り”も鎮静化してきて

e: そうすると、今度は”母性愛をくすぐらされて

F: ”いじらしく”なり

e: ”可愛い”という気持ちで一杯になった?
F: かわいさがだんだんとつのってきたということでしょうね。

e: ”コロッケ”で和解成立?

F: 円満解決?



 子供はこっくりした。家が近付くと子供の足が遅くなってにぎっている初江の指をひいた。
 「どうしたの」

 「ぼく、おなかがすいた」

 「お昼にしようね。悠太の好きなコロッケよ」
 子供はまた元気を出して歩みだした。




「永遠の都 1 夏の海辺」1997,4新潮社 加賀乙彦『永遠の都』(『岐路』『小暗い森』『炎都』三部作の総タイトル)全七巻昭和10年代前半の東京山の手の生活を活写。明治人の進取の気象と魅力ある俗物性をあわせもった外科医利平先生はなんともおもしろい。(北杜夫氏評)新潮文庫の新刊

 作者の自伝要素の色濃い小説といわれる「永遠の都」では、昭和初期から戦争を経る時代、作者自身と思われる「小暮悠太」の一家一族の波乱に満ち、また絢爛たる人間模様が描かれる。医者、政治家、実業家、画家、音楽家、弁護士、宣教師等の多士済々な人物たちの個性溢れる生き様、暗い時代の流れに抵抗する大学生、クリスチャン、セツルメント活動家たち。多くの者が戦争による悲しい運命に出会う。
 「雲の都」では、戦争が終わり、成長した「小暮悠太」が医学部の大学生になり、亀有のセツルメント活動の創生期に参加し、底辺に生きる人たちと交流し、メーデー事件で傷つきながらも、勉学に励み、恋愛し、青春を謳歌する。犯罪精神医学を専攻した「悠太」は、拘置所医官となって「宣告」の登場人物と出会うことになる。個性的で逞しく生きる人間模様と「悠太」の成長を描いたこの骨太な一連の作品は、まさに大河小説と呼ぶに相応しく、わが文学史上でも最高傑作の一つであろう。登場する人物たちと織りなす、さまざまな逆境に生きる弱者への作者の眼は限りなくやさしく、私たちに感動と励ましを与えてくれる。(平成18年4月)大河小説「雲の都」本の中から(5)棚田の案山子-日本裁判官ネットワーク

加賀乙彦のライフワークである自伝的長編小説。永遠の都というシリーズタイトルで刊行された三部作の第1部に当たる。時代は昭和10年から11年にかけて、主人公の悠太はまだ幼年でこの巻の動きの中心は祖父利平。元海軍軍医である彼は三田に設けた時田病院をどんどん大きくしていく。長女(主人公の母)は3人のこの母親でありながら義理の甥と不義密通を交わしてしまう。次女は陸軍中尉脇敬助との結婚をあきらめ時田病院副院長との結婚と亡くなった母親の跡を継ぎ病院事務長の仕事を行う決心をする。この編での歴史的大事件は2・26事件。脇敬助はこのことが起こりそうなことを事前に知りながら決起軍には参加せず討伐側に加わる。またこの事件のさなか病院の事務いっさいを引き受けていた利平の妻菊江は主人の愛人を自分の死後この家に入れないように言い残して亡くなってしまう。一癖もふた癖もあるような人物が重なり合うように出てきて話が進んでいく。自伝的小説と言うことであるが自伝と小説の境目は僕には分からないがこのリアルな人物描写はやはりモデルがいる
からだろうか。戦前の激動期で確実にその時代に流れに巻き込まれながらあくまでも一族の話に徹していられるところがすごい。また主人公が幼少なこともありその周りの大人たちを冷静な目で描写していく。これから悠太が大きくなるとどうなるのか楽しみ。(by ちょもの読書日記)

つらい幼年学校の生活の末、敗戦という結末を迎えたことに深く傷つきながら帰路につこうとする悠太は、自然と二重橋のほうに足がむかう。陛下に挨拶をしようとする人で、二重橋は人だかりだ。そのなかで、若い男が切腹をしていた。腹から腸(はらわた)がはみ出し、唸り声をあげながら短刀で掻き回す様子を、まわりは黙って見ていた。そして男がばったりとすると、周りのみんなが「死んだ、死んだ」といい、誰かが拍手した。というシーンがある。とくに印象深いところだ。(こんなことがあったのか!と私は衝撃をうけたが、後に全くのフィクションだったことが発覚。またしても小説家にだまされた!!)(by この本、面白い?!)

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加賀乙彦 「永遠の都 夏の海辺」



 日本海海戦にも参加した元海軍軍医時田利平は退役後大正2年に三田鋼町に外科医として開業し、持ち前の独創性を発揮して胃潰瘍の新治療法からレントゲン装置の発明まで手がけ念願の博士号も授与されて大病院として繁盛する。しかし軍艦をかたどった病院も太平洋戦争末期の大空襲により焼失、利平は全身に火傷を負い、敗戦下失意の中で死に至る。利平の強烈なまでの個性を貫いた生涯を縦軸として、彼に関わり合う人々の人生をさまざまな視点から描く、半自伝的大河小説である。登場人物は利平の娘・息子たちその姻戚を中心として多彩にわたっている。



 <第二場面> 悠太をさがす初江

 悠太を見つけて問いつめる。坂を下り、急坂を登ったところにある「西向神社」で「泣いている」わが子を見つける。この時、悠太はびっくりして逃げ出そうとする…やましさから「しかられる」という気持ちが働いたことがわかる。が、すぐに「おかあさん」とむしゃぶりついてくる。悠太が見つかってホッとした気持ちから、初めはどこでどうしたかを優しくたずねる。悠太の返事から、「寺」か「墓地」に入り込んで、「寺男」に脅かされたのか、と思うが、曖昧に頷いた様子などから何かを隠している素振りだと感じ、問いつめていくと、幼稚園からすぐの原っぱに行ったことを白状する。なかなか本当のことを言わなかったこと、自分のいいつけを守っていなかったことがわかったこと、なにかをまだ隠しているように思われることなどから、しだいに感情が激し、心配して探し回っていた時のつらい思いがよみがえって怒りがこみあげ、何をしていたかをどうしても聞き出さずにはおかないという気持ちで、激しく問いつめる。これに対し、悠太は答えたくないので泣きつづけることで母の同情をひき
、その怒りをおさめようとする。



 坂を登りかけ、考え直して下ることにした。坂を下りきったところに市電の線路が大通りを横切っている。線路に沿って行くと、線路が分岐して数を増やし、”大久保車庫”のがらんとした建物に入っていく。このあたり人家がまばらで原っぱが多くて、物淋しい。市電が急坂をぐーんと気張って登って行く脇に細い道があるのを負けじと登るうち、すぽっと抜け出た広い場所は神社の境内だった。西向天神である。風にあおられた梢が唸りながら無数の真珠のような光を地面に撒き散らしている。錆びた鎖をきしませているブランコのそばに子供が泣いている。


 小さな肩を震わせて泣きじゃくる子供は鼻血を出して泥まみれだった。

 「おや、おまえ、どこかでころんだね。さあ、泣かないで」

 「バスケットはどうしたの」

 「おっことしちゃったの」


 「そう」

 子供は曖昧に頷いた。浅黒い肌と二重のばっちりとした目は母親の自分にそっくりだ。硬い髪の毛も似ている。泣いた赤い目が不安に動き、茂みの一角に向けられた。その方角には寺と墓地が多い。そのどこかに迷いこみ、寺男に脅されたのかもしれない。

 「ねえ、悠太、いままで何してたの」

 「遊んでたの」

 子供は母から目をそむけて言った。何かを隠している素振りだ。

 「どこで遊んでいたの」

 「幼稚園で」

 「嘘おいい。さっきおかあさんは幼稚園に行ってみたんだから。おまえいなかったよ」

 「だって本当なんだもの」


 「どうして、原っぱなんかへ行ったのよ。原っぱには人攫いがいるんだからね。どうして真っすぐおうちへ帰らないの」

 悠太は後じさりした。初江の胸底から熱いものが噴出してきて破裂した。



問 「初江の胸底から熱いものが噴出してきて破裂した」時の、「初江」の気持ちを答えなさい。



e: ”胸底から噴出する熱いもの”とは?

F: 悠太が見つかってホッとしているのが正直な気持ちでしょう。

e: で、初めは優しく問い質していますね。悠太が見つかるまでの「初江」の気持ちと言えば

F: それは心配でいたたまれない!

e: そんな母親の気持ちなんか知ったこっちゃない!「悠太」は全然分からないでしょうね。

F: 母親の心配をよそに、ちゃんと答えようとしていない

e: 本当のことを言おうしない「悠太」

F: そんな強情な「悠太」に接することで

e: さっきの心配で胸が張り裂けそうな母親の心痛ですか?!

F: ”母親の心の痛み”を知らない子供に対し
e: 抑え切れないような”怒り”が沸き起こったというわけですね。

F: それまで心配で探していた時の思いがよみがえってきて、なにがなんでも本当のことを聞き出してやろうという意固地で

e: 頑な気持ちになったのですか?

F: ということで、「初江の胸底に噴出した熱いもの」が何であるかをしっかり書けばいいでしょう。



 「ふらふらしないでちゃんと立って。原っぱからどこへ行ったの」

 「……」


 子供はしゃくりあげた。きつく問えば問うほど泣くばかりだ。初江はついに癇癪を起こし、子供の頬を打った。



問 「子供はしゃくりあげた。きつく問えば問うほど泣くばかりだ」とありますが、この時の「悠太」の気持ちを答えなさい。



e: きつく問うと泣くばかり……

F: というところに、「悠太」の「泣くこと」でこの場を

e: 逃げ切ろうとういう魂胆?

F: そういう気持ちが「悠太」には当然あるでしょうね。

e: 子供ですから……

F: 泣き続けることで

e: 母親が同情して怒りが鎮まると…昔は女の子の常套手段だった?

F: 要するに、言いたくないことを言わなくてすむという

e: ”許しを乞う”ているわけですね。子供の浅はかな知恵かな?




 第二世界大戦という、日本の歴史上最大の難局であった時代の、ひとつの血族の人々の生と死を追った長編で、最終は空に飛ぶ鳥たちが、魂の化身として赤く輝く夕日の中に、無数の霊の点となって軽やかに舞い、余韻を残して終わる。まるで鳥達が空へ飛び昇ってゆくことが、魂の天への飛翔であるかのように……。永遠に平安をもたらす都とは。人間救済の希望。小説で描かれる歴史の大罪と不条理な人間社会、そういう中で肉体をもって生きなければならない人間の生と、肉体の死と、魂の救済への希求を、「闇」の中でネガティブに描く。(by 秦 澄美枝二つの『高山右近』--加賀乙彦・表現の可能性による)

 時代は大正二年から第二次世界大戦が終わるまで。外科医時田利平と、その一族の物語で北杜夫『楡家の人々』とイメージが被るようなシチュエーションで話が展開されていく。
 世代が変わっていくタイプの長編小説の楽しみというのは月並みな感想だが、親から子へ、子から孫へと続いてゆく系譜を読み解くことと、時代の移り変わりを感じることにあると思う。特に大正から昭和にかけては、激動の時代で日本人の価値観が180度転換した時期でもあるので今まで正しいとされてきたことが、あっけなく否定されたりする中で、それでも、自分のいるべき場所を守りながら生きていく人の姿は、それだけでも充分、感動に値するものだと思う。
 時代が移りゆく中で、人が生まれたり死んだり喜びも哀しみも、流れてゆき、受け継がれてゆき人の世が続いてゆくのだなぁ……という感慨が、この作品にはあるように思った。(by 読書録のご案内)

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加賀乙彦 「永遠の都 夏の海辺」



内容(「BOOK」データベースより)

 元海軍軍医の時田利平は、大正2年、三田鋼町に開業。外科医の名声と妻菊江の実務で、時田病院は驚異的に拡張している。昭和10年、利平の長女で3人の男児の母親の初江は一高生の甥と密通し、次女夏江は陸軍中尉・脇敬助との結婚を諦めた…。著者のライフワークである『岐路』『小暗い森』『炎都』の三部作を『永遠の都』という総タイトルで刊行する文庫版(全七巻)

 以前、芹沢光次郎さんの「人間の運命」を読みましたが、同じ長編ながら、こちらの方が、読みやすい。主人公(前半だと思われるが)時田利平の生活態度(かなり、男尊女卑的)を通して、この時期の人々の生活、親戚づきあい(昔は親戚づきあいが実に密だった)、東京の環境が実にあざやかにイメージできます。



<第一場面> 初江と夫の悠次

 悠太が帰ってこないので、心配のつのる「初江」をよそに、帰ってきた「悠次」は、自分が麻雀にでかけることばかり気にし、「どうしましょう」と相談する初江に対し、怒りを噴出させさえする。「どうしてひとりで行かせたんだ」と怒鳴るが、それは悠次の姉、初江の義姉の脇美津が言い、悠次が初江にひとりで行かせろ命令したことであった。
 そのことを初江に指摘され、旗色の悪くなった悠次は、姉=脇美津を頼んで、自分は相変わらず出かけようとするが、腹を立てた初江は、悠次の苦手な初江の父=岳父(三田)の応援を頼むということで、悠次を引き止める。しかし、いざ自分で悠太のあてをさがすとなると悠次はからきし頼りにならない。



 「旦那さまがお帰りになりました」となみやが告げに来た。初江はあわてて電話を切って玄関に出た。黒鞄を脇に靴をぬいでいる悠次に「お帰りなさいませ」と手をつくと、初江は一気に言った。

 「大変なんです。悠太がまだ帰ってこないの」
 「え」悠次は、立ちあがりながら、度の強い眼鏡の、ふっくらと白い顔で見下ろした。「どういうわけなんだい」

 「幼稚園はとっくに、十一時半には終わっているのに、まだ帰らないんです」

 「おかしいね。探してみたのか」


 彼は洋服箪笥にむかって上着をぬぎネクタイをはずすと、「ほら、この前ゴルフのときのセーター」と言った。

 「ゴルフにいらっしゃるの」


 セーターを着込むと悠次はズボンのポケットから懐中時計を引き出して見た。そして、せかせかと座敷を巡り始めた。

 「ねえ、あなた、どうしましょう。悠太の……」と初江が言いさしたとき、「今、考えてる」と悠次が怒鳴った。



問 「『今、考えてる』と悠次が怒鳴った」とありますが、どのような気持ちから「怒鳴った」のですか。



e: 加賀乙彦?!センター試験で今年、出た?

F: 「雨の庭」でしょう。

e: まさか、中学入試では……

F: 主人公の「悠太」が著者自身

e: 自伝的小説

F: 続編が『雲の都』

e: それこそ物語は”永遠”に続く?!

F: お子さんにオススメできる本じゃありませんが…

e: 麻布を受ける子供達にはいいんじゃないですか?

F: 入学してからじっくり読んで下さい、って感じかな。

e: 部分的にはいまからでもどうぞ、ですか?
F: 芸術選奨文部大臣賞を受賞してますから。
e: 「セーターを着込ん」で

F: 「鵠沼」に麻雀をしに行こうとしていて、

e: 「初江」の言葉にほとんど耳を傾けようとしていませんね。

F: おそらく、子供の帰りが遅いことについて
e: まだ差し迫った事態とは思っていないんでしょう。

F: といいますか、子供を探すことより

e: 「初江」から面倒なことを持ち掛けられて迷惑、って感じ?

F: 自分が遊びにでかける邪魔をされたと。



 「どうしてひとりで行かせたんだ。送り迎えしてやればいいのに。危ないじゃないか」

 「だって……」初江はあっけにとられて、夫を渋面を見た。


 「だって、お義姉さまが、そうしろとおっしゃったんじゃありませんか」

 「はあそうだったな」と悠次は苦笑した。表情から角がとれて、度の強いメガネの底で目が細くなった。彼は腕組みをして考えこみ、やっと言った。



問 「『はあそうだったな』と悠次は苦笑した」のはなぜですか。



e: 「そうだった」の「そう」って?

F: まず、そうですね。「そう」が指している事実をまとめます。

e: 「どうしてひとりで行かせたんだ」と悠次は初江を責めています。

F: 実際のところ、悠次の姉が

e: 脇美津ですか。

F: 言い出し、悠次が悠太をひとりで行かせるように”命令”したんですね。

e: この事を思い出した悠次は”苦笑”し

F: 表情が穏やかになりますね。

e: そこにはどのような気持ちがありますか?
F: 2、3考えられます。

e: それを書けばいい?

F: 初めに「事実」をしっかり書いてから、ですね。



 「もう一度手分けして探そう。脇にも応援を頼んで」


 「おや、あなたはどうなさるおつもり」

 「おれは約束があるんだ。鵠沼に五時に集合する約束なんだ。みんなを待たせては悪い」


 「わかりました。三田に応援をたのみます。あそこは手が多いから大勢来てくれるでしょう」



問 「わかりました。三田に応援をたのみます」と「初江」が言ったのはどうしてですか。



e: ずばり、どうして”三田”を持ち出してきたか、でしょ!

F: これはこの後をしっかり読めばわかります。
e: 悠次の姉「脇美津」を煩わしく思う「初江」に対し

F: 自分が探しに行こうともせず

e: そのうえ、脇美津の手の者を応援に呼ぼうとさえする「悠次」に

F: 業をにやした「初江」は悠次が煙たがり、怖れている「初江の父」に応援を頼む

e: と脅しをかけるわけですね。

F: おどして、夫にも「悠太」の捜索を手伝うように仕向けるんですね。

e: 「初江」のほうが一枚上手?

F: してやったりでしょう。

e: 「初江」の頭脳作戦の勝ち?



 「なにも三田にたのまなくたって」と悠次はひるんだ。初江の父、時田利平を彼は煙たがっていた。


 ともかく、この一件以後、彼は妻の里を敬遠し、正月に儀礼的な訪問をするのみとなったし、何か家庭内の不祥事を岳父に知られるのを怖れるようになった。

 「よし、わかった。おれも探す」と悠次は折れた。するとこんどは心細げな顔付となり、「しかし、どうやって探したらいいかな」とつぶやいた。


 「じゃ、もう一度わたしたちで探してみましょう。わたし、とにかく幼稚園の近くを探します。あなたは、家の近所を見て下さらない。なみやには子供たちを……そうそう、研三が熱を出してるんです。九度四分もあるんです」



問 「なみやには子供たちを」とありますが、この「……」にはどんなことばが省略されていますか。



e: これは書けるでしょう?

F: ただ”文末処理”の問題がありますね。

e: といいますと……

F: その直前の「初江」の言い方を参考にするといいでしょう。

e: 子供のひとり「研三」が熱を出しているという事情から初江と悠次が「悠太」を探すとなると、子供の”何”をする人が必要?

F: そこでお手伝いさんの「なみや」に子供の”何”任せることを悠次に伝えているところですね。

e: 「どうやって探したら…」などと、いざ一緒に探すとなると、頼りにならない夫に対して

F: 自分の決めたことをきっぱりと伝えるのにふさわしい言い方が要求されます。



 悠太、どこへ行ってしまったの。ほんとに、どこにいるのだろう。




加賀乙彦とともに-本の旅人

1929年、東京都三田に生まれた。1953年東京大学医学部卒。1955年から東京拘置所医務部技官。1957年フランス留学。パリ大学サンタンス病院、北仏サンヴナン病院に勤務、1960年帰国。1960年医学博士号取得。東京大学附属病院精神科助手、東京医科歯科大学助教授、1969年から上智大学教授、1979年から文筆に専念。1987年のクリスマス(58歳)にカトリックで受洗。1986年文芸家協会理事。1997年から日本ペンクラブ副会長、2003年から同理事。2000年から日本芸術協会員。日本近代文学館理事。

 以前、芹沢光次郎さんの「人間の運命」を読みましたが、同じ長編ながら、こちらの方が、読みやすい。主人公(前半だと思われるが)時田利平の生活態度(かなり、男尊女卑的)を通して、この時期の人々の生活、親戚づきあい(昔は親戚づきあいが実に密だった)、東京の環境が実にあざやかにイメージできます。

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加賀乙彦 「永遠の都 夏の海辺」



 日本海海戦にも参加した元海軍軍医時田利平は退役後大正2年に三田鋼町に外科医として開業し、持ち前の独創性を発揮して胃潰瘍の新治療法からレントゲン装置の発明まで手がけ念願の博士号も授与されて大病院として繁盛する。しかし軍艦をかたどった病院も太平洋戦争末期の大空襲により焼失、利平は全身に火傷を負い、敗戦下失意の中で死に至る。利平の強烈なまでの個性を貫いた生涯を縦軸として、彼に関わり合う人々の人生をさまざまな視点から描く、半自伝的大河小説である。登場人物は利平の娘・息子たちその姻戚を中心として多彩にわたっている。



 <第二場面> 悠太をさがす初江

 悠太を見つけて問いつめる。坂を下り、急坂を登ったところにある「西向神社」で「泣いている」わが子を見つける。この時悠太はびっくりして逃げ出そうとする…やましさから「しかられる」という気持ちが働いたことがわかる。がすぐに「おかあさん」とむしゃぶりついてくる。悠太が見つかってホッとした気持ちから、初めはどこでどうしたかを優しくたずねる。悠太の返事から、「寺」か「墓地」に入り込んで、「寺男」に脅かされたのか、と思うが、曖昧に頷いた様子などから何かを隠している素振りだと感じ、問いつめていくと、幼稚園からすぐのはらっぱに行ったことを白状する。なかなか本当のことを言わなかったこと、自分のいいつけを守っていなかったことがわかったこと、なにかをまだかくしているように思われることなどから、しだいに感情が激し、心配して探し回っていたときのつらい思いがよみがえっていかりがこみあげ、どうしても何をしていたかを聞き出さずにはおかないという気持ちで、激しく問いつめる。これに対し、悠太は答えたくないので泣きつづけることで母の同情を
ひき、そのいかりをおさめようとする。



 坂を登りかけ、考え直して下ることにした。坂を下りきったところに市電の線路が大通りを横切っている。線路に沿って行くと、線路が分岐して数を増やし、”大久保車庫”のがらんとした建物に入っていく。このあたり人家がまばらで原っぱが多くて、物淋しい。市電が急坂をぐーんと気張って登って行く脇に細い道があるのを負けじと登るうち、すぽっとt抜け出た広い場所は神社の境内だった。西向天神である。風にあおられた梢が唸りながら無数の真珠のような光を地面に撒き散らしている。錆びた鎖をきしませているブランコのそばに子供が泣いている。


 小さな肩を震わせて泣きじゃくる子供は鼻血を出して泥まみれだった。

 「おや、おまえ、どこかでころんだね。さあ、泣かないで」

 「バスケットはどうしたの」

 「おっことしちゃったの」


 「そう」

 子供は曖昧に頷いた。浅黒い肌と二重のばっちりとした目は母親の自分にそっくりだ。硬い髪の毛も似ている。泣いた赤い目が不安に動き、茂みの一角に向けられた。その方角には寺と墓地が多い。そのどこかに迷いこみ、寺男に脅されたのかもしれない。

 「ねえ、悠太、いままで何してたの」

 「遊んでたの」子供は母から目をそむけて言った。何かを隠している素振りだ。

 「どこで遊んでいたの」

 「幼稚園で」

 「嘘おいい。さっきおかあさんは幼稚園に行ってみたんだから。おまえいなかったよ」

 「だって本当なんだもの」


 「どうして、原っぱなんかへ行ったのよ。原っぱには人攫いがいるんだからね。どうして真っすぐおうちへ帰らないの」

 悠太は後じさりした。初江の胸底から熱いものが噴出してきて破裂した。



問 「初江の胸底から熱いものが噴出してきて破裂した」時の、「初江」の気持ちを答えなさい。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 「ふらふらしないでちゃんと立って。原っぱからどこへ行ったの」

 「……」


 子供はしゃくりあげた。きすく問えば問うほど泣くばかりだ。初江はついに癇癪を起こし、子供の頬を打った。



問 「子供はしゃくりあげた。きすく問えば問うほど泣くばかりだ」とありますが、この時の「悠太」の気持ちを答えなさい。



e:

F:

e:

F:

e:

F:





 第二世界大戦という、日本の歴史上最大の難局であった時代の、ひとつの血族の人々の生と死を追った長編で、最終は空に飛ぶ鳥たちが、魂の化身として赤く輝く夕日の中に、無数の霊の点となって軽やかに舞い、余韻を残して終わる。まるで鳥達が空へ飛び昇ってゆくことが、魂の天への飛翔であるかのように……。永遠に平安をもたらす都とは。人間救済の希望。小説で描かれる歴史の大罪と不条理な人間社会、そういう中で肉体をもって生きなければならない人間の生と、肉体の死と、魂の救済への希求を、「闇」の中でネガティブに描く。(by 秦 澄美枝二つの『高山右近』--加賀乙彦・表現の可能性による)

 時代は大正二年から第二次世界大戦が終わるまで。外科医時田利平と、その一族の物語で北杜夫『楡家の人々』とイメージが被るようなシチュエーションで話が展開されていく。
 世代が変わっていくタイプの長編小説の楽しみというのは月並みな感想だが、親から子へ、子から孫へと続いてゆく系譜を読み解くことと、時代の移り変わりを感じることにあると思う。特に大正から昭和にかけては、激動の時代で日本人の価値観が180度転換した時期でもあるので今まで正しいとされてきたことが、あっけなく否定されたりする中で、それでも、自分のいるべき場所を守りながら生きていく人の姿は、それだけでも充分、感動に値するものだと思う。
 時代が移りゆく中で、人が生まれたり死んだり喜びも哀しみも、流れてゆき、受け継がれてゆき人の世が続いてゆくのだなぁ……という感慨が、この作品にはあるように思った。(by 読書録のご案内)



加賀乙彦とともに-本の旅人
1929年、東京都三田に生まれた。1953年東京大学医学部卒。1955年から東京拘置所医務部技官。1957年フランス留学。パリ大学サンタンス病院、北仏サンヴナン病院に勤務、1960年帰国。1960年医学博士号取得。東京大学附属病院精神科助手、東京医科歯科大学助教授、1969年から上智大学教授、1979年から文筆に専念。1987年のクリスマス(58歳)にカトリックで受洗。1986年文芸家協会理事。1997年から日本ペンクラブ副会長、2003年から同理事。2000年から日本芸術協会員。日本近代文学館理事。

加賀乙彦の風貌
「しかしその丸顔と大きな眼には常に笑みをたたえている。人生のすべてを見はるかす視野の広さにおいて、普通の文学者より、ひとまわり大きいのである。海外留学経験があるから、国際色がある。」(大岡昇平「加賀さんの短編」より)
加賀乙彦とモーツァルト(ヴァイオリンソナタ・変ロ長調K454)

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expertFORUM 中学受験家庭教師-『永遠の都 夏の海辺』-国語専科

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加賀乙彦 「永遠の都 夏の海辺」



内容(「BOOK」データベースより)

 元海軍軍医の時田利平は、大正2年、三田鋼町に開業。外科医の名声と妻菊江の実務で、時田病院は驚異的に拡張している。昭和10年、利平の長女で3人の男児の母親の初江は一高生の甥と密通し、次女夏江は陸軍中尉・脇敬助との結婚を諦めた…。著者のライフワークである『岐路』『小暗い森』『炎都』の三部作を『永遠の都』という総タイトルで刊行する文庫版(全七巻)




<第一場面> 初江と夫の悠次

 悠太が帰ってこないので、心配のつのる「初江」をよそに、帰ってきた「悠次」は、自分が麻雀にでかけることばかり気にし、どうしましょうと相談する初江に対し、怒りを噴出させさえする。どうしてひとりで行かせたんだと「怒鳴」るが、それは悠次の姉、初江の義姉の脇美津が言い、悠次が初江にひとりで行かせろ命令したことであった。
 そのことを初江に指摘され、旗色の悪くなった悠次は、姉=脇美津を頼んで、自分は相変わらず出かけようとするが、腹を立てた初江は、悠次の苦手な初江の父=岳父(三田)の応援を頼むということで、悠次を引き止める。しかし、いざ自分で悠太のあてをさがすとなると悠次はからきし頼りにならない。



 「旦那さまがお帰りになりました」となみやが告げに来た。初江はあわてて電話を切って玄関に出た。黒鞄を脇に靴をぬいでいる悠次に「お帰りなさいませ」と手をつくと、初江は一気に言った。

 「大変なんです。悠次がまだ帰ってこないの」
 「え」悠次は、立ちあがりながら、度の強い眼鏡の、ふっくらと白い顔で見下ろした。「どういうわけなんだい」

 「幼稚園はとっくに、十一時半には終わっているのに、まだ帰らないんです」

 「おかしいね。探してみたのか」


 彼は洋服箪笥にむかって上着をぬぎネクタイをはずすと、「ほら、この前ゴルフのときのセーター」と言った。

 「ゴルフにいらっしゃるの」


 セーターを着込むと悠次はズボンのポケットから懐中時計を引き出して見た。そして、せかせかと座敷を巡り始めた。

 「ねえ、あなた、どうしましょう。悠太の……」と初江が言いさしたとき、「今、考えてる」と悠次が怒鳴った。



問 「『今、考えてる』と悠次が怒鳴った」とありますが、どのような気持ちから「怒鳴った」のですか。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 「どうしてひとりで行かせたんだ。送り迎えしてやればいいのに。危ないじゃないか」

 「だって……」初江はあっけにとられて、夫を渋面を見た。


 「だって、お義姉さまが、そうしろとおっしゃったんじゃありませんか」

 「はあそうだったな」と悠次は苦笑した。表情から角がとれて、度の強いメガネの底で目が細くなった。彼は腕組みをして考えこみ、やっと言った。



問 「『はあそうだったな』と悠次は苦笑した」のはなぜですか。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 「もう一度手分けして探そう。脇にも応援を頼んで」


 「おや、あなたはどうなさるおつもり」

 「おれは約束があるんだ。鵠沼に五時に集合する約束なんだ。みんなを待たせては悪い」


 「わかりました。三田に応援をたのみます。あそこは手が多いから大勢来てくれるでしょう」



問 「わかりました。三田に応援をたのみます」と「初江」が言ったのはどうしてですか。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 「なにも三田にたのまなくたって」と悠次はひるんだ。初江の父、時田利平を彼は煙たがっていた。


 「よし、わかった。おれも探す」と悠次は折れた。するとこんどは心細げな顔付となり、「しかし、どうやって探したらいいかな」とつぶやいた。


 「じゃ、もう一度わたしたちで探してみましょう。わたし、とにかく幼稚園の近くを探します。あなたは、家の近所を見て下さらない。なみやには子供たちを……そうそう、研三が熱を出してるんです。九度四部もあるんです」



問 「なみやには子供たちを」とありますが、この「……」にはどんなことばが省略されていますか。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 悠太、どこへ行ってしまったの。ほんとに、どこにいるのだろう。





加賀乙彦 「永遠の都 夏の海辺」芸術選奨文部大臣賞。加賀乙彦(かが おとひこ)男性。1929年4月22日~。日本の小説家で精神科医。本名は小木貞孝(こぎ さだたか)1929年東京市芝区三田に生まれる。東京大学医学部卒業。1968年『フランドルの冬』で芸術選奨新人賞受賞。1973年『帰らざる夏』で谷崎潤一郎賞受賞。同年活躍した小川国夫、辻邦生とともに「73年三羽ガラス」と呼ばれた。1979年『宣告』日本文学大賞受賞。1986年『湿原』で大佛次郎賞受賞。1998年『永遠の都』で芸術選奨文部大臣賞受賞。

 以前、芹沢光次郎さんの「人間の運命」を読みましたが、同じ長編ながら、こちらの方が、読みやすい。主人公(前半だと思われるが)時田利平の生活態度(かなり、男尊女卑的)を通して、この時期の人々の生活、親戚づきあい(昔は親戚づきあいが実に密だった)、東京の環境が実にあざやかにイメージできます。

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村山由佳 「約束」



小さなころをした大切な約束



 何だよそれ、と、思わず声に出してしまった。

 父さんが、え?、とクビをもたげて僕を見る。

 「何でもない」

 僕は、漢字のドリルをばたんと閉じた。

 その拍子に、はさんでおいた写真が一枚、こたつ布団の上に落ちた。あっ、と思うより先に、父さんの手が伸びる。

 「なんだ、こりゃ」見るなり父さんは噴きだした。

 「ずいぶん派手な車だな」

 それは、ノリオのポラロイドカメラで撮ったタイムマシンの写真だった。ハンドルと、タイヤがやっと一つだけついたところで、とりあえずみんなで記念撮影をしたのだ。三人ともがバスタブにぎゅうぎゅう詰めになり、オートタイマーのカメラに向かってピースをしている。心の中ではもちろん、カメラじゃなくてヤンチャに向かってピースをしたつもりだった。

 「公太くんのところのガレージか」父さんはピントのはずれたことを言った。



問 「父さんはピントのはずれたこと」とありますが、ピントがはずれているのはどんな点ですか。



e: これは相当ピントが外れている感じですね。

F: 父さんの勘違いはしかたないないでしょう。

e: 普段、子供と接する機会は少ないですからね。

F: 言葉を交わすこともなかなかないです。

e: 「ノリオのポラロイドカメラで撮ったタイムマシンの写真」を見て

F: 父さんは「公太くんのところのガレージか」なんていってますよね。

e: <クウソウヘキ>の産物である「タイムマシン」

F: 「僕」がヤンチャの病気を治したくて作られた「タイムマシン」の写真を

e: 父さんは「僕ら」の思いを理解できず

F: ただ無邪気に遊んでいると見えたんでしょうね。



 返された写真を、僕は黙ってドリルにはさみ、ノートをたたんだ。

 鉛筆を筆箱にしまって、消しゴムのかすをゴミ箱に捨てにいく。

 戻ってきて勉強道具を手に持った……その時だった。自分でもびっくりするくらい何の前ぶれもなしに、うわっと涙があふれ出た。



問 「自分でもびっくりするくらい何の前ぶれもなしに、うわっと涙があふれ出た」とありますが、この時の「僕」に対する「父さん」と「母さん」の様子の違いを答えなさい。



e: 対応の仕方は父さんと母さんではちがいますね。

F: 当然といえば当然かもしれませんが……

e: 「僕」が泣いてるのを見て、慌てる父さん…

F: 男の子はあまり泣かないというイメージが我々にはありますが

e: 今は逆みたいですよ!

F: 女の子よりも男の子の方が泣くんですか?

e: 若者にも、その傾向が……

F: じゃあ、今の父親は男の子が泣いてもあわてない?

e: またか、ですかね。

F: 「あらやだ、またなの?」

e: 「二人とも僕をもてあまして」はいますが

F: 母さんは「困ったように立って」いましたが、「やがてかがみこみ」、「僕を抱きかかえてくれ」ましたね。



 「ど、どうした」僕の泣き声を聞いて、父さんが慌てて起きあがった。

 「おい、ワタル、どうしたんだ。……おい秀子。秀子!」

 「何よ、大声出して」

 「あらやだ、またなの?」

 またなの、と言われても、どうしようもなかった。二人ともが僕をもてあましているのがわかったけど、それでも本当にどうしようもなかった。僕自身が、自分をもてあましていた。体じゅうの血管がどくどく脈打って、息が苦しくてたまらなかった。

 困ったように立っていた母さんは、やがてかがみこみ、両手の泡がつかないようにして僕を抱きかかえてくれた。



問 「僕自身が、自分をもてあましていた」とはどういうことですか。



 「ちょっと風邪気味なのかもしれないわね」とささやいた。

 「今夜は早く寝なさい。お布団しいてあげるから、ね」


 暗闇で天井をにらんでいると、隣の部屋で母さんと父さんがぼそぼそと何か話しているのが聞こえた。

 涙はもう引っこんで乾いたけれど、わけのわからない苛立たしさのほうはいつまでも消えなかった。心臓が痛くて、奥歯を食いしばっていないと今にもわめきだしてしまいそうだった。


問 「わけのわからない苛立たしさ」とはどんな苛立ちですか。また、「僕」は何に対して苛立っているのですか。



e: 「わけのわからない苛立たしさ」を覚えたのは何が原因?

F: 大学の教授の説明でしょう。

e: ヤンチャのかかっている病気について何やら説明していましたね。

F: それをテレビで知って、「わけのわからない苛立たしさ」を感じたのです。

e: ヤンチャの病気の原因が

F: 地球環境の激変

e: で、これといった治療法も見つかっていない

F: ヤンチャが直接、地球環境を汚染したわけでもないのに

e: なぜヤンチャが不治の病にかからなければいけないのか

F: と思い、「僕」は「わけのわからない」

e: 「苛立たしさ」を覚えたというわけですね。


 閉じこめたはずの言葉がのどの奥のほうで暴れまわり、隙さえあれば口から飛び出そうとする。

 <何だよ、しっぺ返しって!>

 <何だよ、罰って!>

 <そんなこと、ヤンチャといったい何の関係があるっていうんだよ……!>





<小さなころをした大切な約束>

 僕、ヤンチャ、ノリオ、ハム太の4人は、いつも一緒に悪さをして、しかられる仲良しでした。でも、小学校4年生の時、ヤンチャが原因不明の病気で入院してしまいます。僕たちはお見舞いにいって、やせ衰えたヤンチャの姿を見てびっくり。そして、僕たちはヤンチャのために何かしてあげたいと考えていきます。厳しい現実を前に、僕たち3人はヤンチャのためにある「約束」をします。
 君たちにも忘れられない「約束」ってあるかな。なんとか、約束を守りたいけど、どうしてもできずに、心にひっかかったまま時間だけが過ぎていくことってないかな。でも、自分にはできないからってあきらめても、いつまでも気になっちゃうね。
 時が流れて、なかなか「約束」を果たすことができなかった僕が、実行にうつす決意をする。そして、僕は長年、心にかかっていた雲が晴れていく気分を味わうんだ。みんなが大人になるために何が必要かを考えさせくれる一冊です(Kさん)


◆約束◆村山由佳◆

 村山由佳って、恋愛ものも素敵ですが、こういう児童書も本当に素敵ですね。
 ワタル、ヤンチャ、ノリオ、ハム太。10歳の仲良し4人組。わんぱくで、やんちゃで。活き活きとした少年たち。なのに、なのに、どうして、ヤンチャが病気になんて、原因不明の病気なんて。そんなヤンチャのために、他の3人が作り始めたもの。いいな、いいな。あんなにひたむきになれるのは、あの年頃だからだわ。秘密基地を作ったり、木に登ったりする年頃だから。まぶしいほどの、悲しいほどのあの頃。大人になんてなったって、きっと、あの4人組は不滅。(by Paradise Cinema,Paradise Book)


 これはまだ昭和50年代の頃、小学生だった、主人公の男の子の目を通して思い出の形で書かれてた話である。
 仲間は僕ワタルと、ヤンチャ、ノリオ、ハム太の4人、いつもつるんではいたずらをしたり、遊んだり、叱られるのもみんな一緒だった。4年になったある日、1番元気だった、ヤンチャが原因不明の病気で入院した。しかし、その原因はアレルギーであることが判明してくる。僕とノリオとハム太は、タイムマシンを作り、未来にいってヤンチャの病気を治そうと考える。
 しかし、それからしばらくしてヤンチャは病気に勝てずになくなってしまう。3人は約束する。本物のタイムマシンが出来たら、ヤンチャが元気だった昔に戻ろうって。約束ってどういう事だろう。約束を果たすには力がいる。
 あれから僕たちは大人になった。最後に出てくる、言葉がすばらしいと思う。歴史に「もし」はない、というあの有名な言葉どおり。いっぺんおこってしまったことは二度と変えようがない。タイムマシンを持たない僕らに許されているのは、過去の上に今を、今の上に未来を積み重ねていくという、地動な方法だけだ。後戻りは出来ない。
 でも、過去を繰り返し、見つめ直すことで、未来を変えていくことならたぶん、できる。簡単ではないにしろ、可能であるはずだと。
 あなたはこの言葉どう受け取るだろうか。文も素晴らしいが中に描かれている挿絵が暖かく優しくて、何故か懐かしい気持ちにさせてくれる。(by ブックレビューののこ)

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村山由佳 「約束」



悲しさと夢のコラボ



僕らは、祈った。4人の輝くような時間を取り戻したくて。あの頃、僕らはまだ10歳だった。ワタルたちは原因不明の病気になった仲間のヤンチャを助けようと、タイムマシン作りに情熱の全てを傾けるが…。



 いつもの僕の<クウソウヘキ>は、現実から逃げ出すには好都合だけれど、現実に立ち向かうためにはまったく役に立たないのだ。



問 「現実から逃げ出すには好都合だけれど、現実に立ち向かうためにはまったく役に立たない」とありますが、「現実から逃げ出す」とは、この場合、どういうことですか。また、「現実に立ち向かう」とは、どういうことですか。



e: <クウソウヘキ>のある「僕」はタイムマシンを思いつきますね。

F: 窮余の一策?

e: ドラえもんの”どこでもドア”があれば?

F: ”どこでもドア”でタイムスリップできるんですか?

e: ところで、クウソウヘキはある意味、ストレス解消にもなるなんて言う人もいるみたいですが……

F: ありもしない?

e: できもしない?

F: タイムマシンで不安をごまかしているいう感じですね。

e: 一時的ね…

F: ヤンチャを助けるには

e: 全く役に立たないですからね。いわゆる”現実逃避”というやつですね。

F: 自分の力ではどうしようもない”現実”から逃げ出す一つの手段でしょうか?

e: 「現実に立ち向かう」はそれとは正反対?!?

F: 厳しい”現実”を真正面から受け止めるということでしょう。

e: ”厳しい現実”を具体的に書けばいいですね。

F: ただ単にヤンチャが病気にかかっているというだけでは…



 僕らは、肩を落として別れた。

 0点のテストを返されて家に帰る時より、はるかに気が重かった。


 十一月が終わりに近づくと、河原の土手に霜がおりるようになった。


 十二月に入ったある晩。


 <というわけで、原因は決して一つではないんですね>


 <しかし、それはショックですねえ>


 <そういうことになりますね、残念ながら>

 <それから、このところ日本でも少しずつ症例が報告され始めたのが、当所はアレルギーの一種かと思われた例の症候群ですが>


 <体じゅうに赤い発疹が出て、咳が止まらず、日に日にやせ細って衰弱していく。接触などでは感染しませんが、恐ろしいのは肺炎を併発しやすいこと、それに、発病してから死に至る期間が比較的短いことです>

 心臓がばくばく暴れはじめた。言葉の全部は理解できなくても、とんでもないことを言ってるらしいことだけはわかった。



問 「とんでもないこと」とは、どういうことですか。



e: 「僕」にとって”とんでもない”こと、って?

F: <発病してから死に至る期間が比較的短いことです>を聞いて

e: 「心臓がばくばく暴れはじめた」とありますね。

F: 大学の教授がしゃべってる内容が

e: ヤンチャの病気の症状となんと同じ?!

F: その病気が<発病してから死に至る期間が比較的短い>

e: ヤンチャがもしかして死んでしまうんじゃ?

F: 生存期間が短いということを知ったわけですね。



 <それで、治療法は見つかったんでしょうか>

 <いや、残念ながら、これといったものはまだ見つかっていません。対症療法が精一杯、というのが実情です。じつはですね……私は、この新しい病気には、近年の地球環境の激変が何らかの形で関係しているのでないかと考えているんです。げんに、WHOの調査を見ましても……>


 <ご覧のように、大気や水、あるいは土壌などの汚染が問題になっている地域の人々のほうが、明らかに発病率が高いんですね。乱暴な言い方かもしれませんが、あえて誤解を恐れずに言いますならば、これは、我々に対する自然からの罰なのかもしれないと……>

 <罰、とおっしゃいますと?>

 <つまり、人間のおごりが招いた強烈なしっぺ返しと申しますか>



問 「人間のおごりが招いた強烈なしっぺ返し」とはどういうことですか。



e: こんなこと、こどもにわかりっこないでしょう。

F: まあ、納得はいかないと思いますね。

e: ”しっぺ返し”?ってどういうこと?でしょうね。

F: 大学の教授の説明の部分がヒントになります。

e: これといった治療法がまだ見つかっていない病気は

F: その原因が近年の地球環境の激変

e: 例えば、「大気や水、あるいは土壌などの汚染」

F: によって起こり、「汚染が問題になっている地域の人々のほうが、明らかに発病率が高い」というのですね。

e: ということを答えればいいんでしょうか。

F: 原因不明の病気は汚染の結果だと……

e: ”おごり”や”しっぺ返し”の意味が解っているということが前提ですよね。

F: ”環境汚染””発病””罰”




《書評》
悲しさと夢が同居していますね。
 主人公の「僕」「ヤンチャ」「ノリオ」「ハム太」の仲良し4人の楽しい日々も「ヤンチャ」の原因不明の病気によって暗転するものの、「僕」「ノリオ」「ハム太」の3人がタイムマシンを作って未来に行って「ヤンチャ」の病気を治そうとするところに、子どもたちの友情というか絆のようなものや夢を感じることができました。それから結果として「ヤンチャ」が帰らぬ人になりましたが、3人が河原で交わした「約束」についていろんな思いでいることは胸を打つ。「ノリオ」は量子力学を研究し「タイムマシン」の研究をしていて、「ハム太」は自動車修理工場を継いで同窓会などで会うたびに当時を振り返っている。「僕」は「河原での約束を思い出す」ために書き物をしている。そして「僕」なりの「タイムマシン」第一号を見いだしたのはよかったと思う。(by ラフ)

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村山由佳 「約束」




《あらすじ》

 この本はワタル・ヤンチャ・ノリオ・ハム太という4人の少年が登場します。昭和61年に10歳だった少年たちに起こった一生忘れることのできない”約束”をめぐる物語です。彼らは祈りました。4人の輝くような時間を取り戻したくて…。ヤンチャの突然の入院。日に日にやせ衰えていくヤンチャ。ノリオとハム太とワタルは、タイムマシンを作ろうと決心します。本物のタイムマシンなどつくれるわけがないことを、誰もがよく知っていました。だがそれは、彼らの希望でした。『ヤンチャを元気にするために。』という。はたして3人の希望は叶い、ヤンチャは元気になるのでしょうか…。





 左側の奥、窓のそばのベッドで、ヤンチャはあっちを向いて寝ていた。おばさんは、どこかへ出かけているみたいだ。手前の、入口に近いほうのベッドで寝ているはずの人も今は留守だった。しわくちゃのシーツの上に古ぼけた上着がぬぎすててある。

 僕らはなんとなく息をひそめて、忍び足で病室に入っていった。

 ヤンチャは眠っていた。


 「おい、ヤンチャ」

 返事がない。頭のかっこうは確かにヤンチャなのに、ぴくりとも動かない。


 「なあ、これってヤンチャだよなぁ?」

 ハム太が心配そうにノリオの顔をうかがう。
 「見りゃわかるだろう」

 ノリオがあごで指したベッドの頭のところには、ちゃんと「鈴木康明」と名札が差し込まれている。


 僕は、耳のあたりまで口を近づけて言った。
 「ヤンチャ、ねえ、起きてよ。みんな来てるんだよ」


 最初に中から出てきたのは、スリコギみたいな細い右腕だった。こほっこほっと咳をしながら、その手が何度か空を切り、ようやく顔にかかっていた毛布をつかんでめくったとたん、僕はびっくりして思わず息をのみこんでしまった。

 それは、ヤンチャではなかった。いや、もちろんヤンチャはヤンチャなんだけれど、僕らのよく知っているヤンチャではなかった。



問 「それは、ヤンチャではなかった」とは、どういうことですか。



 左腕に刺さった点滴のチューブを引っ張らないようにしながら、どうにか体を起こしてベッドの上に座ったヤンチャを見ても、みんな、しばらくは何も言えないでいた。ハム太なんか半分逃げ腰だ。

 ずいぶん間があいてから、ヤンチャが、クスッと笑った。



問 「ずいぶん間があいてから、ヤンチャが、クスッと笑った」のはなぜですか。



e: 今回は村山由佳……

F: どちらかといえば、

e: ”恋愛”小説が得意分野ですよね。親子そろって違う分野の本を読んでたり……

F: ありえますかあ……?

e: なぜヤンチャはクスッと笑ったの?

F: 僕の呼びかけにベッドから起き上がったヤンチャを見て

e: 「僕ら」はびっくり仰天でしたね。

F: そりゃそうでしょ!

e: 今までの”腕白坊主”の面影が全然ない!?

F: 弱々しい姿に……

e: 「ベッドの上に座ったヤンチャを見ても、みんな、しばらくは何も言えない」

F: 「ハム太なんか半分逃げ腰」ですよね。

e: そこで、ヤンチャはみんなが怖がっているんじゃないかと……

F: もしかして、うつりそうな悪い病気にかかっている、なんてね…

e: そりゃそう思うでしょう!ふつう…は。

F: そう感じたヤンチャは思わずおかしくなったというわけですね。

e: クスッと笑っちゃった?

F: そのあと、ヤンチャがハム太に

e: 「そうビビんなよ」

F: 「うつる病気じゃないんだってさ」と言っていることからもわかります。



 「そうビビんなよ、ハム太」ヤンチャは小さな声で言った。

 「うつる病気じゃないだってさ」

 「な……なんだよ、けっこう元気そうじゃんか」ノリオが、なんとか笑おうとしながら言った。

 「心配して損したよ」

 「ばぁか」


 僕らは黙っていた。

 「食欲が、全然ないんだ」口を動かすのもしんどそうに、ヤンチャは言った。


 ハム太ののどが、病院じゅうに響きわたるような音でゴクリと鳴った。

 「オ、オレが来て代わりに食ってやろうか?」
 「バカ、病人の食いもの奪ってどうすんだよ」言いながら、ノリオがまたハム太をこづく。

 僕は、そっと訊いてみた。

 「何の病気か、わかったの?」

 ヤンチャはため息をついた。

 「先生は最初、アレルギーの一種じゃないかって言ってたんだけど」

 「けど?」

 「うん。原因がさ。はっきりしないんだ。薬も効かない。のんでも、ちっとも楽にならないんだ」

 「…………」


 ヤンチャの病気が、思ったより重そうだということは僕らにもわかった。


 疲れてきたらしく、ヤンチャは座っているのをあきらめてズルズルとまた横になってしまった。気まずい沈黙が僕らの間に流れる。

 「えっと……じゃあオレたち、そろそろ帰るからさ」

 ノリオが気をきかせて言うと、苦しそうな咳がそれに答えた。

 「また来るからね」

 と、僕も言った。

 「今度は、晩飯の時に来ようかな」

 ハム太が言うと、ヤンチャはようやくおさまった咳のかわりに、乾いたクスクス笑いをもらした。


 ランドセルを背負いなおして、じゃあね、と手をふる。ノリオとハム太の後に続いて病室を出ようとした時、

 「ワタル……」

 ふり向くと、ヤンチャは机の上で口を半開きにして、僕の顔を見つめていた。何を言うつもりだったのか、ヤンチャ自身もわからなくなって困っているみたいに見えた。

 「明日、また来るよ」

 と僕は言った。

 ヤンチャは黙ってうなずいた。



問 「ヤンチャは、黙ってうなずいた」とありますが、この時の「ヤンチャ」の気持ちを答えなさい。



 うちに帰る間じゅう、僕らはほとんど口をきかなかった。



問 「うちに帰る間じゅう、僕らはほとんど口をきかなかった」のはなぜですか。



e: ヤンチャの意外な姿に「僕ら」は驚いています。

F: 今までの”腕白坊主”の面影がまったくない、弱々しいヤンチャの様子を目の当たりにしてですね。

e: ヤンチャの見舞いが終わって「僕ら」が別れる時

F: 気が重くなっていますね。



 土手の上を歩いていく間に、夕日が僕らの背丈と同じくらいのところまで沈んできた。

 見おろすと、川も、ススキの原っぱも、遠くの橋も、そこを渡っていく車も、ありとあらゆるものがさ真っ赤に染まっていた。世界中が血を浴びたみたいだった。


 土手の道を町のほうへおり、もうすぐ家の、という頃になって、僕はふとつぶやいた。

 「タイムマシンがあればいいのにな」



問 「タイムマシンがあればいいのにな」とありますが、なぜあればいいのですか。



 「なんだよ、いきなり」


 「バッカじゃねえの」見下したようにハム太が言った。


 「バカはお前だ」

 ノリオがまたしてもハム太の頭をこづいた。

 「だけどさあ」ハム太が頭をさすりながら言った。
 「ジッサイモンダイとして、タイムマシンなんかありっこないじゃないかよ。そんなのが本当にあったら、病気で死ぬ人なんて今ごろ一人もいないはずだろう」

 確かにその通りだった。

 いつもの僕の<クウソウヘキ>は、現実から逃げ出すには好都合だけれど、現実に立ち向かうためにはまったく役に立たないのだ。

 僕らは、肩を落として別れた。

 0点のテストを返されて家に帰る時より、はるかに気が重かった。






村山由佳(むらやまゆか1964年7月10日~)作家。東京都出身。立教女学院小・中・高を経て、立教大学文学部日本文学科卒。不動産会社勤務、塾講師などを経験したあと、作家デビュー。恋愛小説を書くことを得意としている。『星々の舟』で直木賞受賞。
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<メールでの質問>


「なぜ早くから『過去問』をやるのですか?」

e:そんなに早くから?S以外に通塾されてたら

F:正直、そう感じるでしょうね。

e:秋からで十分、でしょう?

F:前にも書きましたが

e:今から『過去問』をやることに抵抗があるんでしょうね。

F:まだ『過去問』を解く゛実力゛がついていないのに

e:ですから、゛解けない゛。それなのにどうして解かせるのですか?でしょう。

F:「今、やってることに集中すべきじゃないですか」

e:もっと゛基本゛をしっかりやるべき時期じゃないですか、という内容でしょう。『算数』に関して言えば、゛ごもっともです゛と一応、答えておきますね。

F:゛一応゛ですか?!

e:では、何故Sが早くから『過去問』に触れさせているか、ということですね。

F:あれだけの゛実績゛を出してる

e:゛理由゛は何か?

F:そう考えれば、はっきりしますね。

e:ズバリ!『過去問』を早めに解かせているからでしょう!

F:結論を申し上げますと、こういうことです。今やっている勉強がいかに志望校に結び付いているかをつねに意識づけることに

e:『過去問』をやる意味があるんですね。

F:塾での勉強を志望校にシフトするということですね。

e:『算数』で言えば、この問題は自分が受ける志望校に関係ある、しかし

F:こっちの問題は関係ない

e:ということが解っていると

F:塾での授業にも゛メリハリ゛をつけて受けられるんですね。

e:極端に言えば、゛関係゛ないところでは手を抜いていればいいんです。

F:サッカーで言えば、ボールがこないところでは遊んでいてもいいんですね。

e:そうですね。ボールがくれば全神経を集中して

F:゛ゴール゛を目指すということですね。

e:日本のサッカーとブラジルのサッカーの違いでしょう!

F:要するに、今授業でやってることが

e:どれだけ自分が受ける第一志望校と゛関係゛があるか

F:つながっているかどうか

e:を見抜けるかどうかが

F:『合否』を左右するということですね。

e:つまり、いかに゛効率良く゛授業を受けることができるか、でしょう。

F:それができるかどうかは

e:『過去問』をやってるかどうか、でしょう?

F:『過去問』をやっていれば゛解ります゛!

e:逆に『過去問』をやっていなければ解りませんね。

F:授業でも先生が「ここはよくでるよ」

e:「ここは重要だよ」

F:と言われても

e:『過去問』(=実戦)をやっていなければ゛実感゛しないでしょう!

F:Sで「〇〇年に出てたよね」と言われた方が

e:『実戦』で゛実感゛し

F:重要だと言われたことを゛実感゛すると思いますね。

e:あれだけの゛実績゛が出るのは

F:頷けます。

e:塾授業→『過去問』(=実戦)

F:→第一志望校合格

e:これが見事に連携している

F:授業の中身は御三家クラスであれば

e:そんなにかわりはないでしょう。

F:じゃあ、どうして゛実績゛に

e:あんなに゛差゛がでるのか、ということですね。

F:『過去問』と早く向き合うべきでしょうね。

e:『過去問』をこなせる先生が少ない?

F:゛本当に゛こなせる?

e:塾授業では゛特化゛できないですからね。

F:『塾授業』∞

e:『過去問』』(=実戦)∞

F:『第一志望校』

e:=『合格』の図式でしょう!

F:『一挙に本丸から攻めよ』

e:『ゴール至上主義』「私が愛するのはゴール」

F:『合格』への最短の道を

e:見つけ、突き進め!ということですね。


感性の知性化を追求する創造的言語グループ
SINCE 1987

expertFORUM (エキパートフォーラム)
eF恵比寿本部 
代表:プロチューター福田 浩
Tel:090-1732-9873(代表直通)

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村山由佳 「約束」




《あらすじ》

 この本はワタル・ヤンチャ・ノリオ・ハム太という4人の少年が登場します。昭和61年に10歳だった少年たちに起こった一生忘れることのできない”約束”をめぐる物語です。彼らは祈りました。4人の輝くような時間を取り戻したくて…。ヤンチャの突然の入院。日に日にやせ衰えていくヤンチャ。ノリオとハム太とワタルは、タイムマシンを作ろうと決心します。本物のタイムマシンなどつくれるわけがないことを、誰もがよく知っていました。だがそれは、彼らの希望でした。『ヤンチャを元気にするために。』という。はたして3人の希望は叶い、ヤンチャは元気になるのでしょうか…。


トルアト 僕らは、祈った。4人の輝くような時間を取り戻したくて。あの頃、僕らはまだ10歳だった。ワタルたちは原因不明の病気になった仲間のヤンチャを助けようと、タイムマシン作りに情熱の全てを傾けるが…。




 左側の奥、窓のそばのベッドで、ヤンチャはあっちを向いて寝ていた。おばさんは、どこかへ出かけているみたいだ。手前の、入口に近いほうのベッドで寝ているはずの人も今は留守だった。しわくちゃのシーツの上に古ぼけた上着がぬぎすててある。

 僕らはなんとなく息をひそめて、忍び足で病室に入っていった。

 ヤンチャは眠っていた。


 「おい、ヤンチャ」

 返事がない。頭のかっこうは確かにヤンチャなのに、ぴくりとも動かない。


 「なあ、これってヤンチャだよなぁ?」

 ハム太が心配そうにノリオの顔をうかがう。
 「見りゃわかるだろう」

 ノリオがあごで指したベッドの頭のところには、ちゃんと「鈴木康明」と名札が差し込まれている。


 僕は、耳のあたりまで口を近づけて言った。
 「ヤンチャ、ねえ、起きてよ。みんな来てるんだよ」


 最初に中から出てきたのは、スリコギみたいな細い右腕だった。こほっこほっと咳をしながら、その手が何度か空を切り、ようやく顔にかかっていた毛布をつかんでめくったとたん、僕はびっくりして思わず息をのみこんでしまった。

 それは、ヤンチャではなかった。いや、もちろんヤンチャはヤンチャなんだけれど、僕らのよく知っているヤンチャではなかった。



問 「それは、ヤンチャではなかった」とは、どういうことですか。



 左腕に刺さった点滴のチューブを引っ張らないようにしながら、どうにか体を起こしてベッドの上に座ったヤンチャを見ても、みんな、しばらくは何も言えないでいた。ハム太なんか半分逃げ腰だ。

 ずいぶん間があいてから、ヤンチャが、クスッと笑った。



問 「ずいぶん間があいてから、ヤンチャが、クスッと笑った」のはなぜですか。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 「そうビビんなよ、ハム太」ヤンチャは小さな声で言った。

 「うつる病気じゃないだってさ」

 「な……なんだよ、けっこう元気そうじゃんか」ノリオが、なんとか笑おうとしながら言った。

 「心配して損したよ」

 「ばぁか」


 僕らは黙っていた。

 「食欲が、全然ないんだ」口を動かすのもしんどそうに、ヤンチャは言った。


 ハム太ののどが、病院じゅうに響きわたるような音でゴクリと鳴った。

 「オ、オレが来て代わりに食ってやろうか?」
 「バカ、病人の食いもの奪ってどうすんだよ」言いながら、ノリオがまたハム太をこづく。

 僕は、そっと訊いてみた。

 「何の病気か、わかったの?」

 ヤンチャはため息をついた。

 「先生は最初、アレルギーの一種じゃないかって言ってたんだけど」

 「けど?」

 「うん。原因がさ。はっきりしないんだ。薬も効かない。のんでも、ちっとも楽にならないんだ」

 「…………」


 ヤンチャの病気が、思ったより重そうだということは僕らにもわかった。


 疲れてきたらしく、ヤンチャは座っているのをあきらめてズルズルとまた横になってしまった。気まずい沈黙が僕らの間に流れる。

 「えっと……じゃあオレたち、そろそろ帰るからさ」

 ノリオが気をきかせて言うと、苦しそうな咳がそれに答えた。

 「また来るからね」

 と、僕も言った。

 「今度は、晩飯の時に来ようかな」

 ハム太が言うと、ヤンチャはようやくおさまった咳のかわりに、乾いたクスクス笑いをもらした。


 ランドセルを背負いなおして、じゃあね、と手をふる。ノリオとハム太の後に続いて病室を出ようとした時、

 「ワタル……」

 ふり向くと、ヤンチャは机の上で口を半開きにして、僕の顔を見つめていた。何を言うつもりだったのか、ヤンチャ自身もわからなくなって困っているみたいに見えた。

 「明日、また来るよ」

 と僕は言った。

 ヤンチャは黙ってうなずいた。



問 「ヤンチャは、黙ってうなずいた」とありますが、この時の「ヤンチャ」の気持ちを答えなさい。



 うちに帰る間じゅう、僕らはほとんど口をきかなかった。



問 「うちに帰る間じゅう、僕らはほとんど口をきかなかった」のはなぜですか。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 土手の上を歩いていく間に、夕日が僕らの背丈と同じくらいのところまで沈んできた。

 見おろすと、川も、ススキの原っぱも、遠くの橋も、そこを渡っていく車も、ありとあらゆるものがさ真っ赤に染まっていた。世界中が血を浴びたみたいだった。


 土手の道を町のほうへおり、もうすぐ家の、という頃になって、僕はふとつぶやいた。

 「タイムマシンがあればいいのにな」



問 「タイムマシンがあればいいのにな」とありますが、なぜあればいいのですか。



 「なんだよ、いきなり」


 「バッカじゃねえの」見下したようにハム太が言った。


 「バカはお前だ」

 ノリオがまたしてもハム太の頭をこづいた。

 「だけどさあ」ハム太が頭をさすりながら言った。
 「ジッサイモンダイとして、タイムマシンなんかありっこないじゃないかよ。そんなのが本当にあったら、病気で死ぬ人なんて今ごろ一人もいないはずだろう」

 確かにその通りだった。

 いつもの僕の<クウソウヘキ>は、現実から逃げ出すには好都合だけれど、現実に立ち向かうためにはまったく役に立たないのだ。

 僕らは、肩を落として別れた。

 0点のテストを返されて家に帰る時より、はるかに気が重かった。






村山由佳(むらやまゆか1964年7月10日~)作家。東京都出身。立教女学院小・中・高を経て、立教大学文学部日本文学科卒。不動産会社勤務、塾講師などを経験したあと、作家デビュー。恋愛小説を書くことを得意としている。『星々の舟』で直木賞受賞。
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あさのあつこ「The MANZAI 1」


 「おれのカン信じろって」



 ぼくは、話し続ける。母さんが吹き出した。
 くっくっと、リズミカルな笑い声が続く。ぼくの胸の中、心臓の動きが速くなる。


問 「ぼくの胸の中、心臓の動きが速くなる」とありますが、この時の「ぼく」の気持ちを答えなさい。



e: 「母さん」は久しぶりに笑っていますね。

F: 歩が話した秋本とのやりとりで…

e: ここで歩が感じたことは

F: 歩は自分がおもしろいやつの話をすることが

e: 「母さん」を立ち直らせるきっかけになるのではないか。

F: そう感じたことがうれしくて

e: 興奮している?

F: 「笑い」によって「母さん」を元気づけることが

e: もしかして、できるんじゃないかと

F: そういう”希望”がでてきたことがうれしい。



 おかしくてたまらない。そんな感じの母さんの笑い声を久々に聞いた。

 秋本の身ぶり、秋本の口調、秋本の雰囲気……一つ一つを思い出しながら、少し誇張してしゃべった。

 『おたやん』でのおばさんと秋本のやりとりのところで、母さんはついにしゃがみこんでしまった。


 母さんは立ち上がり、指先で目の下をぬぐった。



問 「母さんは立ち上がり、指先で目の下をぬぐった」とありますが、この時の「母さん」の気持ちを答えなさい。



 「なんだか、久々に笑っちゃった」

 そうだね。ほんとに久しぶりに笑ったね、母さん。


 「さっ、ごはんにしましょ。酢豚だから、お好み焼きのあとでも食べられるよね。歩、好物だから」

 酢豚は、一美姉ちゃんの好物だった。甘ずっぱい匂いをかぐたびに、一美姉ちゃんのうれしそうな顔がうかぶ。母さんの中でいつのまにか、酢豚はぼくの好物になっていた。お好み焼きでいっぱいの胃袋をかかえて、一美姉ちゃんのようににこにこと笑いながら、どろりとした肉や野菜を食べられるだろうか。



問 「母さんの中でいつのまにか、酢豚はぼくの好物になっていた」のはなぜですか。



 「でも、ほんと、おいしかった」

 台所で母さんが言う。笑いの余韻を残した、軽い言い方だった。

 おもしろいやつが一番やないか。

 秋本の言葉が耳の中にふっとひびいた。



問 「おもしろいやつが一番やないか。秋本の言葉が耳の中にふっとひびいた」とありますが、「歩」はどういうきっかけで、どのようなことを感じたか、ここから読み取れる内容を答えなさい。



e: なぜ今、この秋本の言葉を思い出したのか。ここが読み取れるかどうか……

F: 「秋本の言葉が耳の中にふっとひびいた」ように感じたのは何によってかを

e: 最初に押さえるべきポイントですか?

F: それは「母さん」を大笑いさせたことがきっかけですね。

e: それによって、ふっと秋本の言葉が……

F: ”ひびいた”と感じた…

e: 「母さん」は傷つき、落ち込んでいますね。
F: 「母さん」は交通事故で「夫」や「娘」を亡くし、がっくり気落ちしてます。

e: そんな「母さん」を見るに見兼ねて必死に

F: 笑わせようと懸命に歩なりにがんばっています。

e: 歩の努力は結実し、「母さん」を笑わせることに成功しますね。

F: その結果、「母さん」は”笑い”によって元気を取り戻し

e: 明るくなってきました。

F: そんな「母さん」の姿を見た歩は

e: 人を”笑わせる”ことがこんなにもすばらしいことなのかと

F: 気づき、人を”笑わせる”ことが大変価値のあるものだと感じるようになってきたのでしょうね。

e: そこから、歩は何を感じるようになったか?

F: ここがポイントでしょう。




『The MANZAI』

【あらすじ】

中学2年の秋。湊市立湊第三中学校に転入してきた瀬田歩は、同じクラスの秋本貴史の熱烈な申し込みを受けていた。漫才の相方になってくれというのである。転校して来て間もない歩はもちろん断るが、秋本の思いは強く、あきらめる様子は微塵もなかった。「おれのカン信じろって、コンビ組んで、これから、じっくりつき合うていこう」文化祭の季節、出し物はクラスの掲示と劇・『ロミオとジュリエット』。ホームルームでは、クラス委員・森口と高原の司会で係を決める話し合いをするが、展示に回りたがる生徒ばかりで、なかなか話がまとまらない。そこで、秋本はある提案をする。「漫才で。ロミオとジュリエットをやりたいんだけど」もちろん、主役の二人は秋本と歩。クラスの中心的存在である秋本の提案とあって、乗り気ではなかった蓮田をはじめ、みんなが賛同。こうして、2年3組の『ロミオとジュリエット』は、本番に向けて動き出す。
 学生時代、多くの生徒は目立つような行為をあまり好まないでしょう。瀬田歩も、そうな多くの生徒のひとり。そうな歩が、秋本に出会ったことで、いろいろな発見や成長をしていきます。過去の出来事により、自分は『普通』でありたいと望み、そうあろうと努力する歩。しかし、秋本は歩に『普通』ではないと言います。「おれにとっては、『特別』なんや」と。秋本の言葉は、まざりっけがなく、聞く人の体や心に浸透するようです。周囲の人間の意外な一面や、友人たちの暖かさも、この物語のみどころ。(by 湊三中笑劇場 The MANZAI:FAN)

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あさのあつこ「The MANZAI 1」



 『おもしろいやつが一番やで、歩』



六月の半ばまで、それでもぼくは、学校に通った。きっかけになったのは、ある先生の言葉だった。笑いながら冗談のように、先生は言った。


問 「きっかけになったのは、ある先生の言葉だった」とありますが、先生の言葉がどのようなことのきっかけになったのですか。



e: 直後に書かれてますね。

F: 「瀬田、おまえ、どっかおかしいんじゃないか。」

e: 「ふつうじゃないぞ」

F: 「精神科にいったほうがいいかもな」なんて

e: キツイお言葉を歩は先生から頂戴してますね…

F: そう言われて

e: 「ああ、そうなのかと思った」とありますからね…

F: 先生の一言が……

e: で、「ぼくはしばらく学校を休むことにした」

F: 先生の「ふつうじゃないぞ」という言葉が

e: 直接のきっかけにして、

F: 歩は学校を休むようになったのですね。



 「瀬田、おまえ、どっかおかしいんじゃないか。いつもぼけっとして、目の焦点あってないぞ。ふつうじゃないぞ。精神科にいったほうがいいかもな」

ああ、そうなのかと思った。他人から見て、ぼくはふつうじゃない。少しおかしく見えるのかと思った。他人の目にさらされることがつらいと感じた。きりっと体が痛むほど強く感じた。夏休み前だったし、病人が自宅療養するつもりで、ぼくはしばらく学校を休むことにした。

 母さんはうろたえた。父さんはなにも言わなかった。いや、違う、一言、言った。

 「歩がしんどいなら、休むのもいい。そのかわり、二学期からがんばれ」

 その一言に、ぼくはなんと返事したのだろう。だまっていたかもしれない。

 宿題もちゃんとやった。二学期の予習さえ少しだけどやった。けれど、新しい学期の一日前になっても、ぼくは、自分が変わったとは思わなかった。もう少し休みたかった。だから、八月三十一日、日曜日、父さんと母さんにもう少し休むと言ったのだ。母さんは泣いた。びっくりした。父さんはテーブルをたたいて、甘えるなとどなった。それにもびっくりした。続けて、
 「学校にもいかないで、どうするつもりだ」

 と、大声で問われた。どうするつもりもなかった。もう少しぼんやりしていたいだけだと答えると、またどなられた。父さんも母さんもおだやかな人だと思っていた。こんな風に泣かれたりどなられたりした覚えは、ほとんどなかったのだ。ぼくはおろおろし、それでも学校にいきますの一言が言えなかった。


 「いいかげんにして、ふたりとも、歩がかわいそうでしょ」

 ほうたいをまいた右手を腰にあてて、お姉ちゃんが大きな声を出した。

 「ふたりがそんなにかっかしてたら、歩がかわいそう。少し、頭を冷やそうよ」

 「パパ、少し、わたしとデートしようよ。涼しいとこでさ、お昼食べようよ」

 お姉ちゃんが父さんの腕をとる。

 お姉ちゃんが父さんの背中を押す。父さんはふりかえり、母さんを見て、まばたきした。

 そして、だまってお姉ちゃんと出ていった。
 ぼくと母さんはなにも言わず、むかいあっていた。庭の木にセミがきて、激しくないていた。


問 「庭の木にセミがきて、激しくないていた」とありますが、これはどのようなことを表していますか。


 ぼくは自分の中の思いを整理しようと、言葉をさがしていた。暑かった。そして電話がなった。

 父さんと姉ちゃんののった車がカーブをまがりそこねて、ガードレールにぶつかり、大破したという電話だった。父さんは、ちかくの高速道路にのり、サービスエリアのレストランにいくつもりだったらしい。

 父さんの背中を押していた姉ちゃんと、姉ちゃんに背中を押されていた父さんの姿が、ぼくと母さんの見た、最後の生きた姿になった。


 ボンスケが死んだのは、ふたりの初七日の朝だった。犬小屋の前で両脚をのばして死んでいた。


 夕方、ぼくは庭のすみにボンスケを埋めた。
 次の日から、ぼくは学校に通った。勉強した。クラブもやった。学級の活動も積極的ではないけど、ちゃんと参加した。

 「おまえ、しっかりしてきたな。つらいことを乗り越えて、よくがんばってる。えらいよ」

 ぼくをおかしいと言った先生が目に涙をうかべて、ぼくをほめた。

 「ぼんやりしたくないんです」

 ぼくは答えた。



問 「ぼんやりしたくないんです」とありますが、この時の「ぼく」の気持ちを答えなさい。



 一周忌の夜、母さんは、ぼくたちの家を売って、生まれ故郷の湊市に引っ越したいと言った。ぼくはそれでいいと答えた。母さんの一番生きやすい場所で生きていけばいいと思った。


 湊第三中学校に転校してからも、ぼくは、一日も学校を休まなかった。
 教室で冗談もダジャレも言った。秋本がそんなぼくを見て、漫才の相方、コンビの相手にしたいと考えたなら、まちがっている。確かにまちがっている。秋本はなにも見ていない。



問 「秋本がそんなぼくを見て、漫才の相方、コンビの相手にしたいと考えたなら、まちがっている。確かにまちがっている。秋本はなにも見ていない」とありますが、ここから歩が秋本に対して、どのようなことを感じていると思いますか。


e: 歩みは転校してきた今は一日も学校を休まないで、

F: ”ふつう”に通っています。

e: 「ぼくは学校に通った。勉強した。クラブもやった。学級の活動も積極的ではないけど、ちゃんと参加した」とありますからね。

F: 見た目は明るくふるまってます。

e: それは母さんを元気づけるため?

F: こういう時は

e: 「夫」や「娘」を亡くした時ということですね。

F: 意外と子供の方が

e: 精神的にタフだったりするもんですか?

F: 前向きに生きようとする?

e: 母親は過去を引きずり苦しむ?

F: 昔、麻布で出ました。

e: 「ミラクル」ですか?

F: レイ・ブラッドベリ

e: 母親を亡くし、父親を亡くし…

F: 子供の方がたくましかったり…

e: 明るく振る舞っているのは交通事故で「夫」や「娘」を亡くしたショックから立ち直れないでいる母親を

F: 最愛の二人を失った悲しみから立ち直れないでいる「母さん」を元気づけるためであり

e: それからもう一つあるんじゃないですか?

F: 考えられるのは、「父さん」や「姉ちゃん」が交通事故で死んだのはもしかして自分のせいではないかという

e: 自責の念にかられて、ということですかね。

F: ですから、せめて「母さん」に余計な心配をかけさせまいと

e: 「ふつう」の子供のなろうと、明るく元気な子供を演じているわけですね。

F: ところが、秋本はというと

e: その辺の事情を全く分かってなくて

F: 漫才の相方にしようとしているんですね。

e: 表面的な”明るさ”だけ、こうつは素質がある?

F: 秋本は歩の心の苦しみを看破できずに

e: 歩はなんにも解っちゃいないと……

F: 「秋本はなにも見ていない」というのは、秋本は歩の心の苦しみにまったく気づいていないということを表現しているのです。



 「きょう、へんなやつに、お好み焼きおごってもらった」

 「へんて?」


 秋本の話をした。身ぶり手ぶりを加えて、なるべく詳しく話した。

 「漫才のコンビ?へえ、歩とねえ。おもしろいやつが子ね。本気なのかしら」

 「かなりマジだったみたい。えらい入れこまれちゃったよ。『おもしろいやつが一番やで、歩』だって」

 母さんが笑う。

 「そういえば、一美といっしょになってよく、冗談言ってたものね。家庭内漫才だって、父さんとよく笑ったわ。一美はとくに……」

 母さん、もういいよ。もう父さんや姉ちゃんのところにもどっていくなよ。


問 「父さんや姉ちゃんのところにもどっていく」とは、どういうことですか。



e: これはなんとなく分かりますよ。

F: 母親の気持ち?

e: まあ、大人の感覚で…

F: お子さんも理解できるはずです。

e: ”もどる”ということは過去を遡るということでしょう。

F: 交通事故で死んでしまった「夫」や「娘」のことを思い出すということですね。

e: 悲しみにくれ

F: 笑いを忘れてしまうことでしょうね

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あさのあつこ「The MANZAI 1」



 交通事故で「父さん」と「姉さん」を失った「ぼく(歩)」が「母さん」と新しい生活を送っていくなかで、人を喜ばすことのすばらしさを感じ初めていく。どのようなことをきっかけとして、「ぼく」がどのようなことを感じていくのか……



 マンションの部屋にかぎはかかっていなかった。ドアを開けると、甘ずっぱい匂いがした。
 「おかえり、おそかったのね」

 母さんが言った。ぼくの顔を見て、ほっと息をつく。


問 「ぼくの顔を見て、ほっと息をつく」とありますが、この時の「母さん」の気持ちを答えなさい



e: 今、どういう状況か分かっていれば書けるでしょう。

F: わかっていれば、その辺りをしっかり書かなけれなりません。

e: 母子二人の生活ですからね。心細い限りでしょうね。

F: 最近、いろいろ事件が起こっていますから。

e: そうでなくても、母親として気掛かり?

F: 交通事故で夫と娘を失い

e: 頼りにしている息子にもしものことがあったらと、考えちゃいますからね。

F: 息子の帰りが遅いと……

e: 無事、戻ってきてひと安心ってとこですか。



 「おそいから、心配してたのよ」


 「母さんこそ、早いじゃん。かぎ開いてたから、どろぼうさんかなとおもっちゃたよ」


 生まれ故郷に帰ってきた時、母さんはすぐ、このマンションを借りた。おじさんは自分たちといっしょに住むようにすすめてくれたけど、ことわった。


問 「ことわった」のはなぜですか。



e: これは簡単?

F: 直後の「母さん」の

e: 「歩とふたりでがんばってみたいの」と言っていますね。

F: 「父さん」と「姉さん」を交通事故で亡くした「母さん」は「歩」とふたりでがんばって生きていきたいと……



 「兄さんの気持ちもうれしいけど、ほかにもいろいろめいわくかけるし、歩とふたりでがんばってみたいの」

 ぼくの体に寄りそうように立って、母さんは小さな声を出した。

 ぼくが姉と父を、母さんが娘と夫を交通事故で失ったのは、去年の夏、八月三十一日の日曜日だった。直接の原因は、父さんの運転ミス、間接の原因は、ぼくだった。

 その年の夏が始まるころ、中学一年の六月から、ぼくは学校を休んでいた。具体的な理由をあげることはできない。中学に入学してから、ずっと感じてた疲労感みたいなものがピークになった。そうとしか言えない。

 学校と家と塾だけの生活が、ひどくあじけなくて、なにかが欠落してるんじゃ思うのに、欠落したものがなんなのか、どうにもわからなかった。


 小学校の時、仲のよかった友だちふたりに、ぼくは、ぼそぼそとしゃべってみた。放課後の教室で、さらっとした気持ちのよい風が吹きこんでいた。

  「歩、そりゃおまえ、ノイローゼってやつじゃないの。やばいぞぉ」

 「あんまり深刻ぶらないほうがいいぜぇ、はやらないもん、そういうの」

 「そうそう。歩、あんまし暗いこといってると、いじめられるぞ。ほんと、はやんないんだから、さっ、もう帰ろうぜ」

 堂島と狩野が出ていこうとする。ぼくは、ひとり立っていた。

 ドアのところで、堂島がふりかえり、ちっと舌をならした。

 「じゃあな」

 狩野が手をふる。西日がいっぱいに射しこんでくる廊下は、きらきらと明るい。ふたりの白い夏服が、光の中に消えていく。とけていくように見えた。それだけだった。


問 「ふたりの白い夏服が、光の中に消えていく」とありますが、これはどのようなことを表しているのですか。



e: もうこの時期、これは理解できるんじゃないですか?

F: 「堂島や狩野が話しかけてこなくなったほかは、なにも変わらなかった」とありますから

e: ここから「堂島」と「狩野」の気持ちが歩から遠ざかっていってますね。

F: ふたりの心が歩から離れていったことが理解できます。

e: 歩の心は読めない。友達なのにね……

F: まあ、ふつう、読めないでしょう!

e: 身近にいる家族でさえも読めなかったわけですからね。

F: ふつう、そんなもんじゃないですか?

e: 読めていれば、悲劇は起こらなかった?!

F: 「堂島」と「狩野」のふたりは

e: 「さらっとした気持ちのよい」連中ですからね。

F: 深刻に悩んでいる「歩」の気持ちは理解できないでしょう。

e: 二人の言動か、ノーテンキ?悩み一つない感じ?

F: 「あんまり深刻ぶらないほうがいいぜぇ」

e: 「あんまし暗いこといってると、いじめられるぞ」なんてね。

F: 「はやらないもん。そういうの」

e: 「ほんと、はやらないんだから」

F: とにかく楽しく明るく中学校生活を送っていますから。

e: 自分から離れていく二人の後ろ姿を見て

F: 自分の深刻な悩みを解ってくれていないことを切実に感じ

e: 「白い」「夏服」が

F: 「光」の中に「消えていく」と表現したということでしょうね。

e: 「とけていくように見えた」

F: 「それだけだった」



 堂島や狩野が話しかけてこなくなったほかは、なにも変わらなかった。六月の半ばまで、それでもぼくは、学校に通った。



本名:浅野敦子1954年生まれ。児童文学作家。岡山県出身。青山学院大学文学部卒業後、小学校の臨時教諭を経て作家デビュー。1997年「バッテリー」で野間児童文芸賞受賞、幅広い世代の支持を得る。1999年「バッテリー2」で日本児童文学者教会賞受賞。2005年「バッテリー」全6巻で小学館児童出版文化賞受賞。既婚で3児の母。女優の浅野温子と間違われないようにひらがなのペンネームにしたという。

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あさのあつこ「The MANZAI 1」



 交通事故で「父さん」と「姉さん」を失った「ぼく(歩)」が「母さん」と新しい生活を送っていくなかで、人を喜ばすことのすばらしさを感じ初めていく。どのようなことをきっかけとして、「ぼく」がどのようなことを感じていくのか……



 マンションの部屋にかぎはかかっていなかった。ドアを開けると、甘ずっぱい匂いがした。
 「おかえり、おそかったのね」

 母さんが言った。ぼくの顔を見て、ほっと息をつく。


問 「ぼくの顔を見て、ほっと息をつく」とありますが、この時の「母さん」の気持ちを答えなさい



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 「おそいから、心配してたのよ」


 「母さんこそ、早いじゃん。かぎ開いてたから、どろぼうさんかなとおもっちゃたよ」


 生まれ故郷に帰ってきた時、母さんはすぐ、このマンションを借りた。おじさんは自分たちといっしょに住むようにすすめてくれたけど、ことわった。


問 「ことわった」のはなぜですか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:



 ぼくが姉と父を、母さんが娘と夫を交通事故で失ったのは、去年の夏、八月三十一日の日曜日だった。直接の原因は、父さんの運転ミス、間接の原因は、ぼくだった。

 その年の夏が始まるころ、中学一年の六月から、ぼくは学校を休んでいた。具体的な理由をあげることはできない。中学に入学してから、ずっと感じてた疲労感みたいなものがピークになった。そうとしか言えない。

 学校と家と塾だけの生活が、ひどくあじけなくて、なにかが欠落してるんじゃ思うのに、欠落したものがなんなのか、どうにもわからなかった。


  「歩、そりゃおまえ、ノイローゼってやつじゃないの。やばいぞぉ」

 「あんまり深刻ぶらないほうがいいぜぇ、はやらないもん、そういうの」

 「そうそう。歩、あんまし暗いこといってると、いじめられるぞ。ほんと、はやんないんだから、さっ、もう帰ろうぜ」

 「じゃあな」

 狩野が手をふる。西日がいっぱいに射しこんでくる廊下は、きらきらと明るい。ふたりの白い夏服が、光の中に消えていく。とけていくように見えた。それだけだった。


問 「ふたりの白い夏服が、光の中に消えていく」とありますが、これはどのようなことを表しているのですか。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



本名:浅野敦子1954年生まれ。児童文学作家。岡山県出身。青山学院大学文学部卒業後、小学校の臨時教諭を経て作家デビュー。1997年「バッテリー」で野間児童文芸賞受賞、幅広い世代の支持を得る。1999年「バッテリー2」で日本児童文学者教会賞受賞。2005年「バッテリー」全6巻で小学館児童出版文化賞受賞。既婚で3児の母。女優の浅野温子と間違われないようにひらがなのペンネームにしたという。



六月の半ばまで、それでもぼくは、学校に通った。きっかけになったのは、ある先生の言葉だった。笑いながら冗談のように、先生は言った。


問 「きっかけになったのは、ある先生の言葉だった」とありますが、先生の言葉がどのようなことのきっかけになったのですか。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 「瀬田、おまえ、どっかおかしいんじゃないか。いつもぼけっとして、目の焦点あってないぞ。ふつうじゃないぞ。精神科にいったほうがいいかもな」

ああ、そうなのかと思った。他人から見て、ぼくはふつうじゃない。少しおかしく見えるのかと思った。他人の目にさらされることがつらいと感じた。きりっと体が痛むほど強く感じた。夏休み前だったし、病人が自宅療養するつもりで、ぼくはしばらく学校を休むことにした。

 母さんはうろたえた。父さんはなにも言わなかった。いや、違う、一言、言った。

 「歩がしんどいなら、休むのもいい。そのかわり、二学期からがんばれ」

 その一言に、ぼくはなんと返事したのだろう。だまっていたかもしれない。

 宿題もちゃんとやった。二学期の予習さえ少しだけどやった。けれど、新しい学期の一日前になっても、ぼくは、自分が変わったとは思わなかった。もう少し休みたかった。だから、八月三十一日、日曜日、父さんと母さんにもう少し休むと言ったのだ。母さんは泣いた。びっくりした。父さんはテーブルをたたいて、甘えるなとどなった。それにもびっくりした。続けて、
 「学校にもいかないで、どうするつもりだ」

 と、大声で問われた。どうするつもりもなかった。もう少しぼんやりしていたいだけだと答えると、またどなられた。父さんも母さんもおだやかな人だと思っていた。こんな風に泣かれたりどなられたりした覚えは、ほとんどなかったのだ。ぼくはおろおろし、それでも学校にいきますの一言が言えなかった。

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青木和雄・吉富多美「ハッピーバースデー」



 sky blue



 始業のチャイムがなった。

 黒沢は一人一人名前を呼びながら出席をとった。


 「欠席は金沢さんだけだね。」

 「先生、金沢はもう来ません。追放することにクラス全員で決めましたから。」

 大輔はいいながら、じっと黒沢の反応を見ている。

 「追放?」

 ふふっと黒沢は笑った。信じられないとあすかは思った。

 「あのねえ、先生はいつもいじめは悪いことだっていっているよね。クラス目標にもあるように、みんな仲良くしなきゃだめだよ。」

 軽く優しくいった。黒沢の本心が、『表向き』の言葉にはないことをみんなはもう知っているけどね。大輔はとくに敏感に嗅ぎ取っている。


問 「黒沢の本心が、『表向き』の言葉にはない」とありますが、これはどういうことですか。


 「おい、カナキンがきたぞ。」

 「ムカツクなあ」

 「金沢、おまえ追放だぞ。帰れよ!」

 大輔は後ろを振り返って黒沢の反応をうかがっている。騒ぎに気付かないふりをして黒沢は黒板に算数の公式を板書している。

 大輔は安心して窓辺にいる仲間たちに向かって号令をかけた。

 「帰れ、帰れ、帰れ、帰れ。」

 順子は校庭に立ち尽くして教室の窓を見上げていた。サクラの花びらが、順子の頭上に降り落ちている。

 あすかは拳を握りしめて立ち上がった。


 「自分が何をしているかわかっているの!友だちを傷つけるのって、そんなにおもしろいことなの?!」

 あすかは叫ぶと同時に教室を飛び出した。順子を迎えに校庭へと走る。

 「待って、わたしも行く。」

 後ろで晶が叫んでいたがあすかは構わずに走った。

 校庭に順子の姿はなかった。


 「金沢さん、一緒に教室に戻ろうよ。」

 あすかはいった。振り返った順子の顔を見て、あすかははっと息をのんだ。表情のない暗い顔。生きる力が感じられなかった。声を無くした時のあすかと似ていた。

 ーーー一人にはしておけない。誰かがそばにいないと。

 あすかは不安になり緊張で震えた。



問 「一人にはしておけない」と、なぜ、あすかはそう考えたのですか。


問 「あすかは不安になり緊張で震えた」のはなぜですか。


 「金沢さん、早く戻ろう。」

 晶が手を取ろうとすると、順子は振り切って走っていった。あすかと晶は順子の後を追う。

 歩き疲れて三人は小さな公園のベンチに坐り込んだ。

 「ああ、お腹空いたねえ。今日の給食、何だったっけな。」

 晶は大きなため息をついていった。

 「だめだ。目を閉じると給食が浮かんでくる。」

 顔と名前に似ず晶はかなり現実的だ。


 「やっと見つけたよ。何やってんのこんなところで。」

 三人の前に吉浦茂が現れた。

 「みんな、大騒ぎで探しているんだよ。のんびりしている場合じゃないよ。」


 陽が沈みかけて、辺りはほんのり暗くなった。西の空が茜色に染まっている。


 「わたしね、死のうと思っていたの。」


 「明日死のう、だから今日は我慢しようって、ずっと耐えていたの。」

 とても悲しい話だとあすかは思った。順子の肩にそっと手を置く。

 「でもね、明日まで待てなくなったの。どうやったら死ねるのか、探してみたけどわからなかったの。わたし、死ぬこともできないの。」

 順子は言ってぽろぽろと涙をこぼした。あすかは順子の肩を抱く手にいっそう力を込めた。


問 「あすかは順子の肩を抱く手にいっそう力を込めた」とありますが、この時の「あすか」の気持ちを答えなさい。



e: 少し前に「わたしね、死のうと思っていたの」と打ち明けていますね。

F: それを聞いたあすかは「とても悲しい話だと」思っています。

e: 順子の本当の胸の内側がここではっきりと分かったわけですか。

F: この後、「わたしもね、すごく辛いことがあったの。毎日泣いてばかりいて、死んじゃいたいって思ってた。」とあすかも過去の辛い経験を順子の打ち明けてます。

e: そのあたりまで読んでカバーしなくてはならないんですか?

F: 自分も同じような辛い体験をしたからこそ
e: 順子の気持ちが痛いほどよくわかる?

F: 身につまされ、ですから余計に励まそうという気持ちがいっそう強くなったということですね。

e: 本文の終わりの場面にでてきますね。

F: 「金沢さん、死ぬ方法より、幸せに生きていく方法を探そうよ、ねっ。」

e: 「きっとできるよ。わたしたちも応援するからね。」

F: これら、二つの部分から、あすかが順子を元気づけようとしていることが読み取れます。る

e: ”共感”とき”前向き”がキーワード?

F: 解答要素

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青木和雄・吉富多美「ハッピーバースデー」



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 始業のチャイムがなった。

 黒沢は一人一人名前を呼びながら出席をとった。


 「欠席は金沢さんだけだね。」

 「先生、金沢はもう来ません。追放することにクラス全員で決めましたから。」

 大輔はいいながら、じっと黒沢の反応を見ている。

 「追放?」

 ふふっと黒沢は笑った。信じられないとあすかは思った。

 「あのねえ、先生はいつもいじめは悪いことだっていっているよね。クラス目標にもあるように、みんな仲良くしなきゃだめだよ。」

 軽く優しくいった。黒沢の本心が、『表向き』の言葉にはないことをみんなはもう知っているけどね。大輔はとくに敏感に嗅ぎ取っている。


問 「黒沢の本心が、『表向き』の言葉にはない」とありますが、これはどういうことですか。


 「おい、カナキンがきたぞ。」

 「ムカツクなあ」

 「金沢、おまえ追放だぞ。帰れよ!」

 大輔は後ろを振り返って黒沢の反応をうかがっている。騒ぎに気付かないふりをして黒沢は黒板に算数の公式を板書している。

 大輔は安心して窓辺にいる仲間たちに向かって号令をかけた。

 「帰れ、帰れ、帰れ、帰れ。」

 順子は校庭に立ち尽くして教室の窓を見上げていた。サクラの花びらが、順子の頭上に降り落ちている。

 あすかは拳を握りしめて立ち上がった。


 「自分が何をしているかわかっているの!友だちを傷つけるのって、そんなにおもしろいことなの?!」

 あすかは叫ぶと同時に教室を飛び出した。順子を迎えに校庭へと走る。

 「待って、わたしも行く。」

 後ろで晶が叫んでいたがあすかは構わずに走った。

 校庭に順子の姿はなかった。


 「金沢さん、一緒に教室に戻ろうよ。」

 あすかはいった。振り返った順子の顔を見て、あすかははっと息をのんだ。表情のない暗い顔。生きる力が感じられなかった。声を無くした時のあすかと似ていた。

 ーーー一人にはしておけない。誰かがそばにいないと。

 あすかは不安になり緊張で震えた。



問 「一人にはしておけない」と、なぜ、あすかはそう考えたのですか。


問 「あすかは不安になり緊張で震えた」のはなぜですか。


 「金沢さん、早く戻ろう。」

 晶が手を取ろうとすると、順子は振り切って走っていった。あすかと晶は順子の後を追う。

 歩き疲れて三人は小さな公園のベンチに坐り込んだ。

 「ああ、お腹空いたねえ。今日の給食、何だったっけな。」

 晶は大きなため息をついていった。

 「だめだ。目を閉じると給食が浮かんでくる。」

 顔と名前に似ず晶はかなり現実的だ。


 「やっと見つけたよ。何やってんのこんなところで。」

 三人の前に吉浦茂が現れた。

 「みんな、大騒ぎで探しているんだよ。のんびりしている場合じゃないよ。」


 陽が沈みかけて、辺りはほんのり暗くなった。西の空が茜色に染まっている。


 「わたしね、死のうと思っていたの。」


 「明日死のう、だから今日は我慢しようって、ずっと耐えていたの。」

 とても悲しい話だとあすかは思った。順子の肩にそっと手を置く。

 「でもね、明日まで待てなくなったの。どうやったら死ねるのか、探してみたけどわからなかったの。わたし、死ぬこともできないの。」

 順子は言ってぽろぽろと涙をこぼした。あすかは順子の肩を抱く手にいっそう力を込めた。


問 「あすかは順子の肩を抱く手にいっそう力を込めた」とありますが、この時の「あすか」の気持ちを答えなさい。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 「わたしもね、すごく辛いことがあったの。毎日泣いてばかりいて、死んじゃいたいって思ってた。」

 「その時ね、わたし、一生懸命生きていける方法を探したの。」


 「それで、見つかったの?」

 茂が訊く。

 「うん、田舎のじいちゃんの畑でね。すごく時間がかかったけど、見つけたわ。」

 「で、それはなんだった?」

 今度は晶が訊いた。


 「金沢さん、死ぬ方法より、幸せに生きていく方法を探そうよ、ねっ。」

 「できるかなあ、わたしに。」

 順子の顔に弱々しい笑みが浮かんだ。



問 「順子の顔に弱々しい笑みが浮かんだ」とありますが、この時の「順子」の気持ちを答えなさい。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 「きっとできるよ。わたしたちも応援するからね。」

 晶とあすかは両側から順子の肩を抱いた。強く温かく、心をこめて。


 「さあ、大騒ぎの学校に乗り込むか。」

 力強く茂がいった。

 「茂ちゃんは帰っていいよ。塾があるんでしょ。」

 「ぼくも行くよ。こういう時はさ。一人でも多い方が心強いだろ。」

茂は、自転車で三人のあとを追いかけていく。


問 六年二組のいじめがどんどんひどくなっていく原因を答えなさい。



e:

F:

e:

F:

e:

F:







”あすかなんて生まきゃよかった”…母親の惨い言葉で始まるこの物語は主人公あすかの声をも奪うほどの悲しい言葉だった。声を失ったあすかの心の傷は母親の故郷で癒される…祖父のあすかの全てを包む愛情。自然との触れ合い。あすかは声を取り戻したし、心を取り戻した。言葉は人を生かすことも出来れば、殺すことも出来るのだと思いました。あすかの母親も幼いころの寂しさから心が病んでいたのだと思うと、いつまでも救われなかった母親もかわいそうだな…と思いました。故郷で心が、愛で満タンになったあすかのそれからは…壊れかけた家族の絆も、友達の心も…関わる全ての人達を救っていって、あすかの強さと優しさに読みながら何度も泣けました。(by 本と映画と気まぐれに☆)

 この本はカウンセラーの方が書いており不登校、差別、いじめ、虐待、死について書いてあります。どんな人でも読んでいて、自らの体験が故に娘を避け、虐待してしまう母親、子供に成績や世間の目以外関心を示さない父親、愛を与えてもらえない子、いじめる子、いじめられる子、いじめを見て見ぬフリをする子、人の死を経験する子。必ず自分を重ねてしまう登場人物がいるはずです。ストレスから声が出せなくなってしまったあすかは、祖父母のもとで優しい愛を知り、自然から学ぶことで胸に溜めていたものを吐き出すことができて声を取り戻します。ここでいう『声』というのは単に声ではなく、自らを取り戻す、少女自身のアイデンティティーのようなものなのでしょうね。思うのは今の世の中あまり自然は転がっていませんよね。人工的に造られた公園とかしか。彼女を救った自然とはやっぱり違うもので、土から学ぶ、空から学ぶ、虫から学ぶ、生命の繋がりを知る。今の遊びはゲームだし。彼女は祖父母から、自然から学んだものは彼女を通して色々な人に伝わっていきます。
時には大人でさえも巻き込み人々は変わっていきます。彼女のまわりの歪んでしまった負の連鎖は消えたのです。読んでみるとハッと気付かされることが多いのです。
 「人生に無駄なことなどない。無駄だと思われる事にもまた深い意味があるのだ」(by SKULLBOX::NOTEBOOK)

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青木和雄・吉富多美「ハッピーバースデー」



 「60億に1つの奇跡」



 教室で大きな音が響き、順子の悲鳴があがった。


 「痛い!止めてよ。」

 「バイキンが、生意気な口をきくんじゃねえ!」

 順子の泣き声と男子の太い声が重なった。

 ドッスンという鈍い音がして順子が倒れた。たまらずあすかは振り返る。


 日常的な光景なのだろう。みんなはまるで街頭で始まったパフォーマンスを見るような、冷めた目で眺めている。

 「そいつ、うっとうしいからさ、教室から出しちゃえば。」

 野村真知子の提案に


 「そうだな。バイキンを教室から追放することに賛成なやつ、手を挙げろ。」


 あすかの腕を四人の中の一人がとって、強く引っ張り上げた。あすかは唇を噛んでうつむいた。

 「全員一致でクラス追放に決まったからな。悪く思うなよ。」


 ーーーもうがまんできないよ。

 立ち上がろうとするあすかを、

 「だめよ。今行ったら次のターゲットに決まる。静かにしてなさい。交流委員ができなくなるでしょう。」

 晶が強い力で制した。

 「これが六年生二組の現実だもの。受け入れないと仕方ないじゃん。」

 四人の中の一人が肩をすくめ、ため息まじりにいった。

 そのまま、順子は教室に戻らなかった。

 ーーーごめんなさい。金沢さん。

 あすかは順子の席を見ることができなかった。自分の弱さが恥ずかしくて、ずっとうつむいていた。



問 「あすかは順子の席を見ることができなかった」とありますが、この時の「あすか」の気持ちを答えなさい。



e: 直後に「自分の弱さが恥ずかしくて、ずっとうつむいていた」

F: 直前には「ごめんなさい!金沢さん」

e: 直前・直後であすかの気持ちがわかりますね。

F: これはよく出てくるパターンでしょう。

e: 申し訳ない~情けないパターンですか?

F: 何もしてあげられない自分の”無力さ”を感じています。



 晴れた朝だというのにあすかは憂鬱だった。六年二組の教室を思い浮かべるだけで吐き気がしてきた。あすかはうつむいて、とぼとぼと通学路を歩いていた。

 交差点で信号を待っていると晶と一緒になった。


 信号が青になり、あすかと晶は並んで、横断歩道を渡った。


 「あたしね、小林くんよりみんなが怖かった。仕方がないってあきらめている、みんなの方がずっと怖かったよ。」

 あすかがいうと、晶は一瞬顔をくもらせ、それから眼鏡を押し上げてじっと何かを考えていた。

 「このことね、藤原さんにだけいうね。」

 きまじめな顔で晶が切りだした。

 「ゆうべね、金沢さんのお母さんから電話があったの。びっくりしちゃった。」

 「じゃあ金沢さん、お母さんにいえたんだ。」
 あすかが訊く。

 「ううん、金沢さん、泣いてばかりいて何もいわないんだって。だからおばさん、わたしに学校の様子を教えてほしいっていうの。」

 晶が答えた。

 「話したのね、昨日のこと。」

 足を止め、あすかと晶は目を合わせる。

 「仕方がなかったのよ。お母さんからちゃんと話しなさいっていわれたし。全部話したわ。おばさん、泣きながらすごく怒ってた。母親なら当然だよね」

 「そうだよね、当然だよね。」

 あすかは静代ではなく、祖母の顔を思い浮かべた。


問 「あすかは静代ではなく、祖母の顔を思い浮かべた」のはなぜですか。


 「わたし、叱られちゃった。あなたは何をしていたんだ、友だちが傷つけられているのに、助けようと思わなかったのかって。母親ならそれも当然なんだよね。」

 ーーー当然じゃない母親もいるけどね。

 あすかは心の中でいった。静代の顔を思い浮かべながら。

 「そうはいわれても現実は厳しいのよね。大人が思うほど、子供の世界は甘くないわ。二週間の教室じゃ何もできっこない。」

 「そうかな、わたしはできると思う。金沢さんのお母さんに訊かれたら、わたし、ちゃんと答えるようにしたい。」

 何よりも自分に恥ずかしくないようにしよう、とあすかは誓った。



 教室の窓にもたれて、大輔と真知子が仲良くおしゃべりをしていた。

 「みんな聞けよ、野村がさあ、金沢さんは死んじゃえっていってるぜ。そういうこといっていいのかなあ。いけないよなあ。」

 真知子の顔が蒼白になった。カナキンがノムキンに変わる可能性だってあるのだ。そのことを忘れていた。真知子は恐怖におののいた。



問 「恐怖におののいた」とありますが、真知子はどのようなことにおののいたのですか。


e: これは簡単ですか?

F: 直前に根拠が書かれてますからね。

e: 「カナキンがノムキンに変わる可能性だってある」こと。

F: つまり、いじめのターゲットが自分になる可能性があるということですね。

e: それを真知子は怖れた?

F: いじめの循環

e: バス?



青木和男(あおきかずお、1930年~)は、日本の児童文学作家。神奈川県横浜市出身。早稲田大学第一文学部心理学科そ卒業。横浜市教育委員会指導主事、横浜市立小学校校長を経て、教育カウンセラーとなる。カウンセラーとしての経験を生かし、いじめや児童虐待をテーマにした児童書を多数出版。


1997年に出版された児童書に加筆訂正した一般向け文芸書版。「ああ、あすかなんて、本当に生まなきゃよかったなあ。」母親の愛情を受けられず、11歳の誕生日に言われた一言によって、ついにあすかは声を失ってしまう。生まなければ良かった…母親を絶対的な信頼で求める子供にとって、どれほど傷つく言葉だろうか。そこから祖父母や周りの人々の支えによって、自然や人々の心、命というものに触れることで、声を取り戻していく。その過程は少しうまく行き過ぎている感じがしてしまう。急にあすかを理解し、味方になろうとする兄。あすかの信号に気づき、手を差し伸べる先生。そしてあすかの苦しみを受け止め、しっかりと支えてくれる祖父母。実際にはそういった味方すら、近くにいない子供も数多いだろう。それでも傷ついたあすかが少しずつ前に足を踏み出し、力強く変わっていく様子にはやはり感動してしまった。誰もが、何かに傷ついたり、不安になったり…さまざまな苦しみを抱えているのだろう。だが、この世に生まれてくることが「60億に一つの奇跡」だというなら、やはりその絆を大切にしたい。

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青木和雄・吉富多美「ハッピーバースデー」



 「ああ、あすかなんて、本当に生まきゃよかったなあ。」



《これまでのあらすじ》

【あすかは、母親の静代から精神的に虐待を受けていたため、一時期、声を出すことができなかった。しかし、田舎に預けられ、祖父母からたくさんの愛情をもらったことで声を取り戻すことができた。元気になったあすかは静代の元に戻り、新しい学校に通うことになった。】



 あすかが転校した青葉小学校は、新しい家から歩いて十五分ほどの距離にあった。学校のすぐ前を幹線道路が走っている。ひっきりなしに通る車エンジンの音が、風の音を消していた。
 「体調を崩しまして、田舎で静養しておりましたものですから。」


 「あ、不登校ですか。ようするに学校、嫌いなんですね。」

 「いえ、それは、あの……。」

 静代はしどろもどろになる。

 「わたし、学校、嫌いじゃありません。」

 「だったら、登校するでしょ、ふつう。」

 むっとして黒沢がいった。整ってはいるが温かみのない顔で。


 「さ、教室へ行くよ。お母さんには、もう用はありませんから。」


 「藤原さんの席はどこにしようか。あ、金沢さんの隣が空いているね、そこにしよう。そこに座って。」

 黒沢がいうと教室が、一瞬ざわめいた。ゲェー。カワイソウ。いろいろな声が飛びかって、その後にしのび笑いが尾をひくように続いた。


問 「黒沢がいうと教室が、一瞬ざわめいた」とありますが、このざわめきから読みとれる六年二組の生徒たちの気持ちを答えなさい。



e: 青木和雄は以前でましたね。

F: 『ハードル 真実と勇気の間(はざま)で』でやりました。

e: 吉富多美も教育カウンセラーでしたね。

F: プロの作家ではないです。

e: その点は割引いて読んで頂く?

F: 法務省人権擁護委員もやってました。

e: あと小学校校長も、でしょ!

F: キャリアはあります。

e: 理想像だなんて…

F: 物語でフィクションですからね。

e: こうあってほしいとか

F: こうありたいとか…

e: 希望とか夢とか

F: 勇気とがテーマになるとね……

e: 理想的過ぎる

F: だからこそ、”感動”を与える

e: という面も否定できないでしょう。

F: 心の中の願いをある意味、具現化してくれているとも言えると思いますが……


 「よろしくね。」

 あすかは隣の席の金沢順子に小さく声をかけた。順子は赤い顔をしてうつむいた。小柄な体を緊張で固くしているのが見てとれた。クラスの異様な反応は転校生のあすかへではなく、順子に対してのもののようだった。

 じっとりとした暗い雰囲気が、教室の隅々まで満ちている。


問 「じっとりとした暗い雰囲気が、教室の隅々まで満ちている」とありますが、具体的にどういうことですか。



 うららかな春の日。


 「藤原さん、いいですか。」

 「はい」

 「では決まりです。藤原さんが交流委員を受けてくれました。」

 女子議長の浜本晶がいい、全員でぱちぱちと拍手をする。


 「議長。」

 手を挙げて黒沢が立ちあがった。

 「交流委員は藤原さんには無力だと思うなあ。かなり仕事量あるよね。途中です休まれたら困るでしょう。」

 悪意を優しい笑顔にくるんで、あすかに投げ付けてきた。



問 「悪意を優しい笑顔にくるんで」とありますが、どういうことですか。



 「藤原さん、無理しないで断っていいんだよ。後で押しつけられたのが嫌だったっていわれても困るからさあ。」

 黒沢は皮肉っぽい笑みを浮かべた。

 「先生、それどういうことですか。藤原さんって、ひょっとして不登校とか」

 くすくすと笑って、野村真知子は首をすくめた。


 「わたしやります。わからないので、いろいろと教えてください。」


 「よっしゃ、決まり!」

 茂が元気よくいって拍手を促した。黒沢の広い額に青い筋が走る。苛立ちを隠そうともせずに、みんなに聞こえるように舌打ちをした。

 「金沢さん、いろいろと教えてね。」

 あすかがいうと、順子は戸惑いながも眩しそうにうなずいた。



 長い休み時間になると、クラスはいくつかのグループにきっちりと分かれた。あぶれているのはあすかと金沢順子だった。

 「藤原さん、ちょっと。」

 学級委員に決まった晶があすかを手招きした。晶の席には女子が四人集まっていた。

 「交流委員のこと、教えてあげるね。」


 眼鏡を押し上げて晶がいう、熱心に話す時の晶の癖らしい。

 「それからね。」

 「忠告よ。カナキン、あ、金沢さんとは親しくしない方がいいよ。」

 四人の頭が一斉にうなずいた。

 「どうしてなの。同じクラスなのに、変だよ。」

 「あの子、今クラスで浮いているの。藤原さん、巻き込まれるのは嫌でしょ。」

 教室で大きな音が響き、順子の悲鳴があがった。




子供を愛せない母親の気持ち、愛されたいと切に願う子供の気持ちをリアルにわかりやすく表現してあり、子供を愛せなかった母親には母親なりに内側に秘めたる理由があった。過去のトラウマ…。物事は、自分の角度からのみ見てはいけない。人それぞれに抱えている問題があり、多角的に見るよう教えてくれた。(byキッズレビュー)



青木和男(あおきかずお、1930年~)は、日本の児童文学作家。神奈川県横浜市出身。早稲田大学第一文学部心理学科そ卒業。横浜市教育委員会指導主事、横浜市立小学校校長を経て、教育カウンセラーとなる。カウンセラーとしての経験を生かし、いじめや児童虐待をテーマにした児童書を多数出版。

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青木和雄・吉富多美「ハッピーバースデー」



 「ああ、あすかなんて、本当に生まきゃよかったなあ。」



《これまでのあらすじ》

【あすかは、母親の静代から精神的に虐待を受けていたため、一時期、声を出すことができなかった。しかし、田舎に預けられ、祖父母からたくさんの愛情をもらったことで声を取り戻すことができた。元気になったあすかは静代の元に戻り、新しい学校に通うことになった。】



 あすかが転校した青葉小学校は、新しい家から歩いて十五分ほどの距離にあった。学校のすぐ前を幹線道路が走っている。ひっきりなしに通る車エンジンの音が、風の音を消していた。
 「体調を崩しまして、田舎で静養しておりましたものですから。」


 「あ、不登校ですか。ようするに学校、嫌いなんですね。」

 「いえ、それは、あの……。」

 静代はしどろもどろになる。

 「わたし、学校、嫌いじゃありません。」

 「だったら、登校するでしょ、ふつう。」

 むっとして黒沢がいった。整ってはいるが温かみのない顔で。


 「さ、教室へ行くよ。お母さんには、もう用はありませんから。」


 「藤原さんの席はどこにしようか。あ、金沢さんの隣が空いているね、そこにしよう。そこに座って。」

 黒沢がいうと教室が、一瞬ざわめいた。ゲェー。カワイソウ。いろいろな声が飛びかって、その後にしのび笑いが尾をひくように続いた。


問 「黒沢がいうと教室が、一瞬ざわめいた」とありますが、このざわめきから読みとれる六年二組の生徒たちの気持ちを答えなさい。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 「よろしくね。」

 あすかは隣の席の金沢順子に小さく声をかけた。順子は赤い顔をしてうつむいた。小柄な体を緊張で固くしているのが見てとれた。クラスの異様な反応は転校生のあすかへではなく、順子に対してのもののようだった。

 じっとりとした暗い雰囲気が、教室の隅々まで満ちている。


問 「じっとりとした暗い雰囲気が、教室の隅々まで満ちている」とありますが、具体的にどういうことですか。



 うららかな春の日。


 「藤原さん、いいですか。」

 「はい」

 「では決まりです。藤原さんが交流委員を受けてくれました。」

 女子議長の浜本晶がいい、全員でぱちぱちと拍手をする。


 「議長。」

 手を挙げて黒沢が立ちあがった。

 「交流委員は藤原さんには無力だと思うなあ。かなり仕事量あるよね。途中です休まれたら困るでしょう。」

 悪意を優しい笑顔にくるんで、あすかに投げ付けてきた。



問 「悪意を優しい笑顔にくるんで」とありますが、どういうことですか。



 「藤原さん、無理しないで断っていいんだよ。後で押しつけられたのが嫌だったっていわれても困るからさあ。」

 黒沢は皮肉っぽい笑みを浮かべた。

 「先生、それどういうことですか。藤原さんって、ひょっとして不登校とか」

 くすくすと笑って、野村真知子は首をすくめた。


 「わたしやります。わからないので、いろいろと教えてください。」


 「よっしゃ、決まり!」

 茂が元気よくいって拍手を促した。黒沢の広い額に青い筋が走る。苛立ちを隠そうともせずに、みんなに聞こえるように舌打ちをした。

 「金沢さん、いろいろと教えてね。」

 あすかがいうと、順子は戸惑いながも眩しそうにうなずいた。



 長い休み時間になると、クラスはいくつかのグループにきっちりと分かれた。あぶれているのはあすかと金沢順子だった。

 「藤原さん、ちょっと。」

 学級委員に決まった晶があすかを手招きした。晶の席には女子が四人集まっていた。

 「交流委員のこと、教えてあげるね。」


 眼鏡を押し上げて晶がいう、熱心に話す時の晶の癖らしい。

 「それからね。」

 「忠告よ。カナキン、あ、金沢さんとは親しくしない方がいいよ。」

 四人の頭が一斉にうなずいた。

 「どうしてなの。同じクラスなのに、変だよ。」

 「あの子、今クラスで浮いているの。藤原さん、巻き込まれるのは嫌でしょ。」

 教室で大きな音が響き、順子の悲鳴があがった。



青木和雄・吉富多美「ハッピーバースデー」(金の星社)青木和雄1930年横浜市生まれ。早大第一文学部卒業。小学校校長など経て、教育カウンセラー、法務省人権擁護委員。児童文学作家。著書に『ハードル 真実と勇気の間(はざま)で』(金の星社)『ハートボイス いつか翔べる日』(金の星社)『ハードル2』『ハッピーバースデー 命かがやく瞬間』(金の星社)などがある。



子供を愛せない母親の気持ち、愛されたいと切に願う子供の気持ちをリアルにわかりやすく表現してあり、子供を愛せなかった母親には母親なりに内側に秘めたる理由があった。過去のトラウマ…。物事は、自分の角度からのみ見てはいけない。人それぞれに抱えている問題があり、多角的に見るよう教えてくれた。(byキッズレビュー)

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中学入試の合否を決する”決め手”は第1志望校攻略のための1年間のプログラム作成にあると考えて、その年間のプログラムを「3の段階」に分けて作るとよいでしょう。

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しかし、この作業を初めて中学受験を体験されるご父兄には重荷になるでしょう。だからといって塾に相談をもちかけても適切なアドバイスをしてくれるとは限りませんね。

そこで、中学受験を知り尽くしたプロチュータ。その効果のほどは絶大。何故なら、マン・ツー・マンによる個人対応で3段階のプログラム作成は勿論のこと、年間を通してのメンタルなサポートやフォローもしっかりやってくれます。

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志望校合格のカギ、それは徹底した年間プログラム作成とメンタルサポートとフォローができるプロチュータの存在です。

そして、この1年間で、ライバルに決定的な差をつけ、『合格』の2文字を勝ち取りましょう。

 「国語記述」を苦手とする生徒が目立って多くなってきています(朝日新聞平成8年11月10日付)。その理由は今までの進学塾では決定的な学習対策がなされていないからです。
 ご存知のように、ほとんどの進学塾の場合、来る日も来る日も「切り張りプリント」と「テキスト授業」です。これでは本番に通用する受験生が育つわけがないでしょう。
 そのため、最近の入試では特に御三家・筑駒・駒東中では「国語記述」で合否が決まるとさえ言われています。他の教科では差がつかないからです。また、入試問題では「記述式」が多くなって決定的に差がでてしまうからです。
 「国語記述」を伸ばすにはどうすれば良いのでしょうか?
 それは読書・作文だと言われ、それに反対するつもりはありませんが、入試まであと5か月。もっとすべきことがたくさんあるはずです。
 それは、たとえば、開成中なら「論理性と物語の本質」を、麻布・武蔵中なら「物語の本質」を、筑駒・灘中なら「論理性と詩の本質」を徹底的に理解することです。そこから明快な解答が導かれるのです。それを理解した地点で問題を眺めてみると、こんな易しい問題もないことに気づくはずです。
 すると、従来、たとえば御三家の国語は6割とれれば合格点といわれてきましたが、私たちの指導からすれば8~9割以上とれても不思議ではないことになります。
 御三家レベルの入試はどんな生徒も解いてみなければわからない不確定のものですが、国語における、この2~3割アップが『合格』をより確実なものにするでしょう。難関校では、誰しもよくできる算数や他の教科では差がつきません。指導法が、確立しておらず、知識のつめこみが役に立たない国語記述で合否が決まるのです。
 ここでは徹底した発想力・思考力の養成と学校別対策集中指導で他の受験生と国語記述力で決定的な差をつけます。
 国語記述は短期では差がつかないとあきらめている人も多いでしょう。なるほど知識、特に漢字の学習ではそれが言えるかもしれません。しかし、これだけ毎年傾向が同じ入試問題では対策の方法というものが確実にあります。
 それは感受性とか直観力という曖昧な問題ではなく、あくまで科学的に分析できるものであり、考え方と発想の方法を教えることで短期に習得できるものです。それぞれの進学塾が各学校の入試問題に対する模範解答を出していて、それを見ると各進学塾のレベルが手にとるように分かってきます。
 とりわけ、御三家の国語問題に対する「記述解答」には驚かされます。これでは合格できないであろうと思われるようなもの、あるいは、逆に子供が到底書けないような高度なものが堂々と出されています。ここでは、子供が考えられ、書ける。しかも、合格し得るレベルで指導します。


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倉橋耀子「空に続く道」



「おばあちゃーん。あたしは、翼を見つけたよ」







 わあああ、という大きな泣き声がせまりくる高波のようにおこった。クラスのみんなの視線はその声のほうにむかった。

 机につっぷして、美加が泣いている。


問 「美加が泣いている」とありますが、なぜですか。


e: 美加が泣いている理由、わかりますか?

F: 少し後を読めば
「松島さんが、自分だけやったみたいに言って、あたしがやったことだって知っているのに、あたしのことは言わないで、自分だけ悪者になるから、あたし、たまらなくなって」とありますから

e: 杏が美加のことを告げ口しないだけでなく

F: 美加の罪をかぶろうとしたので

e: 自分がひどいことをしたと思い知らされた?

F: ひどいことをしたのは笑子なのに、

e: なぜ笑子にひどいことをされた人が責められなければならないかと…

F: そう思うと、くやしくて泣いたんですね。

e: 傷ついて泣いたというわけですか?

F: 泣いた理由は二つ、書かなければならないでしょうね。



 杏は、ああと天井をあおぐ。先生は、今度は美加の席まで歩みよった。

 「どうした、鍋山」


 「おまえか?鍋山、おまえが吉野の上ばきを……」

 美加は頭をおろす。そして、つぎの瞬間、ふいに顔をあげたと思うや、どなるように声をあげた。

 「吉野さんだって、ひどいことしたのよ。あたしなんか、吉野さんにどれだけいろんなことを命令去れたかもしれないわ。松島さんのことだって、遠足のとき、松島さんのお弁当に砂をかけちゃおうって言ったのは吉野さんよ。ついでにドッジボールもぶつけちゃえって、みんなだっておもしろがってたじゃない。みんなもいっしょにやったじゃない」

 「そんなことが……」


問 「そんなことが……」とありますが、この時の先生の気持ちを答えなさい。


e: まさか、そんなことが起きていたとは……知らないのは先生ばかり……

F: 美加の告白に先生は驚きを隠せませんね。

e: 笑子は弱い者いじめをされていたのではなく

F: もともと自分が美加にいろいろ命令したり

e: 杏をいじめたりして

F: その仕返しをされていたのだとわかったからです。

e: 先生は笑子がいじめられていて可哀相だくらいしか思っていなかった?

F: 笑子が気の毒だ、くらいの認識だったんでしょう。



 美加はまた涙をながし、しゃくりあげながらも、精いっぱい発言する。

 「あたし、こんなこと、絶対に言うつもりはなかった。もっと吉野さんを苦しめてやりたかった。でも、松島さんが、自分だけやったみたいに言って、あたしがやったことだって知っているのに、あたしのことは言わないで、自分だけ悪者になるから、あたし、たまらなくなって……」

 「わかった。もういい。もうよし」

 「だれがいい、だれが悪い、どうやらそんな問題じゃないそうだな。まるで迷路みたいに、みんなの気持ちが行きちがってる」

 「先生、いちばん最初に問題をおこしたのは、あたし。笑ちゃんのこと傷つけたのは、このあたしです。あたし、ほんとうに反省してる。仲なおりがしたいの」

 杏が言いおえたとたん、今度は笑子が大声で泣きだした。


 杏は笑子のことを気にしていた。だいじょうぶだろうか。傷ついちゃったんじゃないだろうか。できることならはげましたい。ひさしぶりに、笑子に対してやさしい気持ちをもてる。笑子だけに対してだけではない。杏は、だれに対してもおだやかな気持ちをもつことができる。自分のことはたなにあげて、人の非を責めてばかりいるとき、心はいかりやにくしみにみちている。うらみを晴らすことばかりにとらわれて、身動きできなくなる。重くて、苦しくて、ちっとも楽しくなんかない。

 杏は、心もからだも軽やかで、いつだって空まで飛んでいけそうな気がしていた。もしかしたら、ほんとうに翼があるのかもしれない。

 みんなが自分のことをどう思っているかなんて、もう気にならなかった。正也に軽べつされたかもしれないことも、しかたがないと思える。だれにどんなふうに思われたとしても、あたしはあたし。自分のやったことをすなおにみとめよう。そして、どんなに時間がかかっても、笑子やみんなともういちど仲よくできるように、がんばってみよう。

 家に帰るのに、いつものように近道をして公園を横ぎるとき、杏は一瞬足をとめて、じっと空を見る。

 「おばあちゃーん。あたしは、翼を見つけたよ」

 思わずぴょんととびあがり、声をだして言った。


問 「あたしは、翼を見つけたよ」とありますが、どういうことですか。



e: どういうことかは少し前を戻って読めばわかりますね。

F: 「杏は、だれに対してもおだやかな気持ちをもつことができる」

e: 「自分のことはたなにあげて、人の非を責めてばかりいるとき、心はいかりやにくしみにみちている」

F: 「うらみを晴らすことばかりにとらわれて、身動きできなくなる。重くて、苦しくて、ちっとも楽しくなんかない。」とありますね。

e: それから、「みんなが自分のことをどう思っているかなんて、もう気にならなかった」

F: さらに「自分のやったことをすなおにみとめよう」

e: このあたりの内容をうまくまとめればいいんですかね。

F: 文中の言葉を利用しつつ、自分なりのことばでまとめればいいでしょう。

e: ”文末表現”は自分の言葉で?



 「どんな翼?」

 問いかえす声がした。びっくりしてふりむくと、正也がうしろにたっている。さすがにバツが悪かった。そばにブランコがあった。

 「ごめんね、マー君。あたし、いろんなこと、マー君にかくしてた」

 ブランコが大きくゆれたように思った。もちろん、それはかんちがいで、ほんとうは杏の心がゆれているのだ。

 「あたし、マー君にきらわれるのがこわかったの。軽べつされるのがおそろしかった。だから、ほんとうのことが言えなかったの。こんなあたし、幼なじみ失格だね。ごめんね。」

 正也はすぐに杏のとなりのブランコに腰をおろすと、きりだした。

 「ぼくもさあ、ほんと言うと、今まで何度かいじめられたことがあるんだ」

 ふいに杏は、地面に足をつけてブランコの動きをとめる。

 「ぼくはからだが弱いから、男女とか言われて、男子にはいつもからかわれた。そんなこともあったから、ぼくは児童会長に立候補した。児童会長になってからは、なにかといじめの問題をとりあげて、なにかあると、すぐに先生に言いつけた。今から思うと、そういう方法で仕返しをしていたんだ。だけど、そんなことみとめたくなくって、いつも正義の味方って顔してさ……。ほんとうはね、またいじめられたらどうしようって、いつもびくびくしてたんだ。杏と同じだよ。だから、ぼくだって、杏にはかっこいいのはところばかり見せてきた」

 「じゃあ、おあいこだっ」

 「そう言いたいところだけど、今日の杏はすごかった。ほんとうにかっこいいってことはこういうことだなって思ったよ。うん、すごく考えさせられた。」

 「マー君って、いつだって、あたしをはげますのが上手だね」

 杏はまたブランコをこぎだす。今度は力いっぱいこぐ、風がのびかけた髪をとかしていく。杏はブランコがうしろから前にむかうとき、大声で言った。

 「だけど、うれしい。マー君、ありがとう」


問 正也は杏のどんなところに感心したのですか。



e: ”マー君”なんて言われると、つい楽天の……

F: 「宝塚ボーイズ」?さて、最後の場面の正也の告白に注目します。

e: 正也は男女などとからかわれたのを根に持ち

F: 児童会長になってからはいじめの問題を取り上げ

e: 何か問題が起こるとすぐに先生に”チクった”

F: 「今から思うと、そういう方法で仕返しをしていたんだ。だけど、そんなことみとめたくなくって、いつも正義の味方って顔してさ……」

e: マー君。深く自省してますね。

F: 一方、杏はというと、勇気をもって自分の罪をみんなの前で告白しました。

e: 正也はそれこそほんとうに”カッコイイ”と感心したということですね。

F: 杏は自分の非を素直に認めたり、みんなを思いやったりしてますね。

e: ”かっこいい”ってはいうのは

F: 結局、そういうことなんじゃないかと…



問 この文章を読んで、いじめの問題について、君はどう考えますか。






 「どんな翼?」

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 「国語記述」を伸ばすにはどうすれば良いのでしょうか?
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 それは、たとえば、開成中なら「論理性と物語の本質」を、麻布・武蔵中なら「物語の本質」を、筑駒・灘中なら「論理性と詩の本質」を徹底的に理解することです。そこから明快な解答が導かれるのです。それを理解した地点で問題を眺めてみると、こんな易しい問題もないことに気づくはずです。
 すると、従来、たとえば御三家の国語は6割とれれば合格点といわれてきましたが、私たちの指導からすれば8~9割以上とれても不思議ではないことになります。
 御三家レベルの入試はどんな生徒も解いてみなければわからない不確定のものですが、国語における、この2~3割アップが『合格』をより確実なものにするでしょう。難関校では、誰しもよくできる算数や他の教科では差がつきません。指導法が、確立しておらず、知識のつめこみが役に立たない国語記述で合否が決まるのです。
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 国語記述は短期では差がつかないとあきらめている人も多いでしょう。なるほど知識、特に漢字の学習ではそれが言えるかもしれません。しかし、これだけ毎年傾向が同じ入試問題では対策の方法というものが確実にあります。
 それは感受性とか直観力という曖昧な問題ではなく、あくまで科学的に分析できるものであり、考え方と発想の方法を教えることで短期に習得できるものです。それぞれの進学塾が各学校の入試問題に対する模範解答を出していて、それを見ると各進学塾のレベルが手にとるように分かってきます。
 とりわけ、御三家の国語問題に対する「記述解答」には驚かされます。これでは合格できないであろうと思われるようなもの、あるいは、逆に子供が到底書けないような高度なものが堂々と出されています。ここでは、子供が考えられ、書ける。しかも、合格し得るレベルで指導します。


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YTvsS-4月12日-中学受験


F:YT『合不合判定予備テスト』対S『志望校判定SオープンAタイプ・Bタイプ』ですね。

e:SオープンはAタイプ・Bタイプで『灘バージョン』?つまり、第1日目はAタイプで第2日目はBタイプということですか?

F:おおざっぱに言えばですね。『国語』でいえば、Aは「知識・選択肢・書き抜き」問題でBは「記述」中心ですね。

e:つまり、「基本」と「応用」ですね。

F:わかりやすくいうと、ですね。「御三家・駒東・筑駒・栄光・灘」を受ける子はBタイプ。

e:あと、桐朋・暁星・学習院でしょ。女子は「桜蔭・双葉・学習院女子」etcかな?

F:おおざっぱに言えばですね。しかし、大半のお子さんはAタイプでしょう。

e:これで、Sが「御三家・駒東・筑駒・栄光」に強い理由がよく解りますね。

F:『開成』が2001年に「記述」に大転換してから、いち早くSは国語『記述』重視になりました。

e:『開成』の実績が飛躍的に伸びた訳ですね。

F:それから、それに比例して『国語記述』の個人指導が増えましたね。

e:そう言えば、それまでは『国語』指導の要望は少なかったです。

F:確かに!「麻布・武蔵・筑駒志望」のお子さんを教えることが多かったですね。『開成』が記述になってから、開成志望が半数、あと麻布、筑駒、駒東、栄光。そして武蔵、灘の順ですね。

e:慶應志望はコンスタントにありますね。

F:毎年4~5人は慶應を受験します。

e:普通部、SFC、それに中等部でしょ。

F:中等部が1番多いですね。ただ、5日→3日になってから減りました。

e:5日の時はいわゆる”記念受験”も多かったでしょう。

F:男の子は特にです。

e:今はそれがなくなり、本当に行きたいお子さんが受験するようになったみたいですね。

F:3日は筑駒をはじめ、いろんな学校が受けられます。

e:暁星、学習院とかですか?

F:『記述』指向の学校ですね。『記述』をやっていくと、『書く』ことに抵抗がなくなり書くのが普通になっていきます。

e:不思議に?書けば、「部分点」も入り、オールorナッシングじゃないですからね。

F:そうすると、『記述』系の学校を選択肢に入れてくるんですね。

e:確かに、『選択肢・書き抜き』問題は偶然性に左右される可能性が高いです。

F:いわゆる”マグレ”があるということです。

e:たまたま、”当たった”!『記述』の場合は不確実性が少なくなるって訳ですか?

F:書いた内容はいわゆる”模範解答”と照らし合わせれば、△でも×に近いのか、○に近いのか、おおよそ自分で判断できるようになります。

e:最終的には、本番で”書けた”かどうか、的確に分析判断できるまでになっているんでしょ。そうすると、3日に受験する学校も、例えば筑駒にするか、他の学
校にするかという

F:つまり、1日校の合格可能性が高ければ、筑駒。低ければ別の学校という風にですね。迷わずに!

e:3日は願書を2校出すケースが多い理由でしょ。1日の出来具合をみて。

F:ところが、『選択肢・書き抜き』問題が中心だと、そこが不確定要素になるんですね。できたか、できなかったかの確信が持てないんですね。

e:『中堅校』で、結構まぎらわしい選択肢がありますからね。算数の私(大人)が解いても。迷いますよ!

F:昔、灰谷氏に選択してもらったら、「ウでもエでも、もしかしたらアも正解かも」なんて言った、という記事が朝日に載ってましたね。

e:今江氏も同じようなことを言ってた記憶がありますよ。ましてや、『詩』の選択肢問題なんて...ということでしょうか?

F:『記述』だと、出題の意図は少しは理解できますが。

e:筑駒とか灘?

F:「許容解」の幅は結構広いと思いますよ。

e:でないと、受験したお子さんが気の毒でしょう?

F:お子さんによって、「いろいろな感じ方」がありますからね。

e:筑駒や灘を受ける子は、”特に”でしょ!「詩」については正解があって、ないようなものですか?

F:10人中9人はこう感じる、あるいは考えるだろうというのが”一応正解”にしてるんでしょう。

e:作問段階で、授業でそれとなく生徒に聞いてるんですかね。

F:それはないでしょ。

e:だとすると、その学校で使用している教科書を買いますよね。

F:しかし、教科書はあって、ないようなものでしょう?オリジナルのサブテキストが授業の中心でしょ。

e:それを手に入れると有利?なんてことはないですか?

F:作問は学校の授業とは全く関係なしになされているはずです。その上、作問者が一人でも、作問会議で複数の先生がチェックを入れるはずですから。

e:入手の意味がない?

F:灘、筑駒レベルでは当然と言えば当然そうでしょうね。入試には”公平性”が大原則ですからね。

e:四谷の合判の国語問題が『開成』に出た!

F:あれは全くの偶然でしょう。

e:受験する学校の中高の国語の教科書には目を通しておいた方がいいですか?

F:できればですね。目を通さないよりはね。

e:その中で、気に入ったものがあれば、全文を読むということいいんでしょうか?

F:そうですね。それがいいでしょ。

e:もう、合格して、その学校に通ってるつもりで、ですか?

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 そのため、最近の入試では特に御三家・筑駒・駒東中では「国語記述」で合否が決まるとさえ言われています。他の教科では差がつかないからです。また、入試問題では「記述式」が多くなって決定的に差がでてしまうからです。
 「国語記述」を伸ばすにはどうすれば良いのでしょうか?
 それは読書・作文だと言われ、それに反対するつもりはありませんが、入試まであと5か月。もっとすべきことがたくさんあるはずです。
 それは、たとえば、開成中なら「論理性と物語の本質」を、麻布・武蔵中なら「物語の本質」を、筑駒・灘中なら「論理性と詩の本質」を徹底的に理解することです。そこから明快な解答が導かれるのです。それを理解した地点で問題を眺めてみると、こんな易しい問題もないことに気づくはずです。
 すると、従来、たとえば御三家の国語は6割とれれば合格点といわれてきましたが、私たちの指導からすれば8~9割以上とれても不思議ではないことになります。
 御三家レベルの入試はどんな生徒も解いてみなければわからない不確定のものですが、国語における、この2~3割アップが『合格』をより確実なものにするでしょう。難関校では、誰しもよくできる算数や他の教科では差がつきません。指導法が、確立しておらず、知識のつめこみが役に立たない国語記述で合否が決まるのです。
 ここでは徹底した発想力・思考力の養成と学校別対策集中指導で他の受験生と国語記述力で決定的な差をつけます。
 国語記述は短期では差がつかないとあきらめている人も多いでしょう。なるほど知識、特に漢字の学習ではそれが言えるかもしれません。しかし、これだけ毎年傾向が同じ入試問題では対策の方法というものが確実にあります。
 それは感受性とか直観力という曖昧な問題ではなく、あくまで科学的に分析できるものであり、考え方と発想の方法を教えることで短期に習得できるものです。それぞれの進学塾が各学校の入試問題に対する模範解答を出していて、それを見ると各進学塾のレベルが手にとるように分かってきます。
 とりわけ、御三家の国語問題に対する「記述解答」には驚かされます。これでは合格できないであろうと思われるようなもの、あるいは、逆に子供が到底書けないような高度なものが堂々と出されています。ここでは、子供が考えられ、書ける。しかも、合格し得るレベルで指導します。


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 すべては『三教科合格』のためにー過去問国語『満点』を目指す!!

ー過去問データベースー算数・国語・理科・社会

開成中学昭和49年~平成21年
麻布中学昭和49年~平成21年
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駒東中学昭和51年~平成21年
筑駒中学昭和51年~平成21年
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倉橋耀子「空に続く道」



 笑子の大きな声がした。笑子は席を立っている。今にも杏のところにとびかかってきそうな勢いで杏を見ている。杏は笑子を見て、ぺこりと頭をさげた。けれども、正也のほうはおそろしくて見られない。


問 「けれども、正也のほうはおそろしくて見られない」とありますが、なぜですか。



e: この時点では正也に対する杏の気持ちはわかりませんね。

F: 杏が正也のどういう感情をもっているか、このときはまだ不明ですね。

e: 後の方で分かってきますから

F: 一応、パスでしょう。

e: 「あたし、マー君にきらわれるのがこわかったの。軽べつされるのがおそろしかった」なんて告白してますね。

F: 最後のブランコの場面ですね。

e: 最後まで読まなければわからない?

F: 最後まで読まなくても解るお子さんはいます。

e: パスしなくても

F: その時点で、ピーンときます。

e: そんなお子さんは書き出しでストーリーの展開と

F: ”テーマ”まで読み取ってしまう!

e: 読みながら解いていくタイプと

F: 一気に読んでから解くタイプとね。

e: そのお子さんに性格に合わせて

F: そこが大切なポイントでしょうね。

e: どっちにしろ、”臨機応変”に、ということでしょうか?



 「ほんとうなのか、松島。ほんとうにおまえが吉野に……」

 「はい。あたし、やりました」

 杏はそう言って、ゆっくりと肩をおとす。もう、これで、明日から、ほんとうにひとりぼっちだと思った。きっと今まで以上に軽蔑される。今まで以上にのけ者にされる。杏は悲しく覚悟した。

 「だれか、いっしょにやった者はいないのか?おまえだけで、こんなことを?」

 先生はうつむいた杏の顔をのぞきこむようにしてたずねる。美加の視線を感じた。はげしくうなる美加の心臓の音が聞こえてくるように思った。


問 「美加の視線」とありますが、この時の「美加」の気持ちを答えなさい。



e: 「だれか、いっしょにやった者はいないのか?」と先生が杏に訊いてますね。

F: そのとき、美加は杏を見ました。

e: なぜですか?

F: それは杏に対する不安に満ちた問いかけの表れでしょうか。

e: 先生に言う気じゃないかと…

F: 笑子にいやがらせをしたのは、杏だけじゃない

e: 美加もだと。

F: この時の美加の気持ちはわかりますね。



 「だれかと、いっしょにやったわけじゃありません」

 「あたしひとりでやったことです」

 きっぱりと、そして心からあやまる気持ちで、杏は言った。

 「あたりまえだわ」

 笑子が大きくさけび、少し杏のほうに足をすすめた。

 「杏以外にだれがやるっていうの?あたしのこと、にくんでいるのは、杏しかいないわ」

はげしく言いすてた笑子を、杏は力なくながめた。そして、杏はくちびるをかんでうつむいた。先生はあらためてたずねる。


問 「はげしく言いすてた笑子を、杏は力なくながめた」とありますが、この時の「杏」の気持ちを答えなさい。



e: 笑ちゃん、何も分かっていない、って感じですかね……

F: 今の杏は気が抜けたような状態でしょう。

e: 杏は自分の罪の告白で精一杯だったでしょうからね。

F: 「きっぱりと、そして心からあやまる気持ちで、杏は言った」とありますから、杏は心底から謝る気持ちで

e: 罪を告白してますからね。

F: にもかかわらず、笑子は自分のことを目の敵にし憎んでいるので

e: がっかり肩を落としている

F: 心からの謝罪の気持ちが笑子に伝わらないことにですね。



 「じゃあ、松島。吉野の上ばきをどこにかくしたか言ってみなさい」

 「あっ、あの、捨て、捨てました」

 「捨てた?どこに捨てたんだ」

 いかりにみちた先生の顔がせまってくる。

 「ちゃんと説明しなさい」

 先生がさらに問いつめた。そのときーーー


出版社/著者からの内容紹介

 優等生のはるひは担任にひいきにされクラスメイトの反感を買う。教師への不信いじ め…壊れていく教室を通し子供達の心を考える。


「BOOK」データベース

 父の期待にこたえようと「いい子」を演じ続けてきた杏は、あることがきっかけでクラスの仲間はずれになってしまった。これ以上我慢できなくって、杏はいじわるをした子にしかえしするが…。



(あらすじ)

【松島杏は、吉野笑子と同じクラスの小学生六年生で親友である。二人は、二学期のクラス委員になりたいと思っていたが、選ばれたのは、杏だった。その後、杏が苦手な算数のテストで教科書をカンニングしてしまった。それがクラスの学級活動(学活)で問題となり、クラス委員の再選挙が行われ、笑子がクラス委員となった。その後、笑子が中心となって、杏へのいじめが始まった。杏は、笑子にあてて、「いいかげんにしろ。わたしはなんでも知っている。これ以上、人を傷つけていると、今に罰があたるぞ!」という手紙を書き、鶴の形に折り、早朝、笑子の下駄箱にいれた。しかし、ほかにも、似たような手紙を書いた人がいたらしく、杏は、笑子から、全部、あなたのやったことだろうとなじられた。】

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中学入試の合否を決する”決め手”は第1志望校攻略のための1年間のプログラム作成にあると考えて、その年間のプログラムを「3の段階」に分けて作るとよいでしょう。

       第1段階は『夏期講習』が始まるまで

       第2段階は『夏期講習』が終わるまで

       第3段階は『冬期講習』が終わるまで

しかし、この作業を初めて中学受験を体験されるご父兄には重荷になるでしょう。だからといって塾に相談をもちかけても適切なアドバイスをしてくれるとは限りませんね。

そこで、中学受験を知り尽くしたプロチュータ。その効果のほどは絶大。何故なら、マン・ツー・マンによる個人対応で3段階のプログラム作成は勿論のこと、年間を通してのメンタルなサポートやフォローもしっかりやってくれます。

座右の師=プロチューター20%の合格率を80%にしてしまうミラクルチュータを持つーこれが合格への最短距離だと断言できるでしょう。

志望校合格のカギ、それは徹底した年間プログラム作成とメンタルサポートとフォローができるプロチュータの存在です。

そして、この1年間で、ライバルに決定的な差をつけ、『合格』の2文字を勝ち取りましょう。

 「国語記述」を苦手とする生徒が目立って多くなってきています(朝日新聞平成8年11月10日付)。その理由は今までの進学塾では決定的な学習対策がなされていないからです。
 ご存知のように、ほとんどの進学塾の場合、来る日も来る日も「切り張りプリント」と「テキスト授業」です。これでは本番に通用する受験生が育つわけがないでしょう。
 そのため、最近の入試では特に御三家・筑駒・駒東中では「国語記述」で合否が決まるとさえ言われています。他の教科では差がつかないからです。また、入試問題では「記述式」が多くなって決定的に差がでてしまうからです。
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倉橋耀子「空に続く道」


出版社/著者からの内容紹介

 優等生のはるひは担任にひいきにされクラスメイトの反感を買う。教師への不信いじ め…壊れていく教室を通し子供達の心を考える。


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 父の期待にこたえようと「いい子」を演じ続けてきた杏は、あることがきっかけでクラスの仲間はずれになってしまった。これ以上我慢できなくって、杏はいじわるをした子にしかえしするが…。



(あらすじ)

【松島杏は、吉野笑子と同じクラスの小学生六年生で親友である。二人は、二学期のクラス委員になりたいと思っていたが、選ばれたのは、杏だった。その後、杏が苦手な算数のテストで教科書をカンニングしてしまった。それがクラスの学級活動(学活)で問題となり、クラス委員の再選挙が行われ、笑子がクラス委員となった。その後、笑子が中心となって、杏へのいじめが始まった。杏は、笑子にあてて、「いいかげんにしろ。わたしはなんでも知っている。これ以上、人を傷つけていると、今に罰があたるぞ!」という手紙を書き、鶴の形に折り、早朝、笑子の下駄箱にいれた。しかし、ほかにも、似たような手紙を書いた人がいたらしく、杏は、笑子から、全部、あなたのやったことだろうとなじられた。】



 誰もいない静まりかえった学校は、いやでも杏に、笑子の下駄箱に鶴の手紙をいれたことを思いだされる。あのときの胸のどきどきや、恐怖心がよみがえってくる。

 下駄箱の前にたったとき、杏の心は罪悪感でいっぱいだった。笑子の下駄箱を見つめた。中にあった上ばきを、床にたたきつけた自分の姿がそこにあるようだった。

 「笑ちゃん、ごめんね」

 杏はそっと笑子の下駄箱をあけた。中に笑子の上ばきははいっていない。きっと、もう二度といじわるをされないように、笑子かくしているのかもしれない、と思った。

 こわすのはたやすけれど、もういちどつくりなおすのはたいへん。---お母さんの言葉を思いだした。いつの日か、笑子と中なおりをする日がくるんだろうか。


 「なにしてるの?」

 杏が声をかけたとき、女の子が一瞬ぎくっとして肩をすぼめ、それからゆっくりとふりかえる。杏は思わず息をのんだ。


問 「杏は思わず息をのんだ」のはなぜですか。


e: 倉橋耀子と言えば

F: いわゆる文学賞などとは縁がないみたいですね。

e: あまりに通俗的とみなされているせいなんですか?

F: そこがいいという人もいます。

e: 10年以上にわたって根強い人気が?

F: 若い読者のために同じ問いを何回も繰り返し発信し続けてますからね。

e: 自分の思い通りにいかないのが世の中

F: その中で、幸福になるためにはどうすればいいのか?

e: 「人生には、必ず予想外の出来事や不本意な出来事が起きる」

F: そこで、自分の無力さを嘆き、

e: また世の中を恨んだところで、

F: 何の解決にもならない。

e: そういう厳しい現実を真正直に見据え

F: ひたすらこのテーマを追求してやまないって感じでしょうか?

e: で、通俗的で文学ではない?

F: ということで”文学賞”には……

e: 主人公の少女のほとんどが11~13歳ですよね。

F: その少女が様々な逆境に出会い、これに立ち向かうという

e: 古典的な成長物語が多いですね。

F: 「生き別れた肉親」「友人との確執と和解」「不治の病」「突然の出会いから始まる恋」などですね。

e: いつの時代の若い読者を惹つける

F: 特に若い女性を魅了するロマンティックなストーリー展開がいっぱいですね。

e: ところで、笑子の机の上にいたずら書きをされたような上ばきがあり

F: 女の子がいましたね。その女の子が美加でした。

e: また、上ばきには「バイキン」などと書かれてました。

F: そんなひどいいやがらせをを美加がしたことがわかり

e: 杏はびっくり仰天しました。

F: 美加はてっきり笑子と仲よしだとばかり思っていましたからね。



 「美加ちゃん……」

 笑子の右の上ばきには、太い文字で「バイキン」、左のほうには「サタン」と書いてある。

 「美加ちゃんは笑ちゃんと仲よしだったんじゃない」

 「あたしは笑ちゃんの子分にされただけで、うちのお母さんが笑ちゃんの病院で働いているから、いばっちゃって、あたしのことまで、使用人あつかいよ。ちょっとでも反発すると、あたしの言うことが聞けないないなら、父さんに言いつけちゃうって」


 「このあいだ上ばきの中に手紙いれたのは、あんたでしょ」

 「そうよ。わたしがやったの」

 杏が答えると、美加はにやりとする。

 「こうなったら協力しあうしかないね。あんたとわたしと目的は同じなんだから」

 「あたし、後悔してる。できたらあやまりたいって思ってるくらいよ」

 「もうおそいわ」

 美加は勝ちほこったように言う。


 「杏ちゃん、ふたりで協力しあいましょうよ。証拠なんかないんだから。絶対にわかりゃしないって。あたし、今度から、あんたがうたがわれたら、かばってあげる。約束するから」

 杏は生返事をかえす。心の中で、相反する思いがはげしく対立していた。

 杏はぎゅっと目をとじる。がんばれ、と自分に声をかけた。すんでのところで、杏は岩の上にふみとどまった。おちない。わたしはもうおっこちない。


問 「すんでのところで、杏は岩の上にふみとどまった」とありますが、具体的にはどういうことを表しているのですか。


e: 前の部分で、美加が二人で協力して笑子に仕返しをしようと

F: 復讐しようと、杏を誘っていますね。

e: それで、杏は断崖絶壁

F: 岩の上にいるような気持ちになりました。

e: 美加の誘いに乗るか

F: のならないかで迷ったのですね。

e: そして、ついに「かげでこそこそしない」

F: 笑子に仕返しをしないで

e: 「自分がしたこと」

F: 笑子に脅迫めいた手紙を書いたことをちゃんと認めることにしましたね。



 「あたしはもう、かげでこそこそしない。児童会で問題にされてもいい。そりゃあこわいけど、自分がしたこと、ちゃんとみとめる」


 「あたしは、まだものたりないわ。笑子のやつ、このままじゃ、ますますつけあがるばっかりよ」

 はげしく顔をゆがめて、美加は言う。

 「どうしてそれをほうっておくの?笑子だけがどうして許されるの?」

 「笑子ちゃんだってつらい思いをしてるかもしれないよ。それに、美加ちゃんは、笑ちゃんといっしょに楽しそうにしてるじゃない。今の美加ちゃんの気持ち、笑ちゃんは全然知らないと思うよ。それじゃあ、わかるはずないよ」


問 「今の美加ちゃんの気持ち」とはどんな気持ちですか。


e: 「今の」ね……

F: 「あたしは笑ちゃんの子分にされただけで、うちのお母さんが笑ちゃんの病院で働いているから、いばっちゃって、あたしのことまで、使用人あつかいよ。ちょっとでも反発すると、あたしの言うことが聞けないないなら、父さんに言いつけちゃうって」とあります。

e: そのあたりから想像つきますね。

F: 使用人あつかいされ

e: 反発すれば、自分の父親に”ちくる”って言うんでしょ!

F: 今の美加の気持ちはわかりますよね。





倉橋耀子 くらはし・ようこ
広島県に生まれる。
上智大学文学部卒業後、女性誌の編集者となる。ライター、コピーライターを経て、作家デビュー。児童小説、少女小説、童話、まんがの原作、エッセイなどを執筆。
(倉橋耀子の公式ブログ「ポーラスターをめざして」POLESTAR YOKO-KURAHASHI.COMプロフィールより)

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 誰もいない静まりかえった学校は、いやでも杏に、笑子の下駄箱に鶴の手紙をいれたことを思いだされる。あのときの胸のどきどきや、恐怖心がよみがえってくる。

 下駄箱の前にたったとき、杏の心は罪悪感でいっぱいだった。笑子の下駄箱を見つめた。中にあった上ばきを、床にたたきつけた自分の姿がそこにあるようだった。

 「笑ちゃん、ごめんね」

 杏はそっと笑子の下駄箱をあけた。中に笑子の上ばきははいっていない。きっと、もう二度といじわるをされないように、笑子かくしているのかもしれない、と思った。

 こわすのはたやすけれど、もういちどつくりなおすのはたいへん。---お母さんの言葉を思いだした。いつの日か、笑子と中なおりをする日がくるんだろうか。


 「なにしてるの?」

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問 「杏は思わず息をのんだ」のはなぜですか。


e: 倉橋耀子と言えば

F: いわゆる文学賞などとは縁がないみたいですね。

e: あまりに通俗的とみなされているせいなんですか?

F: そこがいいという人もいます。

e: 10年以上にわたって根強い人気が?

F: 若い読者のために同じ問いを何回も繰り返し発信し続けてますからね。

e: 自分の思い通りにいかないのが世の中

F: その中で、幸福になるためにはどうすればいいのか?

e: 「人生には、必ず予想外の出来事や不本意な出来事が起きる」

F: そこで、自分の無力さを嘆き、

e: また世の中を恨んだところで、

F: 何の解決にもならない。

e: そういう厳しい現実を真正直に見据え

F: ひたすらこのテーマを追求してやまないって感じでしょうか?

e: で、通俗的で文学ではない?

F: ということで”文学賞”には……

e: 主人公の少女のほとんどが11~13歳ですよね。

F: その少女が様々な逆境に出会い、これに立ち向かうという

e: 古典的な成長物語が多いですね。

F: 「生き別れた肉親」「友人との確執と和解」「不治の病」「突然の出会いから始まる恋」などですね。

e: いつの時代の若い読者を惹つける

F: 特に若い女性を魅了するロマンティックなストーリー展開がいっぱいですね。

e: ところで、笑子の机の上にいたずら書きをされたような上ばきがあり

F: 女の子がいましたね。その女の子が美加でした。

e: また、上ばきには「バイキン」などと書かれてました。

F: そんなひどいいやがらせをを美加がしたことがわかり

e: 杏はびっくり仰天しました。

F: 美加はてっきり笑子と仲よしだとばかり思っていましたからね。



 「美加ちゃん……」

 笑子の右の上ばきには、太い文字で「バイキン」、左のほうには「サタン」と書いてある。

 「美加ちゃんは笑ちゃんと仲よしだったんじゃない」

 「あたしは笑ちゃんの子分にされただけで、うちのお母さんが笑ちゃんの病院で働いているから、いばっちゃって、あたしのことまで、使用人あつかいよ。ちょっとでも反発すると、あたしの言うことが聞けないないなら、父さんに言いつけちゃうって」


 「このあいだ上ばきの中に手紙いれたのは、あんたでしょ」

 「そうよ。わたしがやったの」

 杏が答えると、美加はにやりとする。

 「こうなったら協力しあうしかないね。あんたとわたしと目的は同じなんだから」

 「あたし、後悔してる。できたらあやまりたいって思ってるくらいよ」

 「もうおそいわ」

 美加は勝ちほこったように言う。


 「杏ちゃん、ふたりで協力しあいましょうよ。証拠なんかないんだから。絶対にわかりゃしないって。あたし、今度から、あんたがうたがわれたら、かばってあげる。約束するから」

 杏は生返事をかえす。心の中で、相反する思いがはげしく対立していた。

 杏はぎゅっと目をとじる。がんばれ、と自分に声をかけた。すんでのところで、杏は岩の上にふみとどまった。おちない。わたしはもうおっこちない。


問 「すんでのところで、杏は岩の上にふみとどまった」とありますが、具体的にはどういうことを表しているのですか。


e: 前の部分で、美加が二人で協力して笑子に仕返しをしようと

F: 復讐しようと、杏を誘っていますね。

e: それで、杏は断崖絶壁

F: 岩の上にいるような気持ちになりました。

e: 美加の誘いに乗るか

F: のならないかで迷ったのですね。

e: そして、ついに「かげでこそこそしない」

F: 笑子に仕返しをしないで

e: 「自分がしたこと」

F: 笑子に脅迫めいた手紙を書いたことをちゃんと認めることにしましたね。



 「あたしはもう、かげでこそこそしない。児童会で問題にされてもいい。そりゃあこわいけど、自分がしたこと、ちゃんとみとめる」


 「あたしは、まだものたりないわ。笑子のやつ、このままじゃ、ますますつけあがるばっかりよ」

 はげしく顔をゆがめて、美加は言う。

 「どうしてそれをほうっておくの?笑子だけがどうして許されるの?」

 「笑子ちゃんだってつらい思いをしてるかもしれないよ。それに、美加ちゃんは、笑ちゃんといっしょに楽しそうにしてるじゃない。今の美加ちゃんの気持ち、笑ちゃんは全然知らないと思うよ。それじゃあ、わかるはずないよ」


問 「今の美加ちゃんの気持ち」とはどんな気持ちですか。


e: 「今の」ね……

F: 「あたしは笑ちゃんの子分にされただけで、うちのお母さんが笑ちゃんの病院で働いているから、いばっちゃって、あたしのことまで、使用人あつかいよ。ちょっとでも反発すると、あたしの言うことが聞けないないなら、父さんに言いつけちゃうって」とあります。

e: そのあたりから想像つきますね。

F: 使用人あつかいされ

e: 反発すれば、自分の父親に”ちくる”って言うんでしょ!

F: 今の美加の気持ちはわかりますよね。





倉橋耀子 くらはし・ようこ
広島県に生まれる。
上智大学文学部卒業後、女性誌の編集者となる。ライター、コピーライターを経て、作家デビュー。児童小説、少女小説、童話、まんがの原作、エッセイなどを執筆。
(倉橋耀子の公式ブログ「ポーラスターをめざして」POLESTAR YOKO-KURAHASHI.COMプロフィールより)

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中学入試の合否を決する”決め手”は第1志望校攻略のための1年間のプログラム作成にあると考えて、その年間のプログラムを「3の段階」に分けて作るとよいでしょう。

       第1段階は『夏期講習』が始まるまで

       第2段階は『夏期講習』が終わるまで

       第3段階は『冬期講習』が終わるまで

しかし、この作業を初めて中学受験を体験されるご父兄には重荷になるでしょう。だからといって塾に相談をもちかけても適切なアドバイスをしてくれるとは限りませんね。

そこで、中学受験を知り尽くしたプロチュータ。その効果のほどは絶大。何故なら、マン・ツー・マンによる個人対応で3段階のプログラム作成は勿論のこと、年間を通してのメンタルなサポートやフォローもしっかりやってくれます。

座右の師=プロチューター20%の合格率を80%にしてしまうミラクルチュータを持つーこれが合格への最短距離だと断言できるでしょう。

志望校合格のカギ、それは徹底した年間プログラム作成とメンタルサポートとフォローができるプロチュータの存在です。

そして、この1年間で、ライバルに決定的な差をつけ、『合格』の2文字を勝ち取りましょう。

 「国語記述」を苦手とする生徒が目立って多くなってきています(朝日新聞平成8年11月10日付)。その理由は今までの進学塾では決定的な学習対策がなされていないからです。
 ご存知のように、ほとんどの進学塾の場合、来る日も来る日も「切り張りプリント」と「テキスト授業」です。これでは本番に通用する受験生が育つわけがないでしょう。
 そのため、最近の入試では特に御三家・筑駒・駒東中では「国語記述」で合否が決まるとさえ言われています。他の教科では差がつかないからです。また、入試問題では「記述式」が多くなって決定的に差がでてしまうからです。
 「国語記述」を伸ばすにはどうすれば良いのでしょうか?
 それは読書・作文だと言われ、それに反対するつもりはありませんが、入試まであと5か月。もっとすべきことがたくさんあるはずです。
 それは、たとえば、開成中なら「論理性と物語の本質」を、麻布・武蔵中なら「物語の本質」を、筑駒・灘中なら「論理性と詩の本質」を徹底的に理解することです。そこから明快な解答が導かれるのです。それを理解した地点で問題を眺めてみると、こんな易しい問題もないことに気づくはずです。
 すると、従来、たとえば御三家の国語は6割とれれば合格点といわれてきましたが、私たちの指導からすれば8~9割以上とれても不思議ではないことになります。
 御三家レベルの入試はどんな生徒も解いてみなければわからない不確定のものですが、国語における、この2~3割アップが『合格』をより確実なものにするでしょう。難関校では、誰しもよくできる算数や他の教科では差がつきません。指導法が、確立しておらず、知識のつめこみが役に立たない国語記述で合否が決まるのです。
 ここでは徹底した発想力・思考力の養成と学校別対策集中指導で他の受験生と国語記述力で決定的な差をつけます。
 国語記述は短期では差がつかないとあきらめている人も多いでしょう。なるほど知識、特に漢字の学習ではそれが言えるかもしれません。しかし、これだけ毎年傾向が同じ入試問題では対策の方法というものが確実にあります。
 それは感受性とか直観力という曖昧な問題ではなく、あくまで科学的に分析できるものであり、考え方と発想の方法を教えることで短期に習得できるものです。それぞれの進学塾が各学校の入試問題に対する模範解答を出していて、それを見ると各進学塾のレベルが手にとるように分かってきます。
 とりわけ、御三家の国語問題に対する「記述解答」には驚かされます。これでは合格できないであろうと思われるようなもの、あるいは、逆に子供が到底書けないような高度なものが堂々と出されています。ここでは、子供が考えられ、書ける。しかも、合格し得るレベルで指導します。


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 すべては『三教科合格』のためにー過去問国語『満点』を目指す!!

ー過去問データベースー算数・国語・理科・社会

開成中学昭和49年~平成21年
麻布中学昭和49年~平成21年
武蔵中学昭和49年~平成21年
駒東中学昭和51年~平成21年
筑駒中学昭和51年~平成21年
灘中学昭和51年~平成21年
ラ・サール中学昭和51年~昭和63年
慶應普通部昭和51年~平成21年
慶應中等部昭和51年~平成21年
慶應湘南藤沢平成6年~平成21年
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早稲田中学昭和51年~平成12年
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倉橋耀子「空に続く道」


(あらすじ)

【松島杏は、吉野笑子と同じクラスの小学生六年生で親友である。二人は、二学期のクラス委員になりたいと思っていたが、選ばれたのは、杏だった。その後、杏が苦手な算数のテストで教科書をカンニングしてしまった。それがクラスの学級活動(学活)で問題となり、クラス委員の再選挙が行われ、笑子がクラス委員となった。その後、笑子が中心となって、杏へのいじめが始まった。杏は、笑子にあてて、「いいかげんにしろ。わたしはなんでも知っている。これ以上、人を傷つけていると、今に罰があたるぞ!」という手紙を書き、鶴の形に折り、早朝、笑子の下駄箱にいれた。しかし、ほかにも、似たような手紙を書いた人がいたらしく、杏は、笑子から、全部、あなたのやったことだろうとなじられた。】


誰もいない静まりかえった学校は、いやでも杏に、笑子の下駄箱に鶴の手紙をいれたことを思いだされる。あのときの胸のどきどきや、恐怖心がよみがえってくる。

 下駄箱の前にたったとき、杏の心は罪悪感でいっぱいだった。笑子の下駄箱を見つめた。中にあった上ばきを、床にたたきつけた自分の姿がそこにあるようだった。

 「笑ちゃん、ごめんね」

 杏はそっと笑子の下駄箱をあけた。中に笑子の上ばきははいっていない。きっと、もう二度といじわるをされないように、笑子かくしているのかもしれない、と思った。

 こわすのはたやすけれど、もういちどつくりなおすのはたいへん。---お母さんの言葉を思いだした。いつの日か、笑子と中なおりをする日がくるんだろうか。


 「なにしてるの?」

 杏が声をかけたとき、女の子が一瞬ぎくっとして肩をすぼめ、それからゆっくりとふりかえる。杏は思わず息をのんだ。


問 「杏は思わず息をのんだ」のはなぜですか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:



 「美加ちゃん……」

 笑子の右の上ばきには、太い文字で「バイキン」、左のほうには「サタン」と書いてある。

 「美加ちゃんは笑ちゃんと仲よしだったんじゃない」


 「このあいだ上ばきの中に手紙いれたのは、あんたでしょ」

 「そうよ。わたしがやったの」

 杏が答えると、美加はにやりとする。

 「こうなったら協力しあうしかないね。あんたとわたしと目的は同じなんだから」

 「あたし、後悔してる。できたらあやまりたいって思ってるくらいよ」

 「もうおそいわ」

 美加は勝ちほこったように言う。


 「杏ちゃん、ふたりで協力しあいましょうよ。証拠なんかないんだから。絶対にわかりゃしないって。あたし、今度から、あんたがうたがわれたら、かばってあげる。約束するから」

 杏は生返事をかえす。心の中で、相反する思いがはげしく対立していた。

 杏はぎゅっと目をとじる。がんばれ、と自分に声をかけた。すんでのところで、杏は岩の上にふみとどまった。おちない。わたしはもうおっこちない。


問 「すんでのところで、杏は岩の上にふみとどまった」とありますが、具体的にはどういうことを表しているのですか。


e:

F:

e:

F:

e:

F:


 「あたしはもう、かげでこそこそしない。児童会で問題にされてもいい。そりゃあこわいけど、自分がしたこと、ちゃんとみとめる」


 「あたしは、まだものたりないわ。笑子のやつ、このままじゃ、ますますつけあがるばっかりよ」

 はげしく顔をゆがめて、美加は言う。

 「どうしてそれをほうっておくの?笑子だけがどうして許されるの?」

 「笑子ちゃんだってつらい思いをしてるかもしれないよ。それに、美加ちゃんは、笑ちゃんといっしょに楽しそうにしてるじゃない。今の美加ちゃんの気持ち、笑ちゃんは全然知らないと思うよ。それじゃあ、わかるはずないよ」


問 「今の美加ちゃんの気持ち」とはどんな気持ちですか。


e:

F:

e:

F:

e:

F:



 「だから、わからせてやるんじゃない」

 美加はあくまで言いはった。

 杏は美加を思い、胸がいたんだ。まだまだしっかり心にかぎをかけている。かぎをかけると、心はなにも感じなくなってしまうことは、杏もよくわかった。

 今だって、杏はまだ自信がない。ほんとうにかぎは開いたのか……。


 ベルが鳴った。少しして、三上先生が笑子とともにはいってくる。笑子は泣いていたのか、ほおをぬらしている。足もとを見ると、学校のお客さん用のスリッパをはいていた。

 「今朝もまた、いじめがあった。吉野の上ばきがかくされたんだ」

 先生は苦々しい表情で言った。美加が、またちらっと杏を見る。

 教室の中がざわめいた。クラスメイトの何人かは杏のほうに目をむける。

 「言っておくが、根拠もないのに勝手なことを発言しないように。自分の問題としてちゃんと考えてほしい」

 先生は言った。正也がすぐに手をあげて発言する。

 「賛成です。このあいだ、ぼくが休んでいたときの学活みたいに、だれかの個人攻撃にならないようにしたいと思います」

笑子は自分の席にもどった。そうして、杏をにくしみをこめた目でにらみつけた。

 「それでは、いじめについて、みんなの考えを聞こう。意見のある人は手をあげて」

 先生は本題にはいった。杏の胸がばくばくと鳴る。


 杏のばくばくする胸は、今にもはりさけそうだ。今こそ、体あたりしたら、どんなにらくになるだろう。でも、こわい。なにも、みんなの前で言わなくても……。

 「それでは、いちばん前の右はしの席から順番に意見を言って」

 先生はその席にすわっている男子のところまで歩いていった。男子はにやにやしながらたちあがり、

 「まあ、なんちゅうか、いじめなんかしちゃ、よくないと思いまーす」


問 「まあ、……思いまーす」とありますが、この男子はいじめをどのように考えていると思われますか。



e:

F:

e:

F:

e:

F:



 杏の耳に、おばあちゃんの声が聞こえてきた。ーーー杏。人はね、ほんとはみんな翼をもってるの。でも、そのことに気がついていないだけ。杏だって、とっても大きな翼をもっている。それを羽ばたかせて、空を自由に飛ぶことができるのは、杏の心しだいだよ。

 杏はふたたび断崖絶壁までおいつめられた気分になった。さっきはどうにか岩の上にふみとどまったけれど、今度は飛ぶ。飛ぶんだ!


問 「断崖絶壁までおいつめられた」とありますが、これは杏がどんな状態になっていることをたとえた表現ですか。


e:

F:

e:

F:

e:

F:



 杏は目をとじて、空を思いえがいた。どこまでも青い空。空にむかって飛びたとうとする自分。背中に大きくのびたふたつの翼。杏は心の中でカウントダウンをする。

 十秒前、九、八、七、六、五、四、三、二、一……。

 「ゼロ」

 小さくつぶやく。

 「先生」

 杏は手をあげた。声がふるえていた。


 「あたしです。吉野さんにいやがらせをしたのは、あたしなんです……」

 からだよりさきに、心臓が空まで飛んでいってしまったようだった。少しだけからだが軽くなった気がして、杏は口ばやに続ける。

 「笑ちゃん、ごめんなさい。あたし、笑ちゃんにひどいことをしてしまったの」

 「やっぱり!」

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中学入試の合否を決する”決め手”は第1志望校攻略のための1年間のプログラム作成にあると考えて、その年間のプログラムを「3の段階」に分けて作るとよいでしょう。

       第1段階は『夏期講習』が始まるまで

       第2段階は『夏期講習』が終わるまで

       第3段階は『冬期講習』が終わるまで

しかし、この作業を初めて中学受験を体験されるご父兄には重荷になるでしょう。だからといって塾に相談をもちかけても適切なアドバイスをしてくれるとは限りませんね。

そこで、中学受験を知り尽くしたプロチュータ。その効果のほどは絶大。何故なら、マン・ツー・マンによる個人対応で3段階のプログラム作成は勿論のこと、年間を通してのメンタルなサポートやフォローもしっかりやってくれます。

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志望校合格のカギ、それは徹底した年間プログラム作成とメンタルサポートとフォローができるプロチュータの存在です。

そして、この1年間で、ライバルに決定的な差をつけ、『合格』の2文字を勝ち取りましょう。

 「国語記述」を苦手とする生徒が目立って多くなってきています(朝日新聞平成8年11月10日付)。その理由は今までの進学塾では決定的な学習対策がなされていないからです。
 ご存知のように、ほとんどの進学塾の場合、来る日も来る日も「切り張りプリント」と「テキスト授業」です。これでは本番に通用する受験生が育つわけがないでしょう。
 そのため、最近の入試では特に御三家・筑駒・駒東中では「国語記述」で合否が決まるとさえ言われています。他の教科では差がつかないからです。また、入試問題では「記述式」が多くなって決定的に差がでてしまうからです。
 「国語記述」を伸ばすにはどうすれば良いのでしょうか?
 それは読書・作文だと言われ、それに反対するつもりはありませんが、入試まであと5か月。もっとすべきことがたくさんあるはずです。
 それは、たとえば、開成中なら「論理性と物語の本質」を、麻布・武蔵中なら「物語の本質」を、筑駒・灘中なら「論理性と詩の本質」を徹底的に理解することです。そこから明快な解答が導かれるのです。それを理解した地点で問題を眺めてみると、こんな易しい問題もないことに気づくはずです。
 すると、従来、たとえば御三家の国語は6割とれれば合格点といわれてきましたが、私たちの指導からすれば8~9割以上とれても不思議ではないことになります。
 御三家レベルの入試はどんな生徒も解いてみなければわからない不確定のものですが、国語における、この2~3割アップが『合格』をより確実なものにするでしょう。難関校では、誰しもよくできる算数や他の教科では差がつきません。指導法が、確立しておらず、知識のつめこみが役に立たない国語記述で合否が決まるのです。
 ここでは徹底した発想力・思考力の養成と学校別対策集中指導で他の受験生と国語記述力で決定的な差をつけます。
 国語記述は短期では差がつかないとあきらめている人も多いでしょう。なるほど知識、特に漢字の学習ではそれが言えるかもしれません。しかし、これだけ毎年傾向が同じ入試問題では対策の方法というものが確実にあります。
 それは感受性とか直観力という曖昧な問題ではなく、あくまで科学的に分析できるものであり、考え方と発想の方法を教えることで短期に習得できるものです。それぞれの進学塾が各学校の入試問題に対する模範解答を出していて、それを見ると各進学塾のレベルが手にとるように分かってきます。
 とりわけ、御三家の国語問題に対する「記述解答」には驚かされます。これでは合格できないであろうと思われるようなもの、あるいは、逆に子供が到底書けないような高度なものが堂々と出されています。ここでは、子供が考えられ、書ける。しかも、合格し得るレベルで指導します。


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開成中学昭和49年~平成21年
麻布中学昭和49年~平成21年
武蔵中学昭和49年~平成21年
駒東中学昭和51年~平成21年
筑駒中学昭和51年~平成21年
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早実中学昭和51年~平成12年
早稲田中学昭和51年~平成12年
海城中学昭和51年~平成12年
巣鴨中学昭和51年~平成12年
桐朋中学昭和51年~平成12年
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『裸足と貝殻』三木卓



青空のような未来はあるのか?敗戦、そして中国からの引き揚げ。あの夏を過ぎ、崩壊した価値と秩序の中で始まる、少年の新しい生。終戦直後の青春を描く自伝的長編。



苦しい生活の中でも、志を高く持ち生きる豊三。力強い生命感の溢れた一つの時代が甦ってくる。



 約束は果たされた。翌日、かれは青いノートと『どんぐりと山猫』持ってきてくれた。のだの第一ページは、鉛筆の細かな文字で埋められていた。豊三は中を見ないようにして鞄に入れた。圧倒されたのである。松木は強い、と思った。

 開けると、「復興祭に寄す 松木勇次郎」というタイトルと名前があり、細かな字でぎっしりと書かれていた。

<わが郷土は不死鳥のように甦る。思いおこせば昭和二十年六月十九日。静岡市は米空軍B29群の猛爆をうけて一面焼土と化した。あの夜、誰しもがこの歴史ある都市が死んだと思った。二度と復活しないと思った。ああしかし、見よ。あれからわずか一年有半。我等は復興祭を迎えんとしている。これぞ、我等静岡人の不屈の努力、祖国再興、郷土再興のための不屈の努力の結果と言わずして何と言おう。我はまずそのことを主張し、心底より惜しみなく賞賛するものである>

 豊三はそこまで読んで、ノートを持ったまま思わず後ろにひっくり返った。これが五年生の書く文章か。中学五年のまちがいではないのか。

 交換ノートを引き受けてしまったことが後悔された。相手は大人の書くような難しい論文を書くことができる強豪である。

 その夜、豊三は何かを書かなければならないと思いながら、何も書くことができなかった。
 翌日学校へ行くと、松木がやってきていった。

 「どうだった。何を書いた」

 「いや」

 豊三はいった。


 「じゃ、おれのは読んだんだな」

 「読んだ」

 「どう思った」

 豊三は、だまってノートを渡した。ひったくるようにして受け取った松木は、豊三の感想を一気に読んだ。みるみる態度からけわしさが消えていくのがわかった。


問 「ひったくるようにして……消えていくのがわかった」とありますが、この時の松木の気持ちの変化を答えなさい。



e: どうして松木にはノートをひったくるようにして受け取る”けわしさ”があったのででしょうか?

F: それは松木にとって最も起こってほしくないことが

e: 起こってしまったのではないかと考えたから?

F: では、松木が最も起こってほしくないことは何か?

e: 自分で提案した「交換ノート」の約束が不成立になってしまうこと?

F: 豊三の「書けなかった」という言葉を聞いて不安になってしまったのですね。

e: ところが、ノートを見てみたら

F: 豊三にも「交換ノート」を続けようという気持ちがあることを知って安心したのですね。



 「わかった。じゃあ、ノートは持つて帰ってくれ。書けたらもってこいよ」


 「わかった」

 豊三はいった。

 「必ず書いてくる。すぐには無理かもしれないけれど」

 「その意気だ」

 豊三は、青いノート<自然>をもって帰り、薪を割って風呂を沸かした。今日は薪が乾いていたので、よく燃えた。その輝く火を見ながら、「復興祭に寄す」の文章を、また思い出していた。


問 「わかった」、「わかった」と二回出てきますが、それぞれの「わかった」にはどのような違いがありますか。



e: どちらも”了解”の意味を表す言葉でしょう?

F: しかし、豊三の気持ちはそれぞれ違っています。

e: 最初の「わかった」にはなかなか積極的にはなれない?

F: 松木の「交換ノート」の提案に、ですね。

e: 松木が期待するような文章を書く自信が持てないから?

F: ですから、松木が強引に誘うので

e: 「仕方ない。じゃ、やってみようか」くらいの消極的な了解でしょう。

F: 後の「わかった」は松木の文章に圧倒され何も書けなかったため

e: 「いや、書けたらでいい。それまで待つよ」

F: といったような”情け”をかけられ

e: ”屈辱”を味わい

F: 「今度こそは書いてやるぞ」というような積極的な了解ですね。



問 豊三の松木に対する感情の移り変わりを時間の経過にそって答えなさい。


問 「今日は薪が乾いていたのでよく燃えた」とありますが、この表現から君が考えたことを答えなさい。



e: どうして”青い”ノート」で、”赤い”ノートじゃいけないんですか?

F: ”白い”ノートでもダメでしょう!

e: 青いノート<自然>とありますから”緑”?

F: ブルーノートじゃなくグリーンノート?

e: やっぱりブルーノートがピッタリ?

F: 「青空の世界」

e: 薪がでてきますが…これ、なんです?

F: なんでしょう?いろいろ考えられますね。

e: 「乾いていた」?

F: 精神的な

e: ”飢え”?”渇き”ですか?

F: 「よく燃えた」!

e: 「その輝く火」を見ながら

F: 「『復興祭に寄す』の文章を、また思い出していた」






『裸足と貝殻』を読んで驚かされるのは、戦後の生活の困難さの中で、少年豊三の新しい世界との出会いが実にヴィヴィッドに描き出されているところであった。それは少年期に特有な明るさ、開放感であるが、終戦から何年間かの戦後の不思議な「青空の世界」が背景としてあるように思われる。



慢性的な飢えの中で食べ物を求めたように、いやそれ以上に知的なもの、教養的なものをいかに新鮮な気持ちで飢渇していたかがよくわかる。


《三木卓》
一つの時代の青春グラフティーを知ってほしい、世代間の橋渡しをしたいという意識はありました。
主人公の視点だけはブレないように書きました。
象徴的ではなく、実際に僕たちがどのように時代と関わり、互いに影響しあいながら自己を確立していったかを、書き込みたかった。
僕の文学はある意味で戦争ばかりかもしれない。
「青空の世界」が終わった後の戦後社会と、そこで実人生を歩み出した主人公の成長と挫折の、戦いの物語を次に書きたい。

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しかし、この作業を初めて中学受験を体験されるご父兄には重荷になるでしょう。だからといって塾に相談をもちかけても適切なアドバイスをしてくれるとは限りませんね。

そこで、中学受験を知り尽くしたプロチュータ。その効果のほどは絶大。何故なら、マン・ツー・マンによる個人対応で3段階のプログラム作成は勿論のこと、年間を通してのメンタルなサポートやフォローもしっかりやってくれます。

座右の師=プロチューター20%の合格率を80%にしてしまうミラクルチュータを持つーこれが合格への最短距離だと断言できるでしょう。

志望校合格のカギ、それは徹底した年間プログラム作成とメンタルサポートとフォローができるプロチュータの存在です。

そして、この1年間で、ライバルに決定的な差をつけ、『合格』の2文字を勝ち取りましょう。

 「国語記述」を苦手とする生徒が目立って多くなってきています(朝日新聞平成8年11月10日付)。その理由は今までの進学塾では決定的な学習対策がなされていないからです。
 ご存知のように、ほとんどの進学塾の場合、来る日も来る日も「切り張りプリント」と「テキスト授業」です。これでは本番に通用する受験生が育つわけがないでしょう。
 そのため、最近の入試では特に御三家・筑駒・駒東中では「国語記述」で合否が決まるとさえ言われています。他の教科では差がつかないからです。また、入試問題では「記述式」が多くなって決定的に差がでてしまうからです。
 「国語記述」を伸ばすにはどうすれば良いのでしょうか?
 それは読書・作文だと言われ、それに反対するつもりはありませんが、入試まであと5か月。もっとすべきことがたくさんあるはずです。
 それは、たとえば、開成中なら「論理性と物語の本質」を、麻布・武蔵中なら「物語の本質」を、筑駒・灘中なら「論理性と詩の本質」を徹底的に理解することです。そこから明快な解答が導かれるのです。それを理解した地点で問題を眺めてみると、こんな易しい問題もないことに気づくはずです。
 すると、従来、たとえば御三家の国語は6割とれれば合格点といわれてきましたが、私たちの指導からすれば8~9割以上とれても不思議ではないことになります。
 御三家レベルの入試はどんな生徒も解いてみなければわからない不確定のものですが、国語における、この2~3割アップが『合格』をより確実なものにするでしょう。難関校では、誰しもよくできる算数や他の教科では差がつきません。指導法が、確立しておらず、知識のつめこみが役に立たない国語記述で合否が決まるのです。
 ここでは徹底した発想力・思考力の養成と学校別対策集中指導で他の受験生と国語記述力で決定的な差をつけます。
 国語記述は短期では差がつかないとあきらめている人も多いでしょう。なるほど知識、特に漢字の学習ではそれが言えるかもしれません。しかし、これだけ毎年傾向が同じ入試問題では対策の方法というものが確実にあります。
 それは感受性とか直観力という曖昧な問題ではなく、あくまで科学的に分析できるものであり、考え方と発想の方法を教えることで短期に習得できるものです。それぞれの進学塾が各学校の入試問題に対する模範解答を出していて、それを見ると各進学塾のレベルが手にとるように分かってきます。
 とりわけ、御三家の国語問題に対する「記述解答」には驚かされます。これでは合格できないであろうと思われるようなもの、あるいは、逆に子供が到底書けないような高度なものが堂々と出されています。ここでは、子供が考えられ、書ける。しかも、合格し得るレベルで指導します。


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・東京都渋谷区恵比寿西2-2-6
・平日土日午前9時~午後10時


 すべては『三教科合格』のためにー過去問国語『満点』を目指す!!

ー過去問データベースー算数・国語・理科・社会

開成中学昭和49年~平成21年
麻布中学昭和49年~平成21年
武蔵中学昭和49年~平成21年
駒東中学昭和51年~平成21年
筑駒中学昭和51年~平成21年
灘中学昭和51年~平成21年
ラ・サール中学昭和51年~昭和63年
慶應普通部昭和51年~平成21年
慶應中等部昭和51年~平成21年
慶應湘南藤沢平成6年~平成21年
早実中学昭和51年~平成12年
早稲田中学昭和51年~平成12年
海城中学昭和51年~平成12年
巣鴨中学昭和51年~平成12年
桐朋中学昭和51年~平成12年
学習院中等部昭和51年~平成12年


expertFORUM教材部

 <過去並びに現在指導中の私立・国立小学校>

       ー指導人数が多い順にー

精華、国立学園、学習院、立教、慶應幼稚舎、光塩、成城学園、暁星、桐朋、成蹊、星美、田園調布双葉、小野学園、文教大附属、聖徳学園、作新学院、玉川学園、聖学院 川村、国立音大附属、洗足学園、聖徳大附属、東横学園、淑徳、宝仙、千葉日本大附属、御茶ノ水附属、筑波大附属、学芸大竹早、学芸大小金井、学芸大世田谷、横浜国立大附属、埼玉大附属、山形大附属


『裸足と貝殻』三木卓



 敗戦で中国から日本に家族となる引き揚げてきた少年・豊三。戦後の混乱と新しい秩序が作られつつある中での、少年の成長の日々をみずみずしく描く。


戦後復興期、満州引揚少年の日々は…



 翌日、自分の机にすわっていると、

 「おい、きみ」

 といきなり、声を掛けられた。ふりむくと黒の学生服をきちんと着た、目の鋭い少年が立っていた。同じクラスの子である。彼はいきなり手を差し出していった。

 「ぼくは松木勇次郎という。君は加納豊三くんだな。はじめまして。これから友達になろう」

 「それはありがとう」

 手を握られたまま豊三は、慎重な声でいった。松木はどういう人間だろう。どこか不自然に上品で儀式張っている。使うことばも標準語である。東京育ちなのだろうか。



問 「手を握られたまま豊三は、慎重な声でいった」ときの豊三の気持ちを答えなさい。


e: 豊三は「転校専門家」とありますね。

F: そのことから豊三が多くの転校を経験していることがわかります。

e: 左足にハンディをを負っています。

F: 転校経験の中で豊三は自分の身を守るために初対面の人間は特に警戒し

e: 相手が一体どんな人間なのか瞬時に判断しようとしているんでしょう。

F: これが、この時の豊三の心理です。



 「作文は苦手だ。いつも苦労ばかりして、うまく書けない」

 「そうかい。それはふしぎだな。だっておもしろかったぜ。そうとう書いていると見当をつけたが」

 「そんなことはない」

 豊三は、やっと手を取りかえしながらいった。


 そして二人の五年生は、お互いの顔をじっと見た。たしかに何かが起こっていた。そして、しばらく黙っていた。


問 「たしかに何かが起こっていた」とありますが、何がどうなったのでしょうか。



e: 松木と豊三の共通点は?

F: 二人とも「文学」に興味を持っていますね。

e: しかし、それについて語り合えるような人物はいなかったのも共通してます。

F: それで、二人の出会いはお互いにとって

e: すごく新鮮なものだったということでしょう。

F: 初対面の二人が「文学」についての話題が出た途端に

e: もう”他人”とは到底思えないような

F: 親近感を持ったということは理解できるでしょう。



 「交換ノートをつくろう」

 松木はいった。

 「なんだって!」

 豊三は驚いて叫んだ。

 「そんなの無理だよ。おれにできるわけがない」

 「できるさ」

 松木は、きっぱりした声でいった。

 「きみならできる」

 「どうして。できるわけがないじゃないか」

 「大石先生が、前の時間に提出した作文を読むとき、今までは必ずぼくの作文からだった。それを破ったのはきみがはじめてだ」



問 「大石先生が……きみがはじめてだ」とありますが

 (1) この言葉を松木はどんなつもりで言っているのですか。

 (2) この言葉を豊三はどのような意味で受けとめているのですか。



e: 「大石先生が……」という松木の言葉は

F: それを言った本人とそれを聞いた豊三とでは

e: 受け止め方が違う?

F: 松木にすれば「交換ノート」をしようという自分の提案にためらっている

e: 豊三の実力を認めることで自信を持つことができるだろうと考えてのことですか?

F: ところが、豊三には「お前のせいで今まで一度も譲らなかった作文の実力一番の地位を譲ることになっていまい、悔しく許せない」というようになってしまったという解釈の違いがあります。



 「…………」

 「だから、きみはぼくの提案を受け入れなければならない。そうじゃないか」


問 「だから、きみはぼくの提案を受け入れなければならない」とありますが、このことばには松木のどのような気持ちが込められていますか。



e: ここできかれているのは?

F: 松木の気持ちですね。

e: 確かに口調は偉そうといいますか

F: 横柄です。松木の気持ちの中には豊三に対する悔しさなどは

e: ないでしょう。

F: むしろ豊三の力を認め

e: 「きみだったらやってくれるよな」

F: という思いがあると考えるべきでしょう。


 豊三は黙っていた。やっと少し事情がわかってきたぞと思った。この松木という少年は、このクラスの作文ナンバーワンとして自他ともに認められていらっしゃいのだ。それが突然転入してきた少年に乱された。かれは、それで雌雄を決しようと思ってきたのだ。

 どうしようか。

 「わかった」

 豊三はいった。

 「じゃあ、やろう。ぼくも作文はうまくなりたい。きみにかなうとは思わないが、少しはうまくなるかもしれない」

 「よし」

 松木は、満足そうに言った。

 「それじゃあ、明日ノートをもってくる。それから『どんぐりと山猫』は、読みたいか」

 「読みたい」

 「じゃ、貸してやる。それももってくる」




敗戦。引揚。豊三は小学五年生。引揚船が日本へ向かう一瞬一瞬が、死から遠ざかる前進に思えた。少年の心が、静岡の穏やかな風土と人間模様の中で再び成長する自伝的長編。

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中学入試の合否を決する”決め手”は第1志望校攻略のための1年間のプログラム作成にあると考えて、その年間のプログラムを「3の段階」に分けて作るとよいでしょう。

       第1段階は『夏期講習』が始まるまで

       第2段階は『夏期講習』が終わるまで

       第3段階は『冬期講習』が終わるまで

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『裸足と貝殻』三木卓


 敗戦、死と背中合わせの中国からの引揚げを経て、五年生の豊三少年一家は親戚を頼りに、静岡に落ち着く。崩壊した秩序と価値観の中で、内地の生活は少年にとって何もかもが珍しく、新鮮に感じられ、青空のような未来が豊三の前に広がっていく。終戦直後の青春をみずみずしく描く。



 四二〇〇トンの巨船から大きく突出している船首を、加藤豊三は腹這いになって先へ進んだ。揺れ騒ぐ海面はビルの屋上から見る遠さである。

……この引き揚げ船の船首で宙に浮いている者。それが自分だ。



《これまでのあらすじ》

【加納豊三は小学五年生で、小さいときに小児麻痺にかかってしまったために、普通の子よりも左足が細く小さかった。父の仕事の都合で満州で生活していたが、終戦をむかえ、豊三の一家(祖父と母と兄との四人)は満州から日本へと引き揚げてきた。父は終戦の半年前にすでに病気でこの世を去っていた。引き揚げ船は博多に上陸し、そこから一家は叔母(母の姉にあたる)をたよりに静岡までやってきた。豊三は叔母のところで居候になりながら静岡市内の小学校に通いはじめることになった。】



 授業は、作文の時間だった。受け持ちは井藤だが、この時間は専科の大石という教師の担当だった。入ってきたのは、師範学校を出てまだいくらもたっていないと思われる色白で細面の女性教師だった。自由題で何を書いてもいいという。
 豊三は作文が苦手だった。何を書いたらいいのか、いつも困ってしまう。

 その日はすぐ素材が決まった。博多に上陸してから深夜の静岡駅に到着するまでの旅を、報告文を書けばいい。

 いつしか書いていることに引き入れられて、夢中になっていた。

 作文を提出して一週間が過ぎ、次の作文の時間がきた。色白で細面の大石が、微笑しながら作文の束をもって教室へ入ってきた。

 その瞬間、豊三は顔を伏せた。作文は読まれてしまった。きっと、その下手さかげんに顔をしかめて読んだだろう。

 「こんにちは、みなさん」

 大石は、明るい声でいった。

 「じゃ何から読もうかな。そうそう」

 大石は相変わらず明るい声でいった。

 「これは、読むと、だれが書いたかすぐにわかっちゃうわね。でも、先生、とてもおもしろかったよ」

 豊三は、顔をすこし上げて大石が手に握っている粗悪な仙貨紙を見た。それは裏までがぎっしりと文字が書かれているものだった。

 はっとして、また俯いた。ちがう。裏までぎっしり書いた者が他にもいたのだ。

 「二昼夜の汽車の旅」

 大石は題を読んだ。豊三は背中がぴくりと動いたのを感じた。不意に動いたので、防ぎようがなかった。

 豊三は机に顔をつけてだれからも顔を見られないようにした。机は多くのこどもたちによって傷つけられ、穴を開けられ、悪戯書きがしてあった。そして昼の掃除のときに濡れた雑巾で拭いた。あの埃くさい匂いがした。中国東北でも日本でも、少しもかわらない匂いである。夏の日に、灼けたアスファルトの舗装道路を雨の雫が叩きはじめるとき立ちのぼる、あの匂いにも似ていると思った。

 そんなことを思いながら、耳は大石の声を一文字でも聞き逃すまいとしていた。作文を、教師によって読まれたのは初めてである。そういうことをする教師もほとんどいなかった。

 耳に快い大石のきれのいい言葉が、次から次へと飛び込んでくる。それがみな自分が書いた言葉であり、自分が体験した事柄の表現である。
 
 <汽車は静岡へ静岡へと驀進している。>

 大石の声は、頭の上を、通り過ぎていった。豊三は顔を上げることができなくて、紅潮したほおをいっそう机の穴にこすりつけ、雑巾の埃臭い匂いをかいだ。


問  「その瞬間、豊三は顔を伏せた」「はっとして、また俯いた」「豊三は顔を上げることができなくて、紅潮したほおをいっそう机の穴にこすりつけ」について、それぞれの時の豊三の気持ちを答えなさい。



e:三木卓と言えば

F:『星のカンタータ』麻布で昭和54年に出ました。

e:確か、初期の作品でしたね。母の手で

F:貧困と不自由な左足をかかえながら

e:育ったという

F:『砲撃のあとで』が知られてますね。

e:「詩人」から「作家」になったんですよね。確か。

F:にもかかわらず、生々しい人物描写

e:自然描写は解りますが。狂おしいまでの焼け付くような?

F:生死に裏付けされてるからでしょうか?ある対談で三木卓の゛生い立ち゛がよく分かります。

e:それが詩にも小説にも色濃く反映されているんでしょうね。

F:゛作家゛の゛生い立ち゛は重要ですので

e:しっかり、その辺はお子さんに話をするんですね。

F:有名な作品の゛紹介゛もですね。

e:もちろん、入試によくでるという意味で゛有名゛

F:自伝的要素の強い゛作品゛も多いですからね。

e:「作家」と「作品」は切っても切り放せない関係にありますよ。

F:対談の中で三木卓が言ってます。「実際に僕たちがどのような時代に関わり、互いに影響しあいな
がら自己を確立していったかを書き込みたかった」と。

e: 「その瞬間、豊三は顔を伏せた」のは豊三は下手な自分の作文を先生に読まれるのは恥ずかしい?

F: 「豊三は作文が苦手だった。何を書いたらいいのか、いつも困ってしまう」とありますからね。

e: 豊三が作文を完全に苦手にしていることがわかります。

F: 大石先生が手に持っている作文がぎっしりと書かれているのを見たとき

e: もしかして「自分の作文かもしれない」と期待する?

F: なにしろ作文には苦手意識が先行して

e: まさかそんなはずはあるまいと……

F: 「豊三は顔を上げることができなくて、紅潮したほおをいっそう机の穴にこすりつけ」

e: 「雑巾の埃臭い匂いをかいだ」はいいですね。

F: 先生に作文を読まれるときの気持ちですね。

e: 嬉しいが照れ臭い?

F: 豊三の場合、それが生まれて初めての経験だったわけですからね。

e: 苦手意識のある作文で褒められたということで

F: その照れくささは人一倍であったと

e: 想像はつきますね。

F: 「大石の声は、頭の上を通り過ぎていった」





《著者略歴》

1935年5月13日東京都生まれ。本名、冨田三樹。早稲田大学文学部露文科卒業。詩人、作家として詩誌「氾」「現代詩」を中心に詩作活動を行い、67年に詩集『東京午前三時』でH氏賞、71年『わがキディ・ランド』で高見順賞を受賞。また73年に小説『鶸』で芥川賞を受賞。主な著書に『ぽたぽた』(野間児童文芸賞)、『馭者の秋』(平林たい子文学賞)『路地』(谷崎潤一郎)『裸足と貝殻』(読売文学賞)などがある。99年紫綬褒章受章。

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       第1段階は『夏期講習』が始まるまで

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しかし、この作業を初めて中学受験を体験されるご父兄には重荷になるでしょう。だからといって塾に相談をもちかけても適切なアドバイスをしてくれるとは限りませんね。

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 国語記述は短期では差がつかないとあきらめている人も多いでしょう。なるほど知識、特に漢字の学習ではそれが言えるかもしれません。しかし、これだけ毎年傾向が同じ入試問題では対策の方法というものが確実にあります。
 それは感受性とか直観力という曖昧な問題ではなく、あくまで科学的に分析できるものであり、考え方と発想の方法を教えることで短期に習得できるものです。それぞれの進学塾が各学校の入試問題に対する模範解答を出していて、それを見ると各進学塾のレベルが手にとるように分かってきます。
 とりわけ、御三家の国語問題に対する「記述解答」には驚かされます。これでは合格できないであろうと思われるようなもの、あるいは、逆に子供が到底書けないような高度なものが堂々と出されています。ここでは、子供が考えられ、書ける。しかも、合格し得るレベルで指導します。


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『裸足と貝殻』三木卓


 敗戦、死と背中合わせの中国からの引揚げを経て、五年生の豊三少年一家は親戚を頼りに、静岡に落ち着く。崩壊した秩序と価値観の中で、内地の生活は少年にとって何もかもが珍しく、新鮮に感じられ、青空のような未来が豊三の前に広がっていく。終戦直後の青春をみずみずしく描く。



 四二〇〇トンの巨船から大きく突出している船首を、加藤豊三は腹這いになって先へ進んだ。揺れ騒ぐ海面はビルの屋上から見る遠さである。……この引き揚げ船の船首で宙に浮いている者。それが自分だ。



《これまでのあらすじ》

【加納豊三は小学五年生で、小さいときに小児麻痺にかかってしまったために、普通の子よりも左足が細く小さかった。父の仕事の都合で満州で生活していたが、終戦をむかえ、豊三の一家(祖父と母と兄との四人)は満州から日本へと引き揚げてきた。父は終戦の半年前にすでに病気でこの世を去っていた。引き揚げ船は博多に上陸し、そこから一家は叔母(母の姉にあたる)をたよりに静岡までやってきた。豊三は叔母のところで居候になりながら静岡市内の小学校に通いはじめることになった。】


 授業は、作文の時間だった。受け持ちは井藤だが、この時間は専科の大石という教師の担当だった。入ってきたのは、師範学校を出てまだいくらもたっていないと思われる色白で細面の女性教師だった。自由題で何を書いてもいいという。
 豊三は作文が苦手だった。何を書いたらいいのか、いつも困ってしまう。

 その日はすぐ素材が決まった。博多に上陸してから深夜の静岡駅に到着するまでの旅を、報告文を書けばいい。

 いつしか書いていることに引き入れられて、夢中になっていた。

 作文を提出して一週間が過ぎ、次の作文の時間がきた。色白で細面の大石が、微笑しながら作文の束をもって教室へ入ってきた。

 その瞬間、豊三は顔を伏せた。作文は読まれてしまった。きっと、その下手さかげんに顔を
 「こんにちは、みなさん」

 大石は、明るい声でいった。

 「じゃ何から読もうかな。そうそう」

 大石は相変わらず明るい声でいった。

 「これは、読むと、だれが書いたかすぐにわかっちゃうわね。でも、先生、とてもおもしろかったよ」

 豊三は、顔をすこし上げて大石が手に握っている粗悪な仙貨紙を見た。それは裏までがぎっしりと文字が書かれているものだった。

 はっとして、また俯いた。ちがう。裏までぎっしり書いた者が他にもいたのだ。

 「二昼夜の汽車の旅」

 大石は題を読んだ。豊三は背中がぴくりと動いたのを感じた。不意に動いたので、防ぎようがなかった。

 作文を、教師によって読まれたのは初めてである。そういうことをする教師もほとんどいなかった。

 耳に快い大石のきれのいい言葉が、次から次へと飛び込んでくる。それがみな自分が書いた言葉であり、自分が体験した事柄の表現である。
 
 <汽車は静岡へ静岡へと驀進している。>

 大石の声は、頭の上を、通り過ぎていった。豊三は顔を上げることができなくて、紅潮したほおをいっそう机の穴にこすりつけ、雑巾の埃臭い匂いをかいだ。


問  「その瞬間、豊三は顔を伏せた」「はっとして、また俯いた」「豊三は顔を上げることができなくて、紅潮したほおをいっそう机の穴にこすりつけ」について、それぞれの時の豊三の気持ちを答えなさい。


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『裸足と貝殻』三木卓-



 翌日、自分の机にすわっていると、

 「おい、きみ」

 といきなり、声を掛けられた。ふりむくと黒の学生服をきちんと着た、目の鋭い少年が立っていた。同じクラスの子である。彼はいきなり手を差し出していった。

 「ぼくは松木勇次郎という。君は加納豊三くんだな。はじめまして。これから友達になろう」

 「それはありがとう」

 手を握られたまま豊三は、慎重な声でいった。松木はどういう人間だろう。どこか不自然に上品で儀式張っている。使うことばも標準語である。東京育ちなのだろうか。


問 「手を握られたまま豊三は、慎重な声でいった」ときの豊三の気持ちを答えなさい。


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 「作文は苦手だ。いつも苦労ばかりして、うまく書けない」

 「そうかい。それはふしぎだな。だっておもしろかったぜ。そうとう書いていると見当をつけたが」

 「そんなことはない」

 豊三は、やっと手を取りかえしながらいった。


 そして二人の五年生は、お互いの顔をじっと見た。たしかに何かが起こっていた。そして、しばらく黙っていた。


e:

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e:

F:

e:

F:





 「交換ノートをつくろう」

 松木はいった。

 「なんだって!」

 豊三は驚いて叫んだ。

 「そんなの無理だよ。おれにできるわけがない」

 「できるさ」

 松木は、きっぱりした声でいった。

 「きみならできる」

 「どうして。できるわけがないじゃないか」

 「大石先生が、前の時間に提出した作文を読むとき、今までは必ずぼくの作文からだった。それを破ったのはきみがはじめてだ」



問 「大石先生が……きみがはじめてだ」とありますが

 (1) この言葉を松木はどんなつもりで言っているのですか。

 (2) この言葉を豊三はどのような意味で受けとめているのですか。



 「…………」

 「だから、きみはぼくの提案を受け入れなければならない。そうじゃないか」

 豊三は黙っていた。やっと少し事情がわかってきたぞと思った。

 どうしようか。

 「わかった」

 豊三はいった。


問 「だから、きみはぼくの提案を受け入れなければならない」と言ったときの松木の気持ちを答えなさい。


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中学入試の合否を決する”決め手”は第1志望校攻略のための1年間のプログラム作成にあると考えて、その年間のプログラムを「3の段階」に分けて作るとよいでしょう。

       第1段階は『夏期講習』が始まるまで

       第2段階は『夏期講習』が終わるまで

       第3段階は『冬期講習』が終わるまで

しかし、この作業を初めて中学受験を体験されるご父兄には重荷になるでしょう。だからといって塾に相談をもちかけても適切なアドバイスをしてくれるとは限りませんね。

そこで、中学受験を知り尽くしたプロチュータ。その効果のほどは絶大。何故なら、マン・ツー・マンによる個人対応で3段階のプログラム作成は勿論のこと、年間を通してのメンタルなサポートやフォローもしっかりやってくれます。

座右の師=プロチューター20%の合格率を80%にしてしまうミラクルチュータを持つーこれが合格への最短距離だと断言できるでしょう。

志望校合格のカギ、それは徹底した年間プログラム作成とメンタルサポートとフォローができるプロチュータの存在です。

そして、この1年間で、ライバルに決定的な差をつけ、『合格』の2文字を勝ち取りましょう。

 「国語記述」を苦手とする生徒が目立って多くなってきています(朝日新聞平成8年11月10日付)。その理由は今までの進学塾では決定的な学習対策がなされていないからです。
 ご存知のように、ほとんどの進学塾の場合、来る日も来る日も「切り張りプリント」と「テキスト授業」です。これでは本番に通用する受験生が育つわけがないでしょう。
 そのため、最近の入試では特に御三家・筑駒・駒東中では「国語記述」で合否が決まるとさえ言われています。他の教科では差がつかないからです。また、入試問題では「記述式」が多くなって決定的に差がでてしまうからです。
 「国語記述」を伸ばすにはどうすれば良いのでしょうか?
 それは読書・作文だと言われ、それに反対するつもりはありませんが、入試まであと5か月。もっとすべきことがたくさんあるはずです。
 それは、たとえば、開成中なら「論理性と物語の本質」を、麻布・武蔵中なら「物語の本質」を、筑駒・灘中なら「論理性と詩の本質」を徹底的に理解することです。そこから明快な解答が導かれるのです。それを理解した地点で問題を眺めてみると、こんな易しい問題もないことに気づくはずです。
 すると、従来、たとえば御三家の国語は6割とれれば合格点といわれてきましたが、私たちの指導からすれば8~9割以上とれても不思議ではないことになります。
 御三家レベルの入試はどんな生徒も解いてみなければわからない不確定のものですが、国語における、この2~3割アップが『合格』をより確実なものにするでしょう。難関校では、誰しもよくできる算数や他の教科では差がつきません。指導法が、確立しておらず、知識のつめこみが役に立たない国語記述で合否が決まるのです。
 ここでは徹底した発想力・思考力の養成と学校別対策集中指導で他の受験生と国語記述力で決定的な差をつけます。
 国語記述は短期では差がつかないとあきらめている人も多いでしょう。なるほど知識、特に漢字の学習ではそれが言えるかもしれません。しかし、これだけ毎年傾向が同じ入試問題では対策の方法というものが確実にあります。
 それは感受性とか直観力という曖昧な問題ではなく、あくまで科学的に分析できるものであり、考え方と発想の方法を教えることで短期に習得できるものです。それぞれの進学塾が各学校の入試問題に対する模範解答を出していて、それを見ると各進学塾のレベルが手にとるように分かってきます。
 とりわけ、御三家の国語問題に対する「記述解答」には驚かされます。これでは合格できないであろうと思われるようなもの、あるいは、逆に子供が到底書けないような高度なものが堂々と出されています。ここでは、子供が考えられ、書ける。しかも、合格し得るレベルで指導します。

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森絵都「永遠の出口」 は大人の入口?


私は<永遠>という響きにめっぽう弱い子供だった……。



 一生に一度しかない誕生日。
 もう永遠に取りもどせない特別な一日。
 好恵はあの日、どんな思いで十代への第一歩をふみだしたんだろう。そして今日はどこで何を思い、過ごしていたんだろう。

 誕生会の終了と同時に、私はこの胸のもやもやから解放されるはずだった。なのにもやもやは増す一方で、まぶたの裏に焼きついた好恵の視線はなおも私を苦しめる。ついてない、と思った。私の誕生会が七月八日でなかったら、秋や冬の終わりのほうだったら、私は例年通りに何も考えず楽しい一日を過ごしていたはずだ。一年で一番幸せなはずの一日。なのに、好恵の次に生まれたばかりにすべてがだいなしになってしまった。ついてない。ついてない。ついてない……。



問 「ついてない。ついてない。ついてない……」とありますが、


 (1) どのようなことを「ついてない」と思ったのですか。

 (2) なぜ、そのことが「ついてない」のですか。


e: 前の問いとも関連しますね。

F: 「一年で一番幸せなはずの一日」が

e: 「だいなし」になったとあることもヒントでしょう。

F: 仲のいい五人の中で最初に「私」が好恵のことを気にして苦しむことになりました。

e: 好恵を誕生会に呼ばなかったせいでね、

F: 好恵の次の日に生まれたことが

e: 運の尽き!?



 「紀ちゃん」

 と、そのとき、ふすまのむこうから姉の声がした。

 「今、家の前であんたの友達みたいな子に会ってさ。これ、あんたにわたしてって」

 「え」

 「直接わたせばって言ったら、自転車に乗っていっちゃった」

 私は声もなくその包みを受けとった。

 「……」

 気がつくと、足が勝手に私を運んでいた。

 自転車は私を好恵の家へ運んだ。

 風も、地面も、すべてが私をそこへ運んでいく気がした。



問 「風も、地面も、すべてが私をそこへ運んでいく気がした」とありますが、この時の「私」の気持ちを答えなさい。


e: なんと!?誕生会に招待しなかった好恵からプレゼントですよ。ちょっと有り得ない、と思っちゃいますね。

F: 「私」はこれをきっかけに好恵と仲直りできるかもしれないと……

e: 期待した?

F: そんな気持ちが「私」を好恵の家に急がせているんでしょうね。

e: 好恵の家に言ってプレゼントのお礼を言えば

F: 仲直りでき、もやもやした気持ちもすっきりするのではないかと……



 好恵の家はあいかわらず整然と、一寸のゆるみもなしにたたずんでいた。

 熟柿のような電球に照らされたブザーに手をのばすのには、勇気がいった。私は好恵と会うのが気まずいだけでなく、あの日、あんなにもはっきりと私たちをこばんだおばさんに会うこともおそれていたからだ。

 どうか鬼母が出ませんように。

 「ひっ」

 現れたのは鬼母だった。

 「あ……ら」

 エプロン姿のおばさんは、ぬれた手をそのポケットのあたりでぬぐいながら、私に困惑の目をむけた。

 数秒後、重たい足音とともに好恵が現れた。
 「どうしたの」

 開口一番に問われ、私はたじろいだ。好恵の声には「なんか用?」とでもいうような、白々とした響きがあったからだ。

 リアクションの達人にしてはにぶすぎる反応。私はますます勢いをそがれて動揺した。すまし顔を明後日の豊富へむけている好恵を見ていると、自分がここに何を期待して来たのかわからなくなってくる。



問 「開口一番に問われ、私はたじろいだ」とありますが、なぜですか。


e: 「たじろいだ」って、意味わかりますかね…

F: 状況を判断して、おおよその意味はわかるでしょう。

e: 「重たい足音とともに好恵が現れ」

F: 「どうしたの」ですから。

e: 尻込みしますね。

F: まず、最初に現れたのが

e: 「どうか鬼母が出ませんように」が

F: 「鬼母」でしょ!?

e: で、「ひぃ」!?見事に出鼻をくじかれ

F: その揚句

e: 「どうしたの」ですからね…

F: 傍線の少し後に、「リアクションの達人にしてはにぶすぎる反応」

e: 「自分がここに何を期待して来たのかわからなくなってくる」とありますが…

F: 「私」は仲直りできるのでないかと期待して好恵に会いに来たのに

e: 「好恵の声には『なんか用?』とでもいうような、白々とした響き」がありました。

F: それで、「私」はどうしたらいいのかわからず

e: 狼狽してしまったという訳ですか?ついさっき自分かプレゼントを持ってきたくせに…

F: そのことで訪ねた「私」に対して

e: 拒否するような態度で接してきたので

F: どうしたらいいのかわからずあわててしまったということですね。



 苦しい沈黙の末、ひとまずここは撤退だ、とにげることにした。じゃ、それだけ、と早口で言いながら背をむけ、ドアノブに手をかける。
 「夕ごはん……」

 と、そのとき、背中からおばさんの声がした。

 「夕ごはん、まだなら食べていきなさい」

 最初のうち、私はそれが自分にむけられた言葉とは思えなかった。あのおばさんがこんなことを言うわけがない。しかし、ふりむくとおばさんはこわいくらいにまっすぐに、確かに私を見つめていた。

 「……はい」


問 「あのおばさん」とありますが、どのようなおばさんですか。


e: 「あのおばさん」とはどんなおばさん?

F: 「あのおばさん」が「夕ごはん、まだなら食べていきなさい」なんて言うわけがないと思っているのですから

e: 「私」によくない印象を与えた「あのおばさん」ということですね。

F: おばさんの印象のよくない言動とは?

e: 「はっきりと私たちをこばんだおばさん」という表現が確かありましたね。


 おばさんは数分おきに「もっと食べて」をくりかえした。

 もしかして---。あいかわらず気難しげな顔をして、それでも必死に私を気づかうおばさん。そしてその様子をじっと見すえる好恵の横顔をながめているうちに、私はなぜ今、自分がここにいるのかわかったような気がした。


問 「私はなぜ今、自分がここにいるのかわかったような気がした」とありますが、自分がここにいるのは、なぜだと思ったのですか。


e: これは難問?

F: 一生に一度しかない十歳の誕生日に誕生会を開いてもらえず、

e: みんなから仲間外れにされてしまった

F: 好恵の心は大きく傷ついています。

e: おばさんにとっては取り返しのつかない失敗なんですね。

F: ですから、おばさんはその代わりとなる今日の夕食会で

e: 「私」を満足させることで

F: 傷ついた好恵の心を少しでもいやしたいと思っているのです。

e: 百字くらいですか?

F: 三人、すなわち「私」、好恵、おばさんのそれぞれの気持ちに言及して書くとなりますと

e: 百五十字前後でしょうか?書けますか?

F: 書けるでしょう。

e: ”三人”の気持ちを書くというのがポイントですね。



 好恵にとって一生に一度の十歳の誕生日。あの日、私たちはここへ来なけれよかったと後悔したけれど、好恵も好恵で私たちを呼ばなければよかったと後悔し、おばさんもまた何らかの悔いをかかえてきたのかもしれない。

 そう思った瞬間、あまり馬の合わない友人宅での居心地の悪い夕食会は、何か大事な意味を秘めた苦行へと変わった。取り返しのつかない何かを取り返そうとするように「もっと食べて」を連発するおばさんは、確かに私のどこかを満たし、そしてきっと、好恵のどこかをいやしたのだ。


問 「夕食会は、何か大事な意味を秘めた苦行へと変わった」とありますが、これはどういうことですか。


 「ごちそうさまでした。おいしかったです」

 夜もふけて皿も空になると、私はつかれた様子のおばさんに礼を言い、「もう来んなよ、クソバカ女」とにくまれ口をたたく弟を柱のかげでこづいてから、好恵の家を出た。いいと言うのに、好恵は途中まで送るとついてきた。


問 「『もう来んなよ、クソバカ女』とにくまれ口をたた」いた弟の気持ちを答えなさい。


 「……ってくれる?」

 好恵は私をさえぎるようにして自転車のハンドルをにぎりしめ、かすれ声でささやいた。

 「え」

 「うちのお母さんの料理、おいしかったって、明日、学校でみんなに言ってくれる?」

 私たちを包んでいた生ぬるい夜気が、ふいにぴしゃりとはだを打った気がした。

 好恵はくちびるをふんばって私の答えを待っていた。

 「うん。言うよ」

 それだけ返すのが精一杯だった。

 「おばさんの料理、おいしかったって、明日、みんなに言う」

 今にも泣きそうなくせに意地でも泣かない好恵の顔が、なんともいえない安堵の表情に変わった。好恵は小さくうなずき、ふぅっと息をはいて、私の自転車から手を放した。それからすばやく回れ右をして、もう用はすんだというふうにてのひらをぶらぶらやりながら、廊下で男子を追いまわすときのような軽快なかけ足で、深い夜のむこうへと遠ざかっていった。

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       第1段階は『夏期講習』が始まるまで

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       第3段階は『冬期講習』が終わるまで

しかし、この作業を初めて中学受験を体験されるご父兄には重荷になるでしょう。だからといって塾に相談をもちかけても適切なアドバイスをしてくれるとは限りませんね。

そこで、中学受験を知り尽くしたプロチュータ。その効果のほどは絶大。何故なら、マン・ツー・マンによる個人対応で3段階のプログラム作成は勿論のこと、年間を通してのメンタルなサポートやフォローもしっかりやってくれます。

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志望校合格のカギ、それは徹底した年間プログラム作成とメンタルサポートとフォローができるプロチュータの存在です。

そして、この1年間で、ライバルに決定的な差をつけ、『合格』の2文字を勝ち取りましょう。

 「国語記述」を苦手とする生徒が目立って多くなってきています(朝日新聞平成8年11月10日付)。その理由は今までの進学塾では決定的な学習対策がなされていないからです。
 ご存知のように、ほとんどの進学塾の場合、来る日も来る日も「切り張りプリント」と「テキスト授業」です。これでは本番に通用する受験生が育つわけがないでしょう。
 そのため、最近の入試では特に御三家・筑駒・駒東中では「国語記述」で合否が決まるとさえ言われています。他の教科では差がつかないからです。また、入試問題では「記述式」が多くなって決定的に差がでてしまうからです。
 「国語記述」を伸ばすにはどうすれば良いのでしょうか?
 それは読書・作文だと言われ、それに反対するつもりはありませんが、入試まであと5か月。もっとすべきことがたくさんあるはずです。
 それは、たとえば、開成中なら「論理性と物語の本質」を、麻布・武蔵中なら「物語の本質」を、筑駒・灘中なら「論理性と詩の本質」を徹底的に理解することです。そこから明快な解答が導かれるのです。それを理解した地点で問題を眺めてみると、こんな易しい問題もないことに気づくはずです。
 すると、従来、たとえば御三家の国語は6割とれれば合格点といわれてきましたが、私たちの指導からすれば8~9割以上とれても不思議ではないことになります。
 御三家レベルの入試はどんな生徒も解いてみなければわからない不確定のものですが、国語における、この2~3割アップが『合格』をより確実なものにするでしょう。難関校では、誰しもよくできる算数や他の教科では差がつきません。指導法が、確立しておらず、知識のつめこみが役に立たない国語記述で合否が決まるのです。
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 それは感受性とか直観力という曖昧な問題ではなく、あくまで科学的に分析できるものであり、考え方と発想の方法を教えることで短期に習得できるものです。それぞれの進学塾が各学校の入試問題に対する模範解答を出していて、それを見ると各進学塾のレベルが手にとるように分かってきます。
 とりわけ、御三家の国語問題に対する「記述解答」には驚かされます。これでは合格できないであろうと思われるようなもの、あるいは、逆に子供が到底書けないような高度なものが堂々と出されています。ここでは、子供が考えられ、書ける。しかも、合格し得るレベルで指導します。

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灘中学昭和51年~平成20年
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森絵都「永遠の出口」 そのころには分からなかったけど今思えば…


もう永遠に取りもどせない特別な一日


私は<永遠>という響きにめっぽう弱い子供だった……。友情、秘密、家族、恋…10歳から18歳まで、揺れ動く少女の思春期。昭和50~60年代を背景に、新鋭がリリカルに描く長編。著者初の大人向け物語。(出版社/著者からの内容紹介)




《これまでのあらすじ》

【「私」には、仲の良い五人の友達がいました。好恵は、「私」たち六人組グループの一人です。「私」たち六人組グループにとって、誕生会は大きな行事でした。一年前、好恵の誕生会は、「お母さんが病気になったから」という理由でお流れになってしまいましたが、今年は好恵の誕生会が開かれることになりました。
 誕生会の当日、好恵の家を訪れると、好恵の母親は、何のごちそうも出さずに、「私」たち五人に「うちはね、誕生会はやらないことになっているの。だから、今日は帰ってね」と言って、「私」たちを追い返しました。そのことに大きな怒りを覚えた「私」たち五人は、位のみんなに自分たちがいかにひどい目にあったのかを広め、その上、新たな計画を立てました。】


 七月八日。七夕の翌日にあたる私の誕生日は日曜日だった。


 しかし、私はつかれきっていた。

 好恵を誕生会からしめだすことに決めたあの日から三週間、私は人の視線とはこんなにもこわいものかとつくづく思い知らされながら過ごした。いつ、好恵に誕生会のことをきかれるのか。いつ、好恵は自分が誕生会に招かれないことをさとるのか。私は絶えずびくびくと好恵の視線ばかりを気にしていたのだ。


 これほど自分が小心者とは知らなかった。復讐がこれほど苦痛をともなうものとも知らなかった。

 誕生会はとどこおりなく進んで、終わったと思う。

 みんなの帰った後、急にがらんとなった部屋の中で、私は一気に脱力した。もらったプレゼントをしまうのもおっくうで、その場に散らかしたまま二階へ上がると、部屋のベッドにどてっとうつぶした。あまいケーキの味はとうに忘れ、苦い後味ばかりがのこっていた。


問 「部屋のベッドにどてっとうつぶした」とありますが、この時の「私」の気持ちを答えなさい。


e: 『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビューしてますね。

F: 同作品で椋鳩十児童文学賞も受賞してます。

e: その後、いろんな賞を総なめしてますね。

F: 大森望に、「何でこれが直木賞取らないか不思議」、とまで言わしめてますね。

e: 『文学賞メッタ斬り』で『FF』の……。得てして、妙。そこがリアル。

F: それぞれの年代の心理描写がとてもうまく、

e: 物語の示し方も絶妙ですね。

F: 紆余曲折を経て「永遠の出口」にたどりついた時には

e: 大人への「入口」が……

F: 「永遠」と思えたものが

e: いつかは必ず終わりが来る?当たり前ですが……

F: 「永遠」ということは絶対にありえないのだということを知る

e: 悲しいかな、「永遠」と上手く折り合いをつけていく自分に気がついた

F: その時点で、「永遠」と

e: ”永遠に”お別れですか……

F: 「死」で再会を果たすことになるんでしょうか?

e: 時が止まったように感じた”青々とした10代”と再び会うことに?

F: 思い出が一杯の翔けぬけた少女の季節=「永遠」との”再会”でしょうか……

e: 揺れ動く少女の思春期をリアルに

F: そして、昭和50~60年代を背景に、リリカルに描描き出されています。

e: そのころには分からなかったけど今思えば…

F: もう永遠に取りもどせない特別な一日

e: さて、問いですが…

F: 傍線直後に「あまいケーキの味はとうに忘れ、苦い後味ばかりがのこっていた」とあります。

e: また「私はこの胸のもやもやから解放されるはずだった。なのにもやもやは増す一方で」とありますね。

F: 「私」は誕生会終了と同時に苦痛から解放されると思っていた!?

e: のに、それどころか、誕生会をしてもらえなくて辛い思いをしている好恵に同情していますね。

F: 好恵のつらい心がわかると同時に、好恵に意地悪をしてしまったという後悔の気持ちに苦しめられています。

e: 復讐などと言って好恵の気持ちを傷つけてしまったことを後悔してますね。

F: このように、この時の「私」の気持ちは二つあるわけですね。

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森絵都「永遠の出口」 そのころには分からなかったけど今思えば…

もう永遠に取りもどせない特別な一日

私は<永遠>という響きにめっぽう弱い子供だった……。友情、秘密、家族、恋…10歳から18歳まで、揺れ動く少女の思春期。昭和50~60年代を背景に、新鋭がリリカルに描く長編。著者初の大人向け物語。(出版社/著者からの内容紹介)

《これまでのあらすじ》
【「私」には、仲の良い五人の友達がいました。好恵は、「私」たち六人組グループの一人です。「私」たち六人組グループにとって、誕生会は大きな行事でした。一年前、好恵の誕生会は、「お母さんが病気になったから」という理由でお流れになってしまいましたが、今年は好恵の誕生会が開かれることになりました。
 誕生会の当日、好恵の家を訪れると、好恵の母親は、何のごちそうも出さずに、「私」たち五人に「うちはね、誕生会はやらないことになっているの。だから、今日は帰ってね」と言って、「私」たちを追い返しました。そのことに大きな怒りを覚えた「私」たち五人は、位のみんなに自分たちがいかにひどい目にあったのかを広め、その上、新たな計画を立てました。】

 七月八日。七夕の翌日にあたる私の誕生日は日曜日だった。

 しかし、私はつかれきっていた。

 好恵を誕生会からしめだすことに決めたあの日から三週間、私は人の視線とはこんなにもこわいものかとつくづく思い知らされながら過ごした。いつ、好恵に誕生会のことをきかれるのか。いつ、好恵は自分が誕生会に招かれないことをさとるのか。私は絶えずびくびくと好恵の視線ばかりを気にしていたのだ。

 これほど自分が小心者とは知らなかった。復讐がこれほど苦痛をともなうものとも知らなかった。

 誕生会はとどこおりなく進んで、終わったと思う。

 みんなの帰った後、急にがらんとなった部屋の中で、私は一気に脱力した。もらったプレゼントをしまうのもおっくうで、その場に散らかしたまま二階へ上がると、部屋のベッドにどてっとうつぶした。あまいケーキの味はとうに忘れ、苦い後味ばかりがのこっていた。

問 「部屋のベッドにどてっとうつぶした」とありますが、この時の「私」の気持ちを答えなさい。

e: 『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビューしてますね。

F: 同作品で椋鳩十児童文学賞も受賞してます。

e: その後、いろんな賞を総なめしてますね。

F:  児童文学の枠を超えた作品に挑戦で   

e:  2004年度本屋大賞第4位でした。

F: 大森望に、「何でこれが直木賞取らないか不思議」、とまで言わしめてますね。

e: 『文学賞メッタ斬り』で『FF』の……。得てして、妙。そこがリアル。

F: それぞれの年代の心理描写がとてもうまく、物語の示し方も絶妙です。

e: 紆余曲折を経て

F: 「永遠の出口」にたどりついた時には

e: 大人への「入口」が……

F: 「永遠」と思えたものが

e: いつかは必ず終わりが来る?当たり前ですが……

F: 「永遠」ということは絶対にありえないのだということを知る

e: 悲しいかな、「永遠」と上手く折り合いをつけていく自分に気がついた

F: その時点で、「永遠」と

e: ”永遠に”お別れですか……

F: 「死」で再会を果たすことになるんでしょうか?

e: 時が止まったように感じた”青々とした10代”と再び会うことに?

F: 思い出が一杯の翔けぬけた少女の季節=「永遠」との”再会”でしょうか……

e: 揺れ動く少女の思春期をリアルに

F: そして、昭和50~60年代を背景に、リリカルに描描き出されています。

e: そのころには分からなかったけど今思えば…

F: もう永遠に取りもどせない特別な一日

 一生に一度しかない誕生日。
 もう永遠に取りもどせない特別な一日。
 好恵はあの日、どんな思いで十代への第一歩をふみだしたんだろう。
  そして今日はどこで何を思い、過ごしていたんだろう。

 誕生会の終了と同時に、私はこの胸のもやもやから解放されるはずだった。なのにもやもやは増す一方で、まぶたの裏に焼きついた好恵の視線はなおも私を苦しめる。ついてない、と思った。
私の誕生会が七月八日でなかったら、秋や冬の終わりのほうだったら、私は例年通りに何も考えず楽しい一日を過ごしていたはずだ。一年で一番幸せなはずの一日。
なのに、好恵の次に生まれたばかりにすべてがだいなしになってしまった。

ついてない。ついてない。ついてない……。

問 「ついてない。ついてない。ついてない……」とありますが、

 (1) どのようなことを「ついてない」と思ったのですか。

 (2) なぜ、そのことが「ついてない」のですか。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

 「紀ちゃん」

 と、そのとき、ふすまのむこうから姉の声がした。

 「今、家の前であんたの友達みたいな子に会ってさ。これ、あんたにわたしてって」

 「え」

 「直接わたせばって言ったら、自転車に乗っていっちゃった」

 私は声もなくその包みを受けとった。

 「……」

 気がつくと、足が勝手に私を運んでいた。

 自転車は私を好恵の家へ運んだ。

 風も、地面も、すべてが私をそこへ運んでいく気がした。

問 「風も、地面も、すべてが私をそこへ運んでいく気がした」とありますが、この時の「私」の気持ちを答えなさい。

e:

F:

e:

F:

e:

F:

《森絵都》1968年4月8日東京生まれ。東京在住。女性。日本児童教育専門学校児童文学科、早稲田大学第二文学部を卒業後、児童文学創作の傍らシナリオライターの仕事をはじめる。90年、『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞、デビュー。同作品で椋鳩十児童文学賞を受賞。『宇宙のみなしご』野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞受賞。『アーモンド入りのチョコレートのワルツ』で路傍の石文学賞を受賞。『カラフル』で産経児童出版文化賞を準受賞。『つきのふね』で野間児童文芸賞を受賞。『DIVE!!』(全4巻)で小学館児童出版文化賞を受賞。2006年『風に舞いあがるビニールシート』で第135回直木賞受賞。

少女時代のきらめくような日々。そんな日がこのままずっと続くのではないかとさえ思える。だが、いつかは必ず終わりが来る。「永遠」ということは絶対にありえないのだ。「永遠の出口」にたどりついた時、少女はもう少女ではいられない。大人への階段を上る自分に気づいてしまう。紀子…。」byゆこりん少女時代の自分が見える…より

 紀子の、小学生時代から大人になるまでの過程を、閉じ込めた作品。ここに書かれているのは、一人の女の子の変遷と成長だが、共感する人は多いだろう。それだけ描写はしっかりしていたように思う。「永遠」を追い求める時期、そんなものなどないと絶望し、移り変われる永遠の日常を送らなければならないと気付く時期、「永遠」と上手く折り合いをつけていく時期、誰もが通るであろう心理を、一人の女の子の成長を通して描いた作品である。by 春哉3号成長より

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小川洋子「博士の愛した数式」 完全数 友愛数 オイラーの公式

  博士の愛した素数とルート。

  永遠と真理のテーマ ~愛の数式~

  -寄り添う数字 寄り添う心-

「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた-記憶力を失った博士にとって、私は常に”新しい”家政婦。博士は”初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。(「「BOOK」データベース」より)

 「いいえ」

 私は答えた。数字を持ち出すのは、最初の混乱がおさまったように見えても、まだ心の中が不安で一杯の証拠だった。

 「実にエレガントな数字なんだ」

 博士は受付から取ってきた問診票の裏に、黒丸を三角の形に並べて書いた。

「どうだい」

 私は三角形を覗き込んだ。博士の手はわずかに震えていた。黒丸が薄暗がりの中に浮かび上がって見えた。

 「そして各々の三角形に含まれる黒丸の数を数えてみれば、1,3,10,15,21。これを式に表してみれば、」

 1
  1+2=3
  1+2+3=6
  1+2+3+4=10
  1+2+3+4+5=15
  1+2+3+4+5+6=21

 となる。

 寒くもないのに手の震えはどんどんひどくなり、黒丸はいびつに不揃いになっていった。鉛筆の先に神経を集中させようとして、懸命になっていた。背広のメモはどれも血で汚れ、判読できなくなっていた。

問 「寒くもないのに手の震えはどんどんひどくなり、黒丸はいびつに不揃いになっていった」のはなぜですか。

e: ”書き出し”がポイントですか?

F: 「一つの定理で状況が統一できなくなった時、物事が静かでなくなった時」

e: 「博士がどれほどの恐怖を味わうのかの知ったのは、ゴー